今回のテーマは正反応です。そもそも化学反応には、反応物と生成物があり、反応物から生成物を作ることを正反応、生成物から反応物に戻る反応を逆反応と呼んでいるぞ。
多くの種類がある化学反応ですが、ただ反応物を混ぜれば反応が進むものや加熱しないと反応が進まないものもある。この違いはいったい何でしょうか?

今回は化学反応に注目して、正反応が進むために経由する活性化状態や化学反応を進みやすくする触媒の働きを化学に詳しいライターリックと解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

化学反応式とは

image by iStockphoto

化学反応という言葉、聞いたことがあるのではないでしょうか?化学反応とは、化学変化が起きる過程のことです。化学変化とは、1つ以上の化学物質が、別の1つ以上の化学物質へと変化することで、反応前の化学物質を構成する原子同士の結合が切断されたり、新しい結合が形成されたりします。物質を構成している原子同士の間で原子の結合方法が組み変わるので、全く新しい物質を作ることができるんです。

また、化学変化を図表で表したものを化学反応式と呼び、化学量論的な関係を表したり、反応機構や化学反応前後での物質の構造変化を表現したりします。化学を勉強したことのある人なら必ず見たことがある「化学反応式」をまずは深堀していきましょう!

化学反応式の作り方

まず、化学反応式の基本を解説していきます。化学反応式を作るには、反応前の物質と反応後の物質が必要です。反応前の物質は反応物と呼び、反応後の物質は生成物といいます。

化学反応式を作るときは、反応物を左辺に生成物を右辺に書き、その間に矢印を書きましょう。この矢印は化学反応が進む向きを表しているので、左から右に向かって書くのが一般的です。これで、「反応物が化学変化を起こして生成物ができた」ということが分かります。

簡単な化学反応式の例を見てみましょう。メタンという気体を燃やすと、空気中の酸素分子と反応して、水と二酸化炭素が発生します。これはメタンガスの燃焼という化学変化ですね。反応物はメタン分子と酸素分子、生成物は水分子と二酸化炭素分子ですね。

これでメタンガスの燃焼を化学反応式で表すことができました。

正反応と逆反応とは?

先ほど解説した反応式の矢印は右向きでした。反応物から生成物ができる化学反応を「正反応」と呼びます。一方で、生成物から反応物ができる反応もあるんです。生成物から反応物ができる反応を「逆反応」と呼びます。

ただし、反応物から生成物ができるのが化学変化の基本です。化学反応は基本「正反応」で進行すると覚えておいてください。生成物から反応物ができる逆反応も化学反応式を見ると、左辺と右辺の物質を入れ替えてあげれば、実は「正反応」になるんですね。

一方で、正反応と逆反応が同時に起こる反応もあり、「可逆反応」と呼びます。可逆反応は正反応と逆反応が同時に起こるため、時間が経つと反応物と生成物の濃度が同じになり、見かけ上反応が停止したように見えるんです。可逆反応はここでは省略しますが、別の記事で詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

混ぜるだけでは化学反応は進まない?

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化学反応式を見ると、反応物を混ぜ合わせるだけで正反応が進行するようにも見えますが、実際はそうではありません。先ほど紹介したメタンガスの燃焼の化学変化では、メタン分子と酸素分子を混合させただけでは化学変化は進みません。メタンガスに引火することで急激に反応が進みます。

しかし、反応物によっては、物質同士が接触するだけで正反応が進行する化学変化もあるんです。この違いは何でしょうか。実は、化学変化が進むためには、あるエネルギーが重要な役割をしているんです。

活性化状態と活性化エネルギーとは?

活性化状態と活性化エネルギーとは?

image by Study-Z編集部

化学反応式を見ただけでは分かりにくいですが、反応物は化学変化で直接生成物になるわけではありません。エネルギー状態に注目して、化学変化がどのように進むのか見てみましょう。反応物はそれぞれ分子として存在しており、分子を構成する原子は共有結合でつながっています。新しい分子を作るためには、結合の組み換えをしてあげる必要があるんです。

結合が切れつつ、新しい結合が形成されている状態を「活性化状態」と呼び、この状態を経由することで、反応物から生成物へ化学変化が進んでいきます。

反応物が活性化状態に変化するためには、一定量以上のエネルギーを反応物がもつ必要があるんです。このエネルギーを活性化エネルギーといいますが、活性化エネルギーの壁を超えることができないと、反応物は活性化状態になることができません。つまり、化学変化が進まないんです。

触媒を入れる本当の目的とは?

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実際に実験をするとよく分かりますが、「触媒」は化学反応が進むとき非常に重要です。触媒はなぜ入れるのか、知っていますか。「反応速度が増加するから」というのも回答の一つですが、「活性化エネルギーが減少するから」というのが本当の理由です。

触媒が反応系に加わること、活性化状態が変化します。活性化状態が変わり、より少ない活性化エネルギーで化学変化が進行するんです。活性化エネルギーが減少すると、反応物がより少ないエネルギーで生成物に変化することができるので、反応速度は増加します。

触媒が影響するのはあくまでも活性化エネルギーの部分だけです。そのため、反応熱に影響はありません。触媒があるとないとでは反応熱の大きさは変わらないということですね。テストでも狙われるので、ぜひ覚えておいてくださいね。

\次のページで「活性化エネルギーを練習問題で確認」を解説!/

活性化エネルギーを練習問題で確認

活性化エネルギーを練習問題で確認

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ここからは、実際に問題を見て、語句の確認をしていきましょう。図示されているのは、反応物から生成物への反応経路図です。1.2.3に当てはまる語句を選びましょう。

1は化学変化が進行するために反応物が超えなければならないエネルギーなので、「活性化エネルギー」。2は反応物と生成物のエネルギー差なので「反応熱」。3は反応物が活性化エネルギーを得た時の状態なので「活性化状態」となります。

大学で学ぶ化学は、活性化エネルギーや反応速度を実際に計算することが多くなります。高校化学では文章題で出題されることが多いので、まずは語句の意味をしっかりとチェックしておいてください。

テスト頻出の重要単語「正反応」を覚えよう!

今回は「化学反応式の作り方」と「正反応」、「活性化エネルギー」をキーワードに解説しました。

反応物から生成物ができる化学変化を表したのが「化学反応式」で、反応物から生成物ができる化学反応が「正反応」でした。化学反応は、反応物が「活性化状態」と呼ばれる状態を経由することで「正反応」が進行していきます。反応物から活性化状態へ変化するために必要なエネルギーが「活性化エネルギー」でした。

また、触媒を入れることで化学反応が進行しやすくなるのは、活性化エネルギーが小さくなることが原因でした。触媒は活性化エネルギーの大きさを変えるだけなので、反応熱の大きさは触媒の有無では変化はありません。

今回は多くの重要キーワードが出てきましたが、どれもテストで出題される重要単語です。言葉の意味をしっかりと覚えておきましょう!

" /> 正反応とは?逆反応との違いや活性化エネルギー・反応速度などを理系ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
化学化学平衡物質の状態・構成・変化理科

正反応とは?逆反応との違いや活性化エネルギー・反応速度などを理系ライターがわかりやすく解説!



今回のテーマは正反応です。そもそも化学反応には、反応物と生成物があり、反応物から生成物を作ることを正反応、生成物から反応物に戻る反応を逆反応と呼んでいるぞ。
多くの種類がある化学反応ですが、ただ反応物を混ぜれば反応が進むものや加熱しないと反応が進まないものもある。この違いはいったい何でしょうか?

今回は化学反応に注目して、正反応が進むために経由する活性化状態や化学反応を進みやすくする触媒の働きを化学に詳しいライターリックと解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

化学反応式とは

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化学反応という言葉、聞いたことがあるのではないでしょうか?化学反応とは、化学変化が起きる過程のことです。化学変化とは、1つ以上の化学物質が、別の1つ以上の化学物質へと変化することで、反応前の化学物質を構成する原子同士の結合が切断されたり、新しい結合が形成されたりします。物質を構成している原子同士の間で原子の結合方法が組み変わるので、全く新しい物質を作ることができるんです。

また、化学変化を図表で表したものを化学反応式と呼び、化学量論的な関係を表したり、反応機構や化学反応前後での物質の構造変化を表現したりします。化学を勉強したことのある人なら必ず見たことがある「化学反応式」をまずは深堀していきましょう!

化学反応式の作り方

まず、化学反応式の基本を解説していきます。化学反応式を作るには、反応前の物質と反応後の物質が必要です。反応前の物質は反応物と呼び、反応後の物質は生成物といいます。

化学反応式を作るときは、反応物を左辺に生成物を右辺に書き、その間に矢印を書きましょう。この矢印は化学反応が進む向きを表しているので、左から右に向かって書くのが一般的です。これで、「反応物が化学変化を起こして生成物ができた」ということが分かります。

簡単な化学反応式の例を見てみましょう。メタンという気体を燃やすと、空気中の酸素分子と反応して、水と二酸化炭素が発生します。これはメタンガスの燃焼という化学変化ですね。反応物はメタン分子と酸素分子、生成物は水分子と二酸化炭素分子ですね。

これでメタンガスの燃焼を化学反応式で表すことができました。

正反応と逆反応とは?

先ほど解説した反応式の矢印は右向きでした。反応物から生成物ができる化学反応を「正反応」と呼びます。一方で、生成物から反応物ができる反応もあるんです。生成物から反応物ができる反応を「逆反応」と呼びます。

ただし、反応物から生成物ができるのが化学変化の基本です。化学反応は基本「正反応」で進行すると覚えておいてください。生成物から反応物ができる逆反応も化学反応式を見ると、左辺と右辺の物質を入れ替えてあげれば、実は「正反応」になるんですね。

一方で、正反応と逆反応が同時に起こる反応もあり、「可逆反応」と呼びます。可逆反応は正反応と逆反応が同時に起こるため、時間が経つと反応物と生成物の濃度が同じになり、見かけ上反応が停止したように見えるんです。可逆反応はここでは省略しますが、別の記事で詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

混ぜるだけでは化学反応は進まない?

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化学反応式を見ると、反応物を混ぜ合わせるだけで正反応が進行するようにも見えますが、実際はそうではありません。先ほど紹介したメタンガスの燃焼の化学変化では、メタン分子と酸素分子を混合させただけでは化学変化は進みません。メタンガスに引火することで急激に反応が進みます。

しかし、反応物によっては、物質同士が接触するだけで正反応が進行する化学変化もあるんです。この違いは何でしょうか。実は、化学変化が進むためには、あるエネルギーが重要な役割をしているんです。

活性化状態と活性化エネルギーとは?

活性化状態と活性化エネルギーとは?

image by Study-Z編集部

化学反応式を見ただけでは分かりにくいですが、反応物は化学変化で直接生成物になるわけではありません。エネルギー状態に注目して、化学変化がどのように進むのか見てみましょう。反応物はそれぞれ分子として存在しており、分子を構成する原子は共有結合でつながっています。新しい分子を作るためには、結合の組み換えをしてあげる必要があるんです。

結合が切れつつ、新しい結合が形成されている状態を「活性化状態」と呼び、この状態を経由することで、反応物から生成物へ化学変化が進んでいきます。

反応物が活性化状態に変化するためには、一定量以上のエネルギーを反応物がもつ必要があるんです。このエネルギーを活性化エネルギーといいますが、活性化エネルギーの壁を超えることができないと、反応物は活性化状態になることができません。つまり、化学変化が進まないんです。

触媒を入れる本当の目的とは?

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実際に実験をするとよく分かりますが、「触媒」は化学反応が進むとき非常に重要です。触媒はなぜ入れるのか、知っていますか。「反応速度が増加するから」というのも回答の一つですが、「活性化エネルギーが減少するから」というのが本当の理由です。

触媒が反応系に加わること、活性化状態が変化します。活性化状態が変わり、より少ない活性化エネルギーで化学変化が進行するんです。活性化エネルギーが減少すると、反応物がより少ないエネルギーで生成物に変化することができるので、反応速度は増加します。

触媒が影響するのはあくまでも活性化エネルギーの部分だけです。そのため、反応熱に影響はありません。触媒があるとないとでは反応熱の大きさは変わらないということですね。テストでも狙われるので、ぜひ覚えておいてくださいね。

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