みんなは「原生生物界」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。生物を動物界や植物界などのように「界」という大きなグループに分けることができるのですが、「原生生物界」はそのグループの1種です。今回は、原生生物界に属する生物はどういった特徴があり、どんな代表種がいるのか、また界の分類方法の歴史についても、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

原生生物界とは?

原生生物界に属する生物には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、代表的な特徴を3つ挙げて解説していきます。

特徴1:真核生物である

生物にはDNAなどの遺伝情報を持っており、その遺伝情報が核膜に包まれ、核に収まっている細胞を持つ生物を「真核生物」と言います。一方、遺伝情報が膜で包まれずにむき出しになっている状態の細胞を持つ生物を「原核生物」と呼ぶのです。

今回のテーマである原生生物界に属する全ての生物は真核細胞を持つ、真核生物に当たります。

特徴2:葉緑体を持つものともないものがいる

原生生物界に属する生物には、光合成を行うために使われる葉緑体を持つものと持たないものがいるのです。葉緑体には光合成色素の1種であるクロロフィルが存在します。クロロフィルにはクロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルcなどの種類があり、生物種によって、持っているクロロフィルの種類も異なってくるのです。

特徴3:独立栄養と従属栄養に分けられる

先ほどの特徴で、原生生物界には葉緑体があるものとないものがいるのでした。葉緑体を持つことで光をエネルギー源として、生育に必要な炭素を取り組むことができます。この生物を「独立栄養生物」と呼ぶのです。一方、葉緑体を持たない原生生物は、他の炭素を他の細菌などの生物の有機物から得ます。これらを「従属栄養生物」と呼ぶのです。このように、原生生物界には独立栄養と従属栄養に分けられます。

生物界の分類の歩み

735年から、生物を大きなグループである「界」に分けるという動きが活発になりました。生物の細胞構造や栄養生産、生殖方法などが明らかになったことで、徐々に細かく分類されて、界の数が増えていったのです。ここでは、これまで提唱されてきた分類をご紹介します。

2界説

2界説

image by Study-Z編集部

「2界説」は、1735年に分類学の父とも呼ばれる、カール・フォン・リンネによって提唱された説です。生物の運動性の有無によって、「動物界」と「植物界」に分けました。今では別グループに属している藻類や細菌類は、当時、植物界に分類されていたのです。また、変形菌やミドリムシなど動物と植物の両方の性質を持ち合わせる単細胞生物は、動物界と植物界のどちらにも属していたそうですよ。このように2界説では、分類が困難な生物もいました。

3界説

3界説

image by Study-Z編集部

「3界説」は生物学者であるエルンスト・ヘッケルが1878年に発表した説です。動物界と植物界に加えて、新たに「原生生物界」というグループを作りました。原生生物界には、2界説で動物界と植物界のどちらにも属する単細胞生物が属するとしたのです。

4界説

4界説

image by Study-Z編集部

細菌の細胞の構造を詳しく観察されるようになったことから、生物には細菌のように、核を持たない「原核生物」の存在が明らかになりました。この原核生物を1938年にハーバート・コープランド「モネラ界」に分類したのです。

ほかにも、植物界に分類されていた一部の藻類や菌類を原生生物界に加えるようにと提案しました。

5界説

5界説

image by Study-Z編集部

1969年にロバート・ホイタッカーにより、新たに「菌界」というグループを加えました。この分類方法は生物の栄養生産に着目した方法です。多細胞で独立栄養生物を植物界に、多細胞で従属生物を動物界、多細胞で腐食栄養生物(分解者)を菌界に属すると定めました。

この5界説は、学校の教科書に載っているほど、現代の生物学で主流の分類方法になっています。

原生生物界:従属栄養

原生生物界:従属栄養

image by Study-Z編集部

それでは、原生生物界について詳しく学習していきましょう。原生生物界の中でも、さらに上記のように分類することができるのです。

原生生物界の特徴として、炭素源を有機物から得る「従属栄養生物」と炭素源を無機化合物から得る「独立栄養生物」の2つに分けられるのでした。まずは、従属栄養に属する生物についてご紹介します。

1. 原生動物

image by iStockphoto

原生動物は1個の細胞から分裂や出芽によって繁殖。原生動物は、さらに繊毛虫類(せんもうちゅうるい)、鞭毛虫類(べんもうちゅうるい)、根足虫類(こんそくちゅうるい)、胞子虫類(ほうしちゅうるい)に分けられます。それぞれの代表種は以下の通りです。

繊毛虫類:ゾウリムシ、ツリガネムシ
鞭毛虫類:トリパノソーマ
根足虫類:アメーバ
胞子虫類:マラリア原虫

2. 粘菌類

粘菌類は運動性がありながら胞子によって繁殖する生物です。粘菌類はさらに細胞性粘菌類変形菌類に分類されます。それぞれの代表種は以下の通りです。

細胞性粘菌類:タマホコリカビ
変形菌類:ムラサキホコリ、ケホコリ

3. 卵菌類

卵菌類は尾型と羽型の鞭毛を1本ずつ持ち合わせた生物です。代表種としてミズカビやワタカビが挙げられます。

原生生物界:独立栄養

原生生物界:独立栄養

image by Study-Z編集部

原生生物界で独立栄養の生物は全て藻類に当たります。2界説や3界説では藻類は植物界に分類されていました。しかし、現代の生物の分類で主流になっている5界説では、植物界に分類されるのは共通の祖先である緑藻から派生した「コケ植物」、「シダ植物」、「種子植物」の陸上植物のみとなりました。そのため、藻類は植物界の生物と異なる祖先から派生したことになるので、植物界ではなく、原生生物界に分類されることになったのです。

それでは、ここで藻類の分類と代表種について学習していきましょう。

1. 紅藻類

紅藻類は光合成色素としてクロロフィルaフィコエリトリンを持っています。紅藻類の生物はほとんどが多細胞生物です。代表種として、海水で生息するアサクサノリテングサ、淡水で生息するカワモズクチスジノリなどがいます。

\次のページで「2. ミドリムシ類 」を解説!/

2. ミドリムシ類

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ミドリムシ類に分類される種類には、ミドリムシカラヒゲムシなどがいます。ミドリムシ類に分類される生物は全て単細胞生物で、光合成色素としてクロロフィルaとクロロフィルbを持っているのです。

3. シャジクモ類

シャジクモ類に分類される生物種としてシャジクモフラスコモがいます。どちらも多細胞生物で、光合成色素はクロロフィルa、クロロフィルb、カロテン、キサントフィルと、たくさんの種類を持ち合わせているのです。

4. 緑藻類

緑藻類に分類される生物は多細胞生物と単細胞生物のものがあり、代表種には多細胞生物のアオサアオノリ、単細胞生物のクラミドモナスクロレラなどがあります。光合成色素はクロロフィルa、クロロフィルb、カロテン、キサントフィルとシャジクモ類と同じものを持っていますよ。

5. ケイ藻類

ケイ藻類の代表種として、ハネケイソウヒカリモなどが挙げられます。ケイ藻類は単細胞生物で、体内にはクロロフィルa、クロロフィルc、フコキサンチンという光合成色素が存在するのです。

6. 褐藻類

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褐藻類にはワカメ、コンブ、ヒジキなど私たちにとって馴染みのある藻類が分類されています。このグループの生物は多細胞生物で、光合成色素はクロロフィルa、クロロフィルc、フコキサンチン、カロテン、キサントフィルと藻類の中でも多くの種類の光合成色素を持ち合わせているのです。

7. 渦べん毛藻類

渦べん毛藻類(うずべんもうそうるい)には、単細胞生物であるツノモムシモなどがあり、体内には、クロロフィルa、クロロフィルc、キサントフィルといった光合成色素が存在します。

原生生物界は幅広い!

原生生物界に属する生物の特徴は幅広いです。真核生物であることは共通していますが、独立栄養なのか従属栄養なのか、多細胞なのか単細胞なのかと、他の界と比べてかなり複雑なグループになっているのです。今回の説明で使った図を使いながらぜひ覚えてくださいね。

イラスト引用元:いらすとや

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理科生き物・植物生物生物の分類・進化

原生生物界って何?特徴や生物例についても現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは「原生生物界」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。生物を動物界や植物界などのように「界」という大きなグループに分けることができるのですが、「原生生物界」はそのグループの1種です。今回は、原生生物界に属する生物はどういった特徴があり、どんな代表種がいるのか、また界の分類方法の歴史についても、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

原生生物界とは?

原生生物界に属する生物には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、代表的な特徴を3つ挙げて解説していきます。

特徴1:真核生物である

生物にはDNAなどの遺伝情報を持っており、その遺伝情報が核膜に包まれ、核に収まっている細胞を持つ生物を「真核生物」と言います。一方、遺伝情報が膜で包まれずにむき出しになっている状態の細胞を持つ生物を「原核生物」と呼ぶのです。

今回のテーマである原生生物界に属する全ての生物は真核細胞を持つ、真核生物に当たります。

特徴2:葉緑体を持つものともないものがいる

原生生物界に属する生物には、光合成を行うために使われる葉緑体を持つものと持たないものがいるのです。葉緑体には光合成色素の1種であるクロロフィルが存在します。クロロフィルにはクロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルcなどの種類があり、生物種によって、持っているクロロフィルの種類も異なってくるのです。

特徴3:独立栄養と従属栄養に分けられる

先ほどの特徴で、原生生物界には葉緑体があるものとないものがいるのでした。葉緑体を持つことで光をエネルギー源として、生育に必要な炭素を取り組むことができます。この生物を「独立栄養生物」と呼ぶのです。一方、葉緑体を持たない原生生物は、他の炭素を他の細菌などの生物の有機物から得ます。これらを「従属栄養生物」と呼ぶのです。このように、原生生物界には独立栄養と従属栄養に分けられます。

生物界の分類の歩み

735年から、生物を大きなグループである「界」に分けるという動きが活発になりました。生物の細胞構造や栄養生産、生殖方法などが明らかになったことで、徐々に細かく分類されて、界の数が増えていったのです。ここでは、これまで提唱されてきた分類をご紹介します。

2界説

2界説

image by Study-Z編集部

「2界説」は、1735年に分類学の父とも呼ばれる、カール・フォン・リンネによって提唱された説です。生物の運動性の有無によって、「動物界」と「植物界」に分けました。今では別グループに属している藻類や細菌類は、当時、植物界に分類されていたのです。また、変形菌やミドリムシなど動物と植物の両方の性質を持ち合わせる単細胞生物は、動物界と植物界のどちらにも属していたそうですよ。このように2界説では、分類が困難な生物もいました。

3界説

3界説

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「3界説」は生物学者であるエルンスト・ヘッケルが1878年に発表した説です。動物界と植物界に加えて、新たに「原生生物界」というグループを作りました。原生生物界には、2界説で動物界と植物界のどちらにも属する単細胞生物が属するとしたのです。

4界説

4界説

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細菌の細胞の構造を詳しく観察されるようになったことから、生物には細菌のように、核を持たない「原核生物」の存在が明らかになりました。この原核生物を1938年にハーバート・コープランド「モネラ界」に分類したのです。

ほかにも、植物界に分類されていた一部の藻類や菌類を原生生物界に加えるようにと提案しました。

5界説

5界説

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1969年にロバート・ホイタッカーにより、新たに「菌界」というグループを加えました。この分類方法は生物の栄養生産に着目した方法です。多細胞で独立栄養生物を植物界に、多細胞で従属生物を動物界、多細胞で腐食栄養生物(分解者)を菌界に属すると定めました。

この5界説は、学校の教科書に載っているほど、現代の生物学で主流の分類方法になっています。

原生生物界:従属栄養

原生生物界:従属栄養

image by Study-Z編集部

それでは、原生生物界について詳しく学習していきましょう。原生生物界の中でも、さらに上記のように分類することができるのです。

原生生物界の特徴として、炭素源を有機物から得る「従属栄養生物」と炭素源を無機化合物から得る「独立栄養生物」の2つに分けられるのでした。まずは、従属栄養に属する生物についてご紹介します。

1. 原生動物

image by iStockphoto

原生動物は1個の細胞から分裂や出芽によって繁殖。原生動物は、さらに繊毛虫類(せんもうちゅうるい)、鞭毛虫類(べんもうちゅうるい)、根足虫類(こんそくちゅうるい)、胞子虫類(ほうしちゅうるい)に分けられます。それぞれの代表種は以下の通りです。

繊毛虫類:ゾウリムシ、ツリガネムシ
鞭毛虫類:トリパノソーマ
根足虫類:アメーバ
胞子虫類:マラリア原虫

2. 粘菌類

粘菌類は運動性がありながら胞子によって繁殖する生物です。粘菌類はさらに細胞性粘菌類変形菌類に分類されます。それぞれの代表種は以下の通りです。

細胞性粘菌類:タマホコリカビ
変形菌類:ムラサキホコリ、ケホコリ

3. 卵菌類

卵菌類は尾型と羽型の鞭毛を1本ずつ持ち合わせた生物です。代表種としてミズカビやワタカビが挙げられます。

原生生物界:独立栄養

原生生物界:独立栄養

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原生生物界で独立栄養の生物は全て藻類に当たります。2界説や3界説では藻類は植物界に分類されていました。しかし、現代の生物の分類で主流になっている5界説では、植物界に分類されるのは共通の祖先である緑藻から派生した「コケ植物」、「シダ植物」、「種子植物」の陸上植物のみとなりました。そのため、藻類は植物界の生物と異なる祖先から派生したことになるので、植物界ではなく、原生生物界に分類されることになったのです。

それでは、ここで藻類の分類と代表種について学習していきましょう。

1. 紅藻類

紅藻類は光合成色素としてクロロフィルaフィコエリトリンを持っています。紅藻類の生物はほとんどが多細胞生物です。代表種として、海水で生息するアサクサノリテングサ、淡水で生息するカワモズクチスジノリなどがいます。

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