今回は運動量と運動エネルギーの違いについてです。運動量と運動エネルギーについてそれぞれちゃんと理解してるか?どっちも似たようなイメージですね。
その理解で間違いないとは思うが、問題なんかで正しく使い分けられるように、物理と化学に詳しいライターの小春と詳しく解説していきます。

ライター/小春(KOHARU)

見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。

違いその1:「運動量」「運動エネルギー」が表すものを歴史から考える

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そもそも運動量と運動エネルギーはどう違うのでしょうか?

それぞれが表しているものを「運動の激しさ」だとすれば、運動量も運動エネルギーも同じだと言えますね。

運動量は「物体の運動=量」として表したもの

運動量を発見したのはフランスのデカルト(1596-1650)です。等速直線運動をしているとき、同じ質量なら速さの速いほうが、同じ速さなら重いほうがより大きな力(運動量)をもち、保存することを発見して書き残しました。

ニュートン(1642-1727)はプリンキピアの中で「運動量とは、速度と物質量とをかけて得られる運動の測度である」と述べています。

運動エネルギーは「運動している物体がもつ運動由来のエネルギー」

運動エネルギーはもともと、運動量と区別されず、混同されていました。しかしこれらは異なる物量で、運動エネルギーはスカラー量です。運動の方向性と運動エネルギーの量に相関性はありません。

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違いその2:運動の方向

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運動量と運動エネルギーの大きな違いは「運動の方向」を含めた物理量かどうかです。運動量と運動エネルギーの違いについて、まずは復習していきましょう。

運動量はベクトル

運動量はベクトル量なので、運動の向きが関係しています。言い換えると運動量は、方向別に考えることができるのです。

同じ重さの物体が、向かい合う方向に同じ速さで運動していて、衝突したのちに止まる、という状況を考えてみましょう。

系全体の運動量は、mv+m(-v)=0 から、0となります。

運動量の問題を解くとき、もし問題側で決められてなかったとしても自分で正の方向を決めて解くようにしましょう。大体は、物体の進む方向を正の方向とすると楽です。

運動エネルギーはスカラー

運動エネルギーはスカラー量なので、方向性を持たない値です。イメージとしては、物体に蓄えられている力、という感じでしょうか。大げさにいうと、運動をやめたとしても、これまでもっていたエネルギーはどこかに蓄えられているのです。

運動量のときと同じく、同じ重さの物体が、向かい合う方向に同じ速さで運動していて、衝突したのちに止まる、という状況を考えてみましょう。

系全体のエネルギーは mv^2 /2 + m(-v)^2/2 = mv^2 となり、系としては運動をしていない状態ですが、mv^2のエネルギーを持つということが計算結果から分かりますね。

運動量と運動エネルギーの違いについて、ベクトルとスカラーの違いで表すと、

運動量はベクトル量で、運動の向きと大きさを同時に表している
運動エネルギーはスカラー量で、運動の大きさのみを表している

違いその3:保存の条件

運動量と運動エネルギーの違いに、保存則のはたらく条件の違いがあります。運動量保存則と、運動エネルギー保存則の順に見ていきましょう。

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運動量の条件は外力がはたらかないこと

運動量の条件は外力がはたらかないこと

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まず運動量保存の法則が成り立つのに必要な条件について見ていきましょう。

運動量保存則がはたらく条件は、「物体系に外力がはたらかないこと」です。

ある物体の運動について考えるとき、その物体の運動に影響を与えているものたちを「物体系」として定めます。これは人間が勝手に定めるものであって、物体には何も関係ないことです。

人間が物体同士の運動を考えるとき、物体系を定め、その物体系の中で力の及ぼし合いが完結していれば、その力や運動がどのような向きや大きさであっても「運動量保存則」が成立します。

しかし、その物体系に対して、外からの力=外力がはたらけば、運動量は保存しなくなってしまうのです。

運動エネルギーは非保存力がはたらかない限り保存する

運動エネルギーは非保存力がはたらかない限り保存する

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運動エネルギーは、物体系の外から力がはたらいた場合も、運動エネルギー保存の法則が成り立ちます。運動エネルギーを拡張して考えて、力学的エネルギー保存の法則として考えることもできるでしょう。

2個の物体の物体がぶつかって、運動をやめた場合でも運動エネルギーは消えないという話をしましたね。このとき持っていた運動エネルギーの合計mv^2は、ぶつかったときの音や熱に変化していったと考えられます。ただ、音や熱は非保存力なので、再び物体が音からエネルギーを受け取って動き出すなんてことは起きません。

運動量と運動エネルギーで、保存則の成り立つ条件の違いについてまとめましょう。

・運動量は、外力がはたらかない限り保存する
・運動エネルギーは、外力を含めて保存則がはたらく

運動量と運動エネルギーの数学的関係

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最後に、少し応用ですが数学の観点から考えてみましょう。物理としても応用ですが、数学的にも大学で習う内容が入っています。が、これが分かると運動量と運動エネルギーについてグッと理解しやすくなるはずです。

運動量をvで積分すると運動エネルギーになる

運動量mvをvで積分すると運動エネルギー1/2mv^2になります。このことからも、運動量と運動エネルギーは完全に無関係とは言えないことが、なんとなく分かるのではないでしょうか。

この運動量と運動エネルギーの積分の関係は、バネの力kxとバネの持つエネルギー1/2kx^2の関係と同じです。

その瞬間の勢いである運動量と、運動全体で溜めたエネルギーというイメージを持てば分かりやすいかもしれません。

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運動量と運動エネルギーの違い

運動量と運動エネルギーの違いについて説明してきました。運動量も運動エネルギーも「運動の勢い」を表す点では同じですが、向きの情報があるかどうかと、保存則が成り立つ条件に違いがありましたね。

問題を解く上では、これらの点を押さえておけば問題ないでしょう。物理の世界が好きな方は、横軸がvのグラフを描いて考えてみれば、どんどん面白いことが分かってくるかもしれませんよ。

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物理理科

3分でわかる運動量と運動エネルギーの2個の違い!表すもの・方向・保存の条件など阪大院卒ライターが分かりやすくわかりやすく解説!

運動量の条件は外力がはたらかないこと

運動量の条件は外力がはたらかないこと

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まず運動量保存の法則が成り立つのに必要な条件について見ていきましょう。

運動量保存則がはたらく条件は、「物体系に外力がはたらかないこと」です。

ある物体の運動について考えるとき、その物体の運動に影響を与えているものたちを「物体系」として定めます。これは人間が勝手に定めるものであって、物体には何も関係ないことです。

人間が物体同士の運動を考えるとき、物体系を定め、その物体系の中で力の及ぼし合いが完結していれば、その力や運動がどのような向きや大きさであっても「運動量保存則」が成立します。

しかし、その物体系に対して、外からの力=外力がはたらけば、運動量は保存しなくなってしまうのです。

運動エネルギーは非保存力がはたらかない限り保存する

運動エネルギーは非保存力がはたらかない限り保存する

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運動エネルギーは、物体系の外から力がはたらいた場合も、運動エネルギー保存の法則が成り立ちます。運動エネルギーを拡張して考えて、力学的エネルギー保存の法則として考えることもできるでしょう。

2個の物体の物体がぶつかって、運動をやめた場合でも運動エネルギーは消えないという話をしましたね。このとき持っていた運動エネルギーの合計mv^2は、ぶつかったときの音や熱に変化していったと考えられます。ただ、音や熱は非保存力なので、再び物体が音からエネルギーを受け取って動き出すなんてことは起きません。

運動量と運動エネルギーで、保存則の成り立つ条件の違いについてまとめましょう。

・運動量は、外力がはたらかない限り保存する
・運動エネルギーは、外力を含めて保存則がはたらく

運動量と運動エネルギーの数学的関係

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最後に、少し応用ですが数学の観点から考えてみましょう。物理としても応用ですが、数学的にも大学で習う内容が入っています。が、これが分かると運動量と運動エネルギーについてグッと理解しやすくなるはずです。

運動量をvで積分すると運動エネルギーになる

運動量mvをvで積分すると運動エネルギー1/2mv^2になります。このことからも、運動量と運動エネルギーは完全に無関係とは言えないことが、なんとなく分かるのではないでしょうか。

この運動量と運動エネルギーの積分の関係は、バネの力kxとバネの持つエネルギー1/2kx^2の関係と同じです。

その瞬間の勢いである運動量と、運動全体で溜めたエネルギーというイメージを持てば分かりやすいかもしれません。

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