受精卵という一個の細胞から様々な器官をもつ生物へ複雑化していく過程は「発生」と呼ばれる。高校生物で習ったことがある人もいるでしょうが、複雑でいまいち覚えきれないという人が多いのではないでしょうか。特に「胚葉」「胞胚」「神経胚」などといった難しい言葉が多いものだから苦手意識を持ってしまった人もいるのではと思う。
今日はできるだけ複雑な部分を省き、脊椎動物の発生の大まかな流れを把握できるように生物学オリンピックメダリストのNoctilucaと解説していこうと思う。
ライター/Noctiluca
高校時代に生物学の面白さに気づき、のちに国際生物学オリンピックで金メダルを受賞。現在は自分の「好き」を突き詰めるため、医学生として勉強中。
神経胚の前に…そもそも発生とは?胚発生学の歴史についても短く解説
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生物学における「発生」とは、新しい多細胞生物が受精卵から徐々に複雑な組織を形成していく過程を指します。
上記の写真は人間の受精後間もない卵細胞の写真です。最初は単一の細胞ですが、細胞分裂によって細胞が増えたり、組織の形を変えたりすることで少しづつ成体の形に近づいていきます。
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発生学は昔からの神秘だった
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小さな小さな受精卵から複雑な生命体が作られるというのは一見摩訶不思議な出来事であり、昔の人々は「卵子や精子に小さな人間(ホムンクルス)が入っているのでは?」と考えていました。
顕微鏡の発明で有名なアントニ・ファン・レーウェンフックは精液を観察した際、「精子は種で、卵子という畑に生命を植え付ける」と考え、そのあとオランダの科学者、ニコラス・ハルトゼーカーが精子の中に胎児が入っている様子を上のイラストに描写しています。
もちろんこれらの説は後程否定されていますが、当時たくさんの生物学者の好奇心を刺激した現象であることには間違いないでしょう。
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神経胚は脊椎動物に特有の発生途中の一過程
基本的に発生の大まかな流れは
受精卵 → 卵割 → 胞胚 → 原腸の形成 → 胚葉の分化 → 形態形成
というステップを踏みます。後で詳しく説明しますので、今は頭の隅にとどめておいておくだけで十分です。
このうち、「神経胚(しんけいはい)」というのは脊椎動物に特有の段階で、形態形成の一部分に当たります。
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