この記事では「扇状地」と「三角州」の違いについてみていきます。

どちらも三角状の地形を表す言葉ですが、河川に土砂が堆積することで形成されるという共通点がある。こんな似ている「扇状地」と「三角州」ですが、違いはずばり土地の使われ方やできる場所にあるようです。他にもいろいろ調べてみると、名前の由来や出来方など意外な違いがあるみたいです。

今回はそんな2つの違いを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きな小説家兼ライターさらささらと一緒に学んでみたいと思う。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集め、わかりやすい言葉で説明。

「三角州」と「扇状地」の違い1:できる場所

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皆さんも小学生の頃に社会科などで「扇状地(せんじょうち)」や「三角州(さんかくす)」を習ったかと思います。どちらも河川の上流から流れて来た土砂が集まりできた土地です。さらに、両方とも形が"扇形"と"三角形"で似ていますが、その違いとは一体なんなのでしょう。

実際、この2つを区別し明記するのは、中学受験や中学校の地理でも「ややこしい」とされているとか。そこで、こちらの記事では、「扇状地」と「三角州」の違いや共通点など、さまざまな項目について調べたうえで紹介していきたいと思います。

「扇状地」は平地や盆地にできる

「扇状地(せんじょうち)」とは、山地を流れる河川が運んだ土砂などが堆積した平らな土地です。山側の谷口を頂点とし、扇子(扇)のように広がっていることから「扇状地」と呼ばれ、「扇状地」の頂点(山側)を"扇頂"、中央を"扇央"、末端が"扇端"といいます。

この「扇状地」が形成される場所は、河川が山地から"平野"や"盆地"へと流れが移動するところです。そのため、盆地には「扇状地」の地形が多く見られます。

「三角州」は河口付近にできる

「三角州(さんかくす)」とは、河川によって運ばれた土砂が、堆積し形成された三角形の平らな土地です。その形がギリシア語の「Δ(デルタ)」に似ていることから、「デルタ」とも呼ばれています。

この「三角州」が形成される場所は、湖や海などの"静水域"=河口付近です。

ここまでの簡単なまとめです。

【共通点】
■河川により運ばれた土砂や砂礫が堆積したことで生まれた土地。

【相違点】
■「扇状地」…山地から平地や盆地にかけて形成。扇子のような形から「扇状地」と呼ばれる。
■「三角州」…湖沼や海などの河口付近に形成。ギリシア語の「Δ(デルタ)」に似ていることから"デルタ"とも呼ばれる。

「三角州」と「扇状地」の違い2:土地の使われ方

\次のページで「「扇状地」の多くは果実園」を解説!/

「扇状地」の多くは果実園

前述しましたが、「扇状地」と「三角州」のどちらも、土砂の堆積により平らな土地となりました。そのため、両方とも人が生活しやすい場所となっています。しかし、この2つは"土地の使われ方"が違うのです。

「扇状地」の使われ方と言えばやはり"果実園"でしょう。その理由は、「扇状地」は傾斜地なので日あたりが良く、岩や小石の多い地面は水はけに優れているため、果樹の育成に大変適しているからです。

日本で有名な「扇状地」の多くは、果物の生産地として知られています。特に甲府盆地は扇状地が多く、"果物王国"としても有名ですね。

【果物の生産で知られる盆地と平野】
≪盆地≫
■福島盆地…モモ、リンゴ、ナシ
■甲府盆地・長野盆地…ブドウ、モモ
■山形盆地…サクランボ(桜桃)
 ※特に盆地は「扇状地」が多く見られます。
≪平野≫
■道後平野(=松山平野※愛媛県松山市周辺)…ミカン

【田園地帯の扇状地】
■胆沢扇状地…岩手県にある「胆沢扇状地(いさわせんじょうち)」は日本最大級の扇状地として知られています。ここは水が豊かで砂礫層が浅いため、他の扇状地とは違い果実園ではなく田園地帯になりました。

「三角州」は水田や都市化

一方、「三角州」は"水田"に使われることが多い土地です。その理由とは、「三角州」には粘土質や細かい粒の砂が堆積しているため、雨(水分)が地中に吸収されにくいから。つまり、平坦で水の貯まりやすい「三角州」は、"水田"に適した土地となるわけです。

とは言え、「三角州」は平たんな土地のため、都市部では"住宅地"となり、地方では"水田"が多く見られます。

【三角州にできた都市】
≪三大都市≫
■東京…江戸川
■大阪…淀川
■名古屋…庄内川

■広島…太田川
※「三角州」の上に広島市街地を形成。日本でもっとも有名な「三角州」(広島平野)。

他にも、滋賀県の琵琶湖には安積川、姉川、石田川、百瀬川、野洲川が流れ込み、「三角州」を形成している。

\次のページで「「氾濫原」や「堆積平野」とは?」を解説!/

ここまでの簡単なまとめです。

【土地の使い方】
■扇状地…果実園
 ・山に近いため斜面地が多く日当たりが良い。
 ・岩や小石の多いので水はけに優れた地面。
≪デメリット≫
 →土石流や土砂崩れ。

■三角州…水田、都市
 ・平たんな土地。
 ・粘土質や細かい粒の砂が堆積しているため、雨などの水が地中に吸収されにくい。
 ・住宅地や大都市として発展=平地&水田により。
≪デメリット≫
 →水害や地震。

「氾濫原」や「堆積平野」とは?

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「扇状地」と「三角州」を調べていると、「氾濫原(はんらんげん)」や「堆積平野」という言葉が何度も登場します。これらは一体なんなのでしょうか?

他の関係ある言葉と共に、簡単ですが調べてみました。

「堆積平野」は河川の堆積物

「堆積平野」とは、主に河川などの流体により堆積作用で生まれた平野です。堆積物は土砂や火山灰、砂塵などからできています。

似た言葉に「沖積平野(ちゅうせきへいや)」がありますが、こちらは主に河川による堆積作用で形成されました。河川によって運搬された礫や砂、泥などが、山間の谷~平地~河口~沖合にかけて堆積した平野です。

そして「堆積平野」とは、前述した「沖積平野」と「海岸平野(※1.)」を含んだ言葉となります。
※1.、海岸の一部が隆起。海(波)による堆積作用により形成された平野。

【沖積平野と海岸平野の違い】
■沖積平野…河川の営力(自然の力)による堆積作用。
■海岸平野…海(波)の営力による堆積作用。
=これらをまとめて「堆積平野」

「氾濫原」とは洪水時に氾濫する範囲

「氾濫原」とは、河川が洪水時に(通常の河道から)氾濫する範囲にある"低地部分"。つまり、河川の氾濫や河道の移動による堆積物で形成された平野です。

そのため、河川が洪水時に"冠水"する領域で、陸域と水域の中間的な特徴を持つため、前述した「沖積平野」は同義語となります。

「三角州」や「扇状地」に似た言葉

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先ほどご紹介した「堆積平野」などの他にも、「三角州」や「扇状地」に似た土地や、関連する言葉をいくつかピックアップしてみました。

\次のページで「「中州」や「干潟」とは?」を解説!/

「中州」や「干潟」とは?

「中州(なかす)」とは、上流から流れた土砂などが川の中ごろに堆積し、陸地となった地形です。別名「川中島(かわなかじま)」ともいい、福岡の繁華街の地名である"中州"とは、球磨川と博多川に囲まれた細長いエリアを指します。

「干潟(ひがた)」とは、河川から流されてきた砂や泥が、波のおだやかな湾や河口付近などに蓄積しできた低湿地です。海水面の上下変動(潮の満ち引き)があるため、時間により陸地が海面下になります。

「カルスト地形」や「V字谷」とは?

「カルスト地形」とは、水に溶けやすい岩石(石灰石など)でできた土地が、雨水や地下水などによって浸食されてできた地形です。この現象には、「鍾乳洞」などの"地下地形"も含まれます。

「V字谷(ぶいじこく)」とは、川底を侵食する(削る)働きが大きい上流部で生じる現象。幼年期の谷の多くは「V字谷」となります。

ここまでの簡単なまとめです。

■堆積平野…河川などの流体による堆積作用で生まれた平野。
■沖積平野…河川による堆積作用で生まれた平野。山間の谷~海上沖合にかけて形成される。
■海岸平野…海岸の一部が隆起。海(波)による堆積作用で生まれた平野。

「沖積平野」+「海岸平野」=「堆積平野」

「三角州」と「扇状地」の違いは地形図でチェックを!

河川の営力により形成される「三角州」と「扇状地」ですが、その違いを見極めるためにはやはり、地形図を利用するのが最適です。

また、海外にも当然ながら日本以上の広大な「三角州」や「扇状地」が存在します。例えば、ドナウ川に形成された「ドナウデルタ(三角州)」、アメリカのミシシッピ川の河口にある「鳥趾状三角州(ちょうしじょうさんかくす)」、ナイル川河口に形成された「円弧状三角州(えんこじょうさんかくす)」などは有名でしょう。

この記事により、勉強以外でも「三角州」や「扇状地」に興味を持って下されば嬉しく思います。

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地質・歴史言葉雑学

5分で分かる扇状地と三角州の違い!作られ方や場所などの他に堆積平野や氾濫原も少女向け小説家兼ライターがわかりやすく解説!

この記事では「扇状地」と「三角州」の違いについてみていきます。

どちらも三角状の地形を表す言葉ですが、河川に土砂が堆積することで形成されるという共通点がある。こんな似ている「扇状地」と「三角州」ですが、違いはずばり土地の使われ方やできる場所にあるようです。他にもいろいろ調べてみると、名前の由来や出来方など意外な違いがあるみたいです。

今回はそんな2つの違いを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きな小説家兼ライターさらささらと一緒に学んでみたいと思う。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集め、わかりやすい言葉で説明。

「三角州」と「扇状地」の違い1:できる場所

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皆さんも小学生の頃に社会科などで「扇状地(せんじょうち)」や「三角州(さんかくす)」を習ったかと思います。どちらも河川の上流から流れて来た土砂が集まりできた土地です。さらに、両方とも形が”扇形”と”三角形”で似ていますが、その違いとは一体なんなのでしょう。

実際、この2つを区別し明記するのは、中学受験や中学校の地理でも「ややこしい」とされているとか。そこで、こちらの記事では、「扇状地」と「三角州」の違いや共通点など、さまざまな項目について調べたうえで紹介していきたいと思います。

「扇状地」は平地や盆地にできる

「扇状地(せんじょうち)」とは、山地を流れる河川が運んだ土砂などが堆積した平らな土地です。山側の谷口を頂点とし、扇子(扇)のように広がっていることから「扇状地」と呼ばれ、「扇状地」の頂点(山側)を”扇頂”、中央を”扇央”、末端が”扇端”といいます。

この「扇状地」が形成される場所は、河川が山地から”平野”や”盆地”へと流れが移動するところです。そのため、盆地には「扇状地」の地形が多く見られます。

「三角州」は河口付近にできる

「三角州(さんかくす)」とは、河川によって運ばれた土砂が、堆積し形成された三角形の平らな土地です。その形がギリシア語の「Δ(デルタ)」に似ていることから、「デルタ」とも呼ばれています。

この「三角州」が形成される場所は、湖や海などの”静水域”=河口付近です。

ここまでの簡単なまとめです。

【共通点】
■河川により運ばれた土砂や砂礫が堆積したことで生まれた土地。

【相違点】
■「扇状地」…山地から平地や盆地にかけて形成。扇子のような形から「扇状地」と呼ばれる。
■「三角州」…湖沼や海などの河口付近に形成。ギリシア語の「Δ(デルタ)」に似ていることから”デルタ”とも呼ばれる。

「三角州」と「扇状地」の違い2:土地の使われ方

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