今回は「磁鉄鉱」という鉱物について解説していきます。

磁鉄鉱は鉄系の鉱物の一種です。実は公園の砂場に混ざっている砂鉄は磁鉄鉱が粉砕されたものであり、磁鉄鉱は最も身近な鉱物と表現しても過言ではないでしょう。今回の記事では、このような磁鉄鉱の性質や特徴を詳しく述べることにした。そして、磁鉄鉱を使った科学技術もいくつか紹介します。ぜひ、この機会に磁鉄鉱についての理解を深めてくれ。

地学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

磁鉄鉱について学ぼう!

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磁鉄鉱という鉱石のことを皆さんはご存知でしょうか?理科や社会の教科書で、この鉱石についての記述があることから、名前くらいは聞いたことがあるという方が多いかと思います。しかしながら、地学や化学の視点で磁鉄鉱について詳しく学んだ経験がある人は少ないことでしょう。

今回の記事では、上記の視点で磁鉄鉱について深堀りしていきます。記事の中では、磁鉄鉱の性質や産地に加え、工業的な利用価値についても解説しますね。ぜひ最後まで記事を読んでみてください。

磁鉄鉱とは?

磁鉄鉱は、四酸化三鉄が主成分の鉱物ですよ。磁鉄鉱の色は黒色で、金属光沢をもつことが特徴です。磁鉄鉱がもつ他の特徴としては、正八面体の結晶構造をもっていることが挙げられますよ。このように聞くと、磁鉄鉱は私たちから非常に遠い存在のように感じますが、実は公園の砂場に含まれる砂鉄は磁鉄鉱が風化したものになります。

また、磁鉄鉱は強い磁性をもっていますよ。それゆえ、磁鉄鉱は磁石に引きつけられます。磁鉄鉱の中に雷が落ちると、天然の磁石に変化することもあるのです。このように、磁鉄鉱は磁石と関係が深いことから、英語圏では「マグネタイト」と呼ばれています。

磁鉄鉱と赤鉄鉱の違い

磁鉄鉱と似た名前の鉱石で「赤鉄鉱(ヘマタイト)」というものがありますよ。両者とも、鉄系の化合物が主成分になっている鉱石なので、混同して理解してしまうことがあります。そこで、ここでは磁鉄鉱と赤鉄鉱の違いについて簡単に述べますね。

赤鉄鉱の主成分は酸化鉄(Fe2O3であり、磁鉄鉱に比べて磁性が弱くなっています。それゆえ、赤鉄鉱は磁石にほとんど引き寄せられません。また、粉砕したときの色も異なります。磁鉄鉱の粉末は黒色ですが、赤鉄鉱の粉末の色は赤錆色になっていますよ

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磁鉄鉱の発見

磁鉄鉱がいつ、誰によって発見されたかははっきりと解明されていません。ですが、少なくとも紀元前の段階で、古代ギリシャの遊牧民が天然磁石として磁鉄鉱を使っていたことが記録に残っています

また、日本においても、菅原道真によって編集された「続日本紀」の中に磁鉄鉱と考えられるものの記述が含まれていますよ。続日本紀が書かれたのは797年ですから、いかに古い時代から磁鉄鉱の存在が知られていたかがわかりますよね。

磁鉄鉱の分布

磁鉄鉱は火成岩の中に含まれていることから、世界中の至る所に分布しています。磁鉄鉱の主要産出国としては、インド・オーストラリア・ロシア・イラン・中国・カナダ・アメリカなどが挙げられますよ。

また、磁鉄鉱の産地は日本国内にも存在します。特に、山口県にある須佐高山は磁鉄鉱の産地として有名です。この山で採れる磁鉄鉱は磁力を帯びており、山頂では方位磁針が正しい方角を指さないと言われています。

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磁鉄鉱の用途

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ここまで、磁鉄鉱が鉱物としてどのような特徴を持つのかを幅広く説明してきました。以下では、どの科学技術において、磁鉄鉱が資源として活用されているのかを考えていきましょう。このような事を知ることで、磁鉄鉱そのものについての理解も深まりますよ。

今回は、具体的に医療分野エネルギー分野電子工学分野において磁鉄鉱がどのように活用されているのかをご紹介します。それぞれの用途が、磁鉄鉱のどの性質を活かしたものであるのかを考えながら、記事を読み進めてみてください。

医療分野:がん治療

医療分野:がん治療

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磁鉄鉱のナノ粒子は、医療分野における活躍が期待されています。中でも、がん治療の最前線において磁鉄鉱ナノ粒子の活用が模索されていますよ。磁鉄鉱ナノ粒子による治療法は、従来の放射線治療のデメリットを解消できる点で希望がもたれているのです。

この治療では、体内に磁鉄鉱ナノ粒子を注入し、それをがん細胞が存在する体の部位に集めます。そして、その部分にむけて体外から高周波の交流磁場を加えますよ。磁場を与えられた磁鉄鉱ナノ粒子は発熱するので、熱に弱いがん細胞を弱らせることができるのです

エネルギー分野:電池の電極

エネルギー分野:電池の電極

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現在、磁鉄鉱の成分を正極活物質として用いたリチウムイオン電池が研究開発されています。その電池は特殊な性質をもっており、次世代電池として活躍することが期待されていますよ。この電池の特徴は、充放電に伴い、電池自体の磁性が変化することにあります。

以上の事柄は、電池と電磁石の性質を併せ持つようなデバイスが作れることを示唆していますよ。また、従来の電磁石に比べて、このデバイスの運用に必要となるエネルギーの量が少なくなります。それゆえ、磁鉄鉱を利用したリチウムイオン電池はクリーンな技術としても注目が集まっているのです。

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電子工学分野:スイッチ素子

電子工学分野:スイッチ素子

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他の物質と比較して、低温における磁鉄鉱の電気特性や磁気特性は特殊なものになっています。このような特性を生かして、磁鉄鉱系の素材を用いたスイッチング素子の開発ができないかと考えられているのです。

現在、以上のような構想は実用化には至っていません。ですが、その構想を実現するために必要な磁鉄鉱をシート状にコーティングする技術などは完成しており、着実に研究開発が進んでいますよ。

身近でありながら次世代技術を支える磁鉄鉱

磁鉄鉱は、公園の砂場で砂鉄として簡単に見つけられるほど身近な存在です。しかしながら、磁鉄鉱は最先端のがん治療に用いられたり、リチウムイオン電池の材料として採用されるなど、次世代技術を支える重要な資源でもありますよね。

ですから、磁鉄鉱についての雑学を知っておいて、損をすることは決してないと言えます。今後、報道で磁鉄鉱素材のことを耳にすることもあるかもしれません。ぜひ、この機会に磁鉄鉱について詳しく学んでみてください。

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化学原子・元素地学岩石・鉱物無機物質物理理科生活と物質電磁気学・光学・天文学

3分で簡単磁鉄鉱!天然の磁石?性質から応用技術まで現役理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

電子工学分野:スイッチ素子

電子工学分野:スイッチ素子

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他の物質と比較して、低温における磁鉄鉱の電気特性や磁気特性は特殊なものになっています。このような特性を生かして、磁鉄鉱系の素材を用いたスイッチング素子の開発ができないかと考えられているのです。

現在、以上のような構想は実用化には至っていません。ですが、その構想を実現するために必要な磁鉄鉱をシート状にコーティングする技術などは完成しており、着実に研究開発が進んでいますよ。

身近でありながら次世代技術を支える磁鉄鉱

磁鉄鉱は、公園の砂場で砂鉄として簡単に見つけられるほど身近な存在です。しかしながら、磁鉄鉱は最先端のがん治療に用いられたり、リチウムイオン電池の材料として採用されるなど、次世代技術を支える重要な資源でもありますよね。

ですから、磁鉄鉱についての雑学を知っておいて、損をすることは決してないと言えます。今後、報道で磁鉄鉱素材のことを耳にすることもあるかもしれません。ぜひ、この機会に磁鉄鉱について詳しく学んでみてください。

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