みんなは使役「使役動物」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。使役動物は人間が農業や移動などのために利用する動物のことです。使役動物以外にも人間と動物には様々な関係性があるのですが、動物に関する社会問題も重要視され始めているぞ。そんな使役動物や他の動物の関係性や歴史、社会問題などについて生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

使役動物って何?

使役動物の「使役」という単語は他人を使って仕事をさせることを意味し、使役動物は人間のために作業をしてくれる動物のことです。人間だけで行うことが困難な力仕事から、動物たちの優れた感覚を利用して目的を達成することがあります。

犬が動物の中で初めて使役動物化したのは、今からおよそ15000年前。主に狩猟などで人間と協力しながら獲物を獲得するようになったと言われています。

使役動物の利用

使役動物は人間によってどのように利用されているのでしょうか。使役動物がどのように活躍しているのか、またその種類についても解説していきます。

1. 耕作・荷物や人の運搬

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昔から、世界中で馬や牛などを交通手段や農作業のパートナーとして利用してきました。例えば、牛を畑や田んぼを耕すことに利用したり、馬の上に人が乗ったり、馬車を引かせたりしていたそうです。今では、工業技術が発展したことで、人々は耕運機や車などを利用するようになり、耕作や運搬で活躍する動物は減っています。

2. 狩猟

使役動物のうち、肉食動物には獲物を捕らえる性質を持ち合わせています。これを利用して人間と協力しながら狩猟することがあるのです。人間は、最初に犬を使役動物としたのでしたね。犬の中でも特に狩猟に優れている犬種の集まりを「ハウンド犬」と呼ばれています。これらの犬はウサギやネズミ、シカなどの動物を狩り、回収してくれるのです。

狩猟をするのは犬だけではありません。は飛行中の鳥を捕まえることで、人間の食生活を支えました。

さらに、人間が収穫した農作業を狙うネズミを捕獲するためにを利用することもあるそう。

\次のページで「3. 捜索・捜査」を解説!/

3. 捜索・捜査

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使役動物の中でも、特に犬が人間の捜索や捜査の現場で活躍します。その鋭い嗅覚で事件や事故、災害などで行方不明になった人の捜索してくれるのです。また、空港での麻薬や植物の持ち込みを人間に知らせ、危険物の国内への持ち込みを防いでくれます。

4. 警備

警備で活躍する使役動物は犬がほとんどです。軍事的目的のために利用される「軍用犬」や施設の警備を行う「番犬」などが挙げられます。一般の家庭でも番犬として犬を飼うこともありますね。

5. 人間の補助

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使役動物には、人間の生活を助けてくれる動物がいます。代表的な例として「盲導犬」が挙げられるでしょう。盲導犬は視覚障害をお持ちの方が安全に生活するために誘導してくれます。盲導犬は障害物を避ける、段差を教えるなどするのです。盲導犬として人を支えるには特別な訓練を受けなければいけません。

その他の動物と人間の関係

その他の動物と人間の関係

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使役動物のほかに、動物と人間にはどのような関係性があるのでしょうか。動物と人間の関係の歴史や問題点についても触れながらご紹介します。

1. 畜産動物

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畜産動物とは、牛肉や豚肉、鶏肉、卵、牛乳、皮革など人間にとって有用なものを与えてくれ、繁殖・飼育されている動物のことです。今からおよそ10000年前に羊やヤギ、豚などが、8000年~6000年前に牛や馬が家畜化されたと言われています。畜産が誕生するまでは人々は狩猟で食料を得ていましたが、畜産の方が効率よく確実に食料を手に入れることができるため、畜産業は徐々に発展しました。

今でも世界的に畜産動物が大量に繁殖され、殺されています。それらのほとんどは、光も風も当たらない狭い檻の中に閉じ込められ、過酷な環境下で育てられているのです。また人間にとって良い肉や牛乳を得るために、濃厚飼料を与え、その結果、動物たちに肥満や失明、炎症といった体の不具合が生じてしまうこともあります。

人間にとって「大量・美味しい」を追求するあまり、多くの畜産動物は劣悪な環境で短い人生を過ごしているのです。

2. 実験動物

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実験動物は、実験や研究で利用するために生育され、動物実験に使われる動物のことを指します。動物実験は、現代医学の土台ができたと言われる19世紀頃から一般的になりました。実験で利用される動物として、マウスやラット、ウサギ、モルモット、イヌ、サルなど数えきれないほどあります。

動物実験を行う目的は、「病気の原因・メカニズムの解明」や「新たな医療技術・薬の副作用や有用性の確認」などです。これまで実験動物によって、臓器移植、ワクチン開発、ビタミン欠乏症の治療法の開発、がんの研究、心臓病の医療など、医学の発展が実現されました。医学の他にも、化粧品や日用品、農薬などにも実験動物が使われているそうです。これらの動物は実験後に速やかに安楽死されているそうですが、実験の際、苦痛を受けていることが考えられます。そのため、現在、動物実験の廃止を訴える企業や団体が増えているのです。

\次のページで「3. 展示動物」を解説!/

3. 展示動物

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展示動物動物園や水族館などで飼育されている動物で、研究や一般に公開されます。展示動物の始まりは、貴族たちの娯楽として動物をコレクションしていたことから。その後、15世紀以降にヨーロッパで、動物園が開設され、一般の人でも世界中の動物を生きている状態で見ることができるようになりました。日本では、今でも中国との友好関係を証にパンダのレンタルが行われています。

このように、展示動物は人間の教育や外交関係に貢献していると言えるでしょう。しかし、動物たちは、限られた食料と狭い場所でしか生活できず、自由に過ごせていないことが事実です。欲求や感情があるはずの展示動物にとって、このような自由のない環境で過ごすことは苦しいのかもしれません。

4. 愛玩動物

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愛玩動物(あいがんどうぶつ)とはいわゆるペットと呼ばれる動物たちのことです。人間の癒しや趣味として飼うことが多く、その動物の声や仕草を見て楽しみます。愛玩動物に当たる動物には、犬や猫、鳥、ハムスターなど幅広く存在しますよね。

家庭で可愛がられることが多い愛玩動物ですが、育てられずに捨てられてしまい、殺処分されてしまうペットたちが、かなり多くいることが現状です。動物を飼うのは、ただ「可愛いから」という理由だけで、十分な知識や責任感がなく、結局育てられず、捨ててしまう人が後を絶ちません。

人間による無責任な行動は、自由であるはずの動物に苦しみを与えてしまっていることがあるのです。

動物の社会問題と解決策

現代、動物と人間の関係のあり方について、声を上げる人が増えています。使役動物を含めて、動物は「生き物」ではなく「モノ」として扱われることが多く、今では社会問題にまで発展しているのです。そこで、ここでは動物を守るために制定された法律や考えをご紹介します。

動物福祉とは?

動物福祉とは、人間が動物に与える苦痛をできるだけ抑えることで、肉体的・精神的に健康で幸福に暮らせるようにするという考え方です。

動物たちは自身の感情や欲求があるにも関わらず、人間が飼育等することでそれらが制限されています。そのため、人間はそのような動物が出来るだけ快適に苦痛を感じずに生活できるようにする義務があるのです。

1960年代のイギリスで、問題となっていた家畜動物の劣悪な環境での生育を改善し、以下の動物の「5つの自由」を定めました。

5つの自由

1.飢えと渇きからの自由
2.不快からの自由
3.痛み・傷害・病気からの自由
4.恐怖や抑圧からの自由
5.正常な行動を表現する自由

今では、家畜動物だけでなく、使役動物や実験動物、愛玩動物(ペット)など人間が飼育する全ての動物に対して、この「5つの自由」が世界中で適用されています。

日本の動物愛護保護法とは?

日本の動物愛護法では、長い間、動物の「虐待」が曖昧になっていました。しかし、2012年に法改正をした際、虐待の具体的事例が明記されるようになったのです。暴力を加える、酷使などの意図的な虐待だけでなく、健康管理を怠るなどのネグレクト(放置)について具体的に記されています。これにより、動物に対して殺傷や虐待、無登録動物取扱などの罰則が強化されました。

しかし動物の福祉を守るには、この法律内容だけではまだまだ不十分で、他国と比べて遅れを取っていると言われています。

\次のページで「海外の動物保護事情について」を解説!/

海外の動物保護事情について

世界で最も厳しい動物保護法が存在するスイスでは、畜産動物の輸送時間や、と殺について詳しくルールが決められています。また、犬の違法取引を無くすために、広告に販売者の名前や住所などの情報、動物の出身国および血統の詳細の明記が義務付けられているのです。また、社会性のある動物は2匹・羽以上飼う必要があるなど、かなり細かく制定されています。

オーストラリアには、動物の殺処分施設が存在しません。放棄された動物は「アニマルシェルター」と呼ばれる施設に、新たな飼い主が見つかるまで永久的に保護されるそう。また、サーカスでの野生動物の使用禁止、ペットショップでの動物の陳列の禁止など、動物の権利を守る規則が充実しているのです。

ドイツにも「ティアハイム」という動物保護施設があり、こちらもオーストラリアの保護施設と同じように保護する期限はありません。動物を飼う際の細かいルールが決められているだけでなく、犬を飼っている方に「犬税」が課せられるという規則もあるそうですよ。

動物たちの生命を尊重しよう!

使役動物とは、耕作や狩猟など人間にとって有用な作業をしてくれる動物のことを指すのでした。動物と人間の間には使役動物以外に畜産動物や実験動物、展示動物、愛玩動物(ペット)などの関係性があるのでしたね。

このような人に飼育されるようになった動物たちを元の自然界に返すことはできないことでしょう。しかし、人間は動物たちの自由を奪ってしまったからこそ、動物たちの生命を尊重しなければいけません。そのために、私たち人間は動物たちが生きている間は苦痛を与えないために、適切な法律を作る必要があります。海外の法律からヒントを得て、より良い方法を編み出すことができるはずです。動物たちを「生き物」として尊重することを忘れないようにしましょう。

イラスト引用元:いらすとや

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理科生き物・植物生物

使役動物って何?歴史や動物の例、日本での問題についても現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは使役「使役動物」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。使役動物は人間が農業や移動などのために利用する動物のことです。使役動物以外にも人間と動物には様々な関係性があるのですが、動物に関する社会問題も重要視され始めているぞ。そんな使役動物や他の動物の関係性や歴史、社会問題などについて生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

使役動物って何?

使役動物の「使役」という単語は他人を使って仕事をさせることを意味し、使役動物は人間のために作業をしてくれる動物のことです。人間だけで行うことが困難な力仕事から、動物たちの優れた感覚を利用して目的を達成することがあります。

犬が動物の中で初めて使役動物化したのは、今からおよそ15000年前。主に狩猟などで人間と協力しながら獲物を獲得するようになったと言われています。

使役動物の利用

使役動物は人間によってどのように利用されているのでしょうか。使役動物がどのように活躍しているのか、またその種類についても解説していきます。

1. 耕作・荷物や人の運搬

image by iStockphoto

昔から、世界中で馬や牛などを交通手段や農作業のパートナーとして利用してきました。例えば、牛を畑や田んぼを耕すことに利用したり、馬の上に人が乗ったり、馬車を引かせたりしていたそうです。今では、工業技術が発展したことで、人々は耕運機や車などを利用するようになり、耕作や運搬で活躍する動物は減っています。

2. 狩猟

使役動物のうち、肉食動物には獲物を捕らえる性質を持ち合わせています。これを利用して人間と協力しながら狩猟することがあるのです。人間は、最初に犬を使役動物としたのでしたね。犬の中でも特に狩猟に優れている犬種の集まりを「ハウンド犬」と呼ばれています。これらの犬はウサギやネズミ、シカなどの動物を狩り、回収してくれるのです。

狩猟をするのは犬だけではありません。は飛行中の鳥を捕まえることで、人間の食生活を支えました。

さらに、人間が収穫した農作業を狙うネズミを捕獲するためにを利用することもあるそう。

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