今回のキーワードは「逆反応」「正反応」「化学平衡」です。
化学反応には、正反応と逆反応がある。まずは、正反応と逆反応の違いを解説していきます。化学反応式は基本、反応物から生成物ができる「正反応」が起きる。逆反応だけで起こらない理由は何でしょうか?その理由も解説していきます。
そして、正反応と逆反応が同時に起きる「化学平衡」についても解説していく。

今回は「正反応」「逆反応」「化学平衡」の違いを、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

化学反応には3つの状態がある?

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化学を勉強していると「化学反応」という言葉、聞いたことありますよね?化学反応とは、化学変化が起きる過程のことです。国語辞典やコトバンクで検索すると、下のように書いてありました。

ある物質がそれ自身で、あるいは他の物質との相互作用によって、他の物質に変わる現象。この場合、物質を構成している原子どうしの間で組み替えがおこるが、原子の数はこの相互作用の前後で変わらない。

化学変化と同義語であるが、とくにその過程に注目するときに化学反応という。

出典:https://kotobank.jp/word/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%8F%8D%E5%BF%9C-43347#:~:text=%E3%81%8B%E3%81%8C%E3%81%8F%E3%81%AF%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%86-,chemical%20reaction,%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AB%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82

この化学変化を図式で表したものを化学反応式と呼び、反応物を左辺、生成物を右辺に置き、反応が進む向きを矢印で書きます。ほとんどの化学反応式は反応物から生成物ができるので、矢印の向きは「右向き」ですね。けれど実は、矢印の向きは右だけではありません。

ほかにも「左向き」の矢印や「左右両方」の矢印の化学反応式があるんです。まずは化学反応式の矢印の向きごとに、解説していきます。

\次のページで「右向きの矢印は「正反応」」を解説!/

右向きの矢印は「正反応」

まずは、「右向きの矢印」の場合、どのような化学変化か解説していきます。右向きの矢印の場合、化学変化は反応物から生成物ができる方向です。

教科書に出てくる化学反応式はほとんどが右向きの矢印で、右向き矢印の化学反応は「正反応」と呼びます。

左向き矢印は「逆反応」

次は、「左向きの矢印」の場合の化学変化を解説していきます。左向き矢印の場合、化学反応は「生成物」から「反応物」ができる方向です。正反応とは逆方向の反応で、この反応を「逆(ギャク)反応」といいます。基本的に化学反応は反応物から生成物ができるため、「左向き矢印」のみの化学反応はありません。

反応物から生成物ができる左向き矢印のみの化学反応が進行する場合、反応物と生成物を入れ替えて、正反応として化学反応式を作るのが基本です。

左右両方の矢印がある?

実は、化学反応式には「正反応」と「逆反応」が同時に同じように起きる反応があります。化学反応式で書くと、左向き矢印と右向き矢印が両方書いてある反応式です。この反応を「可逆反応」と呼びます。可逆反応では、反応が始まるとまず反応物から生成物が生成されていき、生成物がの濃度が増えると、生成物から反応物ができ始めるんです。

可逆反応は時間が経つと、見かけ上は反応が停止したように見えるのが特徴で、この状態を化学平衡と呼びます。一方で、「正反応」のみしか起こらない反応は「不可逆反応」です。

化学反応の向きを決めている要因とは?

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化学反応には「可逆反応」「不可逆反応」があることを先ほど紹介しました。どうして可逆反応と不可逆反応が起きるんでしょうか。その理由は化学反応のエネルギーを見ると分かります。

「エネルギー」に注目!可逆反応になる場合とは?

「エネルギー」に注目!可逆反応になる場合とは?

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化学反応が進行するとき、反応物から生成物に直接変化するわけではありません。活性化状態と呼ばれる状態を一度経由して反応物が生成されます。

つまり、化学反応が進行するためには、反応物の分子が活性化状態になるだけのエネルギーを持っていなければなりません。基本的にエネルギーは高いところから低いところに流れていくので、活性化状態を超えてしまえばエネルギーを放出しながら生成物ができあがります。

そこで、化学反応を反応物と生成物のエネルギー差に着目して見てみましょう。例えば、反応物と生成物のエネルギー差がほとんどない場合、どうでしょうか。反応物から活性化状態を超えることができれば、生成物からも活性化状態を超えられると思いませんか?

まさにその通りで、反応物と生成物のエネルギー差が少ないほど、可逆反応になりやすいです。

\次のページで「逆反応が起こらないのは活性化エネルギーが原因」を解説!/

逆反応が起こらないのは活性化エネルギーが原因

逆反応が起こらないのは活性化エネルギーが原因

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一方で、「不可逆反応」つまり正反応しか起こらない場合のエネルギー図を見てみましょう。分子の世界では、「エネルギー」がとても重要で、反応物と生成物のエネルギー差が大きく開いている場合、生成物から活性化状態へ上がっていくのは、とても大変です。

反応物から活性化状態へは少ないエネルギーで到達することができますが、生成物から活性化状態へ上がっていくのはたくさんのエネルギーが必要になります。

この場合は不可逆反応です。教科書に載っている多くの反応は不可逆反応なので、エネルギー図を書くと、反応物よりも生成物の方がエネルギー値が大きく低いところにあるんですね。

実は、不可逆反応でも正反応だけでなく、逆反応を起こす分子もあります。しかし、その割合はごく小さいためほとんど無視できるため、逆反応は起きていないとみなすことができるんです。

覚えておくべき可逆反応を紹介

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ここからは、よくテストで出題される可逆反応を2つ紹介していきます。

一つ目は水素分子とヨウ素分子からヨウ化水素分子を作る化学反応です。この反応は可逆反応や平衡状態を解説するときによく使われる反応なので、ぜひ書けるようにしておいてください。化学反応式も「H2+I2⇄2HI」なので、とてもシンプルですね。

二つ目はハーバーボッシュ法です。水素分子と窒素分子からアンモニア分子を作る化学反応で、現在もアンモニア分子を工業的に作る手法として使われています。化学反応式も「H2+N2⇄NH3」なので、とてもシンプルです。ハーバーボッシュ法はルシャトリエの原理を説明するときに必ず出てくる化学反応なので、合わせてチェックしておいてください。

可逆反応と不可逆反応を見分けることはできるの?

ここで一つ、疑問に思いませんか。「可逆反応」と「不可逆反応」を見分ける方法ってあるのか?ですが、反応物と生成物の化学式を見ただけでは、見分けることはできません。

大切なのは反応物のエネルギーと生成物のエネルギー、そして活性化エネルギーです。「エネルギー」は結合エネルギーやエントロピーといった様々な要素が絡み合って決まるので、化学式を見ただけでは分かりません。

大学化学では、エネルギーを計算し反応の向きや速度を計算することはありますが、高校化学では、代表的な可逆反応は覚えておきましょう。

化学反応の向きと化学平衡をチェック

今回は「化学反応式の矢印と化学反応の向きの関係」と「正反応と逆反応が同時に起きる化学平衡」をエネルギーに注目して紹介しました。高校化学ではあまり着目しませんが、化学反応において、エネルギーがどのように移動して、反応が進行したかは非常に重要なんです。

「可逆反応になるのか」「不可逆反応になるのか」も実はエネルギーが重要でした。ただし、化学式を見ただけではエネルギーを特定ことはできないので、まずはどのような可逆反応があるのか、教科書で見つけた可逆反応は一つずつチェックしていってください!

" /> 逆反応とは?正反応との違いや向きを決める要因・活性化エネルギーなど理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
化学化学平衡物質の状態・構成・変化理科

逆反応とは?正反応との違いや向きを決める要因・活性化エネルギーなど理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説



今回のキーワードは「逆反応」「正反応」「化学平衡」です。
化学反応には、正反応と逆反応がある。まずは、正反応と逆反応の違いを解説していきます。化学反応式は基本、反応物から生成物ができる「正反応」が起きる。逆反応だけで起こらない理由は何でしょうか?その理由も解説していきます。
そして、正反応と逆反応が同時に起きる「化学平衡」についても解説していく。

今回は「正反応」「逆反応」「化学平衡」の違いを、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

化学反応には3つの状態がある?

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化学を勉強していると「化学反応」という言葉、聞いたことありますよね?化学反応とは、化学変化が起きる過程のことです。国語辞典やコトバンクで検索すると、下のように書いてありました。

ある物質がそれ自身で、あるいは他の物質との相互作用によって、他の物質に変わる現象。この場合、物質を構成している原子どうしの間で組み替えがおこるが、原子の数はこの相互作用の前後で変わらない。

化学変化と同義語であるが、とくにその過程に注目するときに化学反応という。

出典:https://kotobank.jp/word/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%8F%8D%E5%BF%9C-43347#:~:text=%E3%81%8B%E3%81%8C%E3%81%8F%E3%81%AF%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%86-,chemical%20reaction,%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AB%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82

この化学変化を図式で表したものを化学反応式と呼び、反応物を左辺、生成物を右辺に置き、反応が進む向きを矢印で書きます。ほとんどの化学反応式は反応物から生成物ができるので、矢印の向きは「右向き」ですね。けれど実は、矢印の向きは右だけではありません。

ほかにも「左向き」の矢印や「左右両方」の矢印の化学反応式があるんです。まずは化学反応式の矢印の向きごとに、解説していきます。

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