今回のテーマは「浸透」です。高校化学で出てくるキーワードですが、聞き覚えがあるのが「浸透圧」でしょう。まずは浸透圧の考え方と例題を解説していきます。また、浸透という現象は生活の中で様々な場面で利用されているぞ。生活の中に溶け込んだ浸透についても紹介してく。

今回は「浸透圧の考え方」と「生活の中で使われている浸透」を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

浸透とは

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まずは、「浸透」の意味をチェックしていきましょう。wikipediaで「浸透」と調べると下のように書いてあります。肌に美容液などが染みこんでいくような現象を一般的に浸透と呼んでいるんですね。

一般的には、物体の隙間をすり抜けて液体が通過したり、内側に入り込むこと。溶質の濃度が高い液体と濃度が低い液体が半透膜を隔てている場合、濃度の低い液体から濃度の高い液体へと自然に溶媒が移動し、濃度を同様に保とうとする。

この現象では、溶媒が動くためにエネルギーが発生している。このエネルギーを浸透圧といい、濃度の差を保つために必要な分の力が浸透圧の力量である。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B8%E9%80%8F

浸透圧はどのように考えるのか

高校化学を勉強したことがある人は、「浸透圧」という言葉にピンッとくると思います。浸透圧は半透膜を隔てた水溶液へ、溶媒分子が半透膜を通って浸透する圧力のことです。

半透膜を隔てて水溶液と純水を接触させたとき、純粋から水溶液側へ溶媒分子だけが流れ込んでいき、濃度を薄めようとします。そのため、放置しておくと水溶液側の液面が上昇するんです。この上昇分を戻して液面をそろえるために必要な圧力を浸透圧と呼びます。

一定の大きさの穴が開いている膜のことを半透膜と呼びます。空いている穴よりも小さい分子は通し、大きい分子は通さないのが特徴です。まさに、フィルターのイメージですね。

水溶液と純水を半透膜で隔てるときは、溶媒の水分子は通すが、溶質分子は通さない半透膜を選ぶ必要があります。

最初のノーベル賞は「浸透圧」?

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不明 - [1][2], パブリック・ドメイン, リンクによる

長い歴史を持つノーベル賞。初めてノーベル化学賞が授与されたのは、1901年のことでした。第1回ノーベル化学賞を受賞したのは、オランダの化学者「ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ」でした。この時の受賞理由が「浸透圧」だったのです。

ノーベル化学賞受賞の決め手は「希薄溶液の浸透圧は絶対温度と溶液のモル濃度に比例する」「浸透圧を示す式は理想気体の状態方程式と同じ形である」というファントホッフの法則を発見したことでした。

言葉で説明されると難しく感じるかもしれませんが、浸透圧の勉強で必ず覚える公式がありましたよね。πV=nRTです。πは浸透圧[Pa]、Vは液体の体積[L]、nは溶質の物質量[mol]、Rは気体定数[Pa・L/(K・mol)]、Tは絶対温度[K]。

この式、どこかで見覚えありませんか?気体の状態方程式PV=nRTですよね。浸透圧を示す式は理想気体の状態法的式と同じ形をしている。これがファインホッフの法則なんです。

浸透圧で登場する公式は、πV=nRTのみです。π=cRT(cはモル濃度[mol/L])などもありますが、πV=nRTを変形させただけなので暗記する必要はありません。

自分で式を変形させて導けるようにしておきましょう!

\次のページで「浸透圧の問題を解説」を解説!/

浸透圧の問題を解説

浸透圧の問題を解説

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ここからは、1問例題を解いてみましょう。グルコース水溶液の浸透圧を求める問題です。まずは、ファントホッフの法則を思い出して、πV=nRTに問題文で与えられている情報を代入しましょう。

式を計算すると、π=4.2×105Paと求めることができます。浸透圧の基本はファンとホッフの法則にしたがい、πV=nRTに数値を代入して数値を求める問題が多いです。

「浸透圧」は生活の中で使われている

ここからは生活の中でが使われている浸透圧を紹介していきます。

その1.人の身体

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人間の細胞は半透膜で覆われています。人間は約60%が水分で構成されている生物で、水分やミネラルなどのバランスが非常に重要です。少しでもバランスやが崩れてしまうと、身体は不調になってしまいます。

例えば汗をかくと、水分と同時にミネラルも体外へ排出されていきますよね。汗をかいたら水分と同時に塩分も摂る必要があるのは、浸透圧が関係しているからです。汗をかき水だけを飲むと、細胞膜を隔てた細胞内と細胞外でミネラルの濃度が大きく異なり、浸透圧が働きます。

浸透圧は濃い水溶液側に溶媒分子が流れ込んでいく現象でした。つまり、細胞内のミネラル濃度が高いとき、水分子が細胞内に入っていくので、細胞はどんどん水が入り膨らんでいきます。

水が入りすぎると、細胞が膨張に耐えきれなくなり破裂して壊れてしまう恐れがあるんです。

その2.梅酒

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梅酒を作るときも浸透圧が上手に応用されています。梅酒は、「青梅と度数35度程度の蒸留酒と氷砂糖」を漬け込んで作られるアルコール飲料です。下のような手順で梅エキスを抽出して梅酒ができていきます。

\次のページで「その3.ナメクジに塩」を解説!/

1.はじめ、梅エキスの濃度は梅内部の方が濃いので、水分やアルコールが浸透圧の働きで梅内部に移動する
2.時間が経つと、氷砂糖が少しずつ溶けだし、梅の実内部よりも外部の方が糖の濃度が高くなる
3.梅の実内部と外部で糖の濃度に差ができるため、浸透圧の働きで梅内部から水分とアルコールが出てくる
4.水分とアルコールに梅エキスが溶けているので、梅の風味が溶けだしてきて、美味しい梅酒ができる

梅酒や果実酒を作るときは氷砂糖を使います。その理由は、氷砂糖の方が、ゆっくりと水に溶けるため。グラニュー糖や上白糖などのすぐに水に溶ける糖を使ってしまうと、梅内部から急激に水分が出てきてしまうので、梅の風味は出てきません。

その3.ナメクジに塩

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ナメクジに塩をかけると、どうなるか知っていますか?どんどんナメクジは小さくなっていき、死んでしまいます。この現象にも浸透圧が大きく関わっているんです。

ナメクジは約90%が水分で構成されています。ナメクジは人間のような皮膚がなく、身体の表面は半透膜で覆われているんです。

半透膜は皮膚よりも水を通しやすいので、ナメクジの身体は実はとても乾燥しやすいんですね。そのため、ナメクジは身体の表面から粘液を出して身体が乾かないようにしています。さらに、ジメジメした場所を好むのも身体を乾燥させないようにするための工夫なんです。

さて、ナメクジに塩をかけると、塩が粘液に溶けて濃い食塩水ができます。すると、ナメクジ体内の水分が半透膜を通って外へ出ていってしまうんです。

その結果、ナメクジの体は小さくなっていってしまい、そのまま死んでしまいます。

濃度差を利用して、水の出入りを自在に操る「浸透圧」を解説

今回は「浸透」をテーマに、高校化学で学ぶ「浸透圧」を詳しく紹介しました。

浸透圧は問題としては、式に数値を当てはめて計算する問題が多いため、あまり記憶に残らない現象かもしれません。しかし、私たちの生活の中に溶け込んで、多用されている現象なんです。

特に梅酒を作るときは、細胞膜内部と外部の濃度差で浸透圧を操っています。今回紹介した事例以外にも私たちの生活にはまだまだ浸透圧が使われているので、ぜひ探してみてください。

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浸透とは?浸透圧の問題と日常の具体例を理系ライターが詳しくわかりやすく解説!



今回のテーマは「浸透」です。高校化学で出てくるキーワードですが、聞き覚えがあるのが「浸透圧」でしょう。まずは浸透圧の考え方と例題を解説していきます。また、浸透という現象は生活の中で様々な場面で利用されているぞ。生活の中に溶け込んだ浸透についても紹介してく。

今回は「浸透圧の考え方」と「生活の中で使われている浸透」を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

浸透とは

image by iStockphoto

まずは、「浸透」の意味をチェックしていきましょう。wikipediaで「浸透」と調べると下のように書いてあります。肌に美容液などが染みこんでいくような現象を一般的に浸透と呼んでいるんですね。

一般的には、物体の隙間をすり抜けて液体が通過したり、内側に入り込むこと。溶質の濃度が高い液体と濃度が低い液体が半透膜を隔てている場合、濃度の低い液体から濃度の高い液体へと自然に溶媒が移動し、濃度を同様に保とうとする。

この現象では、溶媒が動くためにエネルギーが発生している。このエネルギーを浸透圧といい、濃度の差を保つために必要な分の力が浸透圧の力量である。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B8%E9%80%8F

浸透圧はどのように考えるのか

高校化学を勉強したことがある人は、「浸透圧」という言葉にピンッとくると思います。浸透圧は半透膜を隔てた水溶液へ、溶媒分子が半透膜を通って浸透する圧力のことです。

半透膜を隔てて水溶液と純水を接触させたとき、純粋から水溶液側へ溶媒分子だけが流れ込んでいき、濃度を薄めようとします。そのため、放置しておくと水溶液側の液面が上昇するんです。この上昇分を戻して液面をそろえるために必要な圧力を浸透圧と呼びます。

一定の大きさの穴が開いている膜のことを半透膜と呼びます。空いている穴よりも小さい分子は通し、大きい分子は通さないのが特徴です。まさに、フィルターのイメージですね。

水溶液と純水を半透膜で隔てるときは、溶媒の水分子は通すが、溶質分子は通さない半透膜を選ぶ必要があります。

最初のノーベル賞は「浸透圧」?

Vant Hoff.jpg
不明 – [1][2], パブリック・ドメイン, リンクによる

長い歴史を持つノーベル賞。初めてノーベル化学賞が授与されたのは、1901年のことでした。第1回ノーベル化学賞を受賞したのは、オランダの化学者「ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ」でした。この時の受賞理由が「浸透圧」だったのです。

ノーベル化学賞受賞の決め手は「希薄溶液の浸透圧は絶対温度と溶液のモル濃度に比例する」「浸透圧を示す式は理想気体の状態方程式と同じ形である」というファントホッフの法則を発見したことでした。

言葉で説明されると難しく感じるかもしれませんが、浸透圧の勉強で必ず覚える公式がありましたよね。πV=nRTです。πは浸透圧[Pa]、Vは液体の体積[L]、nは溶質の物質量[mol]、Rは気体定数[Pa・L/(K・mol)]、Tは絶対温度[K]。

この式、どこかで見覚えありませんか?気体の状態方程式PV=nRTですよね。浸透圧を示す式は理想気体の状態法的式と同じ形をしている。これがファインホッフの法則なんです。

浸透圧で登場する公式は、πV=nRTのみです。π=cRT(cはモル濃度[mol/L])などもありますが、πV=nRTを変形させただけなので暗記する必要はありません。

自分で式を変形させて導けるようにしておきましょう!

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