今回は、「木の寿命」について学習していこう。

諸君は、神社の御神木の前にある“樹齢○百年”と書かれた立て札を見て、「本当にそんなに生きているのか」と疑問に思ったことはないでしょうか?この記事では、世界の長寿の木トップ3や木の寿命が長い理由とその測定方法について理解していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

そもそも寿命とは?

まず、寿命について理解しましょう。寿命は、以下のように定義されています。

生物の一生の時間をいい、普通は事故や明らかな病気によらない自然死までの年限をさす。多くの個体の平均で表す平均寿命と、もっとも長く生きた個体の寿命で表す最大寿命とがある。

出典:“寿命”.コトバンク.https://kotobank.jp/word/%E5%AF%BF%E5%91%BD-78269,(参照2022/4/12)

木の寿命は数年から数千年と非常に差が大きいので、この記事では木の最大寿命に注目して学習していきましょう。

世界の木長寿ランキング

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日本の縄文杉は、1966年に発見されました。推定樹齢から考えても2000年以上の間同じ場所に存在したのに、発見されたのは意外と最近だということに驚いた人もいるのではないでしょうか?このように、地球上にはいまだ発見されていない長寿の木がたくさん存在すると考えられますが、ここではたまたま人類に発見された木のうち長寿の木について紹介していきます。

第1位 アメリカのイガゴヨウマツ(針葉樹)│通称『メトシェラ』

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カリフォルニア州インヨー国立森林公園で発見されたイガゴヨウマツの中でも、『メトシェラ』と名付けられた木の樹齢は推定4765年。つまり、日本の縄文時代に『メトシェラ』は誕生したということになります。

\次のページで「第2位 イランのイトスギ(針葉樹)」を解説!/

第2位 イランのイトスギ(針葉樹)

アバルクという町にあるイトスギの推定樹齢は4000~4500年、高さは25mほどです。この木は、イランの国家自然遺産に選ばれています。

第3位 チリのパタゴニアヒバ(針葉樹)

アンデス山中で発見されたパタゴニアヒバの推定樹齢はおよそ3620年、高さは45mほどです。非常に高い木であるのに対し、幹の周りは1年で1mmしか成長しないという特徴があります。

【番外編1】根っこだけを見ると長生きのオウシュウトウヒ(針葉樹)│通称『Old Tjikko』

スウェーデンのフルフジェーレット山脈で発見されたオウシュウトウヒの中でも、『Old Tjikko』と名付けられた木の根っこ部分の推定年齢はおよそ9550年。一方、地上で見える部分の推定樹齢はというと数十年から数百年で、高さはわずか5mほどです。

【番外編2】群生全体で見ると世界最古の森│通称『パンド』

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アメリカユタ州のフィッシュレイク国立公園にある通称『パンド』と呼ばれるアメリカヤマナラシ(広葉樹)は、同じ根でつながるクローンの木を作り出します。よって、このクローンすべてを含めて1つの生物とした場合、『パンド』の推定年齢はおよそ8万年。高さは10~20mほどですが、総重量は6615トンにもなるので地球上で最も重い生物になります。

木の寿命には「テロメア」が関係してる?長寿となる2つの理由

上記のことから、木の寿命は動物と比べ物にならないくらい長いということが分かったのではないでしょうか?ここでは、生物の寿命に関与しているとされるテロメアについて理解した後、木の寿命が長くなる2つの要因について学習しましょう。

テロメアとはー生物の寿命に関与しているとされる

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生物を構成している細胞自体にも寿命があります。そしてその細胞の寿命が尽きれば、生物自体も死んでしまうということはイメージしやすいかもしれません。よって、生物が細胞分裂を行い新しい細胞を作る一つの理由として、「生命維持」があげられます。

まだ解明されていないことも多いのですが、多くの研究から細胞分裂を行える回数に制限をつけているのがテロメアだと考えられました。テロメアとは、染色体の端にあり染色体を保護する役割があるものです。通常、テロメアは細胞分裂に伴って短くなり、ある一定の長さにまで短くなった細胞では細胞分裂をすることができません。そうすると、細胞が老化し、病気になるなど生物の体の機能が低下することで死に至ると推測されます。

木の寿命を長くする要因その1:テロメラーゼ

上記で説明したテロメアは動物にも植物に存在するのに、なぜ植物である木の寿命は動物である人よりも長いのでしょうか?それは、テロメアの修復(複製)を行うテロメラーゼという酵素が、木ではすべての細胞にあるのに対して、動物では生殖細胞などの一部の細胞にしかない(または活性化していない)から。これによって、木のすべての細胞は老化せず、それによって木自体の寿命が長くなると考えられるのです。

\次のページで「木の寿命を長くする要因その2:二次成長」を解説!/

木の寿命を長くする要因その2:二次成長

動物では、心臓などの分裂をしない細胞以外のすべてで細胞分裂が繰り返されます。そのため、古い細胞と新しい細胞が入れ替わるように成長。

一方、木では一次成長(枝や根が伸張する成長)と同時に二次成長(幹や枝が肥大する成長)も行われます。二次成長における細胞分裂は内側では行われず、外側の細胞だけで行われるのです。つまり、成長に必要な細胞分裂を行う回数が動物と比べて少なく、エネルギー消費が抑えられます。また、内側の古い細胞は死細胞だけれども、木を支える役割があるのです。

要するに、木は二次成長によってエネルギー消費を抑え、死細胞をも利用することで強く長生きできると考えられます。

木の寿命の測定方法

木の寿命の測定方法

image by Study-Z編集部

木の寿命の測定方法には、年輪年代法や放射性炭素年代測定法、幹のサイズや現在の成長スピードから換算する方法などがあります。

なかでも、1年に1本作られる年輪を数える年輪年代法は、正確に木の年齢を知ることができる方法です。しかし、伐採できない・中心部が腐っているなどの理由で年輪を数えられない木ではこの方法は使えなません。

また近年よく用いられているのは、木に含まれる炭素14を測定し、較正曲線と照らし合わせる放射性炭素年代測定法です。この方法では誤差が生じるというデメリットがあるのですが、より多くのデータが蓄積され、較正曲線の正確さが上がるとその誤差は小さくなると考えられます。

正確な木の寿命を調べるのは難しい

この記事では木の寿命について学習してきましたが、「木の寿命は何年?」という問いに答えるのは非常に困難です。その理由は、人間の数十倍も長生きの木について調査をすることが難しいから。さらに、動物のように移動することができない木の寿命は外的要因によってに左右され、同種であっても寿命に差が出る可能性があるからです。

正確な把握が難しい木の寿命ですが、木の寿命を測定することで、その木が生きてきた年代の状況を読み解くことにつながるかもしれないなんてわくわくしますね。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 木の寿命は何年?測定方法って?長寿なのはなぜ?世界の木長寿ランキングも農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
理科生物細胞・生殖・遺伝

木の寿命は何年?測定方法って?長寿なのはなぜ?世界の木長寿ランキングも農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は、「木の寿命」について学習していこう。

諸君は、神社の御神木の前にある“樹齢○百年”と書かれた立て札を見て、「本当にそんなに生きているのか」と疑問に思ったことはないでしょうか?この記事では、世界の長寿の木トップ3や木の寿命が長い理由とその測定方法について理解していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

そもそも寿命とは?

まず、寿命について理解しましょう。寿命は、以下のように定義されています。

生物の一生の時間をいい、普通は事故や明らかな病気によらない自然死までの年限をさす。多くの個体の平均で表す平均寿命と、もっとも長く生きた個体の寿命で表す最大寿命とがある。

出典:“寿命”.コトバンク.https://kotobank.jp/word/%E5%AF%BF%E5%91%BD-78269,(参照2022/4/12)

木の寿命は数年から数千年と非常に差が大きいので、この記事では木の最大寿命に注目して学習していきましょう。

世界の木長寿ランキング

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日本の縄文杉は、1966年に発見されました。推定樹齢から考えても2000年以上の間同じ場所に存在したのに、発見されたのは意外と最近だということに驚いた人もいるのではないでしょうか?このように、地球上にはいまだ発見されていない長寿の木がたくさん存在すると考えられますが、ここではたまたま人類に発見された木のうち長寿の木について紹介していきます。

第1位 アメリカのイガゴヨウマツ(針葉樹)│通称『メトシェラ』

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カリフォルニア州インヨー国立森林公園で発見されたイガゴヨウマツの中でも、『メトシェラ』と名付けられた木の樹齢は推定4765年。つまり、日本の縄文時代に『メトシェラ』は誕生したということになります。

\次のページで「第2位 イランのイトスギ(針葉樹)」を解説!/

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