この記事では「落語」と「講談(こうだん)」の違いについてみていきます。
これら2つの言葉はどれも、古くから日本で愛されてきた芸能で、寄席などの演芸場で楽しむイメージがあるよな。

その違いはずばり、\"オチ\"の有無などがあげられるんですが、演目や小道具などを調べてみると他にも色々あるみたいです。

今回はそんな2つの違いや似た言葉などを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きな小説家兼ライターさらささらと一緒に調べていきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「落語」と「講談」とは?

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皆さんは「落語」と聞いてどんなイメージがあるでしょうか?羽織と扇子で高座にあがる噺家(はなしか)さん。今なら日曜に放映されている『笑点』メンバーが分かりやすいかもしれませんね。

一方、「講談」とは一体なんでしょう。大学などの「講義」と同じ"講"と、「談笑」や「談話」の"談"を持つこの言葉は、どの字も"会話"に関係する漢字です。それならば、「講談」は「落語」と同じ意味を持つ言葉なのでしょうか?

そこでこちらでは、江戸時代の昔から庶民に愛され続ける大衆芸能「落語」と「講談」の意味や違いについて調べてみました。

「落語」は西と東で道具の数が違う

「落語」を演じる(話す)人は、"落語家"または"噺家(はなしか)"と呼ばれています。「落語」には「上方落語(※1)」と「江戸落語」があり、言葉や成り立ちに加え演目など様々な点で違うようです。

例えば、「上方落語」は演じる際の道具として、拍子木(小拍子)、見台(※2)、膝隠し、扇子、手拭いを使いますが、「江戸落語」では簡素化され、扇子と手拭いのみになります。

≪注釈≫
※1.上方(かみがた)…京都や大阪を始めとする近畿地方一帯を指す。
※2.見台(けんだい)…書物を読むための台。譜面台を低くしたようなもの。

「講談」は張り扇で釈台を叩く

「講談」は江戸時代には「講釈(こうしゃく)」と呼ばれており、そのため演じる人も講釈師から講談師へと呼び名が変わりました。今なら神田伯山(かんだ はくざん)さんなどが有名ですね。

「講談」に使う道具は、釈台(※3)と張り扇(※4)。使い方は、釈台を張り扇で叩きながら話します

\次のページで「「落語」は"オチ"がある」を解説!/

≪注釈≫
※3.釈台(しゃくだい)…小さな文机。張り扇で叩きやすいよう踏み台に似た形になっている。
※4.張り扇(はりおうぎ・はりせん)…日本の芸能に於いて、ものを叩いて音を立てるために作られた専用の扇。コントなどの"ハリセン"の原型でもあるが、サイズは扇子を少し大ぶりにしたもの。

ここまでの簡単なまとめです。
【演じる人】
■落語…落語家、噺家。
■講談(講釈)…講釈師、講談師。

【使う道具】
■落語
 ・「上方落語」…拍子木(小拍子)、見台、膝隠し、扇子、手拭い。
 ・「江戸落語」…扇子、手拭い。※簡素化。
■講談(講釈)…釈台、張り扇。

「落語」は"オチ"がある

「落語」の話の内容と言えば、江戸時代以降の庶民の日常や生活に関するものが多いのが特徴です。貧乏だけど人情の厚い下町の人々をはじめ、ごうつくばりな大家が懲らしめられたりなどなど。実は、夏の風物詩である「怪談噺」も落語の演目になるのです。

また、話し方にも特徴があり、「落語」は演者である落語家が"話す"や"演じる"という表現になり、会話で話が進んでいきます。つまり会話=登場人物が複数いるので、落語家は1人何役も演じながら"話し言葉による会話"で話を進めるのです。

このように、「落語」は物語性が高く、話の最後に「オチ(=サゲ)」がつくのが大きな特徴となります。

「講談」は"オチ"がない

一方、「講談」は戦国時代以降のものが多いのが特徴で、内容も歴史、軍記、武勇伝(談)、仇討ち、逸話など、若干勇ましい傾向となっています。有名なものとして、宮本武蔵、忠臣蔵、清水次郎長などがあげられますが、基本的に実際の出来事や人物を題材とした"創作"(※5)が多いようです。

また、「講談」も話し方に特徴があります。「講談」は釈台に置かれた台本を"読む"芸です。そのため、登場人物の会話や台詞はあるものの、基本"第三者"のような立場で状況や心情などの説明を加えながら話を進行していく、つまりストーリーテーラー(第三者)の立場を崩しません。

何より「落語」との最大の違いと言えば、「講談」には話に"オチ"がなくても成立する点でしょう。

≪注釈≫
※5.史実に忠実な「赤穂事件」ではなく、脚色を入れた内容=創作の意味。『仮名手本忠臣蔵』などは忠臣蔵を題材とした物語。

\次のページで「「漫才」や「コント」とは?」を解説!/

ここまでの簡単なまとめです。
■落語…話(噺)に"オチ"がある。話し手が役を演じる=アクター。
■講談…話に"オチ"がない。第三者視点を崩さない=ストーリーテーラー。

「漫才」や「コント」とは?

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テレビでは連日多くのお笑い芸人が活躍していますが、彼らのネタといえば「漫才」や「コント」形式が主流ですね。そこでこちらでは、「落語」と似た大衆お笑い芸能として、「漫才」と「コント」の違いについて調べてみました。

「漫才」は掛け合い・「コント」は寸劇

「漫才」とは2人以上(主流は2人)が「ボケ」と「ツッコミ」の掛け合いネタを披露する会話重視の話芸です。

「コント」は笑わせるための寸劇(短い芝居)を指します。お芝居なので衣装、小道具、セットなどがあり、最初からその役になり切り登場。人数や時間が長くなれば「喜劇」とも呼ぶそうです。

上記2つを合体させた「コント漫才」と呼ばれるものもありますが、こちらは途中から役に入り、小道具などを使わず話術や動作で状況などの実演をします。とはいえ、実際は少し曖昧な区分となっているようです。

ちなみに、「漫才」と似た言葉に「漫談」がありますが、こちらは基本マイクの前で一人で喋ります。ギターや三味線などの楽器を使う事が多く、ウクレレ漫談の牧伸二さんなどが有名です。

ここまでの簡単なまとめです。
■漫才…ボケとツッコミの掛け合い。会話重視で笑わせる。
■コント…衣装や小道具を使った寸劇。様々な要素で笑わせる。
■コント漫才…小道具などを使わず話術や動作で寸劇。

▲漫才とコントの違い…掛け合いと寸劇。
▲コントとコント漫才の違い…小道具の有無。最初から役柄として登場するかどうか(多少曖昧)。
▲漫才と漫談の違い…人数の違いと楽器の有無。

「落語」や「講談」と関連した言葉を解説!

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最後に、「落語」や「講談」に関連した、大衆演芸に関するいくつかの言葉をご紹介したいと思います。

\次のページで「「活弁」はナレーターの前身」を解説!/

「活弁」はナレーターの前身

「活動弁士」とは、無声映画(サイレントムービー)時代に活躍した職業で、映画を上映する横で内容を解説していました。略して活弁や弁士とも呼ばれていましたが、関東では映画説明者、関西では映画解説者と名乗っていたそうです。現在のナレーターの前身とも言われています。

「浪曲」は日本三大話芸

「浪曲(ろうきょく)」は「浪花節(浪花節)」とも言い、三味線を伴奏に物語を語る芸能です。「落語」や「講談」と並んで「日本三大話芸」の一つとされ、三味線伴奏者を「曲師」、声で演じる人を「浪曲師」と呼びます。

「御伽衆」は話相手、「歌舞伎」は奇抜が語源

「御伽衆」とは戦国時代に生まれた職業で、主に将軍や大名の側近として話相手になったり、自分の経験談や書物の講釈などを話します。

「歌舞伎」は"傾く(かたむく→かぶく)"を語源とした言葉で、派手な衣装や奇抜な格好をした者たちを「かぶき者」と呼んだことが始まりです。最初は主に女性が踊っていた「かぶき踊」から「歌舞姫」や「歌舞妓」と呼ばれていました。ところが、江戸時代印風紀が乱れたことから、幕府により女歌舞伎禁止令がだされてしまいます。そのため、江戸時代を境に歌舞伎は男性だけが演じるようになったのです。

ここまでの簡単なまとめです。
■活動弁士…無声映画の解説者。
■浪曲…三味線を伴奏に物語を歌う。日本三大話芸。
■御伽衆…話し相手。
■歌舞伎…奇抜な格好が語源。

日本の大衆芸能を支え続けた存在

ここまで「落語」と「講談」の違いや説明などを解説しました。

日本の大衆芸能は様々な形で発展し、長い歴史の中で姿や名前を変えたりしながら私たちを楽しませてくれています。玉川カルテットの「浪曲漫才」などは一世を風靡し、私たちの親世代、祖父や祖母世代の心を潤す笑いを生み出してくれました。

次にどんな話芸が生まれるのか、これからが楽しみですね。

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文化・歴史言葉雑学

3分で簡単!落語と講談の違いとは?演目・浪曲・漫才・コントも小説家兼ライターがわかりやすく解説!

この記事では「落語」と「講談(こうだん)」の違いについてみていきます。
これら2つの言葉はどれも、古くから日本で愛されてきた芸能で、寄席などの演芸場で楽しむイメージがあるよな。

その違いはずばり、\”オチ\”の有無などがあげられるんですが、演目や小道具などを調べてみると他にも色々あるみたいです。

今回はそんな2つの違いや似た言葉などを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きな小説家兼ライターさらささらと一緒に調べていきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「落語」と「講談」とは?

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皆さんは「落語」と聞いてどんなイメージがあるでしょうか?羽織と扇子で高座にあがる噺家(はなしか)さん。今なら日曜に放映されている『笑点』メンバーが分かりやすいかもしれませんね。

一方、「講談」とは一体なんでしょう。大学などの「講義」と同じ”講”と、「談笑」や「談話」の”談”を持つこの言葉は、どの字も”会話”に関係する漢字です。それならば、「講談」は「落語」と同じ意味を持つ言葉なのでしょうか?

そこでこちらでは、江戸時代の昔から庶民に愛され続ける大衆芸能「落語」と「講談」の意味や違いについて調べてみました。

「落語」は西と東で道具の数が違う

「落語」を演じる(話す)人は、”落語家”または”噺家(はなしか)”と呼ばれています。「落語」には「上方落語(※1)」と「江戸落語」があり、言葉や成り立ちに加え演目など様々な点で違うようです。

例えば、「上方落語」は演じる際の道具として、拍子木(小拍子)、見台(※2)、膝隠し、扇子、手拭いを使いますが、「江戸落語」では簡素化され、扇子と手拭いのみになります。

≪注釈≫
※1.上方(かみがた)…京都や大阪を始めとする近畿地方一帯を指す。
※2.見台(けんだい)…書物を読むための台。譜面台を低くしたようなもの。

「講談」は張り扇で釈台を叩く

「講談」は江戸時代には「講釈(こうしゃく)」と呼ばれており、そのため演じる人も講釈師から講談師へと呼び名が変わりました。今なら神田伯山(かんだ はくざん)さんなどが有名ですね。

「講談」に使う道具は、釈台(※3)と張り扇(※4)。使い方は、釈台を張り扇で叩きながら話します

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