周期表を覚えるとき、原子番号4のベリリウム(Be)という元素を必ず目にすると思う。ですが、ベリリウムについて詳しく知っている人は少ないでしょう。実は優れた特性持ち、それを活かしてさまざまな分野で利用されているんです。
今回はそんなベリリウムという元素について、大学時代は化学専攻だったライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

ベリリウムについて知ろう!

image by iStockphoto

ベリリウムは原子番号4の元素で、元素記号はBeと表します。周期表で見ると第2族元素ですね。しかしベリリウムの性質は、同族の元素であるカルシウムなどより、第13族元素のアルミニウムに似ているのです。

このベリリウムとはどのような元素なのか、特徴や性質から詳しく解説していきます。

ベリリウムの特徴・性質

ベリリウムの特徴・性質

image by Study-Z編集部

ベリリウムは灰白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在します。常温常圧において安定な六方最密充填構造ですが、ねばりがなく衝撃で砕けてしまうのです。鉱物の硬さを1~10の整数値で示すモース硬度をみると、ベリリウムは6~7と第2族元素の中で一番高い数値を示します。このことから、ベリリウムは非常に硬いがもろい金属ということがわかりますね。ちなみに、高温になると展性・延性が増すため頑丈な金属になります

次に、ベリリウムの電子配置をみてみましょう。原子半径は小さいのですが、イオン化エネルギーが大きいため電荷を完全に分けることは困難です。そのため、ベリリウムの化合物は共有結合性を持っています

ベリリウムの歴史・由来

1797年、フランスの化学者であるルイ=二コラ・ヴォークランが、緑柱石をアルカリで処理することで水酸化アルミニウムを溶解させ、アルミニウムからベリリウム酸化物を分離しました。その後1828年、ドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラーとフランスの化学者アントワーヌ・ビュシーが、それぞれ独自にベリリウムの単離に成功したのです。

ここでベリリウムという名前の由来を遡ってみましょう。最初は1798年、ルイ=二コラ・ヴォークランがグルキニウム(glucinium)と名付けました。語源は、ギリシア語のglykys(甘さ)です。これは、ベリリウムの化合物が甘いことからきているのでしょう。そして1828年、マルティン・ハインリヒ・クラプロートによって「ベリリウム」と命名されました。これは、緑柱石(beryl、ギリシア語でberyllos)が由来とされています。

ベリリウムの原料はエメラルド?

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20世紀初めの頃はヨウ化ベリリウムを熱分解することでベリリウムを生産する方法が研究されていましたが、この方法で大量生産するには経済的に採算が取れませんでした。そこで2007年には、ベリリウムを含む鉱物中の酸化ベリリウムを処理することでフッ化ベリリウムを生成し、それをマグネシウムを用いて還元することで生産するようになったのです。

金属ベリリウムの生産に必要なフッ化ベリリウムは、主に緑柱石を原料としています。緑柱石とはベリリウムを含む六角柱の鉱物で、透明できれいなものはカットされ、エメラルドやアクアマリンなどの宝石となるのです。

\次のページで「ベリリウムの用途を4つ紹介!」を解説!/

金属ベリリウム精製の反応式

BeF₂+Mg → MgF₂+Be

ベリリウムの用途を4つ紹介!

ベリリウムは、熱伝導率も高く衝撃にも非常に強い元素です。その優れた性質を活かして航空、医療機器、家電などの分野で利用されています。ここで、具体的な利用例をみていきましょう。

その1.ベリリウム銅合金として利用

ベリリウムは合金の硬化剤として利用され、代表的なものがベリリウム銅(BeCu)です。ベリリウム銅は、0.5~3%のベリリウムを銅に加えた合金で、さらに別の金属を加える場合もあります。高い強度を持ち、非磁性、火花が出ないなどが特徴です。

ベリリウム銅は、ばねのような繰り返し力を加えても形状を保つ必要のある部品に用いられる非鉄合金でもあります。また、その電気伝導率の高さから電気のコネクタや電池の接触部に使われたり、油田など爆発の危険がある状況下で使用される工具の材料にも用いられているのです。

その2.X線検出器の窓

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ベリリウムは電子の数が少ないので、X線に対する透過率が非常に高いです。そのため、X線源やX線望遠鏡などの検出器用の窓に用いられています。ベリリウムの純度が高いほど、鮮明なX線像を写すことができるのです。

また、実験施設などで使用されているビームラインを構築する素材としても用いられています。ビームラインとは、高速で運動する電子を曲げて強力なX線を発生させ、そのX線を分析に使えるビームに変えて測定する実験装置です。

その3.スピーカーなどの音響材料

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ベリリウムは低質量で変形しづらい金属なので、音の伝導率は約12.9km/sと非常に高い数値を示します。この性質を利用して、高音域スピーカーの振動板として、一般的にはドーム型で使用されているのです。

しかし、ベリリウムは高価な金属で、衝撃に弱く形成が困難となります。製造する際に処置を誤ると、ベリリウムの毒性が表れてしまう可能性もあるので、ベリリウムの使用には大きなリスクを伴いますね。なので、現在は家庭用や業務用で使う中でも高級なスピーカーや、街頭演説やスピーチで使用されるマイクのような電気拡声装置などに限り用いられています。

\次のページで「その4.宇宙望遠鏡に!ベリリウムミラー」を解説!/

その4.宇宙望遠鏡に!ベリリウムミラー

James Webb Space Telescope Mirror37.jpg
NASA/MSFC/David Higginbotham/Emmett Given - http://www.jwst.nasa.gov/images_mirror45.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

気象衛星や宇宙望遠鏡のような、低重量で長い期間寸法の安定性が求められる物体に対する大きな面積の鏡のことをベリリウムミラーといい、これにもベリリウムが用いられているのです。

また、小さなベリリウムミラーは光学的な制御システムや射撃管制装置などに利用されています。主な利用例は戦車です。戦車のシステムには、鏡の迅速な動きが求められます。これにはベリリウムの低重量、高剛性な性質がうまく使われているのですね。

ベリリウムには毒性がある!?

ベリリウムはその優れた特徴からさまざまな工業製品に利用されていますが、一方で人体に怖い毒性を示すことが明らかになっています。どのような毒性があるのかみていきましょう。

ベリリウムがもたらす健康被害

ベリリウムを含む塵を吸い込んでしまうと肺が炎症を起こし、咳や呼吸困難などの症状が現れます。これはベリリウム肺、または慢性ベリリウム症と呼ばれる慢性アレルギー疾患です。慢性ベリリウム症の潜伏期間は数週間から20年以上と非常に個人差があります。

またベリリウムには発がん性もあるので、長期的に吸入すると肺がんを発症する恐れもあり、人体にとっては非常に危険な元素であることがわかりますね。

ベリリウムは現代の工業製品に必要不可欠!

ベリリウムは原子番号4の元素なので、周期表では必ず目にする名前でしょう。このベリリウムがどのような元素なのか理解できたでしょうか?ベリリウムは非常に硬いが衝撃には弱くもろい金属で、その原料は、エメラルドやアクアマリンなどの宝石にもなる緑柱石だったのです。

ベリリウムの用途は、航空、宇宙、医療、音楽などさまざまな分野にわたります。ただし、怖い毒性も持っているため、取り扱いには細心の注意を払ったうえで、今後も利用されていく元素といえますね。

" /> ベリリウムとはどんな元素?原料はエメラルド?特徴や用途、毒性も理系ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
化学理科

ベリリウムとはどんな元素?原料はエメラルド?特徴や用途、毒性も理系ライターが徹底わかりやすく解説!


周期表を覚えるとき、原子番号4のベリリウム(Be)という元素を必ず目にすると思う。ですが、ベリリウムについて詳しく知っている人は少ないでしょう。実は優れた特性持ち、それを活かしてさまざまな分野で利用されているんです。
今回はそんなベリリウムという元素について、大学時代は化学専攻だったライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

ベリリウムについて知ろう!

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ベリリウムは原子番号4の元素で、元素記号はBeと表します。周期表で見ると第2族元素ですね。しかしベリリウムの性質は、同族の元素であるカルシウムなどより、第13族元素のアルミニウムに似ているのです。

このベリリウムとはどのような元素なのか、特徴や性質から詳しく解説していきます。

ベリリウムの特徴・性質

ベリリウムの特徴・性質

image by Study-Z編集部

ベリリウムは灰白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在します。常温常圧において安定な六方最密充填構造ですが、ねばりがなく衝撃で砕けてしまうのです。鉱物の硬さを1~10の整数値で示すモース硬度をみると、ベリリウムは6~7と第2族元素の中で一番高い数値を示します。このことから、ベリリウムは非常に硬いがもろい金属ということがわかりますね。ちなみに、高温になると展性・延性が増すため頑丈な金属になります

次に、ベリリウムの電子配置をみてみましょう。原子半径は小さいのですが、イオン化エネルギーが大きいため電荷を完全に分けることは困難です。そのため、ベリリウムの化合物は共有結合性を持っています

ベリリウムの歴史・由来

1797年、フランスの化学者であるルイ=二コラ・ヴォークランが、緑柱石をアルカリで処理することで水酸化アルミニウムを溶解させ、アルミニウムからベリリウム酸化物を分離しました。その後1828年、ドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラーとフランスの化学者アントワーヌ・ビュシーが、それぞれ独自にベリリウムの単離に成功したのです。

ここでベリリウムという名前の由来を遡ってみましょう。最初は1798年、ルイ=二コラ・ヴォークランがグルキニウム(glucinium)と名付けました。語源は、ギリシア語のglykys(甘さ)です。これは、ベリリウムの化合物が甘いことからきているのでしょう。そして1828年、マルティン・ハインリヒ・クラプロートによって「ベリリウム」と命名されました。これは、緑柱石(beryl、ギリシア語でberyllos)が由来とされています。

ベリリウムの原料はエメラルド?

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20世紀初めの頃はヨウ化ベリリウムを熱分解することでベリリウムを生産する方法が研究されていましたが、この方法で大量生産するには経済的に採算が取れませんでした。そこで2007年には、ベリリウムを含む鉱物中の酸化ベリリウムを処理することでフッ化ベリリウムを生成し、それをマグネシウムを用いて還元することで生産するようになったのです。

金属ベリリウムの生産に必要なフッ化ベリリウムは、主に緑柱石を原料としています。緑柱石とはベリリウムを含む六角柱の鉱物で、透明できれいなものはカットされ、エメラルドやアクアマリンなどの宝石となるのです。

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