今回は「増幅回路」という電気回路について解説していきます。

増幅回路は電気信号の波をより大きくするための回路で、音楽用アンプをはじめとして多くの身近な機器に組み込まれているぞ。今回の記事では、増幅回路の基本原理や特徴から解説を始めて、その応用例までを体系的に説明することを心がけたぞ。ぜひ、この記事を読んで増幅回路についての理解を深めてくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

増幅回路について学ぼう!

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増幅回路』という言葉を聞くと、何やら難しい技術のように感じる方が多いかもしれません。実際、身近なところで増幅回路という言葉を見ることは、ほとんどないでしょう。ですが、増幅回路は私たちの生活を支える科学技術の構成要素の1つです。

そこで、この記事では最初に増幅回路とはそもそも何かということを述べますね。その後、仕組み歴史についても解説します。また、増幅回路が組み込まれている身近な機器についても考えてみましょう。それでは早速、説明をはじめますね。

増幅回路とは?

増幅回路とは?

image by Study-Z編集部

増幅回路は、入力された電気信号を外部電源によってエネルギーを増大させ、それを出力として得る回路のことを指します。増幅回路において、エネルギーを増大させる程度は常に一定です。つまり、入力信号と出力信号の強度波形は相似になります。

また、外部電源が必要である点も増幅回路の特徴です。外部電源から供給されるエネルギーが存在しないと、入力信号のエネルギーを大きくすることはできないからですよ。この概念はエネルギー保存則に従えば当然ですが、忘れてしまうことが多いので注意が必要です。

増幅率と利得

増幅回路の性能は増幅率利得といった概念で表現されます。「増幅率」は、増幅の前後におけるエネルギーの比率を表す値です。ここにおけるエネルギーは電力のことを指します。増幅回路では、入力エネルギーが出力エネルギーを上回るので、増幅率は必然的に1より大きくなりますよ。

また、「利得」は増幅率の常用対数をとったものです。利得はdB(デシベル)の単位で表されます。増幅回路の仕様を示すときには、増幅率よりも利得を用いることが多いですよ。

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電流増幅と電圧増幅

増幅回路は、電流値を増やす「電流増幅回路」と電圧値を増やす「電圧増幅回路」に大別できますよ。電流増幅回路は、増幅した先の回路が低インピーダンスのときに有効に動作します。低インピーダンスとは、電気を流しやすいということです。

一方、電圧増幅回路は、増幅した先の回路が高インピーダンスの場合に有効であるとされています。また、電流増幅回路と電圧増幅回路の違いは、回路内で使用されている素子の種類によって変わることも覚えておきましょう

増幅回路の歴史

本チャプターでは、増幅回路の歴史について解説しますよ。ここでは、増幅回路に使われる素子の種類がどのように変遷してきたかを考え、増幅回路がどのように進化したのかを学びます。

具体的には、真空管による増幅回路の時代半導体部品による増幅回路の時代の2つを比較しますね。両者のメリットとデメリットを考えながら、記事を読み進めてみてください。

真空管の時代

真空管は20世紀初頭に発明された増幅作用をもつ素子です。1940年くらいになるまで、ほとんどの増幅回路において、この素子が利用されていましたよ。

ですが、真空管は発熱量が大きく、故障が多いという問題点がありました。それゆえ、真空管が主流であった時代には、真空管の交換業者が存在していましたよ。その後、新しい技術の登場により真空管は淘汰されました。

\次のページで「半導体部品の登場」を解説!/

半導体部品の登場

1940年を過ぎると、半導体を使った増幅素子であるトランジスタの普及が進みました。真空管と比較して、トランジスタは小型で発熱が少なく、故障しにくいというメリットがありましたよ

トランジスタが発明された後、MOSFETオペアンプといった半導体増幅素子が次々と誕生することになり、半導体の時代が到来したのです。

増幅回路はどのように利用されているの?

ここまで、増幅回路の仕組みや歴史などについて幅広く説明してきました。以下では、増幅回路がどのような製品に組み込まれており、どのような役割を果たしているのかを考えていきましょう

今回は、具体的に「音楽用のアンプ」・「ラジオ・テレビ」・「コンピューター」を例にあげて説明をします。具体例を知ることで、増幅回路そのものについての理解も深まるので、ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。

その1.音楽用のアンプ

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音楽用アンプには増幅回路が用いられています。音楽用アンプを用いることで、CDやレコードから出力される微弱な音声信号を、大きなスピーカーで扱えるレベルまで増幅できるのです。

また、エレクトリックギターや電子ピアノといった電子楽器の出力を増幅する際にも、アンプが使用されます。実は、コンサートの舞台上にある黒い大きな箱が音楽用アンプなのです。

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その2.ラジオ・テレビ

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ラジオを聴いたり、テレビを見たりするためには、放送局から届くチャンネルの電波を復調する必要があります。しかしながら、アンテナでキャッチされた生の電波信号は非常に微弱です

そのため、テレビやラジオといった機器の中には、微弱な電波を増幅するための回路が組み込まれています。また、機器に内蔵された回路だけで十分な増幅が得られない場合は、外付けのブースターを利用することもありますよ。もちろん、外付けブースターの中にも増幅回路が組み込まれています。

その3.コンピューター

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コンピューターの中には、CPU(中央演算処理装置)という計算を担う部品が組み込まれています。実は、この部品の中にはたくさん増幅回路が含まれていますよ。計算と増幅回路は無関係のように思われますが、一体なぜなのでしょうか?

実は、電気的に値比較・積分演算などを行う際に、増幅回路が必要になるのです。増幅回路には様々な種類がありますが、このような計算に用いる増幅回路は「オペアンプ」と呼ばれています。

増幅回路について学ぶ意義

増幅回路は古くから存在する枯れた技術になっており、身の回りにある多くの機器に組み込まれています。しかし、枯れた技術ではありますが、通信技術やコンピューター技術の発達で増幅回路の重要度は依然高まっていますよ。ですから、これからも増幅回路が消滅することはないでしょう。

このような背景から、増幅回路について学ぶことは決して無駄ではないと言えますよ。ぜひ、この機会に増幅回路について詳しく学んでみてくださいね。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

音楽用アンプなどに組み込まれている増幅回路とは?性質や特徴は?現役理系学生ライターが5分で徹底わかりやすく解説!

今回は「増幅回路」という電気回路について解説していきます。

増幅回路は電気信号の波をより大きくするための回路で、音楽用アンプをはじめとして多くの身近な機器に組み込まれているぞ。今回の記事では、増幅回路の基本原理や特徴から解説を始めて、その応用例までを体系的に説明することを心がけたぞ。ぜひ、この記事を読んで増幅回路についての理解を深めてくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

増幅回路について学ぼう!

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増幅回路』という言葉を聞くと、何やら難しい技術のように感じる方が多いかもしれません。実際、身近なところで増幅回路という言葉を見ることは、ほとんどないでしょう。ですが、増幅回路は私たちの生活を支える科学技術の構成要素の1つです。

そこで、この記事では最初に増幅回路とはそもそも何かということを述べますね。その後、仕組み歴史についても解説します。また、増幅回路が組み込まれている身近な機器についても考えてみましょう。それでは早速、説明をはじめますね。

増幅回路とは?

増幅回路とは?

image by Study-Z編集部

増幅回路は、入力された電気信号を外部電源によってエネルギーを増大させ、それを出力として得る回路のことを指します。増幅回路において、エネルギーを増大させる程度は常に一定です。つまり、入力信号と出力信号の強度波形は相似になります。

また、外部電源が必要である点も増幅回路の特徴です。外部電源から供給されるエネルギーが存在しないと、入力信号のエネルギーを大きくすることはできないからですよ。この概念はエネルギー保存則に従えば当然ですが、忘れてしまうことが多いので注意が必要です。

増幅率と利得

増幅回路の性能は増幅率利得といった概念で表現されます。「増幅率」は、増幅の前後におけるエネルギーの比率を表す値です。ここにおけるエネルギーは電力のことを指します。増幅回路では、入力エネルギーが出力エネルギーを上回るので、増幅率は必然的に1より大きくなりますよ。

また、「利得」は増幅率の常用対数をとったものです。利得はdB(デシベル)の単位で表されます。増幅回路の仕様を示すときには、増幅率よりも利得を用いることが多いですよ。

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