
「寝殿造」は平安貴族のテーマパーク?特徴や構造も元大学教員が5分でわかりやすく解説
さまざまに工夫された寝殿造

寝殿の構造は、お寺に寝泊まりでもしない限り、体感することはできません。天井も壁もない生活というのは想像しにくいでしょう。大きいだけで使い勝手はとても悪かったようです。そこで、いろいろな工夫がこらされました。
アイデア満載の寝殿造
寝殿を構成するのは、母屋(もや)・廂(ひさし)・簀子(すのこ)の3種類。南には階(はし)と呼ばれる階段を設置しました。階の上にあるのが、雨に濡れないように廂を伸ばした階隠(はしがくし)。柱の外にあるのが簀子です。簀子の外側には、高欄(こうらん)と呼ばれる、低い欄干(らんかん)が付けられました。
柱と柱の間に渡した横木が長押(なげし)。上を上長押(うわなげし)、下を下長押(そもなげし)と呼びました。簀子から廂に入るときは、下長押があるぶん、一段高くなります。バリアフリーとは無縁の状態で、至るところに上下差があることが特徴。屋根は檜皮葺(ひわだぶき)、ヒノキの皮で葺いていました。
この上下差にも大きな意味があります。低いところは身分の低い人が、一段高くなるごとに身分の高い人が座りました。いちばん身分の低い人は外縁みたいな簀子よりなかには入れなかったんですね。
寝殿造の部屋は実用性を重視
母屋の隅には、塗籠(ぬりごめ)と呼ばれる、四方を壁で囲まれている場所がありました。今で言うところの物置みたいなものです。調度類をしまったり、寝室に使ったりしました。あかりを取るための窓が設置され、入り口には妻戸(妻度)と呼ばれる出入り口がありました。
くわえて、放ち出で(はなちいで)と呼ばれる、別室のようなものもありました。放ち出では、母屋の外に張り出したかたちで建てられた建物。客間代わり、トイレ、泊まり込みの僧の部屋など、諸説ありますが、この別室の用途は不明です。
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