今日は過飽和とはどんな現象なのか見ていこう!過飽和は溶液にも空気にも認められる現象です。過飽和を上手に利用すればキレイな結晶をつくることができる!大学で化学を学び、今も現役の研究者として活躍する化学に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で有機化学や合成化学、生物学について学び、化学や生物に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

過飽和ってどんな状態?原理をわかりやすく解説!

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過飽和とは溶液や空気がある温度において溶解度以上に溶質(物質)を溶かし込んでいる状態です

通常は溶解度を越えると、物質は溶けきれずに析出されます。過飽和では溶解度を越えて物質が溶液中に溶けている状態ですが、非常に不安定な状態です。なので、結晶核となる物質(例えば溶質結晶片)や異種の物質(ちりなど)を投入したり、振動や衝撃を与えるなどのちょっとして刺激で過剰な溶質が析出し、不安定な過飽和の状態から安定な飽和溶液に戻ってしまいます。

過飽和溶液を作るには飽和溶液を徐々に冷却することが大事です。

過飽和では析出が起こる?

過飽和の状態だけでは物質が析出することはありません

過飽和状態の時に何らかの衝撃(物質の投入、熱、pHの変化など)が起こることで、物質は結晶として析出します。

過飽和には溶解度が関係する?

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過飽和が起こるにはその物質の溶解度が関係します

溶解度は物質がその溶液に溶けることのできる限界量です。限界量まで物質が溶けた溶液を飽和水溶液と呼びます。物質の溶解度を超える量の物質を溶液中に溶かさないと、過飽和の状態は作り出すことができません。

\次のページで「過飽和はどうやったら改善できる?」を解説!/

過飽和はどうやったら改善できる?

過飽和状態を改善する方法は2つあります。

一つは温度です。溶解度は温度によって決まります。基本的に、温度が高くなればなるほど物質の溶解度は上がるので、過飽和状態を改善するには溶液の温度を上げれば良いのです

液量を増やすのがもう一つの方法になります。過飽和ではその溶液中に溶けきれない量の物質が溶けている状態なので、液量を増やせば物質が溶ける量が増え過飽和状態を改善できるのです。

過飽和を利用して結晶が作れるってホント?

液体の過飽和状態を利用して結晶をつくることができます

結晶とは物質の固体における存在状態の一つです。外見上は、平滑な多角形の面が鋭い稜(りょう)によって組み合わされた多面体となっています。細かくみると、その物質を構成する原子、分子、イオンなどが三次元的に周期性のある配列をとることが特徴です。

過飽和状態な溶液に結晶核となる物質を入れることで結晶は作れます

結晶の作り方を詳しく解説

結晶の作り方を詳しく解説

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過飽和状態な溶液に結晶核となる物質を入れることで作れます

まず、結晶化が起こるためには、前提条件として溶液は過飽和していなければなりません。溶液中に飽和量よりも多い量の物質を溶かす必要があります。溶液の飽和等は温度に影響されるので、温めながら物質を溶かした後に溶液を冷却するのが一般的です。過飽和の溶液ができたら、次に結晶化を促すために種結晶(目的とする物質)を加え、ガラス棒で容器をこすったり、さらに冷却することで結晶を大きくします。結晶を冷却した溶媒で洗い、乾燥させるとキレイな結晶の完成です。

過飽和は結晶化の駆動力であるため、溶液の過飽和度が高いほど加速されます。結晶化に伴って、物質が析出するとやがて溶液は飽和溶液に戻り、過飽和状態が終わると、結晶化は完了です。溶液が再び過飽和状態になれば、結晶化も再開されます。

医薬品などの工業的な製造過程においては、結晶の大きさ・形状のコントロールが重要な課題の1つです。より大きな結晶を作るには溶媒の不純物を減らすことなどが重要になります

空気にも過飽和はあるの?詳しく解説!

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空気にも液体と同じようやな過飽和な状態は存在します

その原因になるのは水蒸気(水)です。水蒸気を含んだ空気の温度を下げていくと、空気に溶け込める水の量が飽和に達します。いわゆる湿度100%の状態です。飽和状態の水蒸気の量を飽和水蒸気量とも呼びます

空気が飽和したあとも飽和量を超えて水蒸気が蓄積していくことがあり、この状態が空気の過飽和です。空気が飽和状態に達すると水蒸気が凝結して水滴が⽣成されますが、この水滴に水蒸気が付着することで空気は飽和量以上の水蒸気を取り込むことができます。溶液の場合と同じで飽和水蒸気量は温度が下がれば下がるほど低くなるので、高度が上がれば上がるほど飽和水蒸気量が低くなるということです。

\次のページで「空気の過飽和はなぜ起こる?」を解説!/

空気の過飽和はなぜ起こる?

空気が飽和量以上の水蒸気を含むことができるのは水滴の表面に働く表面張力によるものです。

飽和状態では、空気中から水面に飛び込む分子(凝結)の数と、水面から空気中に出て行く分子(蒸発)の数が平衡状態にあります。一方で、過飽和の状態では、凝結した水分子の表面に表面張力で水分子を付着させることで飽和量以上の水蒸気を含むことができているのです。

空気の過飽和は雨の原因になる?

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空気の過飽和は雨の原因です。

空気が水蒸気を含んだ状態で冷やされると飽和状態に達しますがこの時、水蒸気が凝結して水滴が⽣成され、この凝結した水滴が雲を形づくります。この状態からさらに水蒸気をため込んだ過飽和の状態になると、雨が降り出す一歩手前です。空気の過飽和も溶液の場合と同じで限界量を越えて水蒸気が存在する不安定な状態なので、わずかな物質(細かい土の粒子、ゴビ砂漠などから飛来する黄砂、細かい火山灰など)が投入されるとそれを核にして結晶を生じます。水蒸気(水)の結晶なので氷の結晶(氷晶)です。氷晶が大きくなり、落下速度が上昇気流の速さを上回るようになると、落下を始め、途中で融けて水滴となれば雨になります。氷晶のまま地表にまで落ちてくれば雪です。

なので、過飽和の状態は雨が降り出す手前の状態と言えます。

過飽和を上手に利用してキレイな結晶を作ろう!

過飽和は溶液や大気中に物質がギリギリのバランスで溶けている不安定な状態です。ちょっとした刺激でそのバランスが崩れてしまい物質が析出してしまいますが、これを上手く利用すれば結晶が作れます。一部、結晶を作るのが難しい物質もありますが結晶を作る原理はいたって簡単です。どの溶媒を利用するか、溶媒の純度はどのくらいにするかなどで作れる結晶の大きさやキレイさは変わってきます。条件を工夫して、あなただけの結晶を作ってはみませんか。

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化学化学平衡物質の状態・構成・変化理科

過飽和はどんな現象?結晶を作るために必要?原理や原因を現役の研究者がわかりやすく解説!

今日は過飽和とはどんな現象なのか見ていこう!過飽和は溶液にも空気にも認められる現象です。過飽和を上手に利用すればキレイな結晶をつくることができる!大学で化学を学び、今も現役の研究者として活躍する化学に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で有機化学や合成化学、生物学について学び、化学や生物に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

過飽和ってどんな状態?原理をわかりやすく解説!

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過飽和とは溶液や空気がある温度において溶解度以上に溶質(物質)を溶かし込んでいる状態です

通常は溶解度を越えると、物質は溶けきれずに析出されます。過飽和では溶解度を越えて物質が溶液中に溶けている状態ですが、非常に不安定な状態です。なので、結晶核となる物質(例えば溶質結晶片)や異種の物質(ちりなど)を投入したり、振動や衝撃を与えるなどのちょっとして刺激で過剰な溶質が析出し、不安定な過飽和の状態から安定な飽和溶液に戻ってしまいます。

過飽和溶液を作るには飽和溶液を徐々に冷却することが大事です。

過飽和では析出が起こる?

過飽和の状態だけでは物質が析出することはありません

過飽和状態の時に何らかの衝撃(物質の投入、熱、pHの変化など)が起こることで、物質は結晶として析出します。

過飽和には溶解度が関係する?

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過飽和が起こるにはその物質の溶解度が関係します

溶解度は物質がその溶液に溶けることのできる限界量です。限界量まで物質が溶けた溶液を飽和水溶液と呼びます。物質の溶解度を超える量の物質を溶液中に溶かさないと、過飽和の状態は作り出すことができません。

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