この記事ではカナブンとコガネムシの違いについてみていきます。どちらも光にあたると金属のような光沢を持つ虫だというイメージがあるよな。大きな違いは見た目にもあるようですが、生息場所や飛び方など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。

今回はそんなカナブンとコガネムシの違いを、ざっくりした見た目の違いから確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。観察力を活かして様々な視点から違いを詳しく解説。

カナブンとコガネムシのざっくりした見た目の違い

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カナブンとコガネムシは庭先や公園などにも現れることのある虫です。見た目が似ているため、見分けに困った経験がある方もいるのではないでしょうか?

どちらなのかを判断するために、まずはカナブンとコガネムシのざっくりとした見た目の違いを確認していきましょう。

カナブン:頭部が四角で背中に逆三角形のつなぎ目がある

カナブンは全体的に角張っています。頭部は四角で羽は縦が長く長方形のような形をしているのが特徴です。

そしてカナブンの背中を見てみると、中央上部に逆三角形のような羽のつなぎ目が。コガネムシと見分ける際、1番わかりやすいポイントなため忘れずにチェックしてみてくださいね。

コガネムシ:頭部が丸く背中に半円のつなぎ目がある

コガネムシはカナブンに比べ、全体的にコロンとして丸いのが特徴。頭部も半円のような形をしています。羽の形はお尻側に向かって少し膨らんでいるのもポイントです。

コガネムシは羽のつなぎ目も半円のような形をしています。つなぎ目がある場所は、カナブンと同じ背中の中央上部です。つなぎ目の大きさは少し小さめなので、よく観察してみましょう。

カナブンとコガネムシの違いを詳しくチェック!

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カナブンとコガネムシは見た目の形以外にも様々な違いがあります。それぞれがどんな虫なのか、もっと詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてください。

(1)分類の違い

カナブンとコガネムシは大きく分けると、同じコガネムシ科に属する甲虫です。もう少し細かく分けると、カナブンはハナムグリ亜科に分類されます。見た目が似ている種類も多く、金属のような輝きを持っている種をまとめてカナブンと呼ぶことも。

またコガネムシも同じです。カブトムシなど明らかに見た目が異なる種以外の総称として、コガネムシ科の虫をコガネムシと呼ぶこともあります。

(2)色の違い

カナブンとコガネムシはどちらもメタリックな色をしているイメージがありますが、見える色味は少々異なります。

カナブンの色味
・銅色(茶)
・緑色
・青緑色
・黒色 など

コガネムシの色味
・緑色
・茶色
・赤紫色
・黒紫色
・虹色 など

\次のページで「(3)体長の違い」を解説!/

カナブンとコガネムシはどちらも個体によって色の違いが大きい虫です。光によって色が変わって見える「構造色」になっているため、同じ個体でも光の波長によって違う色に見える場合もあります。

(3)体長の違い

カナブンとコガネムシは体長(大きさ)にも違いが。種類によって差はありますが、平均的な体長をご紹介します。

カナブンの体長
・22〜30mmほど

コガネムシの体長
・20〜25mmほど

コガネムシでいうと、マメコガネなど成虫でも10mmほどにしかならないものや、ヤンバルテナガコガネなど50mmほどの大きさのものもいます。種類によって大きさも様々ですが、平均的なサイズでみるとカナブンの方がコガネムシよりも少々大きいと言えるでしょう。

(4)生息場所の違い

カナブンやコガネムシは日本に広く分布している虫です。実際に見たことがある方も多いのではないでしょうか?基本的にどんな場所に生息しているのかを解説していきます。

カナブンの生息場所
・クヌギやヤナギなど広葉樹が集まっている場所
・樹液が出ている木がある場所
・腐った木や果実がある場所 など

コガネムシの生息場所
・葉っぱや花の上
・植木鉢やプランター など

カナブンは成虫になると樹液を食べることもあり、カブトムシなどと一緒に夜になると樹液の周りに集まることも多いです。家の近くに森林などがある場合は、お家にカナブンがやってくることもあるでしょう。

コガネムシは葉っぱなどを食べるため、カナブンよりも生息範囲が広いです。庭があったり外で植物を育てている場合は、特に家でコガネムシに遭遇する可能性が高いと言えます。

(5)発生時期の違い

カナブンとコガネムシが大量に発生しやすい時期は、どちらも春の終わりから夏にかけてです。より詳しくすると、以下になります。

カナブンの発生時期
・6〜8月頃

コガネムシの発生時期
・5〜8月頃

\次のページで「(6)飛行能力と飛び方の違い」を解説!/

どちらも春の終わりや初夏頃に卵を産み、冬を土の中で越して翌年の5月頃には土から出てくることが多いです。またカナブンやコガネムシは幼虫のときにも特徴があります。

幼虫は基本的に3回ほど脱皮を繰り返すため、1令幼虫・2令幼虫・3令幼虫と3段階で区別されていることが多いです。3令幼虫とよばれるものが、幼虫の中でも一番大きな状態となります。3回目の脱皮でサナギになり、羽化する準備を始めるようです。

(6)飛行能力と飛び方の違い

カナブンとコガネムシは体の見た目以外にも、飛び方で見分けることも可能です。それぞれ以下のような違いがあります。

カナブンの飛行能力と飛び方
・飛行能力:高め
・飛び方:後ろ羽だけを使って飛行

コガネムシの飛行能力と飛び方
・飛行能力:低め
・飛び方:前羽を開いた状態で後ろ羽を使って飛行

カナブンとコガネムシは上側に「前羽」と呼ばれる堅い羽があり、その下側に「後ろ羽」という飛ぶために使う羽を持っています。飛び方で見分けたい場合は、前羽に注目してみてください。

カナブンは前羽を閉じたまま、隙間から後ろ羽を出して飛び回ります。飛ぶまでの動きや飛ぶスピードも速いです。一方コガネムシは、カブトムシと同じで前羽を開いてから後ろ羽を出して飛ぶという特徴が。

コガネムシは飛び立つ際にバランスを崩して、落ちてしまうこともあるようです。前羽を開くことで空気抵抗を受けてしまうのも原因の一つでしょう。

カナブンとコガネムシは害虫?

お家などでカナブンやコガネムシに遭遇したとき、害がある虫なのか気になりますよね。どちらも人間に対する危険性はかなり低い虫ではありますが、残念ながら片方は植物に対する害虫と呼ばれています。詳しくみていきましょう。

カナブン:益虫

カナブンは植物にも害を与えない虫です。成虫は樹液を、幼虫は腐葉土などをエサにしています。植物を傷つけないだけでなく、幼虫に至っては栄養のある良い土を作る手助けをしてくれる存在です。本来であれば、駆除する必要がない益虫といえるでしょう。

コガネムシ:害虫

コガネムシはお庭やベランダでガーデニングなどを楽しむ方にとって害虫です。成虫は葉っぱを、幼虫は植物の根っこなどをエサにしてしまいます。

育てている植物の葉っぱが、穴あきのボロボロな状態になっていたらコガネムシがいる可能性が高いです。特にバラなどを好むため、バラ園を作りたい方は要注意!対策が必要だと言えます。

またコガネムシは葉っぱに黒い糞を残すのも特徴。糞から他のコガネムシを呼び寄せるニオイが出ているため、見つけ次第早めに処理するのがおすすめです。

カナブンとコガネムシは幼虫にも違いがある?

カナブンとコガネムシは成虫のときだけでなく、幼虫のときも見た目が似ています。ただ完全に同じ訳ではありません。よく観察すると違いが見えてきます。幼虫のときの見分け方もチェックしてみましょう。

\次のページで「1番わかりやすい違いは「動き方」」を解説!/

1番わかりやすい違いは「動き方」

違いはいくつかありますが、カナブンとコガネムシの幼虫の1番わかりやすい違いは動き方にあります。

カナブンの幼虫の動き方
・仰向け(あるいは横向き)のままゆっくり動く

コガネムシの幼虫の動き方
・うつ伏せに体勢を整えて素早く動く

土から地上に出てきた際、それぞれ上記のような動き方をします。見た目はどちらも体が乳白色で、頭部はオレンジのような色味です。ただカナブンの幼虫は、うっすらと茶色の毛が生えています。近くで見れる方は、毛の有無もチェックしてみてください。

またカブトムシの幼虫とも間違えやすいですが、カブトムシの幼虫は頭部が濃い茶色をしています。頭部の色をヒントに見分けてみるといいでしょう。

カナブンの幼虫は2011年まで見つからなかった!

カナブン自体はレアな虫ではありませんが、幼虫の生息地が見つかったのは2011年。かなり長い間、謎に包まれていたことになりますね。

昆虫写真家である鈴木知之氏が、葛(クズ)という植物の群集で発見して、幼虫がどんな場所でどんな風に育っているのか判明しました。それまでカナブンの減少や育て方などが問題になっていましたが、この発見によってだんだんと謎が明かされつつあります。

個体の減少については、葛自体が少なくなってきたことも原因のようです。今後カナブンが生きやすい環境が増えてくることを祈りましょう。

カナブンやコガネムシと間違いやすい昆虫

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ここではカナブンやコガネムシと間違いやすい昆虫について、いくつかご紹介していきます。それぞれ見分ける際に役立つ特徴をまとめてみました。

(1)ハナムグリ:羽の部分に白い斑点がある

羽のつなぎ目が逆三角形であったり、カナブンと間違いやすいハナムグリ。見分けるポイントは羽の模様にあります。羽に白い斑点模様がある場合は、ハナムグリだと言えるでしょう。

名前でなんとなく気づいた方もいらっしゃると思いますが、成虫は花に潜って蜜や花粉を食べていることが多いです。ただ種類によっては、カナブンと同じく樹液をエサにしているものもいるので探してみてください。

(2)カメムシ:頭部の触覚が長い

緑色や茶色の個体が多いカメムシ。色だけで判断すると似ていますが、カナブンやコガネムシの見た目をよく知っている方からすると、見分けやすい虫でもあります。

特にわかりやすいのは頭部の触覚の長さです。カナブンやコガネムシよりも長く、真っ直ぐ伸びています。また、触覚や足に縞模様が入っている場合が多いのもポイントです。種類によっては刺激すると悪臭を出すので注意しましょう。

(3)タマムシ:体に赤茶色の縦線がある

ヤマトタマムシなどいわゆる玉虫色の種は、メタリックな色味のカナブンやコガネムシと間違えてしまうこともあると思います。ただよく見てみると、体に赤茶色の縦線が2本入っているのがわかるはずです。

カナブンやコガネムシに比べて体も細長く、お尻に向かって尖っているような形をしています。警戒心が強く、人が近づくと飛んでいってしまうことも多いですが、エノキ・ケヤキ・サクラの木の近くにいる可能性も。夏に探してみるのもいいでしょう。

頭の形と背中のつなぎ目の形で見分けてみよう!

カナブンとコガネムシは同じコガネムシ科の虫なこともあり、見た目も少し似ています。ただポイントを押さえれば見分けは簡単です。手がかりとして最もわかりやすいのが、頭の形と背中のつなぎ目の形。

カナブンは頭が四角で羽のつなぎ目が逆三角形で、コガネムシは頭も羽のつなぎ目も半円です。迷った際はぜひチェックしてみてください。

またコガネムシに関しては、育てている植物を枯らしてしまう可能性があるので、お庭などで見つけた場合は駆除も考えた方がいいでしょう。カナブンの場合は土の質を上げてくれるので、よく観察してみてくださいね!

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生き物・植物雑学

カナブンとコガネムシの違いはなに?見分け方や幼虫の特徴まで生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではカナブンとコガネムシの違いについてみていきます。どちらも光にあたると金属のような光沢を持つ虫だというイメージがあるよな。大きな違いは見た目にもあるようですが、生息場所や飛び方など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。

今回はそんなカナブンとコガネムシの違いを、ざっくりした見た目の違いから確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。観察力を活かして様々な視点から違いを詳しく解説。

カナブンとコガネムシのざっくりした見た目の違い

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カナブンとコガネムシは庭先や公園などにも現れることのある虫です。見た目が似ているため、見分けに困った経験がある方もいるのではないでしょうか?

どちらなのかを判断するために、まずはカナブンとコガネムシのざっくりとした見た目の違いを確認していきましょう。

カナブン:頭部が四角で背中に逆三角形のつなぎ目がある

カナブンは全体的に角張っています。頭部は四角で羽は縦が長く長方形のような形をしているのが特徴です。

そしてカナブンの背中を見てみると、中央上部に逆三角形のような羽のつなぎ目が。コガネムシと見分ける際、1番わかりやすいポイントなため忘れずにチェックしてみてくださいね。

コガネムシ:頭部が丸く背中に半円のつなぎ目がある

コガネムシはカナブンに比べ、全体的にコロンとして丸いのが特徴。頭部も半円のような形をしています。羽の形はお尻側に向かって少し膨らんでいるのもポイントです。

コガネムシは羽のつなぎ目も半円のような形をしています。つなぎ目がある場所は、カナブンと同じ背中の中央上部です。つなぎ目の大きさは少し小さめなので、よく観察してみましょう。

カナブンとコガネムシの違いを詳しくチェック!

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カナブンとコガネムシは見た目の形以外にも様々な違いがあります。それぞれがどんな虫なのか、もっと詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてください。

(1)分類の違い

カナブンとコガネムシは大きく分けると、同じコガネムシ科に属する甲虫です。もう少し細かく分けると、カナブンはハナムグリ亜科に分類されます。見た目が似ている種類も多く、金属のような輝きを持っている種をまとめてカナブンと呼ぶことも。

またコガネムシも同じです。カブトムシなど明らかに見た目が異なる種以外の総称として、コガネムシ科の虫をコガネムシと呼ぶこともあります。

(2)色の違い

カナブンとコガネムシはどちらもメタリックな色をしているイメージがありますが、見える色味は少々異なります。

カナブンの色味
・銅色(茶)
・緑色
・青緑色
・黒色 など

コガネムシの色味
・緑色
・茶色
・赤紫色
・黒紫色
・虹色 など

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