今日は水蒸気について見ていこう。みんなも知っての通り、水蒸気は水が気体の状態に変化したものですが、高温であったり、爆発する性質があったりするから、性質をしっかりと理解しておくことは大事です。大学で化学を学び、今も現役の研究者として活躍する化学に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で有機化学や合成化学、生物学について学び、化学や生物に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

水蒸気ってどんな状態のもの?わかりやすく解説!

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物質には気体、液体、固体の3つの状態がありますが、水蒸気は水が気体になったものです

無色透明なので、空気中に含まれていても目には見えません。

温度や体積はどうなっている?

水蒸気の温度は100℃です。水は沸点が100℃なので、100℃になると気化して水蒸気になります

空気中には水蒸気が含まれますが、空気は100℃でないのに水蒸気が含まれるのはなぜでしょうか。これには水分子どうしの結合が関係します。空気中に含まれる水分子に対して、周囲から熱などのエネルギーが加わることで、表面近くの水分子がちぎれるので、水蒸気に変化して空中に出るのです。

これは沸騰で気化させる時でも同じで、加熱によって水分子の結合がバラバラになることで、気化して水蒸気に変化しています。

大気中にどのくらい含まれている?

大気中に含まれる水蒸気は、気候条件や場所によっては1%を下回ることもありますが、最大でも4%程度です

大気中に含むことができる最大量の水蒸気量は飽和水蒸気量と呼ばれ、この飽和水蒸気量は気温によって決まり、気温が高いほど飽和水蒸気量は大きくなります。大気の主な成分は、水蒸気以外に窒素が78.08%、酸素が20.95%、アルゴンが0.93%、二酸化炭素が0.03%なので、水蒸気は窒素や酸素よりも少なく、二酸化炭素よりは多いです。

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水蒸気と湯気はどう違うの?

水蒸気と湯気はどう違うの?

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水を沸騰させたり、温かいお湯をコップに入れた時に、白く見える湯気が出てくることがあります。これを水蒸気だと思っている人が多いですが、湯気は水蒸気ではなく、水蒸気が冷やされてできる小さな水の粒なので液体です

沸騰した水は、まず目に見えない気体の水蒸気になりますが、熱い水蒸気がまわりの空気に触れて冷やされ、温度が下がり気体から液体に戻ることで湯気になります。

水蒸気は100℃なので触ると火傷してしまいますが、湯気も100℃以下に温度が下がっているとはいえ、高温には変わりないので触ったりするのは危険です。

湯気だけでなく露(つゆ)や靄(もや)なども白く見えますが、これらも気体ではなく湯気と同じく水滴になります。

水蒸気はどんなところで利用される?

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水蒸気は蒸し料理や蒸し風呂、圧力釜やオートクレーブ、水蒸気を熱媒とした蒸気暖房や、高温を利用した清掃用具(スチームクリーナー)などに利用されています。

また、火力発電や原子力発電の蒸気タービンの駆動なども水蒸気の使用例です。

水蒸気って爆発しやすい?水蒸気爆発について解説!

水蒸気そのものが爆発するわけではありませんが、水の温度が上昇し、水蒸気になるときに爆発が起こることがあります。この現象は水蒸気爆発です

物質が液体から気体になると体積が大きくなりますが、この時に体積を小さくするために働いてた圧力エネルギーが解放されます。解放される圧力エネルギーが大きいと大気が許容できる以上のエネルギーが一気に放出されることになり、この時に大気中の空気が密閉容器の壁のように働くことで爆発につながるのです。

具体例1: 海底火山の噴火

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海底火山の噴火で起こる爆発は水蒸気爆発です

火山口から噴出された高温のマグマと海水が接することで起こります。マグマが爆発しているのではなく、マグマと海水が反応し、マグマによって海水が急激に気化されるのが原因です。

具体例2: 調理時の火災に伴う火消し

揚げ物などの調理をしていると稀に油に火が付くことがありますが、これを消すために水を大量に投与すると水蒸気爆発が起こる原因になります。マグマと同じで高温の油によって投入された水が一気に気化するからです。

水蒸気爆発によって高温の油なども一緒に飛散するのでとても危険なので、慌てて水を投入してはいけません。物質が燃えるためには酸素が必要なので、この場合は消火剤をかけるか、蓋などをして酸素の供給を断つのが有効です。

水蒸気は温室効果ガスってホント?

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地球温暖化には二酸化炭素などの温室効果ガスによって空気が温められるのが原因ですが、水蒸気は温室効果ガスの一つであると考えられています。水蒸気は熱を吸収する性質を持つので、熱を吸収し、より大気を暖めるのです。現在の大気の温室効果のうち、約6割が水蒸気、約3割が二酸化炭素によるものと考えられています。しかし、私たちは水蒸気ではなく、二酸化炭素を減らすべく努力をしなくてはならないのはなぜでしょうか。

主に2つ理由があり、一つは水蒸気は人間活動によって大きく増えるものではないので、私たち人間の力で調整ができるものではないからです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、灌漑などの人間活動による水蒸気の増加は、観測されている水蒸気量の増加の1%にもなりません。

もう一つは二酸化炭素が増えて温暖化が進むと、海などから蒸発する水蒸気が増え、より温暖化が進んでしまうからです。

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水は単純そうに見えて意外と繊細な物質

水は身近にあり、その水が気体に変化したものである水蒸気は一見単純な物質のように思えますが、基本的には高温なので気をつけないと火傷してしまいます。また、水の使用方法を間違えると水蒸気爆発のように大事故を引き起こす原因にもなったりするので、水の扱い方には改めて注意が必要ですね。水に限らず、身の回りの物質について改めて調べるとこれまで知ることのなかった性質がわかるかもしれませんよ。

いらすと使用元:いらすとや

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化学化学平衡地球大気・海洋物質の状態・構成・変化理科

水蒸気って液体?気体?湯気との違いは?現役の研究者がわかりやすく解説!

今日は水蒸気について見ていこう。みんなも知っての通り、水蒸気は水が気体の状態に変化したものですが、高温であったり、爆発する性質があったりするから、性質をしっかりと理解しておくことは大事です。大学で化学を学び、今も現役の研究者として活躍する化学に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で有機化学や合成化学、生物学について学び、化学や生物に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

水蒸気ってどんな状態のもの?わかりやすく解説!

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物質には気体、液体、固体の3つの状態がありますが、水蒸気は水が気体になったものです

無色透明なので、空気中に含まれていても目には見えません。

温度や体積はどうなっている?

水蒸気の温度は100℃です。水は沸点が100℃なので、100℃になると気化して水蒸気になります

空気中には水蒸気が含まれますが、空気は100℃でないのに水蒸気が含まれるのはなぜでしょうか。これには水分子どうしの結合が関係します。空気中に含まれる水分子に対して、周囲から熱などのエネルギーが加わることで、表面近くの水分子がちぎれるので、水蒸気に変化して空中に出るのです。

これは沸騰で気化させる時でも同じで、加熱によって水分子の結合がバラバラになることで、気化して水蒸気に変化しています。

大気中にどのくらい含まれている?

大気中に含まれる水蒸気は、気候条件や場所によっては1%を下回ることもありますが、最大でも4%程度です

大気中に含むことができる最大量の水蒸気量は飽和水蒸気量と呼ばれ、この飽和水蒸気量は気温によって決まり、気温が高いほど飽和水蒸気量は大きくなります。大気の主な成分は、水蒸気以外に窒素が78.08%、酸素が20.95%、アルゴンが0.93%、二酸化炭素が0.03%なので、水蒸気は窒素や酸素よりも少なく、二酸化炭素よりは多いです。

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