今日は大村智について学習していこう!大村先生はアベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発研究が評価されノーベル生理学・医学賞を受賞した化学者だ!大学で化学を学び、今も現役の研究者として活躍する化学に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で有機化学や合成化学、生物学について学び、化学や生物に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

大村智って何をした人?詳しく解説!

Satoshi Ōmura 5040-2015.jpg
Bengt Nyman - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

大村智(おおむらさとし)は、天然物化学が専門の日本の化学者です

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。大村先生の研究は土壌に生息する微生物がつくる化学物質の中から役に立つものを探し出す研究です。これを45年以上続け、これまでに500種類近くの新たな化合物を発見し、そのうち20種類以上のものが医薬、動物薬、農薬、研究用の試薬として実用化に結びついています。そのうちの一つがノーベル賞の受賞の理由にもなったアベルメクチンです。

大村智はどうしてノーベル賞を授賞できたの?

image by iStockphoto

大村先生は2015年に、ノーベル生理学・医学賞を受賞していますが、これはアベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発研究が評価されたからです。ウイリアム・キャンベルと共同で贈られています。

1974年に、静岡県伊東市のゴルフ場の土の中から新たな放線菌ストレプトマイセス・アベルミティリス(S.avermectinius)を発見したのが始まりです。大村生物はこの放線菌が作り出す化合物としてアベルメクチンを発見し、アメリカの製薬会社と一緒に、アベルメクチンの合成化合物として、「イベルメクチン」を発見・開発しました

「イベルメクチン」は当時、予防や治療が難しかった線虫類やダニ、ウジなど寄生虫で起こる病気に対して高い効果があったことが評価されました。現在では、イベルメクチンは商品名「ストロメクトール」として、重症の場合に失明することもある寄生虫病オンコセルカ症(河川盲目症)及びリンパ系フィラリア症(象皮症)の特効薬や、疥癬や糞線虫症の治療薬として世界中で使用されています。

大村智の生い立ち①:誕生から大学院進学まで

大村先生は1935年、山梨県北巨摩郡神山村(のちの韮崎市)で村の有力者である大きな農家の長男として生まれ、将来は農家を継ぐよう農作業を教え込まれていたため、勉強はほとんどしていませんでした。

1958年に山梨大学卒業後、東京都立墨田工業高等学校の夜間部の教師として働くのですが、そこで昼は工場で働き、夜は真剣に勉強する生徒に触発され、もう一度勉強し直したいと考えるようになります。その後、大学院に進学し、研究について学び博士号を取得し、アメリカへの留学を経て北里研究所の抗生物質研究室の室長に就任するのです。

大村智の生い立ち②:開発からノーベル賞受賞まで

そして、1974年に静岡県の土壌からストレプトマイセス・アベルミティリスを分離・培養し、メルク社のウィリアム・キャンベルらと共に、アベルメクチンとその化合物イベルメクチンを開発します。

その後は2001年に、北里大学の大学院の研究部門である「北里生命科学研究所」を創設し、初代所長と教授を兼務し、2002年から2007年まで北里大学の大学院教育部門である「感染制御科学府」でも教授を務め、2007年に北里大学の名誉教授となり、2013年には、北里大学の特別栄誉教授となるです。そして、2015年アベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発の研究が評価され、ノーベル生理学・医学賞をします。

\次のページで「大村智の座右の銘、名言にはどんなものがある?」を解説!/

大村智の座右の銘、名言にはどんなものがある?

大村先生は数多くの名言を残しており、多くの人に影響を与えています。大村先生がノーベル賞の受賞会見の時に、安倍首相からのお祝いの電話に対して、「会見中だ!」と言って電話を保留させ、政治にも屈しない姿を見せたのは有名な話です。

先生はゴルフ場の土壌から薬を作り出す放線菌を発見したように、「何事も諦めないことが大事だ」というのを心情にしています。

先生の座右の銘には「実践躬行(じっせんきゅうこう)」という言葉が残っており、これは「口先だけでなく、実行することが大切である」という意味です。

名言1:「資金がないから研究ができないというのは言い訳」

研究を行っていくには莫大な費用がかかりますが、直ぐに利益につながるものばかりではありません。常に金銭的な問題が付き纏い、金銭的な問題から諦めざるを得ない研究もあるのが現状です。

そんな中、大村先生は「資金がないから研究ができないというのは言い訳」との言葉を残しています。大村先生には、「研究で世の中に貢献すれば、必ずまた研究費は入ってくる。」という信念があり、社会に役立つ研究をし続けることこそが生涯の課題だと考えているからです

名言2:「成功した人は失敗を言わない。でも人より倍も3倍も失敗している。」

若者に対して失敗を恐れず何事にも挑戦するのが大事であることを説いた時に言われた言葉です。

先生は、多くのことは失敗するのだから、これをやると失敗する。ではなく、やってみようという気を絶えず起こすことが大事で、1回失敗し、それでだめだと思って諦めるのではなく、失敗したからよかった、これは絶対役に立つと思いながら何度も続けることが大事だと述べています。

名言3:「私よりも微生物にノーベル賞を。」

大村先生はノーベル賞の授賞会見で「私よりも微生物にノーベル賞を。」と述べました。

先生の中では「薬を作ってくれる微生物がすごいのであって、自身はそれを見つけただけ。」だと考えておられるからです。謙虚な姿勢を常に持ち続けることが大事だと感じさせる言葉ではないでしょうか。

大村先生が発見したイベルメクチンの効果について解説!

大村先生が発見したイベルメクチンの効果について解説!

image by Study-Z編集部

イベルメクチンは、マクロライド系に分類される抗寄生虫薬です

最初の用途は、フィラリアとアカリア症を予防および治療するための動物用医薬品だったでした。1987年にヒトへの使用が承認され、現在ではアタマジラミ、疥癬、河川盲明症(オンコセルカ症)、腸管糞線虫症、鞭虫症、回虫症、リンパ系フィラリア症などの寄生虫の治療に使用されています。

イベルメクチンの作用機序は、無脊椎動物の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性Cl−チャネルに特異的かつ高い親和性を持ち結合し、Cl−に対する細胞膜の透過性を上昇させることです。これにより、Cl−が細胞内に流入するため神経細胞や筋細胞の過分極が生じ、寄生虫が麻痺を起こし死滅します。

\次のページで「イベルメクチンはガンに効く?」を解説!/

イベルメクチンはガンに効く?

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イベルメクチンは抗寄生虫薬以外にも効果があるのではないかと注目が集まっています。

最近の研究では、マウスを使用した実験でイベルメクチンが大腸ガンや肝ガン、卵巣ガンに効果があることが報告されました。臨床での治験はまだ行われていませんが期待は高まっています。

しかし、イベルメクチンのガンに対する有効濃度は高いので、より効果の高い類似の物質の発見が必要との意見もあるのが現状です。

イベルメクチンは新型コロナウイルスにも効く?

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新型コロナウイルス(COVID-19)に対してイベルメクチンの投与が有効だという報告がいくつかあります

イベルメクチンはウイルスに対して、核内への運搬蛋白とウイルス蛋白との結合を阻害することにより、ウイルスによる自然免疫抑制作用を解除する働きがあるようです。 これにより自然免疫による抗ウイルス作用が働き、ウイルスの増殖を抑制することができるのではないかと言われています。

しかし、ヒトを対象とした研究は現在進行中でありCOVID-19に対する有効性や安全性を示す質の高いエビデンスがまだ存在しないため、世界の主要な保健機関は、治験以外の使用はしないことを推奨しているのが現状です。

謙虚な姿勢で失敗を恐れずに挑戦し続けることが大事!

大村先生はノーベル生理学・医学賞を受賞した優れた人ですが、この業績はゴルフ場の土から見つけた放線菌からアベルメクチンを見つけ出したように何度、失敗しても諦めずに挑戦し続けた結果ではないでしょうか。明確な目標をもって、謙虚な姿勢をもちながら、失敗を恐れずに常に挑戦し続けることが目標の達成のためには大事ですね。

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化学理科生活と物質生物

ノーベル賞を受賞した大村智って何をした人?功績や名言について現役の研究者が詳しくわかりやすく解説!

今日は大村智について学習していこう!大村先生はアベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発研究が評価されノーベル生理学・医学賞を受賞した化学者だ!大学で化学を学び、今も現役の研究者として活躍する化学に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で有機化学や合成化学、生物学について学び、化学や生物に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

大村智って何をした人?詳しく解説!

Satoshi Ōmura 5040-2015.jpg
Bengt Nyman投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

大村智(おおむらさとし)は、天然物化学が専門の日本の化学者です

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。大村先生の研究は土壌に生息する微生物がつくる化学物質の中から役に立つものを探し出す研究です。これを45年以上続け、これまでに500種類近くの新たな化合物を発見し、そのうち20種類以上のものが医薬、動物薬、農薬、研究用の試薬として実用化に結びついています。そのうちの一つがノーベル賞の受賞の理由にもなったアベルメクチンです。

大村智はどうしてノーベル賞を授賞できたの?

image by iStockphoto

大村先生は2015年に、ノーベル生理学・医学賞を受賞していますが、これはアベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発研究が評価されたからです。ウイリアム・キャンベルと共同で贈られています。

1974年に、静岡県伊東市のゴルフ場の土の中から新たな放線菌ストレプトマイセス・アベルミティリス(S.avermectinius)を発見したのが始まりです。大村生物はこの放線菌が作り出す化合物としてアベルメクチンを発見し、アメリカの製薬会社と一緒に、アベルメクチンの合成化合物として、「イベルメクチン」を発見・開発しました

「イベルメクチン」は当時、予防や治療が難しかった線虫類やダニ、ウジなど寄生虫で起こる病気に対して高い効果があったことが評価されました。現在では、イベルメクチンは商品名「ストロメクトール」として、重症の場合に失明することもある寄生虫病オンコセルカ症(河川盲目症)及びリンパ系フィラリア症(象皮症)の特効薬や、疥癬や糞線虫症の治療薬として世界中で使用されています。

大村智の生い立ち①:誕生から大学院進学まで

大村先生は1935年、山梨県北巨摩郡神山村(のちの韮崎市)で村の有力者である大きな農家の長男として生まれ、将来は農家を継ぐよう農作業を教え込まれていたため、勉強はほとんどしていませんでした。

1958年に山梨大学卒業後、東京都立墨田工業高等学校の夜間部の教師として働くのですが、そこで昼は工場で働き、夜は真剣に勉強する生徒に触発され、もう一度勉強し直したいと考えるようになります。その後、大学院に進学し、研究について学び博士号を取得し、アメリカへの留学を経て北里研究所の抗生物質研究室の室長に就任するのです。

大村智の生い立ち②:開発からノーベル賞受賞まで

そして、1974年に静岡県の土壌からストレプトマイセス・アベルミティリスを分離・培養し、メルク社のウィリアム・キャンベルらと共に、アベルメクチンとその化合物イベルメクチンを開発します。

その後は2001年に、北里大学の大学院の研究部門である「北里生命科学研究所」を創設し、初代所長と教授を兼務し、2002年から2007年まで北里大学の大学院教育部門である「感染制御科学府」でも教授を務め、2007年に北里大学の名誉教授となり、2013年には、北里大学の特別栄誉教授となるです。そして、2015年アベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発の研究が評価され、ノーベル生理学・医学賞をします。

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