そんなEUがヨーロッパ諸国の発展にどのように影響しているのか、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していきます。
- EUとはどのような制度?
- 多様なヨーロッパ諸国をひとつにまとめるEU
- EUによりヨーロッパは法律と経済が共通化
- EUが確立するまでの経緯
- EUの設立を推進したのはアメリカ
- 経済分野で段階的にEUが形作られる
- ソ連の崩壊によりEU加盟国が増加
- 社会主義国家だった東ドイツも加盟
- 共産圏だった国々のEU加盟
- EUが掲げる「多様性における統一」
- EU加盟により統合されるもの
- EUのなかで認められている多様性
- 旧ソビエト連邦の加盟も視野に入るEU
- 旧ソ連国家とは地域協力として連携
- ロシアのウクライナ進攻によりEU加盟が加速
- EUから距離を置いている国々
- EUに衝撃を走らせたイギリスの離脱
- EU加盟の意思がない国々
- 地域内格差の解決がEU発展の鍵
この記事の目次
ライター/ひこすけ
アメリカの歴史と文化を専門とする元大学教員。近年、ロシアのウクライナ進攻をうけて、ヨーロッパの連携の在り方について議論されている。そこで、EUがどのような役割を担うのか気になり、調べてみることにした。
EUとはどのような制度?
テレビのニュースなどで話題になることが多いEU。とくに有名なのが共通の通貨であるユーロでしょう。ただ、名称はよく聞くものの、実際はどのような連合なのか、把握しきれていないと思います。そこでEUについて概要をまとめました。
多様なヨーロッパ諸国をひとつにまとめるEU
ヨーロッパはさまざまな背景がある国から構成されています。歴史的にも衝突することが多く、戦争に発展することも多々ありました。そこで、多様な国々をひとつにまとめ、ヨーロッパ全体として発展していこうと考えます。このような趣旨のもと設立されたのがEUです。
EUを構成するのはヨーロッパの27か国。国境を取り去ってみると、総面積は4,233,255.3平方キロメートルに及びます。すべての人口はなんと約4億4700万ほど。加盟国は、同意した場合に限り、共通の法制度のもと行動することができます。
EUによりヨーロッパは法律と経済が共通化
通常、それぞれの国が、独自の法制度や通貨などの経済制度を持っているもの。しかしながら、EUに加盟するとそれらが共通化され、ひとつにまとまった共同体として行動できます。なかでもEUに加盟することで大きく変化するのが市場。EU域内は単一の市場と見なされ、通貨も共通の「ユーロ」が使用できるからです。
国境を超えて輸出や輸入をすると税金がかかるのが通常。しかしEU域内は単一の市場のため税金は課されません。また、仕事や旅行で移動することも簡単になります。自由な移動を支えているのが法制度。自由な移動を保障するために、貿易、農業、漁業、地域開発などの法律を策定するなど、政策をEUのなかで共通化を進めてきました。
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ユーロとは、EU加盟国のうち19か国で導入されている通貨です。EUは現在24か国。つまり、すべてがユーロを採用しているわけではありません。また、加盟国ではないものの、相手国がユーロを導入したことを理由に、法定通貨とした国もあります。
EUが確立するまでの経緯
By Diliff – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
これまで歴史的に、ヨーロッパを統合する動きはありましたが、それが本格化するのは第二次世界戦後。ヨーロッパ国内の戦争の歴史の反省、そしてソ連による反共の波に対抗することが、当初の趣旨でした。
EUの設立を推進したのはアメリカ
ヨーロッパを統合する動きは、必ずしもヨーロッパ諸国の主導で行われたわけではありません。アメリカが、1948年に設立された統合ヨーロッパのためのアメリカ委員会を通じて、資金等のバックアップをしてきました。
ソ連との対立が深まるアメリカにとって、ヨーロッパの共産化の波を食い止めることは不可欠です。そこでアメリカは、ヨーロッパ諸国を防波堤にして、ソ連の影響力の拡大を抑え込もうと考えました。
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