この記事では「毒を以て毒を制する」について解説する。

端的に言えば「毒を以て毒を制する」の意味は「悪いものを除去するのに、他の悪いものを利用すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「毒を以て毒を制する」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「毒を以て毒を制する」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「毒を以て毒を制する」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「毒を以て毒を制する」の意味は?

「毒を以て毒を制する」には、次のような意味があります。

悪を除くのに、他の悪を利用することのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「毒を以て毒を制す」

この言葉は「悪いものを取り除くのに、他の悪いものを使う」ということをたとえたことわざです。悪いものをなくそうと思ったら、逆の「良いもの」「正しいもの」を使う必要があると考えやすいのではないでしょうか。

このことわざは、そうではなく「悪いもの」を使おうとしていることがポイントです。その為、この表現が使われた場合には一般的に「良くない」と思われているものが登場することがわかります。「どんなもの」を押さえる為に、「何」を使おうとしているのかに注目することで読解が深まるでしょう。

なお、動詞「制する」は「制す」としても構いません。「~毒を制す」と言った方が、聞き慣れているかもしれませんね。一緒に覚えておきましょう。

「毒を以て毒を制する」の語源は?

次に「毒を以て毒を制する」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国、宗の時代の書物『嘉泰普灯録(かたいふとうろく)』に見ることができます。

そこでは「機を以て機を奪い、毒を以て毒を攻む」と記述されており、前半は「先にチャンスをつかめば相手のチャンスを奪うことができ」、後半は「相手と同じような攻撃(毒)で攻めなさい」と、「先手必勝」にも似た意味になっていました。

相手に使われると辛い攻撃でも、先に使えば有効に働く、というのは道理にかなっていますね。そしてこれが現代になるにつれ、「同様の手段を使うことで、有効に対処できる」と意味が広がっていったのだと考えられます。

言葉の背景に、このような戦略を優位に進めるためのアドバイスがあったことを知っていると、より理解が深まるでしょう。

\次のページで「「毒を以て毒を制する」の使い方・例文」を解説!/

「毒を以て毒を制する」の使い方・例文

「毒を以て毒を制する」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

・国立公園の中心にある活火山の噴火を制圧するため、毒を以て毒を制する方式で、わざと溶岩を噴出させて活動を鎮めることにした。

・今日の各国の大規模な軍事力強化など、理性では毒を以て毒を制するしかないとわかっていても、感情では受け入れることができない。

・お母さん曰く、女性がヒステリーを起こしたら毒を以て毒を制するやり方で、こっちも感情的になっちゃえばいいのよということだ。

「悪いものを何とかするため、良くない選択をする」ニュアンスが伝わりますでしょうか。

「良くないもの」を選ばなければいけないため、「苦しい決断をしなければいけない」意味合いが含まれることが多くあります。使わなければいけなかった、という苦々しい感情を読み取りたいところです。

また、何とかしなければいけない「悪いもの」と、その対処に使う「良くないもの」が同種のものであることもしっかり押さえて欲しいポイント。

例文のように、「力には力」や「感情には感情」などもそうですし、「毒」であれば、体を麻痺させるようなものも、少量なら痛み止めになったりもするでしょう。好ましくなくてもあえてそれを選ばなければいけない、というのは重要なポイントになりますよ。

「毒を以て毒を制する」の類義語は?違いは?

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「毒を以て毒を制する」の類義語は「暴を以て暴に易う(ぼうをもってぼうにかう)」が挙げられます。

「暴を以て暴に易う」

これは「暴力をやめさせるため、別の暴力を用いる」 または「暴力に対して、暴力で立ち向かう」という意味のことわざです。

まさに「毒を以て毒を制する」と同様ですが、こちらは「暴力」に限定されていることがポイント。違いをしっかり押さえましょう。

なお、これも中国の歴史書「史記」に見られる言葉。戦の時代を想像しながら使ってみたいところです。

\次のページで「「毒を以て毒を制する」の対義語は?」を解説!/

暴を以て暴に易うではないが、ケンカを止めるのに手っ取り早いのは、より強い人が介入することだ。

「毒を以て毒を制する」の対義語は?

「毒を以て毒を制する」の対義語には「火で火は消えぬ」があります。

「火で火は消えぬ」

これは「力には力で対抗しようとしても失敗しやすい」という意味のことわざです。

確かに、燃えている火に火をぶつけてみたとしても消すことは難しいかもしれません。「毒を以て毒を制する」とはしっかり反対の意味になっていますね。

ただ、毒の場合は少量であれば薬にもなったりするもの。それに対して、火はそのような使い方は難しいという意味で違いがあると言えます。その時々で適した表現を選べるようになりたいですね。

地元の高校は不良ばかりだったが、新任教師が火で火は消えぬの精神で、常に礼儀をもって接したことで空気も変わってきた。

「毒を以て毒を制する」の英訳は?

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「毒を以て毒を制する」の英訳は「fight one evil with another」で表すことができます。

「fight one evil with another」

これは直訳すれば「邪悪なものと、同じものを使って戦う」となるフレーズです。例文の解説でも記載しましたが、「毒を以て毒を制する」は、「良くないもの」と同じ種類のものが用いられる、というのがポイント。

「another」は「an」と「other」がセットになってできた単語で、先に出た名詞などを受けて「それと同じ種類の別のもの」を意味するため、このニュアンスがしっかり表せています。

英語の試験では、「other」や「another」を選択肢から選ばせる問題もよく出題されますが、このフレーズを覚えておくと、役に立つかもしれませんよ。

\次のページで「「毒を以て毒を制する」を使いこなそう」を解説!/

We vowed to fight one evil with another for true peace.
私たちは、真の平和のためには毒を以て毒を制することを誓った。

「毒を以て毒を制する」を使いこなそう

この記事では「毒を以て毒を制する」の意味・使い方・類語などを説明しました。

現代では「毒」と言えば悪いものですが、「毒にも薬にもならない」という言葉もあるように、毒と薬は紙一重であったりもするもの。

薬に関して言えば、飲みすぎ・使い過ぎは体に良くない「毒」になってしまったりもしますね。このことわざは、どんなものも使い方と目的をしっかり考えることが大切だと示唆しているのかもしれません。

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【ことわざ】「毒を以て毒を制する」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「毒を以て毒を制する」について解説する。

端的に言えば「毒を以て毒を制する」の意味は「悪いものを除去するのに、他の悪いものを利用すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「毒を以て毒を制する」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「毒を以て毒を制する」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「毒を以て毒を制する」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「毒を以て毒を制する」の意味は?

「毒を以て毒を制する」には、次のような意味があります。

悪を除くのに、他の悪を利用することのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「毒を以て毒を制す」

この言葉は「悪いものを取り除くのに、他の悪いものを使う」ということをたとえたことわざです。悪いものをなくそうと思ったら、逆の「良いもの」「正しいもの」を使う必要があると考えやすいのではないでしょうか。

このことわざは、そうではなく「悪いもの」を使おうとしていることがポイントです。その為、この表現が使われた場合には一般的に「良くない」と思われているものが登場することがわかります。「どんなもの」を押さえる為に、「何」を使おうとしているのかに注目することで読解が深まるでしょう。

なお、動詞「制する」は「制す」としても構いません。「~毒を制す」と言った方が、聞き慣れているかもしれませんね。一緒に覚えておきましょう。

「毒を以て毒を制する」の語源は?

次に「毒を以て毒を制する」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国、宗の時代の書物『嘉泰普灯録(かたいふとうろく)』に見ることができます。

そこでは「機を以て機を奪い、毒を以て毒を攻む」と記述されており、前半は「先にチャンスをつかめば相手のチャンスを奪うことができ」、後半は「相手と同じような攻撃(毒)で攻めなさい」と、「先手必勝」にも似た意味になっていました。

相手に使われると辛い攻撃でも、先に使えば有効に働く、というのは道理にかなっていますね。そしてこれが現代になるにつれ、「同様の手段を使うことで、有効に対処できる」と意味が広がっていったのだと考えられます。

言葉の背景に、このような戦略を優位に進めるためのアドバイスがあったことを知っていると、より理解が深まるでしょう。

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