今回のテーマは凝固熱だ!物質は加熱と冷却を繰り返すと、温度に応じて気体と液体と固体の状態変化を繰り返す。凝固熱は、液体から固体へ凝固するときに発生する熱です。液体から固体へ変化する現象はとても難しく、「過冷却現象」や「凝固点降下」といった複雑な現象が起きるぞ。

そして、「過冷却現象」や「凝固点降下」は大学受験でも出題されるポイントです。

今回は物質の三態のおさらいと液体から固体へ状態変化するときに発生する凝固について、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

まずは物質の三態をおさらい

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まずは、物質の三態をおさらいしていきましょう。物質はそれぞれの温度で、固体・液体・気体の状態をとります。例えば固体を加熱すれば液体になり、さらに加熱すれば気体になりますよね。反対に、気体を冷却していくと液体になり、さらに冷却していくと固体になります。

物質がどの温度で、どの状態をとるのか示した図が「物質の状態図」です。状態図は、別の記事で紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。状態図はテストでも頻出で、複雑な分野なので要チェックです。

それぞれの状態から別の状態へ変化する現象には、対応した名前がついています。固体から液体になる現象は「融解」、液体から気体になる現象は「気化」、液体から固体になる現象は「凝固」です。そして、状態変化が起きる時は必ず熱の出入りがあり、状態変化に伴って移動する熱を「○○熱」といいます。

たとえば、融解の時に発生する熱を「融解熱」、気化の時に発生する熱を「気化熱」というんです。今回のテーマ「凝固熱」は、凝固の時発生する熱のことをいいます。

物質を冷やすと、どうなる?

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ここからは、物質を冷やすことに着目してみましょう。液体を冷却していくと、ある温度で固体へ変化します。液体の水を冷やしていくと固体の氷に変化するので、イメージしやすいですよね。

\次のページで「融点と凝固点は同じ?」を解説!/

液体から固体への変化は凝固、そして固体から液体へ変化は融解でした。融解の時もやはり熱が発生し、融解時に発生する熱を「融解熱」といいます。凝固と融解は液体と固体の状態が変わるだけの変化なので、融解熱と凝固熱の熱量は同じです!

融点と凝固点は同じ?

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凝固が始まる温度のことを凝固点、融解が始まる温度のことを融点といいます。水でイメージしてみましょう。氷が水へ変化する融点は何度でしょうか?おそらく、ほとんどの方がすぐに0℃と分かると思います。一方で、水が氷に変化する凝固点は何度でしょうか?

融点と同じ0℃でしょ?と思いますよね。実は、水の凝固点は0℃ですが、水は0℃では凍りません。これは過冷却現象が関係しているからです。

冷却の不思議?冷却曲線をチェック

冷却の不思議?冷却曲線をチェック

image by Study-Z編集部

ここからは物質が冷える時、何が起きているか解説していきます。ポイントは冷却曲線です。冷却曲線は横軸に冷却時間、縦軸に温度をとり、物質を冷却していったとき、温度がどうなるかを表した曲線ですね。

まずは、純物質(純溶媒)の水の冷却曲線を見てみましょう。凝固点ですが…グラフの平坦な直線部分から補助線を引いて、冷却曲線とぶつかったところです。この温度が凝固点となります。そして、冷却曲線を見ると、くぼんでるところって何?となりますよね…実は、ここが過冷却の正体です。

冷却曲線の平坦な部分は、液相と固相が共存している領域です。冷却曲線の中で、冷却を続けても温度が一定な部分があるのは、液体から固体への状態変化で熱が使われているから。状態変化するとき発熱するため、冷却しても温度が下がりません。この時出る熱が、凝固熱です。

液体から固体への状態変化が終わり、固体のみになるとまた温度は下がり始めます。

\次のページで「純溶媒の冷却曲線と過冷却」を解説!/

純溶媒の冷却曲線と過冷却

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ここからは、冷却曲線の謎のくぼみ部分の正体を解説していきます。くぼみ部分の正体は「過冷却」と呼ばれる現象です。なぜこのような現象が起きるのか?と思いますよね。それは、液体から固体へ変化する「きっかけ」がないから。

液体から固体へ変化するとき、核になるものが必要です。過冷却状態では、ほこりや容器の壁面が核になることもあれば、容器に衝撃が与えらたことで核が形成されることもあります。核が形成されると、核を起点に液体から固体への状態変化が始まるんです。つまり過冷却状態は、液体から固体へ変化するきっかけ待ち(核形成待ち)の状態と考えるとイメージしやすいかもしれません。

水も凝固点は0℃ですが、0℃でいきなり核ができるわけではなく、核が形成されるまでは温度は下がり続けます。そして核ができると、冷やしすぎてしまった分の熱を放出するので、温度は凝固点まで上がるんです。

過冷却については、別の記事でさらに詳しく解説しているので、合わせてチェックしておきましょう!

溶液の冷却曲線と凝固点降下

溶液の冷却曲線と凝固点降下

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次は溶液の冷却曲線を見てみましょう。溶液の冷却曲線は純溶媒の冷却曲線と少し違っています。ただ、凝固点の求め方は純溶媒の冷却曲線と同じで、直線部分から補助線を引っ張った先の交点の温度が凝固点です。

実は、溶液と純溶媒の冷却曲線は単純に重ねることはできません。それは、溶液の冷却曲線は、純溶媒の冷却曲線よりも低温側に移動しているからです。「水の純溶媒」と「水に塩や砂糖を溶かした溶液」の冷却曲線を比べると、凝固点を含め、冷却曲線は低温側に移動しています。これは、「凝固点降下」と呼ばれる現象が原因です。

凝固点降下とは、純溶媒に物質が溶けると、純溶媒の時よりも凍りにくくなり、凝固点が低温側に移動する現象をいいます。身近な例では、雪道に塩化カルシウムをまくことで路面を氷りにくくする融雪剤に凝固点降下の原理が使われているんです。

凝固点降下は別に記事で詳しく解説しているので、合わせてチェックしておいてください!

溶液の冷却曲線のポイントとは

溶液の冷却曲線を見て気づいたことはないでしょうか。液体と固体が共存している直線部分が右肩下がりになっていませんか?実はこれも凝固点降下が関係しています。凝固点降下度は溶質の質量モル濃度が大きくなるほど、大きくなるんです。

溶媒が先に結晶化する直線部分は、結晶化が進むと溶質の質量モル濃度が大きくなっていきます。すると、凝固点降下度は大きくなりますよね。そのため、もともとの凝固点よりも低い温度でないと凝固が進まなくなるんです。

液体から固体への状態変化、「凝固」の不思議を熱に注目して解説!

今回は物質の三態のおさらいと液体から固体へ状態変化を詳しく解説しました。液体から固体へ凝固する時は必ず熱の出入りがあり、この時発生する熱は凝固熱といいます。凝固熱は発熱することが多く、熱量は融解熱と同じ大きさです。

そして、凝固する時の不思議な現象「過冷却現象」と「凝固点降下」について解説しました。2つの現象はテストでも時々出題される現象なので、ぜひチェックしておいてください!

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化学物質の状態・構成・変化理科

凝固熱とは?固体から液体へ変化する凝固を過冷却や凝固点降下と合わせて理系ライターがわかりやすく解説!



今回のテーマは凝固熱だ!物質は加熱と冷却を繰り返すと、温度に応じて気体と液体と固体の状態変化を繰り返す。凝固熱は、液体から固体へ凝固するときに発生する熱です。液体から固体へ変化する現象はとても難しく、「過冷却現象」や「凝固点降下」といった複雑な現象が起きるぞ。

そして、「過冷却現象」や「凝固点降下」は大学受験でも出題されるポイントです。

今回は物質の三態のおさらいと液体から固体へ状態変化するときに発生する凝固について、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

まずは物質の三態をおさらい

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F l a n k e r, penubag – Translated from File:Phase change – en.svg, パブリック・ドメイン, リンクによる

まずは、物質の三態をおさらいしていきましょう。物質はそれぞれの温度で、固体・液体・気体の状態をとります。例えば固体を加熱すれば液体になり、さらに加熱すれば気体になりますよね。反対に、気体を冷却していくと液体になり、さらに冷却していくと固体になります。

物質がどの温度で、どの状態をとるのか示した図が「物質の状態図」です。状態図は、別の記事で紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。状態図はテストでも頻出で、複雑な分野なので要チェックです。

それぞれの状態から別の状態へ変化する現象には、対応した名前がついています。固体から液体になる現象は「融解」、液体から気体になる現象は「気化」、液体から固体になる現象は「凝固」です。そして、状態変化が起きる時は必ず熱の出入りがあり、状態変化に伴って移動する熱を「○○熱」といいます。

たとえば、融解の時に発生する熱を「融解熱」、気化の時に発生する熱を「気化熱」というんです。今回のテーマ「凝固熱」は、凝固の時発生する熱のことをいいます。

物質を冷やすと、どうなる?

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ここからは、物質を冷やすことに着目してみましょう。液体を冷却していくと、ある温度で固体へ変化します。液体の水を冷やしていくと固体の氷に変化するので、イメージしやすいですよね。

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