ドライアイスに水をかけて遊んだことはあるか?大量に白い煙が出てきてびっくりするよな。あの白い煙の正体はなんでしょうか?ドライアイスを扱う際、危険性はないか?
今回はドライアイスに水をかけた時の現象について、注意点とともに化学に詳しいライター小春と一緒に解説していきます。

ライター/小春(KOHARU)

見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。

ドライアイスに水をかけるとどうなる?

image by iStockphoto

冷凍食品やアイスクリームを購入するとたまにもらえるドライアイス。帰ってきて流しに入れて、水をかけたことはありますか?とても不思議な現象が起きますよね。今回はそんなドライアイスについて解説していきます。

大量の煙が発生する

ドライアイスに水をかけるとどうなるでしょう?正解は「大量の煙が発生する」です。白っぽいもくもくした煙が大量に出てきてびっくりしますよね。

出てきた煙の正体は?

出てきた煙の正体は?

image by Study-Z編集部

ドライアイスが二酸化炭素の塊だと知っている人は、煙の正体は二酸化炭素だと思うかもしれません。しかしそれは間違いです。なぜなら二酸化炭素は白色ではなく目には見えない気体だから。

出てきた煙の正体はなんと「水」です。つまり、ドライアイスに水をかけたときに大量に出てきた白い煙は、雲と同じものということですね。雲を簡単に作ることができるなんて面白いと思いませんか?

どうして煙が出てくるの?

どうして煙が出てくるの?

image by Study-Z編集部

実は、ドライアイスに水をかけずに放置していても白い煙は出てきます。なぜなら、空気中の水蒸気が冷えて状態変化を起こしたことにより、出て来た煙だからです。

ドライアイスは-79℃と低温の固体で、水の状態変化が起こる100℃、0℃をともに下回っています。 ですので、水蒸気がドライアイスに近づくと、ドライアイスによって冷やされて気体から液体・固体へと状態変化し、氷や水の粒になるのです。

ちなみに、このときの煙の成分が、氷(固体)だけなのか水(液体)だけなのか、あるいは両方含まれているのかは、まだ解明されていないと言われています。なんだかワクワクしますね。

そもそもドライアイスとは何?

先ほど少し出て来ましたが、そもそもドライアイスとは何なのか、ここでまとめて復習しておきましょう。

温度は何度?

ドライアイスは、常温常圧の環境で-79℃(正確には-78.5℃)です。氷よりもずっと冷却能力が強いので、物を冷やす用途によく使われています。

成分は何?

ドライアイスは二酸化炭素(炭酸ガス)の温度を下げて固体にしたもので、常温状圧で-79℃というとても低温の物質です。

固体の二酸化炭素は、常温の空気中で液体にならずに直接気体になります。この、固体が直接気体に状態変化することを「昇華」と呼びますが、この昇華という性質を持つ他の物質で有名なものは「ヨウ素」「ナフタレン」の2種類です。

用途は何?

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食品を冷やす以外のドライアイスの用途をご紹介します。

・遺体の保存
・舞台のスモーク効果
・人工的に雨や雪を降らす
・自動車の洗浄
・金属の低温処理
・ワクチンの輸送
・血液・医薬品の長時間保存や輸送
・低温実験用のトラップ

\次のページで「ドライアイスの歴史は?」を解説!/

ドライアイスの歴史は?

ドライアイスは炭酸ガス(二酸化炭素)を固体にしたものですが、そもそも炭酸ガスという名前は1600年頃にベルギーの科学者ヘルモントによって名付けられたと言われています。

その後、1834年にドイツの化学者チロリェーが「炭酸ガス」を固体することに成功しました。さらに、1895年にイギリスの化学者エルワシーとヘンダーソンが、炭酸ガス固化法の特許を取得。固体炭酸が商品として冷凍方向に使用できると提唱したのです。

1925年に固体炭酸製造会社「ドライアイス・コーポレーション」が設立されました。ドライアイス・コーポレーションにより、アイスクリームの長距離輸送が可能になったと言われています。このとき使われた「ドライアイス」という名前が、今でも一般名として使われているのです。

ドライアイスを安全に処理するには?

食品を買ったら付いてくるドライアイスは、子どもが科学実験に使うほどメジャーですが、使い方を間違えれば人体に危険を及ぼす可能性もあります。必ず覚えておきましょう。

処理方法1:風通しの良いところで放置

ドライアイスメーカー会、全日本ドライアイスディーラー会が推奨している方法は「風通しの良い場所で自然に消滅させる」です。特にわざわざ何かする必要はなく、放置さえすれば自然と固体の二酸化炭素が昇華していき、消滅します。

風通しの良いところで行う理由は、昇華の効率を上げるためと、発生した二酸化炭素を吸い込みすぎないようにするためです。二酸化炭素は空気より重いので、床に溜まってしまいます。小さなお子さんがいるご家庭では、より注意してドライアイスを処理するようにしましょう。

処理方法2:発泡スチロールの箱に入れて放置

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次にご紹介する処理方法は「発泡スチロールの箱に入れて放置」です。ご家庭での処理方法として最もよく紹介されている方法ですね。

発泡スチロールの箱の中に入れて放置していれば、数時間のうちに二酸化炭素に昇華していき、なくなるそうです。固体のドライアイスから気体の二酸化炭素になる際に、体積が750倍になると言われています。密閉した容器で行うと破裂する恐れがありますので、密封しないような容器で放置するように心がけましょう。

処理方法3:水をかける

最後に、素早くドライアイスを処理する方法をご紹介します。それは、ドライアイスに水をかける方法です。

水ではなくお湯ならもっと早く処理できるのでは?と考えるかもしれませんが、お湯を使う方法は危険だと言われています。ドライアイスとお湯の温度差があまりに大きいことにより、大量の白い煙(水と氷の塊)が発生し、さらに二酸化炭素も多量に発生するので、注いでいる熱湯が跳ねたり、ドライアイスの破片が飛び散ったり、容器が壊れるなど、様々な危険が予測されるのです。

ちなみに保存しておく場合は?

ドライアイスを長持ちさせ、保管するには、以下の方法を1つまたは複数試すのが良いです。

\次のページで「ドライアイスを扱う際の注意点」を解説!/

・新聞紙やタオルで包む
・発泡スチロールの箱に入れて空気を遮断した状態で保管
・密封方のビニール袋に入れて、空気を遮断して保管
・冷凍庫に入れて保管
・暗所、冷所、風が通らない場所に置いて保管
・砕かず大きなブロック状のまま保管

ドライアイスを扱う際の注意点

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最後にドライアイスを扱う際の注意点をご紹介します。

注意!絶対やってはいけないこと

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ドライアイスメーカー会が提唱している、ドライアイスを扱う際の注意点をご紹介します。

・ペットボトルやビンなどの容器に入れない。
・運転者や乗客がいる自動車内に持ち込まない。
・地下室や寒気のない場所で貯蔵・取り扱いしない。
・直接手で触れない。
・ドライアイスで遊ばない。
・ドライアイスを口に入れない。
・食品添加物として扱わない。炭酸飲料は作れません。

ドライアイスの事故事例

東京消防庁管内では、平成17年4月から平成21年12月までに、ドライアイスによる事故で22名が医療機関に搬送されています。事故発生要因の約79%が「ペットボトル等にドライアイスを入れて破裂させてしまった」事故であり、遊んでいた時に起きた事故だったことが明らかです。さらに、9歳以下では「食べた」ことで事故も起きています。

見た目が氷と似ていて、危険なことが分かりにくいドライアイスですが、性質は氷とは違い、事故につながる可能性も高い物質です。大人も含め、ドライアイスの性質と危険性について理解した上で扱うようにしましょう。

ドライアイスに水をかけたときに発生する白い煙の正体は「水」。雲の成分と同じだった。

ドライアイスに水をかけると大量に発生する煙の正体は、ドライアイスによって冷やされた空気中の水蒸気。水か氷かは未だ解明されていませんが、雲のようなものだと考えて間違いないでしょう。
ドライアイスは身近なところで手に入る面白い科学実験の材料です。取り扱いに注意は必要ですが、安全に気を遣いながら一度遊んでみてはいかがでしょうか。

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化学理科

ドライアイスに水をかけるとどうなる?煙の正体や出る理由・安全な処理方法も阪大院卒ライターが分かりやすくわかりやすく解説!

ドライアイスに水をかけて遊んだことはあるか?大量に白い煙が出てきてびっくりするよな。あの白い煙の正体はなんでしょうか?ドライアイスを扱う際、危険性はないか?
今回はドライアイスに水をかけた時の現象について、注意点とともに化学に詳しいライター小春と一緒に解説していきます。

ライター/小春(KOHARU)

見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。

ドライアイスに水をかけるとどうなる?

image by iStockphoto

冷凍食品やアイスクリームを購入するとたまにもらえるドライアイス。帰ってきて流しに入れて、水をかけたことはありますか?とても不思議な現象が起きますよね。今回はそんなドライアイスについて解説していきます。

大量の煙が発生する

ドライアイスに水をかけるとどうなるでしょう?正解は「大量の煙が発生する」です。白っぽいもくもくした煙が大量に出てきてびっくりしますよね。

出てきた煙の正体は?

出てきた煙の正体は?

image by Study-Z編集部

ドライアイスが二酸化炭素の塊だと知っている人は、煙の正体は二酸化炭素だと思うかもしれません。しかしそれは間違いです。なぜなら二酸化炭素は白色ではなく目には見えない気体だから。

出てきた煙の正体はなんと「水」です。つまり、ドライアイスに水をかけたときに大量に出てきた白い煙は、雲と同じものということですね。雲を簡単に作ることができるなんて面白いと思いませんか?

どうして煙が出てくるの?

どうして煙が出てくるの?

image by Study-Z編集部

実は、ドライアイスに水をかけずに放置していても白い煙は出てきます。なぜなら、空気中の水蒸気が冷えて状態変化を起こしたことにより、出て来た煙だからです。

ドライアイスは-79℃と低温の固体で、水の状態変化が起こる100℃、0℃をともに下回っています。 ですので、水蒸気がドライアイスに近づくと、ドライアイスによって冷やされて気体から液体・固体へと状態変化し、氷や水の粒になるのです。

ちなみに、このときの煙の成分が、氷(固体)だけなのか水(液体)だけなのか、あるいは両方含まれているのかは、まだ解明されていないと言われています。なんだかワクワクしますね。

そもそもドライアイスとは何?

先ほど少し出て来ましたが、そもそもドライアイスとは何なのか、ここでまとめて復習しておきましょう。

温度は何度?

ドライアイスは、常温常圧の環境で-79℃(正確には-78.5℃)です。氷よりもずっと冷却能力が強いので、物を冷やす用途によく使われています。

成分は何?

ドライアイスは二酸化炭素(炭酸ガス)の温度を下げて固体にしたもので、常温状圧で-79℃というとても低温の物質です。

固体の二酸化炭素は、常温の空気中で液体にならずに直接気体になります。この、固体が直接気体に状態変化することを「昇華」と呼びますが、この昇華という性質を持つ他の物質で有名なものは「ヨウ素」「ナフタレン」の2種類です。

用途は何?

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食品を冷やす以外のドライアイスの用途をご紹介します。

・遺体の保存
・舞台のスモーク効果
・人工的に雨や雪を降らす
・自動車の洗浄
・金属の低温処理
・ワクチンの輸送
・血液・医薬品の長時間保存や輸送
・低温実験用のトラップ

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