今回のキーワードは「気化」です。物質は温度と気圧によって固体、液体、気体のうちどれかの状態をとる。物質が気体に変わる現象のことを気化というが、気化の中にも「蒸発」や「沸騰」、「昇華」という言葉がある。
まずはその言葉の違いを紹介していきます。また、水とアルコールを比べたとき、気化しやすい方はどちらでしょうか?さらに、気化のしやすさを決める「もの」の正体を解説していきます。

今回は気化をテーマに、「言葉の意味の違い」や「気化のしやすさは何で決まるのか」を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

気化とは「気体になること」

気化とは、液体が気体に変わる現象の総称です。「蒸発」と「沸騰」があります。そして、固体が直接気体に変化する「昇華」という現象も気化に含めることがあるんです。

まずは、物質の三態を簡単に解説していきますね。

物質の三態を簡単におさらい

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それでは、物質の三態をおさらいしていきましょう。物質には「気体」「液体」「固体」の3つの状態があり、それぞれの物質は温度・圧力に応じて、3つの状態のどれかをとります。「超臨界状態」という状態もありますが、今回は省略しますね。

水を想像すると分かりやすいですが、気体=水蒸気、液体=液体の水、固体=氷です。分子の状態は大きく異なっており、気体ではそれぞれが独立し、好き勝手に動き回っています。液体では、気体と同様に動き回っていますが、それぞれがいつでも衝突している状態です。固体は、分子は動き回らず、ほぼ定位置で振動しています。

温度と圧力を調整すると状態が変化する

そして、温度と圧力を調整することで「固体⇄液体⇄気体」状態を変化させることができるんです。液体から気体へ変化する際の熱量を気化熱や蒸発熱と呼びます。

それぞれの状態変化には名称がついており、固体→液体は融解、液体→気体は蒸発です。物質の三態についてはさらに詳しく解説した記事がありますので、そちらをあわせてチェックしてみてください。物質の三態は化学の基本なので、それぞれの状態の名前と状態を行き来する現象の名前は覚えておいてくださいね。

\次のページで「「蒸発」と「沸騰」の違いとは?」を解説!/

「蒸発」と「沸騰」の違いとは?

まずは蒸発と沸騰、両者の意味を紹介していきますね。水をイメージしながら読んでもらうと、分かりやすいと思います。

蒸発の意味とは

image by iStockphoto

水は常温で液体ですが、濡れた洗濯物や濡れた髪も時間が経てば乾きますよね。沸点以下の温度でも液体から気体へ状態変化が起きることが「蒸発」です。

ウィキペディアで「蒸発」と調べると下記のような説明がありましたので、合わせてチェックしてみてください。「液体状態の水分子は液体の中を動き回っており、大きなエネルギーを持った分子は液体の外に出て気体になることができる」これが蒸発の意味です。そのため、蒸発は液体の表面からしか起こりません。

蒸発とは、液体の表面から気化が起こる現象のこと

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%B8%E7%99%BA

沸騰の意味とは

次は、「沸騰」の意味をチェックしていきましょう。沸騰とは、液体が沸点に達したとき、液体表面と内部からも気化が生じる現象のことです。コトバンクのブリタニカ国際大百科事典で沸騰と調べた説明もあわせて記載しますので、チェックしてみてください。

沸点に達し、液体内部からも気化が始まることが「沸騰」沸点以下の温度で液体表面から気化していく現象が「蒸発」です。それぞれの現象についてさらに詳しく紹介しているので、別の記事もあわせてチェックしてみてください!

沸騰とは、液体が表面だけでなく内部からも激しく気化して気体 (蒸気) となる現象。一定の圧力のもとで純粋な液体を加熱するとき,沸騰が続く間は温度が一定に保たれる。この温度を沸騰点または沸点という。

引用:https://kotobank.jp/word/%E6%B2%B8%E9%A8%B0-125255

液体⇄気体の状態変化を考えるとき、飽和蒸気圧を考えることも大切です。沸騰は液体内部からも気化が始まる温度なので、沸点では飽和蒸気圧と大気圧が等しくなっています。

気化しやすい物質と気化しにくい物質の違いとは?

image by iStockphoto

水とアルコールを比べたとき、どちらが揮発しやすいでしょうか?多くの方は直感的に「アルコール」と分かると思います。実際、水とアルコールを比較するとアルコールの方が蒸発しやすいです。

では、どうして水よりもアルコールの方が蒸発しやすいんでしょうか?「アルコールの方が沸点が低いから」というのも理由の一つですが、分子間相互作用に注目して解説していきます。

揮発しやすさを決めるのは、分子間相互作用

揮発しやすさは、それぞれの液体を構成している分子同士にどのような相互作用が働いているかで決まります。分子同士の相互作用は化学の世界で非常に大切な考え方なので、ぜひチェックしておいてください。

一般的に分子間相互作用といわれて、思い出してほしい相互作用は3つ。ほかにも分子間相互作用はありますが、3つの相互作用を比較する場合がほとんどです。

・ ファンデルワールス力
・ 双極子-双極子相互作用
・ 水素結合

注目したい3つの相互作用を比較

注目したい3つの相互作用を比較

image by Study-Z編集部

普通、分子間相互作用は「水素結合>双極子相互作用>ファンデルワールス力」の順で弱くなっていきます。水素結合が一番強い分子間相互作用なんです。

1つの水分子が4つの水分子と水素結合を形成できる水は、沸点・融点ともに非常に高い数値なんですよ。ここでアルコールの1つである、メタノールと水の沸点と分子間相互作用を比べてみましょう。

メタノールの沸点は64.7℃、水の沸点は100℃です。メタノールと水の分子間相互作用を比べてみると、メタノールは1つの分子で3つのメタノールと水素結合を作ることができます。水分子よりも1つ水素結合は少ないですね。そして、メタノールの分子量は32、水の分子量18よりも多いでので、ファンデルワールス力は水分子よりも大きいですが、水素結合にはかないません。

水とメタノールの分子間相互作用を比較

水分子同士の分子間相互作用とメタノール分子同士の分子間相互作用を比べたとき、やはり水分子同士の分子間相互作用の方が強く作用しています。そのため、水の沸点はメタノールの沸点よりも高いんです。

そして、分子間相互作用が強く働いているということは「液相の分子が、気相に飛び出そうとしている分子を留める力も強い」ということ。蒸発は液体表面で起きる現象でしたよね。つまり液体表面で、気体になろうとしている分子を液相側の分子がとどめておく力が水の方が強いということです。

そのため、メタノールの方が蒸発しやすいということですね。

液体が気体になる現象「気化」は分子間力がポイント

今回は、液体が気体になる現象「気化」について解説しました。

液体が気体になる現象には「気化」の他にも「蒸発」や「沸騰」という言葉がありますが、これらの言葉が意味する現象は少し違っているので、間違えないよう、一緒にチェックしておいてください。

また、気化しやすさは分子間相互作用がポイントです。分子間に働く相互作用が強ければ強いほど、液体は気化しにくく、沸点も高くなります。分子間相互作用は化学で最も大切な考え方といっても過言ではないので、必ずチェックしておいてくださいね。

" /> 気化とは?蒸発と沸騰は違う?物質ごとで気化しやすさが違う理由は?理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
化学熱力学物質の状態・構成・変化理科生活と物質

気化とは?蒸発と沸騰は違う?物質ごとで気化しやすさが違う理由は?理系ライターがわかりやすく解説



今回のキーワードは「気化」です。物質は温度と気圧によって固体、液体、気体のうちどれかの状態をとる。物質が気体に変わる現象のことを気化というが、気化の中にも「蒸発」や「沸騰」、「昇華」という言葉がある。
まずはその言葉の違いを紹介していきます。また、水とアルコールを比べたとき、気化しやすい方はどちらでしょうか?さらに、気化のしやすさを決める「もの」の正体を解説していきます。

今回は気化をテーマに、「言葉の意味の違い」や「気化のしやすさは何で決まるのか」を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

気化とは「気体になること」

気化とは、液体が気体に変わる現象の総称です。「蒸発」と「沸騰」があります。そして、固体が直接気体に変化する「昇華」という現象も気化に含めることがあるんです。

まずは、物質の三態を簡単に解説していきますね。

物質の三態を簡単におさらい

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それでは、物質の三態をおさらいしていきましょう。物質には「気体」「液体」「固体」の3つの状態があり、それぞれの物質は温度・圧力に応じて、3つの状態のどれかをとります。「超臨界状態」という状態もありますが、今回は省略しますね。

水を想像すると分かりやすいですが、気体=水蒸気、液体=液体の水、固体=氷です。分子の状態は大きく異なっており、気体ではそれぞれが独立し、好き勝手に動き回っています。液体では、気体と同様に動き回っていますが、それぞれがいつでも衝突している状態です。固体は、分子は動き回らず、ほぼ定位置で振動しています。

温度と圧力を調整すると状態が変化する

そして、温度と圧力を調整することで「固体⇄液体⇄気体」状態を変化させることができるんです。液体から気体へ変化する際の熱量を気化熱や蒸発熱と呼びます。

それぞれの状態変化には名称がついており、固体→液体は融解、液体→気体は蒸発です。物質の三態についてはさらに詳しく解説した記事がありますので、そちらをあわせてチェックしてみてください。物質の三態は化学の基本なので、それぞれの状態の名前と状態を行き来する現象の名前は覚えておいてくださいね。

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