今回は、「フロギストン説」について学習していこう。

諸君は、“燃焼とは物質が酸素と反応(結合)すること”と理科の授業で習ったでしょう。しかし、授業ではおそらく教わらない、この現象を初めて説明した人物を知っているでしょうか?この記事では、フロギストン説とはどういう仮説でそれの何が欠点なのか、またフロギストン説を否定したラヴォアジエ理論についても理解していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

フロギストン説を考え、確立させた人物

フロギストン説の起源とされる考えを提唱したのは、ドイツの医師ヨハン・ベッヒャーでした。そして、そのベッヒャーの提唱した仮説に基づく理論を確立したのがドイツの医師ゲオルク・エルンスト・シュタールです。彼らはどのような仮説を立てたのか見ていきましょう。

フロギストン説の創始者ベッヒャー

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1669年、ベッヒャーは『地下の自然学』において、以下の考えを示しました。

地下世界における鉱物の生成現象に注目し,地下の物質,すなわち土に3種類を設けた。第1に流動性,稀薄性,金属性を担う液状または水銀状の土,第2に油性,硫黄性,可燃性を担う油状または脂肪質の土,そして第3に可融性と固定性を担う石状またはガラス質の土,の3種類である。

出典:吉本秀之.ベッヒャーとシュタール: 原質説とフロギストン.2017, https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/65/8/65_372/_pdf,(参照2022/4/17).

フロギストン説を確立させたシュタール

1697年、シュタールは『化学の基礎』において、ベッヒャーの考えた第2の土をもとに燃焼の軸となる元素を「フロギストン」と名付けました

フロギストン説とは

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フロギストン説とは、「フロギストン」という架空の物質を使って、物質の燃焼や酸化・還元について説明した説です。

フロギストン説における物質の燃焼と酸化

フロギストン説における物質の燃焼と酸化

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フロギストン説における物質の燃焼(例:薪)と酸化(例:鉄)は以下のように考えられました。

物質はフロギストンと灰からできていて、物質が燃焼および酸化すると物質からフロギストンが放出されて灰が残る。

燃焼:薪→灰+フロギストン…1(薪などの燃えやすい物質は、残る灰が少ないのでフロギストンの含有量が多い)

酸化:鉄→鉄灰+フロギストン…2(燃焼後に残った鉄灰は、フロギストンがまったくないので燃えない)

フロギストン説における物質の還元

フロギストン説における物質の還元(例:炭と金属)は以下のように考えられました。

 炭+鉄灰→灰+鉄

これは上記の1と2から求められる

 炭→灰+フロギストン…1

 鉄→鉄灰+フロギストン…2

1を変形

 フロギストン→炭-灰

2を変形

 フロギストン→鉄-鉄灰

1+2

 鉄-鉄灰→炭-灰

 炭+鉄灰→灰+鉄

\次のページで「フロギストン説の欠点」を解説!/

フロギストン説の欠点

フロギストン説では筋の通った説明ができない現象があり、中でも大きな欠点とされたのが、「金属の燃焼後にできた金属灰の質量が増加すること」でした。

燃焼後の質量増加

フロギストン説によれば、燃焼によってフロギストンが放出されるので、その分燃焼後の金属灰の質量は減少すると考えられます。しかし実際は、1630年にジャン・レーによってスズの燃焼後の質量増加が発見されたように、金属灰の質量が増える現象が起こりました。

金属(鉄)の燃焼後にできた金属灰(鉄灰)の質量が増加する例

2Fe(質量2×56=112)+O2→2FeO(質量2×72=144)

鉄(質量112)の燃焼によってできた鉄灰(質量144)の質量が増えている。

フロギストン説を打破したラヴォアジエ

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フロギストン説は、提唱された当初から賛否両論ありましたが完全には否定されませんでした。そんな中、フロギストン説とは違う独自の考えを持っていた化学者のアントワーヌ・ラヴォアジエ。彼は、自身の仮説に固執するのではなく、ほかの実験結果を自身の仮説に当てはめて考察する柔軟な考えの持ち主でした。そして、「密閉容器内でのスズの酸化」の実験などを通して、燃焼反応はフロギストン説なしでも説明できるということを示したのです。

ラヴォアジエの初期の仮説

ラヴォアジエの考えはフロギストン説とは違い、「空気は火の物質と空気の基からなり、金属は金属灰と空気の基からなる」というものでした。これを式で表すと以下のようになります。

 空気→火の物質+空気の基…1

 金属→金属灰+空気の基…2

金属が燃焼すると1と2から以下のようになる

1を変形

 空気の基→空気-火の物質

2を変形

 空気の基→金属-金属灰

1+2

 金属-金属灰→空気-火の物質

 金属+火の物質→空気+火の物質

修正後の仮説

上記の考えを持っていたラヴォアジエですが、1772年に「金属を燃焼させると燃焼後にできた物質の質量が増加する」という実験結果を見て、上記の仮説を修正します。その考えは、「金属から空気の基が離れる」のではなく、燃焼によって「金属に空気の基がくっつく」というものです。そして、それを示したものが以下の式になります。

\次のページで「空気の基=純粋な空気」を解説!/

 空気→火の物質+空気の基…1

 金属灰→金属+空気の基…2

金属が燃焼すると1と2から以下のようになる

1を変形

 空気の基→空気-火の物質

2を変形

 空気の基→金属灰-金属

1+2

 金属灰-金属→空気-火の物質

 金属+空気→金属灰+火の物質

空気の基=純粋な空気

上記の仮説を立てたラヴォアジエでしたが、“空気の基”とは何か結論を出せずにいました。そんな時、“脱フロギストン空気”と名付けた、いわゆる酸素を発見したジョセフ・プリーストリーから話を聞き、彼と同じ実験を行います。その実験で、同じように酸素を発生させたのですが、さまざまな検査をしても空気と大きな差異はないと考え、この実験で発生した気体を“純粋な空気”と結論づけました

空気の基=酸素

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上記の仮説を立てた後、プリーストリーから指摘され、さらに修正を加えたものを以下に示します。

・空気は燃焼に関わる気体と燃焼に関わらない気体からなる

 空気→燃焼に関わる気体+燃焼に関わらない気体

・金属が燃焼すると、燃焼に関わる気体が金属とくっつく

 金属+空気→金属灰+燃焼に関わらない気体

・すべての酸は燃焼に関わる気体と金属でない物質がくっついたもの

上記の考えから、燃焼に関わる気体を「酸をつくる元素」と命名しました。つまり、金属+酸素→金属灰という理論を作りだしたのです。

「化学の進歩を遅らせた」と評されるフロギストン説

今回は、燃焼という現象の一つの考え方であるフロギストン説について学習してきました。今では酸素を含む多くの元素が発見されているのに対し、当時は何もわからない状態でフロギストンという架空の物質を作り、様々な現象を説明しようとしたことは称賛に値するでしょう。

数百年後、より化学が進歩してより多くの元素や物質が発見されれば、私たちが勉強してきた現象についての説明が変わっているかもしれませんね。

イラスト使用元:いらすとや

" /> フロギストン説とは?その欠点と否定したラヴォアジエ理論について農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
化学理科生活と物質

フロギストン説とは?その欠点と否定したラヴォアジエ理論について農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は、「フロギストン説」について学習していこう。

諸君は、“燃焼とは物質が酸素と反応(結合)すること”と理科の授業で習ったでしょう。しかし、授業ではおそらく教わらない、この現象を初めて説明した人物を知っているでしょうか?この記事では、フロギストン説とはどういう仮説でそれの何が欠点なのか、またフロギストン説を否定したラヴォアジエ理論についても理解していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

フロギストン説を考え、確立させた人物

フロギストン説の起源とされる考えを提唱したのは、ドイツの医師ヨハン・ベッヒャーでした。そして、そのベッヒャーの提唱した仮説に基づく理論を確立したのがドイツの医師ゲオルク・エルンスト・シュタールです。彼らはどのような仮説を立てたのか見ていきましょう。

フロギストン説の創始者ベッヒャー

image by iStockphoto

1669年、ベッヒャーは『地下の自然学』において、以下の考えを示しました。

地下世界における鉱物の生成現象に注目し,地下の物質,すなわち土に3種類を設けた。第1に流動性,稀薄性,金属性を担う液状または水銀状の土,第2に油性,硫黄性,可燃性を担う油状または脂肪質の土,そして第3に可融性と固定性を担う石状またはガラス質の土,の3種類である。

出典:吉本秀之.ベッヒャーとシュタール: 原質説とフロギストン.2017, https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/65/8/65_372/_pdf,(参照2022/4/17).

フロギストン説を確立させたシュタール

1697年、シュタールは『化学の基礎』において、ベッヒャーの考えた第2の土をもとに燃焼の軸となる元素を「フロギストン」と名付けました

フロギストン説とは

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フロギストン説とは、「フロギストン」という架空の物質を使って、物質の燃焼や酸化・還元について説明した説です。

フロギストン説における物質の燃焼と酸化

フロギストン説における物質の燃焼と酸化

image by Study-Z編集部

フロギストン説における物質の燃焼(例:薪)と酸化(例:鉄)は以下のように考えられました。

物質はフロギストンと灰からできていて、物質が燃焼および酸化すると物質からフロギストンが放出されて灰が残る。

燃焼:薪→灰+フロギストン…1(薪などの燃えやすい物質は、残る灰が少ないのでフロギストンの含有量が多い)

酸化:鉄→鉄灰+フロギストン…2(燃焼後に残った鉄灰は、フロギストンがまったくないので燃えない)

フロギストン説における物質の還元

フロギストン説における物質の還元(例:炭と金属)は以下のように考えられました。

 炭+鉄灰→灰+鉄

これは上記の1と2から求められる

 炭→灰+フロギストン…1

 鉄→鉄灰+フロギストン…2

1を変形

 フロギストン→炭-灰

2を変形

 フロギストン→鉄-鉄灰

1+2

 鉄-鉄灰→炭-灰

 炭+鉄灰→灰+鉄

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