
【補足】金属のイオン化傾向とは?

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塩酸に対してどのように反応するかは、高校で習う「金属のイオン化傾向」に従っています。
金属のイオン化傾向とは、金属が単体からイオンになりやすい傾向の順に並べたものです。この順番は、大学で習う標準電極電位というものに基づいているのですが、残念ながら高校化学ではただ順番を覚えるしかありません。
金属の、イオンになりやすい性質が強いほど、水素イオンに電子を受け渡してどんどんイオン化して(=溶けて)いきます。しかし、水素に比べて水素よりもイオン化傾向が小さければ、水素に電子を受け渡すことができず、変化しないのです。
これまで見てきた、鉄、アルミニウム、銅の反応もこのイオン化傾向で説明できます。イオン化傾向がアルミニウム>鉄>(水素)>銅なので、アルミニウムから順に塩酸と激しく反応するというわけです。
鉄:高温の水蒸気に反応、水酸化ナトリウムには反応せず
鉄は高温の水蒸気に反応します。反応式は以下の通りです。
3Fe + 4H2O → Fe3O4 + 4H2
生成した物質は四酸化三鉄と呼ばれています。このとき発生する気体も水素です。ただし、鉄は水酸化ナトリウムには反応しません。
鉄は、金属のイオン化傾向の中でも中間くらいに位置しています。特徴的なのは、濃硝酸や熱濃硫酸には溶けずに不動態を形成する点です。この特徴は、アルミニウム、ニッケルも持っています。
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銅:水、水酸化ナトリウムともに反応せず
銅はイオンになりにくいので、水にも水酸化ナトリウムにも反応しません。比較的安定な金属と言えるでしょう。
ただし、銅も空気中では酸化されます。空気中で徐々に酸化されることにより、表面に酸化皮膜が形成されるのです。
銅を溶かすことができるのは、酸化力の強い溶液(硝酸、熱濃硫酸、王水)のみ。王水は金や白金もを溶かすことができる液体で、濃硝酸と濃硫酸を1:3で混合して作ります。
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アルミニウム:高温の水蒸気、水酸化ナトリウムに反応する
アルミニウムは、鉄や銅に比べイオン化傾向が大きく、反応性が高いです。高温の水蒸気と反応するほか、水酸化ナトリウムとも反応します。
アルミニウムよりも反応性が高い金属は、リチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムです。周期表からアルカリ金属、アルカリ土類金属とも分類されます。このうち、リチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウムは空気中で速やかに酸化されるため、保管が難しいです。冷水とも激しく反応して大変危険ですので、灯油などの液体内で保存することもあります。
マグネシウムは、リチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウムよりは反応性が低いです。熱水と反応し、空気中でも徐々に酸化されてしまいますので、保管方法は厳しく指定されています。
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塩酸に鉄を入れると発生する気体は水素!金属のイオン化傾向で説明ができる
塩酸に鉄を入れたときに発生する気体は水素です。塩酸の水素イオンが鉄から電子を受け取って単体の水素となり、発生します。他にもアルミニウムを塩酸に入れたときも水素が発生しますが、銅の場合は反応が起きません。この理由は、アルミニウムと鉄は水素よりもイオン化傾向が大きく、銅は水素よりもイオン化傾向が小さいからなのです。
イオン化傾向の成り立ちの理解には大学で習う標準電極電位が必要となってきますので、高校化学までは丸覚えしてしまう方が便利ですよ。