この記事では「半纏(はんてん)」と「ちゃんちゃんこ」と「どてら」の違いについてみていきます。
これら3つの着物はどれも、古くから日本で使用されている衣料で、手軽に羽織れるイメージがあるよな。

その違いはずばり、丈の長さや袖の有無などがあげられるんですが、名前の由来や構造などを調べてみると他にも色々あるみたいです。

今回はそんな3つの違いを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きな小説家兼ライターさらささらと一緒に調べていきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「半纏」と「ちゃんちゃんこ」と「どてら」とは?

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皆さんは、ニュースやドラマなどで「赤いちゃんちゃんこ」を着た還暦の方を目にしたことはありませんか? 他にも、洋品店や布団店などで売られている「綿入り半纏」や旅館に置かれた「どてら」など、どれもが着物の形をしていますが、これらの違いは一体なんなのでしょう。

こちらの記事では、名前の由来や形状の他にも使用目的などを調べ、それぞれの違いを分かりやすくご説明できればと思います。

「半纏」は防寒と作業着の二面性

「半纏(はんてん)」は"半天"とも書く和服の上着です。大工さんなどの作業着や、時代劇で目にする火消しのユニフォームとしても利用されています。

また、「半纏」と言えば防寒着である「綿入り半纏」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。

形状の特徴としては、半纏には基本胸紐がなく、普通の和服とは違い衿(えり)は返さずそのまま着用します。丈は腰より下辺りと短めなうえ、マチや前下がりのような余裕部分が設けられていません。

袖は五分~七分程度の長さで、小さい袖口が基本ですが、昔のアサリ売りが着ていた巻袖(付け根が広く袖口が細い三角形)などもあげられます。

「ちゃんちゃんこ」は袖なしで子供用の衣料

「ちゃんちゃんこ」とは、綿入り半纏から袖をなくした形状のものを指します。基本子供用の衣料であり、『ゲゲゲの鬼太郎』を思い浮かべて頂ければピンとくるのかもしれません。

一方で、還暦祝いとして60歳を迎えた方が「赤いちゃんちゃんこ」を着るという風習がありますが、こちらの「ちゃんちゃんこ」は袖なし羽織に近い形状のようです。

\次のページで「「どてら」は湯上りで着る大ぶりな防寒着」を解説!/

「どてら」は湯上りで着る大ぶりな防寒着

「どてら(褞袍)」とは、旅館などで湯上りに和服の上に着ていた防寒着です。

別名「丹前(たんぜん)」とも呼ばれており、江戸時代に流行した「丹前風呂」が名前の由来となります。つまり、「どてら」は丹前の関東地方での呼び方なのです。

ちなみに、北海道地方・東北地方では「掻巻(かいまき)=寝具」のことを丹前と呼びます。

3つの特徴について、簡単におさらいしてみましょう。

■「袢纏・半纏(はんてん)」
 ・胸紐がない、衿を返さない。丈と袖が短い。
 ・防寒着である「綿入り半纏」のイメージが強い。
 ・作業着やユニフォームとして着用される。

■「ちゃんちゃんこ」
 ・「綿入り半纏」から袖をなくした形。
 ・60歳の還暦を祝う「赤いちゃんちゃんこ」のイメージが強い。
 ・主に子供用の防寒着。

■「どてら(褞袍)」
 ・湯上りに羽織る防寒着。
 ・広袖+丈長のゆったりとした作り。
 ・「丹前(たんぜん)」の江戸での呼び名が「どてら」、北海道や東北地方では寝具の「掻巻(かいまき)=丹前」。

「袢纏」と「法被」は同じもの?

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「袢纏(はんてん)」と似たものに「法被(はっぴ)」がありますね。 一般に、「半纏」は防寒着などの「綿入れ袢纏」なイメージが、「法被」は祭衣装の他に旅館や量販店でのユニフォームとして活躍しているようです。

それでは、この2つの違いとは防寒だけなのでしょうか? こちらでは「袢纏」と「法被」の違いについて調べてみました。

曖昧になったのは江戸時代

「袢纏」と「法被」の違いについては、衣服や文化の歴史的観点から諸説あり、実際問題としてハッキリしていないのが事実のようです。

しかし、この2つが曖昧となったのは、江戸時代だと言われています。

動乱の戦国時代を終え平穏な江戸時代を迎えると、武士の間で背中に家紋を染め抜いた「法被」が流行りました。当時の法被とは、胸紐付きの単衣(ひとえ)で、襟を返して着用していたそうです。

武士と同じものを着れない理由で「袢纏」が生まれた

こうした武士の流行を受け、庶民の間でも法被が広まることになりました。ところが、一般庶民が武士と同じものを着ることが問題視され、幕府から「羽織禁止令(※後述の「羽織」参照)」が出されてしまうのです。

そこで、襟を返して着用する「羽織」や「法被」の代わりに、"襟や背中に屋号や家紋を染め抜く"+"襟を返さない法被"である「印袢纏(しるしはんてん)=袢纏」が庶民の間で普及しました。

つまり、この出来事を境に、「袢纏」と「法被」の区別が曖昧となったそうです。

\次のページで「厳密な違いはあるのか?」を解説!/

厳密な違いはあるのか?

「袢纏」と「法被」が誕生した理由は簡単ながら前述通りですが、もう少し調べてみると、実は厳密な違いがあるようです。

「法被」が武士の「羽織(※元は陣羽織が起源)」を参考に作られたのに対し、「袢纏」は庶民の防寒着として誕生しました。

「法被=羽織」のため、裏地がない単衣で作られ、背中には家紋が染め抜かれています。袖や裾にゆとりがあり、胸紐がなく、襟を折り返して着用するもの。

一方、「袢纏」は庶民の防寒着のため保温性が重視され、裏地付きの袷(あわせ)で作られています。より防寒性を重視したのが「綿入り半纏」です。動きやすさも重視され、そのため胸元に留め紐が付けられ、袖丈は「法被」の半分程度。全体的に小さく、裾も短めなのが特徴なのだそうです。

「羽織」の誕生とその影響

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こちらでは、「袢纏」や「法被」などにも影響を与えた「羽織」についても調べてみました。

「羽織」は「蓑」のようなものだった

羽織の起源は諸説ありますが、古代の伝承に、鶴や白鳥などの水鳥の羽根を利用し撥水性を持たせた「蓑(みの)」のような「鶴氅裘(かくしょうきゅう・かくしょうい)」があります。民話の『鶴の恩返し』はまさに、これを意味しているわけです。

戦国時代の武将が着ていた「陣羽織」。それが江戸時代になると袖が付けられ「羽織」となり、袴と組み合わせた「羽織袴」が武士の礼服となります。その際、羽織でその人の氏素性(うじすじょう)が分かるように、背中の上部部分にその人物の家紋が染め抜かれました。現在でも結婚式など正式な場では、「紋付羽織袴」が着用されているのはその名残です。

庶民は着れなかった「羽織」

「袢纏」と「法被」の違いでも説明しましたが、「羽織禁止令」により庶民が着る「法被」が生まれました。

「羽織」は百姓なら村役、商人なら番頭格以上など、それなりの地位を持つ人物のみに着用が許されません。そのため、普通の百姓は「甚兵衛羽織=甚兵衛(じんべえ)」、町民は前紐のない「窮屈羽織=袢纏」などが着られていたそうです。

ここまでの説明をまとめてみました。

・江戸時代、武士の間で背中に家紋を入れた「法被」が流行。
・胸紐付きで襟を返して着用。
      ↓
武家の「羽織」や「法被」を庶民が真似る。
      ↓
・「羽織禁止令」により一部の地位ある人間を除き庶民は羽織を禁止されてしまう。
・これを切っ掛けに「袢纏」と「法被」が曖昧に。
      ↓
・「羽織」などの代わりに庶民は「袢纏」や「甚兵衛」などを着用する。

地域や歴史により変化した衣料

「羽織」の背中に家紋が染め抜かれているように、多くの「法被」や「袢纏」の背中には屋号や町名、祭礼などの文字が書かれています。現在なら、イベント、コンサート、電気量販店、文化祭や体育祭などでも見かけるのではないでしょうか。

また、少なくなったとは言え還暦祝いの「赤いちゃんちゃんこ」、子供服売り場にも小さな「ちゃんちゃんこ」は今なお健在です。「どてら」や「掻巻」も省エネを意識する世代に見直されており、以前のような重い綿ではなく、軽くて取り扱いも簡単な衣料へと変貌を成し遂げています。

これら衣料は、私たちが住む"日本"の風土や歴史に合わせながら、その名や形を少しづつ変えてきたおかげで、現在も多くの人々に愛用されているのかもしれませんね。

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暮らし言葉雑学

半纏とちゃんちゃんことどてらの違いとは?言葉の由来の他に掻巻や法被についてもわかりやすく解説!

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これら3つの着物はどれも、古くから日本で使用されている衣料で、手軽に羽織れるイメージがあるよな。

その違いはずばり、丈の長さや袖の有無などがあげられるんですが、名前の由来や構造などを調べてみると他にも色々あるみたいです。

今回はそんな3つの違いを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きな小説家兼ライターさらささらと一緒に調べていきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「半纏」と「ちゃんちゃんこ」と「どてら」とは?

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皆さんは、ニュースやドラマなどで「赤いちゃんちゃんこ」を着た還暦の方を目にしたことはありませんか? 他にも、洋品店や布団店などで売られている「綿入り半纏」や旅館に置かれた「どてら」など、どれもが着物の形をしていますが、これらの違いは一体なんなのでしょう。

こちらの記事では、名前の由来や形状の他にも使用目的などを調べ、それぞれの違いを分かりやすくご説明できればと思います。

「半纏」は防寒と作業着の二面性

「半纏(はんてん)」は”半天”とも書く和服の上着です。大工さんなどの作業着や、時代劇で目にする火消しのユニフォームとしても利用されています。

また、「半纏」と言えば防寒着である「綿入り半纏」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。

形状の特徴としては、半纏には基本胸紐がなく、普通の和服とは違い衿(えり)は返さずそのまま着用します。丈は腰より下辺りと短めなうえ、マチや前下がりのような余裕部分が設けられていません。

袖は五分~七分程度の長さで、小さい袖口が基本ですが、昔のアサリ売りが着ていた巻袖(付け根が広く袖口が細い三角形)などもあげられます。

「ちゃんちゃんこ」は袖なしで子供用の衣料

「ちゃんちゃんこ」とは、綿入り半纏から袖をなくした形状のものを指します。基本子供用の衣料であり、『ゲゲゲの鬼太郎』を思い浮かべて頂ければピンとくるのかもしれません。

一方で、還暦祝いとして60歳を迎えた方が「赤いちゃんちゃんこ」を着るという風習がありますが、こちらの「ちゃんちゃんこ」は袖なし羽織に近い形状のようです。

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