この記事ではムカデとヤスデの違いについてみていきます。どちらも足が多く、見た目が強烈なイメージのある虫ですね。違いは触覚や足の長さなど見た目に多くあるようですが、発生時期や攻撃性など調べてみると他にもいろいろあるみたいです。
今回はそんなムカデとヤスデの違いを、わかりやすい見た目の違いからチェックしつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。観察力を活かして様々な視点から違いを詳しく解説。

ムカデとヤスデを見分ける見た目のポイント

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家の中に姿を現すこともあるムカデとヤスデ。見た目が似ているため、一体どちらなのか悩んでしまうこともありますよね。まずは、ムカデとヤスデを見分けるときにチェックすべき見た目のポイントをご紹介していきます。

触覚の長さと位置

ムカデとヤスデは触覚の長さや位置に違いがあります。長さなど、それぞれの特徴を以下にまとめてみました。

ムカデの触覚や足の特徴
・長さ:長め
・太さ:足は太め
・曳航肢:あり
触覚や足の長さがヤスデよりも長め。また、おしりの先に曳航肢(えいこうし)という頭部の触覚に似た足が2本ほどついている。

ヤスデの触覚や足の特徴
・長さ:短め
・太さ:細め
・曳航肢:なし
ムカデに比べ、触覚や足が短く細いことが多い。曳航肢もない。

ムカデ特有の曳航肢は足の一部。しかし歩くために使われてはいません。敵が頭部と間違えるように混乱させたりする役割を持っています。

体節の大きさと厚み

ムカデとヤスデは節足動物に分類されます。このジャンルの生き物は、複数の「体節」を持っていることが特徴です。アリやダンゴムシは仲間で、ナメクジは違うことを考えるとイメージしやすいかもしれませんね。

ムカデとヤスデも体節が多いですが、大きさや厚みなど違いがあります。併せてチェックしていきましょう。

ムカデの体節の特徴
・大きさ:大きめ
・厚み:平べったい
体節1つ1つの存在感がある。ただ厚みはあまりなく、平べったい種が多い。

ヤスデの体節の特徴
・大きさ:小さめ
・厚み:厚めで丸みがある
体節が小さいため繋がって見えるのが特徴。また、厚みや丸みがあるためミミズを連想させる。

体節1つに対する足の数

ムカデとヤスデは節足動物というジャンルの多足類に分類されます。文字の通り、足が多い生き物です。ただ足の本数などにも違いがあります。

ムカデの足の数
・体節1つにつき2本(1対)

ヤスデの足の数
・体節1つにつき4本(2対)

よく見て観察するのは勇気がいるかもしれませんが、見分ける際にわかりやすいポイントの1つです。どちらかわからないときは、1節に対する足の数も確かめてみてください。

大きさ

ムカデとヤスデは大きさにも違いがあります。ただ種類によってかなり差があるので、大きさだけで判断するのは少し難しいと言えるでしょう。判断材料の1つとして参考にしてみてください。

\次のページで「ムカデとヤスデの違いをもっと詳しくチェック!」を解説!/

ムカデの大きさ
・2〜25cm程度

ヤスデの大きさ
・3mm〜7cm程度

成虫で比べると、ヤスデよりもムカデの方が大きい種が多いです。ブラジルなどには、「ペルビアンジャイアントオオムカデ」という40cmを超える巨大なものもいます。

ヤスデの中にも、アフリカに生息する「タンザニアオオヤスデ」など20〜30cmを超える大きな種も。ただ日本に生息する種はそこまで大きくないことがほとんどなので、10cmを超えているようだったらヤスデの可能性が高いと言えるでしょう。

ムカデとヤスデの違いをもっと詳しくチェック!

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ムカデやヤスデは見た目以外にも様々な違いがあります。発生時期・生息場所・スピードと攻撃性の3点から、もっと詳しくムカデとヤスデの違いをみていきましょう。

ムカデとヤスデの「発生時期」

ムカデとヤスデが大量に発生する時期のピークは以下です。

ムカデの発生時期
・春と秋
特に繁殖期の5月〜6月、幼虫が成長して自立する9〜10月頃に多く発生する。

ヤスデの発生時期
・梅雨と秋
降水量が多い時期、土に水が溜まると地上に出てくるため大量発生しやすい。

それぞれタイミングは多少異なりますが、春〜秋頃に見かけることが多い虫であると言えます。ムカデは気温が15℃を下回ると動きが鈍くなり、11月頃から春まで冬眠に入るのもポイント。

ちなみに産卵期はムカデが5〜6月、ヤスデは8〜9月頃が主です。ムカデは1度に20〜50個ほど卵を産みますが、ヤスデはもっと多く150〜300個ほど産みます。

夏は気温が高くなる日が多いこともあり、どちらもあまり活発には動きません。

ムカデとヤスデの「生態と生息場所」

ムカデとヤスデは日本全国に生息する虫です。しかし、ムカデの中には北海道にだけいない種もいます。

一部地域を除いてよく見かける虫ではあるので、どんなものを食べるか・どんな場所にいるのかなど詳しく確認していきましょう。

ムカデの生態と生息場所
・肉食性
・夜行性
・雑木林、石や落ち葉の下などにも生息
肉食でクモ・コオロギ・ミミズなどを食べるため、雑木林などの近くにいることが多い。日中は石の下など影になる場所に潜んでいる。

ヤスデの生態と生息場所
・腐植食性
・湿気の多い場所が好き
・土の中、落ち葉やプランターの下などにも生息
基本的に腐植質をエサとしているため、落ち葉や枯れ葉が多い場所にいる。ただ「ウスアカフサヤスデ」など、生物の死骸を食べて海岸周辺に生息する種もいる。

落ち葉の下など地上にいるヤスデに関しては、成虫であることがほとんどです。ヤスデの幼虫は地中で育つため、地上にはめったに出てきません。ムカデは幼虫・成虫に関係なく地上で見かけます。

ムカデとヤスデの「スピード・攻撃性」

ムカデとヤスデは食性が違うためか、動く速さや攻撃性にも違いがあります。

\次のページで「ムカデとヤスデに関するQ&A集」を解説!/

ムカデのスピードと攻撃性
・スピード:素早い
・攻撃性:かなり高い
虫を捕獲して食べるため、動きが早く攻撃的。毒を含む顎を使って咬んでくるので注意が必要。

ムカデは視力があまり良くないこともあり、触ったり刺激されると反射的に咬もうとします。ヤスデが持つ毒の強さは種類によって様々ですが、咬まれると腫れる場合がほとんどです。

また咬まれた回数や体質によっては「アナフィラキシーショック」の症状が出てしまうことも。直接触るのはやめましょう。

 

ヤスデのスピードと攻撃性
・スピード:遅い
・攻撃性:低い
腐った植物などを食べる種が多いためか、動きはゆっくり。ムカデのように咬んでくることもない。

ヤスデはムカデに比べ大人しい虫です。ヤスデの方から攻撃してくることはほとんどありませんが、刺激したり潰そうとすると体液を分泌することも。

体液は悪臭がするうえ、弱い毒が含まれています。肌が痛痒くなったり水疱ができる場合もあるため、ヤスデに関しても素手で触るのはやめた方がいいでしょう。

ムカデとヤスデに関するQ&A集

赤ちゃんの時の見た目の違いやムカデやヤスデが出る家の特徴など、ムカデやヤスデに関する質問をいくつか集めてみました。

ムカデとヤスデは赤ちゃん(幼虫)の見た目も違う?

どちらも成虫がそのまま小さくなったような見た目をしているので、違いはあります。

ただ体の大きさだけで判断すると、ムカデの赤ちゃんとヤスデの成虫を見間違えてしまうことも。迷ったときは触覚の長さや曳航肢の有無など、見分けやすいポイントをチェックしてみてください。

家に出るムカデとヤスデの種類って?

ムカデもヤスデも沢山の種類が生息しています。その中でも、特に家で遭遇する可能性が高い種類をピックアップしてみました。もし家の中に入ってきたら、どの種類に該当するか調べてから対策するのもおすすめです。

家に出やすいムカデ
・トビズムカデ(通称オオムカデ)
・セスジアカムカデ
・アカズムカデ
・アオズムカデ
セスジアカムカデ以外は特に毒性が高いので要注意。

家に出やすいヤスデ
・ヤケヤスデ
・ウスアカフサヤスデ
・キシャヤスデ
・ヤンバルトサカヤスデ
日本でよく見かける4種。そのため家に出る可能性も高い。

ムカデ・ヤスデが出る家の特徴は?

ムカデとヤスデが出やすい家の特徴は以下です。絶対という訳ではありませんが、該当する点が多いほど、ムカデやヤスデが出る可能性も高いと言えるでしょう。

(1)湿気が溜まりやすくジメジメしている
(2)家の周囲に落ち葉や枯れ葉が多い
(3)家の周囲に水捌けの悪い地面がある
(4)外にプランターやブロックなどを置いている
(5)家の中にゴキブリがよく出る
(6)窓やドアに隙間がある

\次のページで「侵入を防ぐ対策方法はある?」を解説!/

侵入を防ぐ対策方法はある?

ムカデやヤスデが家の中に侵入してこないようにしたい方は、以下の方法で対策してみましょう。対策が間に合わず大量発生してしまったり、自分で撃退しきれない場合は害虫駆除のプロに頼むのも1つの手段です。

・家の周辺に落ち葉を溜めない
・植木鉢などの裏側も小まめにチェックしてキレイにする
・ゴキブリなどを発生させないように部屋の掃除をする
・湿気が溜まりやすい場所は小まめに換気や除湿をする
・窓やドアの隙間を埋める
・木酢液(もくさくえき)を入ってきそうな場所に吹きかけたり置いておく
・ムカデやヤスデ専用の対策グッズを取り入れる

攻撃の被害を受けたらどうすればいい?

気をつけていても、ムカデに咬まれてしまったりヤスデの分泌物を触ってしまうこともあるでしょう。それぞれの対処方法は以下です。

ムカデに咬まれた場合
(1)傷口を水道水で洗って毒を流す
(2)ビニールと薄めの布で包んだ氷で咬まれた場所を冷やす
(3)坑ヒスタミン成分が入った軟膏を塗る
ほとんどの場合は48時間ほどで症状は治る。ただ症状が重い場合はすぐ病院へ向かった方がよい。

ヤスデの分泌物を触った場合
(1)石鹸を使って触れた場所をよく洗う
(2)皮膚がヒリヒリしたり腫れた場合は「コルチコステロイドクリーム」という軟膏を塗る
分泌物が目に入ってしまった場合も水でよく洗うとよい。

ムカデとヤスデに似ている「ゲジゲジ」とは

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ムカデやヤスデと見分けがつきづらい「ゲジゲジ(またはゲジ)」という虫はご存知ですか?ゲジゲジもムカデの仲間であるため、足が多いところなど見た目が似ています。

また、ムカデとヤスデのように家の中に現れることも多い虫です。特徴を押さえて、見分けられるようにしていきましょう。

ゲジゲジの特徴

ゲジゲジは節足動物の中の多足類に分類されます。ただ他の多足類とは違いトンボのような「複眼」を持っているのが大きな特徴です。

ただ複眼かどうかをチェックするのは難しいので、見た目の特徴や生態もご紹介していきます。

・見た目:体節がしま模様のように見える
・触覚や足:ムカデとヤスデに比べ長くて細い(胴体よりも長い)
・足の数:1つの体節に4本(2対)
・大きさ:2〜8cm程度
・分布:全国
・発生時期:梅雨や秋頃
・生息場所:草むらや石の下、洞窟や床下など湿気が溜まりやすい場所
・食性:肉食
・スピードと攻撃性:動きは早いが攻撃性は低く、無理矢理捕まえたりしなければ咬んでくることもほぼない

害虫ではなく益虫

足の長いクモとムカデを混ぜたような、見た目のインパクトが強烈なゲジゲジ。苦手な方も多いかもしれませんが、実は益虫なのです。

ゲジゲジはゴキブリやクモを丸ごとキレイに食べてくれるだけでなく、人間に攻撃してくることも滅多にありません。また、病原菌などを持ち運んでバラまくような虫でもないです。

しかし見た目のせいで不快害虫と言われてしまっています。なんだか切ないですね。臆病で人前に現れることもほとんどないので、あまり気にならない方は目撃しても駆除しないというのも有りです。

勇気を出して観察してみよう!

ムカデとヤスデは一見似ていますが様々な違いがあります。特に家の中で遭遇してしまった場合はビックリしてしまうかもしれませんが、適切に対処すれば大丈夫です。

勇気がいるかもしれませんが、よく観察すれば見分けるのも難しくありません。ムカデとヤスデそれぞれの見た目のポイントを押さえて、どちらなのかまず判断してみてください。

ムカデの場合、下手に刺激すると咬まれる可能性が高いので写真に撮ってからチェックするのもおすすめです。またどちらにしても素手で触るのは良くないので、その点だけ注意してくださいね。

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生き物・植物雑学

3分で簡単ムカデとヤスデの違い!見た目や発生時期、ゲジゲジとの違いなど生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではムカデとヤスデの違いについてみていきます。どちらも足が多く、見た目が強烈なイメージのある虫ですね。違いは触覚や足の長さなど見た目に多くあるようですが、発生時期や攻撃性など調べてみると他にもいろいろあるみたいです。
今回はそんなムカデとヤスデの違いを、わかりやすい見た目の違いからチェックしつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。観察力を活かして様々な視点から違いを詳しく解説。

ムカデとヤスデを見分ける見た目のポイント

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家の中に姿を現すこともあるムカデとヤスデ。見た目が似ているため、一体どちらなのか悩んでしまうこともありますよね。まずは、ムカデとヤスデを見分けるときにチェックすべき見た目のポイントをご紹介していきます。

触覚の長さと位置

ムカデとヤスデは触覚の長さや位置に違いがあります。長さなど、それぞれの特徴を以下にまとめてみました。

ムカデの触覚や足の特徴
・長さ:長め
・太さ:足は太め
・曳航肢:あり
触覚や足の長さがヤスデよりも長め。また、おしりの先に曳航肢(えいこうし)という頭部の触覚に似た足が2本ほどついている。

ヤスデの触覚や足の特徴
・長さ:短め
・太さ:細め
・曳航肢:なし
ムカデに比べ、触覚や足が短く細いことが多い。曳航肢もない。

ムカデ特有の曳航肢は足の一部。しかし歩くために使われてはいません。敵が頭部と間違えるように混乱させたりする役割を持っています。

体節の大きさと厚み

ムカデとヤスデは節足動物に分類されます。このジャンルの生き物は、複数の「体節」を持っていることが特徴です。アリやダンゴムシは仲間で、ナメクジは違うことを考えるとイメージしやすいかもしれませんね。

ムカデとヤスデも体節が多いですが、大きさや厚みなど違いがあります。併せてチェックしていきましょう。

ムカデの体節の特徴
・大きさ:大きめ
・厚み:平べったい
体節1つ1つの存在感がある。ただ厚みはあまりなく、平べったい種が多い。

ヤスデの体節の特徴
・大きさ:小さめ
・厚み:厚めで丸みがある
体節が小さいため繋がって見えるのが特徴。また、厚みや丸みがあるためミミズを連想させる。

体節1つに対する足の数

ムカデとヤスデは節足動物というジャンルの多足類に分類されます。文字の通り、足が多い生き物です。ただ足の本数などにも違いがあります。

ムカデの足の数
・体節1つにつき2本(1対)

ヤスデの足の数
・体節1つにつき4本(2対)

よく見て観察するのは勇気がいるかもしれませんが、見分ける際にわかりやすいポイントの1つです。どちらかわからないときは、1節に対する足の数も確かめてみてください。

大きさ

ムカデとヤスデは大きさにも違いがあります。ただ種類によってかなり差があるので、大きさだけで判断するのは少し難しいと言えるでしょう。判断材料の1つとして参考にしてみてください。

\次のページで「ムカデとヤスデの違いをもっと詳しくチェック!」を解説!/

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