今回のテーマは「動物界」です。

世界にはさまざまな生物がいるが、そのうちの”動物”のなかまが属しているのが動物界というグループです。そもそも「〇〇界」というのがどんな分類群なのか、動物界はどんな分類群に細分化できるのか…奥深い分類学の一端をのぞいていこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

すべての”動物”が属する「動物界」

動物界(どうぶつかい)は、生物の分類で登場する分類群の一つです。あらゆる生物を”界”という非常に大きなまとまりにまとめたとき、”動物”のなかまがここにまとめられます。

言い方を変えれば、この動物界に含まれている生物がすべて「動物」のなかまなのです。

"界"とは違う"ドメイン"という分類階級

生物の分類というのは時代とともに変化する可能性があります。一つの生物でも研究者によって意見が異なったり、分類群の考え方に相違があったりするものです。新しい分析手法の発明や、化石の発掘などによって、それまでの定説が覆されることも少なくありません。

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少し前まで、"界"は生物の分類学でもっとも大きな生物のまとめ方=最上位の分類階級でした。ところが、近年は”界”より上に”ドメイン”という分類階級を考えるのがメジャーになっています。

現在考えられているドメインは3つ。「細菌ドメイン」、「古細菌ドメイン」そして「真核細胞ドメイン」で、動物界は真核細胞ドメインに含まれます。

真核細胞ドメインの中の「動物界」

真核細胞ドメインの中の「動物界」

image by Study-Z編集部

真核細胞ドメイン…つまり、真核細胞でできた真核生物が含まれているのが、このドメインです。

今では、”界”は”ドメイン”の下位に位置づけられる分類階級となりました。真核細胞ドメインの生物が、さらに「動物界」や「植物界」などに分けられると考えられています。

真核細胞ドメインをいくつの界に分けるかは、研究者によって意見が異なるのが現状です。また、ドメインの下位を界ではなく”スーパーグループ”という階級で分類しようという考え方もあります。

2022年の時点で、一般的な高校の生物の教科書では、まだドメインの下位に界を想定しているものが多いようです。なので、この記事では広く知られている「真核細胞ドメインのなかの動物界」に話を絞っていきたいと思います。

\次のページで「動物界のなかの”門”」を解説!/

動物界のなかの”門”

従来の考え方では、界の下位には”門”という分類階級を想定します。動物界のなかには、30以上の門があると考えられているんです。以下に一般的な分類群を並べてみましょう。順不同です。

海綿動物門、有櫛動物門、刺胞動物門、平板動物門、珍無腸動物門、棘皮動物門、半索動物門、脊索動物門、腕足動物門、紐形動物門、毛顎動物門、胴甲動物門、動吻動物門、鰓曳動物門、線形動物門、類線形動物門、緩歩動物門、節足動物門、有爪動物門、直泳動物門、二胚動物門、有輪動物門、顎口動物門、微顎動物門、輪形動物門、腹毛動物門、扁形動物門、苔虫動物門、軟体動物門、環形動物門、内肛動物門、箒虫動物門

\次のページで「これは覚えておきたい!代表的な動物界の中の”門”6つ」を解説!/

私たちの周りにはさまざまな”動物”がいますが、これだけの多様な分類群に分けられるんですよね。一口に動物といっても、本当にいろいろなものがいるんだ、というのを実感していただければよいかと思います。

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できればすべての門について詳しい解説を行いたいのですが、少々数が多いので…私たちの生活に特に身近なものや、動物の進化を考えるうえでとくに重要な門をいくつかピックアップしてご紹介していきましょう。

これは覚えておきたい!代表的な動物界の中の”門”6つ

海綿動物門

いろいろな動物の中でも、「動物っぽくない」といわれがちなのが海綿動物門のなかまです。繊維や炭酸カルシウムでできた骨格をもち、とくに繊維でできた海綿動物の骨格は昔からスポンジとして人間の生活に利用されてきました。

多細胞生物としてはかなり原始的な存在で、細胞同士は緩く結合しています。私たちの身体のように、内臓などの器官が明瞭に分かれているわけでもありません。発生の際には内胚葉や中胚葉、外胚葉といった区別がないんです。

刺胞動物門

刺胞とよばれる毒針が収納された細胞をもっている動物のなかまが含まれているのが刺胞動物門。クラゲやイソギンチャク、サンゴなどが該当します。世界には一万種以上が確認されているんです。

刺胞動物は発生時、内胚葉と外胚葉の2層が確認されます(二胚葉性)。内胚葉の部分がいわゆる「内臓」になるのです。海綿動物よりは器官の区別がはっきりしている動物といえるでしょう。

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サンゴは体内に光合成をする微生物を共生させているので、その辺は注意が必要ですね。

棘皮動物門

棘皮動物門は、「棘(とげ)」をもったウニをはじめとする動物がまとめられた分類群です。ウニ以外には、ヒトデやナマコ、ウミユリなどがふくまれます。

ウニとヒトデでは全く似ていないように感じますが、五放射相称であることや、発生の過程などに共通点があるんです。

刺胞動物より複雑な体をしています。発生に内胚葉、中胚葉、外胚葉がみられる三胚葉性です。

\次のページで「軟体動物門」を解説!/

軟体動物門

タコヤイカ、貝類、ウミウシ、カタツムリにナメクジ…やわらかな体が特徴的なのが、軟体動物門の動物たち。動物界に属しているいろいろな門の中でも、特に多様に分化し、多くの種を抱える分類群の一つです。

日本人に身近なタコやイカを見てもわかるように、内臓や筋肉がしっかりあり、神経系も発達しています。

節足動物門

軟体動物門を抜いて、動物界の中で最も多くの種が発見されているのが、節足動物門です。その種数の多さにつながっているのが、多様なたちの存在。昆虫やクモ、さらにはサソリ、エビやカニなど多様な動物が含まれています。

脊索動物門

最後に、私たちヒトの含まれた脊索動物門に言及しましょう。脊索動物門は、生涯のうちに一度は脊索をもつ動物がまとめれた分類群です。脊索動物門の下位には頭索動物亜門、尾索動物亜門、脊椎動物亜門を考えることが多いですが、それらを”亜門”ではなく”門”としてみなす(頭索動物門、尾索動物門、脊椎動物門)考え方もあります。

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人間を含め、背骨のある動物は脊椎動物亜門(もしくは脊椎動物門)のなかまです。哺乳類のほか、鳥類、は虫類、両生類、魚類が含まれます。

もちろん、身近な動物についてよく知り、それを大切にすることはとても重要です。ですが、私たちの眼にとまりやすい「動物」だけでなく、地球上には普段想像もできないような姿かたちの「動物」が存在し、多様な生き方をしているということを忘れないでほしいと思います。

多様な「動物界」の生物たち

『すべての「動物」が属しているのが動物界』…そんな風にこの記事を始めましたが、動物界というまとまりの中には本当に多様な動物たちが存在していることがお分かりいただけたでしょう。

今回ご紹介した動物界の生物は、ごく一部。他の”門”にはどんな動物がいるのか、どんな生活をしているのかをぜひ調べてみてほしいと思います。分類学から生物の世界を紐解くと、その多様さや進化の歴史に感動させられるのです。動物だけではなく、植物も、菌類も、細菌も…色とりどりの生物学へ、歩みを進めてみてくださいね。

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理科生物生物の分類・進化

あらゆる”動物”がここに!「動物界」ってどういうグループ?”界””門”についても現役講師がざっくりわかりやすく解説します

今回のテーマは「動物界」です。

世界にはさまざまな生物がいるが、そのうちの”動物”のなかまが属しているのが動物界というグループです。そもそも「〇〇界」というのがどんな分類群なのか、動物界はどんな分類群に細分化できるのか…奥深い分類学の一端をのぞいていこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

すべての”動物”が属する「動物界」

動物界(どうぶつかい)は、生物の分類で登場する分類群の一つです。あらゆる生物を”界”という非常に大きなまとまりにまとめたとき、”動物”のなかまがここにまとめられます。

言い方を変えれば、この動物界に含まれている生物がすべて「動物」のなかまなのです。

“界”とは違う”ドメイン”という分類階級

生物の分類というのは時代とともに変化する可能性があります。一つの生物でも研究者によって意見が異なったり、分類群の考え方に相違があったりするものです。新しい分析手法の発明や、化石の発掘などによって、それまでの定説が覆されることも少なくありません。

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少し前まで、”界”は生物の分類学でもっとも大きな生物のまとめ方=最上位の分類階級でした。ところが、近年は”界”より上に”ドメイン”という分類階級を考えるのがメジャーになっています。

現在考えられているドメインは3つ。「細菌ドメイン」、「古細菌ドメイン」そして「真核細胞ドメイン」で、動物界は真核細胞ドメインに含まれます。

真核細胞ドメインの中の「動物界」

真核細胞ドメインの中の「動物界」

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真核細胞ドメイン…つまり、真核細胞でできた真核生物が含まれているのが、このドメインです。

今では、”界”は”ドメイン”の下位に位置づけられる分類階級となりました。真核細胞ドメインの生物が、さらに「動物界」や「植物界」などに分けられると考えられています。

真核細胞ドメインをいくつの界に分けるかは、研究者によって意見が異なるのが現状です。また、ドメインの下位を界ではなく”スーパーグループ”という階級で分類しようという考え方もあります。

2022年の時点で、一般的な高校の生物の教科書では、まだドメインの下位に界を想定しているものが多いようです。なので、この記事では広く知られている「真核細胞ドメインのなかの動物界」に話を絞っていきたいと思います。

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