ケプラーは16世紀から17世紀にかけて活躍した物理学者・天文学者です。彼が後世に残した『ケプラーの法則』は、現代では常識とされている地動説の概念をより強固にした理論で、発表当時は非常に先進的な考え方だったぞ。この記事の中ではケプラーという学者がどのような人生を送り、その中でどのような研究成果を残したのかを詳しく解説していきます。ぜひこの機会に、「ケプラーの功績」についての理解を深めてくれ。
塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。
ライター/通りすがりのペンギン船長
現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。
ケプラーについて学ぼう!
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皆さんはケプラーという名前の学者のことをご存じでしょうか?高校物理の教科書にはケプラーの法則に関する記述が載っており、そこで見たことがあるという方が少数おられるかもしれませんが、ケプラーの世間的な知名度は高いとは言えませんよね。ところが、彼の残した功績は現代の科学にも多大な影響を与えているのです。
今回は、知名度が低いながら人類の文明を大きく前に進めたケプラーがどのような人物であったのかを深堀していきます。そして、彼が人生を送る中で、どのような発見をしたのかについても述べますね。それでは早速、ケプラーについての解説をはじめます。
ケプラーの幼少期・青年期
ケプラーは1571年にローマ帝国(現在のドイツ)で生まれました。彼の本名はヨハネス・ケプラーです。ケプラーの父は居酒屋を営み、母は薬草治療を職業にしていました。幼いころのケプラーの家は経済的に貧しかったようです。また、ケプラーが4歳のときには天然痘にかかり、それにより視力が低下してしまいます。このように、ケプラーの幼少期は苦難の連続でした。
そのような中で、ケプラーは6歳の時、母に連れられて大彗星を目撃することになります。これをきっかけに、ケプラーは天文学をはじめとした学問に深い興味をもつようになるのです。その後、テュービンゲン大学において給費生として勉学に励むことになります。
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成人後のケプラー
ケプラーは中等教育・高等教育を通して、ラテン語・神学・哲学・天文学(物理学)・数学などを幅広く学びました。大学卒業後は牧師になることを目指していたケプラーですが、まわりのすすめもあり、最終的にはグラーツ大学で天文学と数学の教師になることを選びます。
ケプラーはコペルニクスやガリレオが提唱した「地動説」に賛同する人物で、教師時代には地動説に関する内容を含む書籍も出版したのです。その後、ケプラーは天文学者のティコ・ブラーエの共同研究者として、ティコが約16年間にわたって記録した天体観測資料の分析を任されることになります。
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ケプラーの学者としての活躍
ティコの天体観測資料の分析を任されたことで、ケプラーは学者としての才能を存分に発揮するようになります。ケプラーの法則として、現代に語り継がれる法則も、この時期にケプラーが発見したものになりますよ。ケプラーの法則は、『新天文学』という書籍と『宇宙の調和』という書籍の中でケプラーによって言及されているものです。
また、ケプラーの法則以外にも、ケプラーは光の逆2乗則の証明・ハレー彗星の観測・雪の結晶の形状に関する研究などを成し遂げています。このことからも、ケプラーがいかに偉大な人物であるかが理解できますよね。
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ケプラーの法則について学ぼう!
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ここまでは、ケプラーがどのような生涯を送り、どのような発見をしたのかを通史で一通り学びました。以下では、ケプラーの最大の功績である表現して良いであろう『ケプラーの法則』について詳しく解説していきますね。ケプラーの法則は、地動説の理論をより強固にしたものとして有名です。また、この法則は後のニュートン力学にも影響を与えていますよ。
ケプラーの法則は、地球を含む太陽系惑星の公転運動を定式化したものであり、第一法則から第三法則までの3つの主張で構成されています。このチャプチャーでは、それぞれの主張を丁寧に説明していきますよ。
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ケプラーの第一法則:楕円軌道の法則
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ケプラーの第一法則は、太陽系惑星の公転軌道を定式化したものです。この法則によると、惑星は太陽を1つの焦点とする楕円を公転軌道にとることがわかっています。それゆえ、ケプラーの第一法則は楕円軌道の法則と呼ばれることもありますよ。また、現代ではこの法則が太陽まわりを公転する惑星だけでなく、諸惑星のまわりの衛星や人工衛星にも当てはまることがわかっています。
古代ギリシャの自然哲学以降、天体の軌道は円を描くことが常識とされており、ケプラーの第一法則はこれを打ち破る新しい概念になったのです。さらに、後のニュートン力学の『向心力が作用する2物体間の運動』における考察で、ケプラーの第一法則が正しいことが証明されることになります。
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ケプラーの第二法則:面積速度一定の法則
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ケプラーの第二法則は、太陽系惑星の公転時における移動速度を定式化したものになりますよ。この法則によると、惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間あたりに描く面積が一定になることがわかっています。この面積のことを面積速度と呼ぶので、ケプラーの第二法則は面積速度一定の法則と表現されることもありますよ。
この法則により、惑星の移動速度は太陽に近いほど速くなり、太陽から離れるほど遅くなることがわかるのです。この理論は、後のニュートン力学で登場する角運動量保存則と同義であることが知られていますよ。
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ケプラーの第三法則:調和の法則
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ケプラーの第三法則は、太陽系惑星の公転周期と公転軌道の大きさの関係性を定式化したものになります。この法則によれば、惑星の公転周期の2乗は、公転軌道の長軸半径の3乗に比例することがわかっていますよ。公転軌道の長軸半径とは、楕円軌道の中心から楕円上の点で最も遠くなる点までを結ぶ線分の長さのことを指します。
ちなみにケプラーの第三法則には、調和の法則という別の呼び名も存在しますよ。この法則により、水星や金星のような太陽に近い惑星よりも、土星や天王星のような太陽から遠い惑星のほうが公転に時間がかかることが読み取れるのです。そして、ケプラーの第三法則も後にニュートン力学によって証明されることになりますよ。
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常識にとらわれないケプラーの生き方
ケプラーの最大の功績と言える『ケプラーの法則』には、当時の世界で常識とされていた天体理論を大きく覆す内容が多々含まれていました。また、それらは地動説が正しいことを主張する材料になるものばかりだったのです。
ケプラーがこのような偉業を成し遂げられたのは、常識を疑い、事実に基づく地道な分析を進めることができたからでしょう。このようなケプラーの生き方は、現代を生きる私たちも見習うべき点が多いはずです。ぜひこの機会に、ケプラーの功績について学んでみてくださいね。