みんなは「子実体」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。子実体は菌界や一部の原生生物界の生物が持つ栄養体のことです。菌界に属する生物と言えば、マツタケやシイタケなどの「キノコ」があげられるが、このキノコと子実体はどういった関係なのでしょうか。今回は、子実体とキノコや子実体ができるまでの過程、珍しい子実体についても、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

子実体って何?

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子実体(しじつたい)とは、主に菌類や一部の原生生物が形成する栄養体で、菌糸(きんし)が密集してできています。ちなみに、菌糸とは菌類の体を構成する細い糸状の細胞の列のことです。菌類は子実体を作ることで、繁殖に必要な胞子を形成します。

大きい子実体は「キノコ」!

子実体には様々なサイズがあります。私たちの目でも見えるくらいの大きさの子実体は、いわゆる「キノコ」と呼ばれるものなのです。後ほど詳しく解説しますが、細胞性粘菌類のタマホコリカビにも子実体ができており、菌類の子実体のように目に見える大きさではないので、これはキノコとは呼びません。

子実体を持つ生物とは?

これまで様々な生物の分類方法がありましたが、現代は生物を5つのグループに分ける「5界説」が主流になっています。5界説には、「動物界」、「植物界」、「菌界」、「原生生物界」、「原核生物界(モネラ界)」があり、子実体を持つ生物は「菌界」と「原生生物界」に属しているのです。

それでは、ここで子実体を持つ代表的な生物と胞子の作り方や生活環についてご紹介します。

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1. 担子菌類(菌界):キノコと呼ばれる

1.  担子菌類(菌界):キノコと呼ばれる

image by Study-Z編集部

菌界の「担子菌類」には、キノコと呼ばれている子実体を形成する菌類が属しています。代表的な例として、シイタケやマツタケ、ナメコなどがありますよ。担子菌類の子実体のことを「担子器果」と呼び、細胞内に2つの核を持つ二次菌糸が集合してできています。このため、子実体の核相は2nではなく(n+n)となりますね。

これを念頭に置いて担子菌類の生活環を見ていきましょう。

1.菌糸の末端の細胞(n)内の2つの核が核合体を起こして2nの細胞になる。
2.減数分裂によって4個の担子胞子(n)が形成される。
3.担子胞子は水場で発芽し、一次菌糸を伸ばす。
4.2つの一次菌糸が接合すると、二次菌糸になる。
5.二次菌糸が体細胞分裂を繰り返す。
6.子実体が形成する。

2. 子のう菌類(菌界):担子菌類と並ぶ高等菌類

2.  子のう菌類(菌界):担子菌類と並ぶ高等菌類

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菌界の「子のう菌類」にも子実体を形成する生物がいて、代表例として、トリュフやカエンタケなどがあります。子のう菌類の子実体は「子のう果」と呼び、一次菌糸と二次菌糸が集合したものです。

それでは上記の図を参考に子のう菌類の胞子のつくり方を見ていきましょう。

1.子のう胞子(n)が発芽して一次菌糸(n)を伸ばす。
2.2つの菌糸が接合し、二次菌糸になる。
3.二次菌糸核合体(2n)が起こる。
4.減数分裂が始まり、核合体した1個の細胞(2n)から4個の細胞(n)ができる。
5.これらの細胞がさらに体細胞分裂で分裂する。
6.分裂した細胞の間に壁ができるように細胞質分裂が起こる。
7.8つの子のう胞子(n)ができる。

3. 細胞性粘菌類(原生生物界):単細胞と多細胞を繰り返す

3.  細胞性粘菌類(原生生物界):単細胞と多細胞を繰り返す

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原生生物界に属する「細胞性粘菌類」に属して子実体を形成する生物例としてタマホコリカビなどが挙げられます。細胞性粘菌類は、単細胞で生活する時期と多細胞で生活する時期を繰り返すのです。子実体は、単細胞体が集合してできる移動体から形成されます。

上記の図を参考にしながら、細胞性粘菌類の生活環を解説しますね。

1.子実体内の胞子が放出される。
2.胞子から単細胞のアメーバ状細胞が生まれる。
3.アメーバ状細胞は細菌を食べて増殖する。
4.エサがなくなると集合し、アメーバ状細胞が凝集し集合体になる。
5.集合体がナメクジのように動く移動体へと変化する。
6.移動体の後部に存在する細胞が柄の先に移動して胞子になる。
7.子実体が形成される。

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珍しい子実体の紹介

子実体を持つ菌類には、シイタケやナメコなど、私たちが食卓で見かけるようなものがありましたね。中には、珍しい色や大きさの子実体を持つ菌類が存在します。ここでは、少し不思議な子実体を持つ菌類についてご紹介しますね。

1. カメムシタケ:カメムシに寄生

「カメムシタケ」はカメムシに寄生して繁殖する菌類の1つです。生きたカメムシの皮膚から体内の血液で増殖します。やがて寄生したカメムシが死ぬと、その体外に菌糸を伸ばして子実体を形成するのです。カメムシタケは全体的に黄色っぽく、ほっそりとした形をしていますよ。

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2. タマゴタケ:実は美味しいキノコ

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「タマゴタケ」は夏から秋にかけて、ブナやナラなどの広葉樹の根本、針葉樹の林の地上にて見かけられる菌類です。かさの色が赤から赤橙色で、柄は黄色っぽく、いかにも毒キノコのような外見をしています。

しかし、実は無毒で食べると美味しい食用キノコなのです。幼菌時まで、動物の卵のような白いツボの中に納まっており、それを突き破るように徐々に大きくなります。かさの形は卵型から饅頭のような形になり、最終的に中央部分に小さな突起がある平らな形になるのです。

3. シャグマアミガサタケ:猛毒を持つキノコ

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「シャグマアミガサタケ」は、春あたりにモミやマツなどの針葉樹が生えている林の地上に発生。かさの直径は3~9cmで、黄土褐色や暗赤褐色があり、人間の脳のような見た目をしています。柄の長さは太く短く、黄褐色です。

シャグマアミガサタケは、人間が口にすると痙攣や消化器系の中毒症状を起こしてしまうような猛毒な毒を持っています。しかし、主にフィンランドでは毒抜きをして食べることもあり、かなりの美味だそうですよ。

子実体は菌類の体の一部!

子実体とは、菌類や一部の原生生物類が持つ栄養体で、この中に繁殖するために欠かせない胞子を形成するのでした。また、子実体は菌糸から出来ており、この菌糸が接合し、核合体が起こり、減数分裂が起こることで、胞子が作られるのでしたね。

不思議な形や生態をした子実体がたくさん存在します。今回ご紹介した子実体は、ほんの一部に過ぎないので、ぜひ多種多様な子実体を調べてみてくださいね。

イラスト引用元:いらすとや

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理科生き物・植物生物

子実体とは?キノコ?植物?子実体の形成についても現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは「子実体」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。子実体は菌界や一部の原生生物界の生物が持つ栄養体のことです。菌界に属する生物と言えば、マツタケやシイタケなどの「キノコ」があげられるが、このキノコと子実体はどういった関係なのでしょうか。今回は、子実体とキノコや子実体ができるまでの過程、珍しい子実体についても、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

子実体って何?

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子実体(しじつたい)とは、主に菌類や一部の原生生物が形成する栄養体で、菌糸(きんし)が密集してできています。ちなみに、菌糸とは菌類の体を構成する細い糸状の細胞の列のことです。菌類は子実体を作ることで、繁殖に必要な胞子を形成します。

大きい子実体は「キノコ」!

子実体には様々なサイズがあります。私たちの目でも見えるくらいの大きさの子実体は、いわゆる「キノコ」と呼ばれるものなのです。後ほど詳しく解説しますが、細胞性粘菌類のタマホコリカビにも子実体ができており、菌類の子実体のように目に見える大きさではないので、これはキノコとは呼びません。

子実体を持つ生物とは?

これまで様々な生物の分類方法がありましたが、現代は生物を5つのグループに分ける「5界説」が主流になっています。5界説には、「動物界」、「植物界」、「菌界」、「原生生物界」、「原核生物界(モネラ界)」があり、子実体を持つ生物は「菌界」と「原生生物界」に属しているのです。

それでは、ここで子実体を持つ代表的な生物と胞子の作り方や生活環についてご紹介します。

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