この記事では「王事を以て家事を辞す」について解説する。

端的に言えば王事を以て家事を辞すの意味は「家臣たる者、自分の家庭のことは顧みず、国や王のために尽くすべきだ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で7年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「王事を以て家事を辞す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な7年目のライター、eastflower。「王事を以て家事を辞す」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「王事を以て家事を辞す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「王事を以て家事を辞す」(おうじをもってかじをじす)の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「王事を以て家事を辞す」の意味は?

それでは、まず、「王事を以て家事を辞す」の国語辞典の意味を見ていきましょう。

1.《「春秋公羊伝」哀公三年から》臣下たるものは、帝王の事のためには、個人の家の事は捨てて尽くすべきであるということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「王事を以て家事を辞す」

「王事を以て家事を辞す」(おうじをもってかじをじす)「王事」(おうじ)とは、帝王をトップとして治められている国の事業のことです。現代の言葉に置き換えると「国益」(こくえき)のことで、具体的には「国の名誉」や「公共の利益」のことになりますね。

一方、「家事」(かじ)とは、ここでは、「それぞれの家庭の家事」のことです。「王事を以て家事を辞す」とは、文字通りに解釈すると、国益が最優先事項であり、各家庭が抱えている必要事項を断念してでも国につくすべきであるという意味になります。

「王事を以て家事を辞す」の語源は?

次に「王事を以て家事を辞す」の語源を確認しておきましょう。
「王事を以て家事を辞す」は、古代中国の歴史書「春秋」(しゅんじゅう)の中にでてくる言葉です。「春秋」とは、中国の東周(とうしゅう)(紀元前770-紀元前256)の前半期を記した歴史書であると共に紀元前500年代に孔子(こうし)やその弟子たちが加筆していることから思想書としての一面も持つ書物になります。

このころの民衆のあるべき姿は、家庭よりも国や国王のことを最優先に考えるのがよしとされてきたわけですね。

\次のページで「「王事を以て家事を辞す」の使い方・例文」を解説!/

「王事を以て家事を辞す」の使い方・例文

「王事を以て家事を辞す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 王事を以て家事を辞すという先人の言葉にもあるように私は、会社のためにすべてを投げうって尽くしてきたんです。いい夫にもなれなかったし、いい父親でもなかった。なのにリストラを宣告されて。私はこの先、どう生きていけばよいのか?
2. 皆さんの地域社会に対するボランティア活動は本当にすばらしい。阿蘇山の噴火時の防災マップの制作、噴火で被害を受けた小道や国立公園の火山灰の除去など、王事を以て家事を辞すの言葉のとおり人や地域への貢献には頭が下がります。

「王事を以て家事を辞す」の言葉のとおり、今でも組織や社会のために全力でがんばり、尽くしている人たちも多くいますね。

「王事を以て家事を辞す」の類義語は?違いは?

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それでは、「王事を以て家事を辞す」の類義語を見ていきましょう。

「滅私奉公」:私心を捨てて公のために尽くすこと

「王事を以て家事を辞す」は、自身の家のことは二の次にして国や君主のために尽くすことでしたが、類義語のひとつに「滅私奉公(めっしほうこう)」があります。

「滅私奉公」の「滅私」(めっし)とは、自分の気持ちは捨て去って公(おおやけ)のために尽くすことで、「奉公」(ほうこう)には、一身をささげて君主や国家のために力を尽くすことです。「滅私奉公」は自分のことを顧みないで一身に君主に仕えることで、まさに「王事を以て家事を辞す」と同じ路線の思想だといえるでしょう。

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「王事を以て家事を辞す」の対義語は?

次に「王事を以て家事を辞す」の対義語を見ていきましょう。

「上に政策あれば下に対策あり」:国が政策を決定しても抜け道はあるものだ

「王事を以て家事を辞す」は、国益が最優先で各家庭の必要なことでもあきらめて国に尽くすべきだという古代中国の思想でしたね。もちろん、中国にも反対の考え方があるのでご紹介しましょう。

「上に政策あれば下に対策あり(うえにせいさくあれば したにたいさくあり)」です。この場合、「上」とは、君主や政府など政策を決定する側のこと、「下」とは、決定した政策や施作を守る側の民衆のことになります。「上に政策あれば下に対策あり」とは、仮に政府が政策を決定したとしても民衆側にも不都合な政策への対応策はあるわけで必ず抜け道はあるものだという意味のことわざなのです。現在でもしばしば使われる言葉ですね。

「王事を以て家事を辞す」の英訳は?

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次に「王事を以て家事を辞す」の英訳を見ていきましょう。

「selfless devotion to the nation」:国家に対する無欲の献身

「王事を以て家事を辞す」は、自身や家族のことはおいておいて国王や国のために尽くすという意味ですから、「selfless devotion to the nation」とすれば、言いたい意図は伝わるでしょう。

「selfless devotion to the nation」の「selfless」(sɛlflʌs)とは、「私心のない」、「無欲な」という形容詞。「devotion」(dɪvóʊʃən)は「献身」。「nation」(néɪʃən)は国家という意味になります。「selfless devotion to the nation」全体で、国家に対する私心がなく見返りを求めない献身という意味になりますね。

\次のページで「「王事を以て家事を辞す」を使いこなそう」を解説!/

「王事を以て家事を辞す」を使いこなそう

この記事では、「王事を以て家事を辞す」の意味や使い方について見てきました。国王や国のためにプライベートや家事を捨てて一身に力を尽くすことでしたね。

今では、多くの国々で民主主義多様性が認められるようになったため、このことわざにピンと来ない人も多いと思いますが、以前は、国王や国のために献身することは当たり前の生き方だったのです。それだけ、現代社会は個人が豊かになった時代だと言えるのかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「王事を以て家事を辞す」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「王事を以て家事を辞す」について解説する。

端的に言えば王事を以て家事を辞すの意味は「家臣たる者、自分の家庭のことは顧みず、国や王のために尽くすべきだ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で7年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「王事を以て家事を辞す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な7年目のライター、eastflower。「王事を以て家事を辞す」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「王事を以て家事を辞す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「王事を以て家事を辞す」(おうじをもってかじをじす)の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「王事を以て家事を辞す」の意味は?

それでは、まず、「王事を以て家事を辞す」の国語辞典の意味を見ていきましょう。

1.《「春秋公羊伝」哀公三年から》臣下たるものは、帝王の事のためには、個人の家の事は捨てて尽くすべきであるということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「王事を以て家事を辞す」

「王事を以て家事を辞す」(おうじをもってかじをじす)「王事」(おうじ)とは、帝王をトップとして治められている国の事業のことです。現代の言葉に置き換えると「国益」(こくえき)のことで、具体的には「国の名誉」や「公共の利益」のことになりますね。

一方、「家事」(かじ)とは、ここでは、「それぞれの家庭の家事」のことです。「王事を以て家事を辞す」とは、文字通りに解釈すると、国益が最優先事項であり、各家庭が抱えている必要事項を断念してでも国につくすべきであるという意味になります。

「王事を以て家事を辞す」の語源は?

次に「王事を以て家事を辞す」の語源を確認しておきましょう。
「王事を以て家事を辞す」は、古代中国の歴史書「春秋」(しゅんじゅう)の中にでてくる言葉です。「春秋」とは、中国の東周(とうしゅう)(紀元前770-紀元前256)の前半期を記した歴史書であると共に紀元前500年代に孔子(こうし)やその弟子たちが加筆していることから思想書としての一面も持つ書物になります。

このころの民衆のあるべき姿は、家庭よりも国や国王のことを最優先に考えるのがよしとされてきたわけですね。

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