今日は「魚の呼吸」について見ていこう。魚はエラで呼吸をする生物です。耳の付け根の前上方に小さな穴が開いている人がいるが、これは「先天性耳瘻孔」と呼ばれエラの名残です。知ってたか?今日は魚の呼吸について、大学で生物学について学び、今も現役の研究者であるポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で生物学について学び、あらゆる生物の体の機能に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役の研究者ランナー。

魚の呼吸の仕方はどうなってる?

image by iStockphoto

魚は私たち哺乳類と異なり水中で生活しています。魚は水中での生活に適した呼吸法を行っており、これは水中呼吸と呼ばれるものです。哺乳類の肺を使った呼吸法と異なり、魚はエラを使って呼吸をしています

 

 

 

魚の呼吸器官はどこ?どうやって行っているの?

魚の呼吸器官はどこ?どうやって行っているの?

image by Study-Z編集部

多くの魚はエラで呼吸を行っています

魚は口から取り込んだ水に含まれいる酸素をエラを使って体内に取り込むのです。その際に、水中に二酸化炭素を排出し、エラから放出します。魚のエラには無数のひだが並んでいて、ひだに張り巡らされた毛細血管から酸素を取り込み、二酸化炭素を放出することができるのです。

水の流れは、酸素を含んだ水(海水など)→口から取り込む→エラで水中の酸素を吸収→体内の二酸化炭素を水中に放出→二酸化炭素を含んだ水をエラを通して水中(海水など)に放出。になります。

ヒトなどの哺乳類の呼吸とはどう違うの?

ヒトなどの哺乳類と違うのは呼吸に利用する酸素の由来が異なるので、呼吸の方法そのものが異なります。肺呼吸を行う哺乳類は空気中の酸素を利用しますが、魚が利用するのは水中の酸素です

魚はエラを使って酸素と二酸化炭素の交換を行いますが、肺呼吸を行う生物は肺の中にある「肺胞」で行います

魚は地上でも呼吸できる?

魚の中には一部、エラ以外での呼吸法を持つことで地上でも呼吸できる魚もいますが、ほとんどの魚は地上では呼吸ができません

魚が地上で呼吸できないは、エラを使った呼吸は水を介して行われるからです。呼吸には酸素を取り込むとのと同じくらい二酸化炭素の放出(不要物)が大事になります。水がない地上では二酸化炭素の排出ができなくなり、呼吸が成り立たないのです

エラは水の中で呼吸するための器官なので、陸上で生活する哺乳類にとっては不要なものになるので、進化の過程で哺乳類のエラは失われていった(自然淘汰)と考えられています。

自然淘汰については下記の記事を参照ください。

\次のページで「魚の呼吸が速いときや口をパクパクする時は酸欠状態なの?」を解説!/

魚の呼吸が速いときや口をパクパクする時は酸欠状態なの?

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水中の酸素が少なくなると魚も酸欠になります

普段と比べて呼吸(エラの動き)が速い時や、水面に上がってきて口をパクパクさせている時は酸欠の可能性が高いです。

なぜ、魚は空気から酸素を取り込むことができないのに、口をパクパクさせている時に水面に上がってくるのでしょうか?その理由は水面呼吸を行うためです。水の表面と空気が接する水面では、常に空気中から酸素が溶け込むため、酸素が豊富に含まれています。魚たちは、水面スレスレに口先を近づけた姿勢のまま、口やエラを動かすことで、水面直下に存在する酸素豊富な水を吸って呼吸しているのです。

水面呼吸を行う魚にはキンギョ、メダカやグッピーといった水面下を泳ぎ回る小さな魚がいます

魚のなかにも空気呼吸するものがいる?エラ呼吸以外の呼吸ができる魚を紹介

エラを使った呼吸では水中にある酸素しか利用できないので、魚は基本的には空気中の酸素を取り入れる空気呼吸はできません

しかし、一部の魚は酸素を効率よく吸収できるように、エラを使った水中呼吸以外の呼吸法を発達させたものがいます。これらは空気中の酸素を利用できるので、陸上でも少しの間であれば生きていくことができるのです。

具体例1:ドジョウ

Misgurnus anguillicaudatus.jpg
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日本で昔から食べられているドジョウはエラ呼吸以外に腸呼吸や皮膚呼吸ができる魚です

腸呼吸とは水面で口から空気を吸い込み、腸を通ってガス交換を行い、肛門から排気するという呼吸法になります。腸呼吸は水中の溶存酸素量が少なくなるほど頻繁に行われる、これによってドジョウを酸欠から救っているのです。

また、ドジョウは冬眠のため泥や砂にもぐっているときには皮膚でも呼吸します。皮膚呼吸では皮膚から酸素を取り込み、二酸化炭素を放出しているのです

具体例2:ウナギ

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土用の丑の日でも有名なウナギもドジョウと同じように皮膚呼吸を行っています

ウナギを触るとヌルヌルしてつかみづらいですが、このヌルヌルした皮膚が呼吸するために大切です。ヌルヌルで保水することで、皮膚表面に水分をとどめ、皮膚から酸素を取り入れて、二酸化炭素を放出しています。

具体例3:ベタ

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ベタは空気呼吸が可能なラビリンス器官と呼ばれる呼吸器を持つ魚です

ラビリンス器官により、空気中からダイレクトに酸素を取り込めるので、酸素があまり無い悪環境でも生存することができます。

熱帯魚などは水槽に酸素ポンプをつけた状態で飼育するのが普通です。ベタがペットショップなどでコップやビンに入った状態で売られているのを見たことがありませんか?。ベタをこのような方法で飼育できるのは、空気呼吸をできるため、水中が低酸素環境であったとしても生育することが可能だからです。

\次のページで「魚のエラは呼吸以外の役割があるってホント?」を解説!/

魚のエラは呼吸以外の役割があるってホント?

魚のエラは呼吸のために水を出し入れするための器官との認識が一般的です。しかし、魚はエラを呼吸以外にもアンモニアの排出や浸透圧調節のために使用しています

役割1:アンモニアの排出

魚はアンモニアを体外に排出するためにエラを使います

生き物はタンパク質を栄養源として摂取しますが、タンパク質が体内で代謝されるとアンモニアが作られますが、アンモニアは体内とって有害な物質です。哺乳類などはアンモニアは尿素などに形を変えて、糞や尿とともに体外に排出しますが、魚の場合は、エラからアンモニアの形で直接水中に排出するのです。魚はアンモニアの80%以上をエラから排泄し、尿として排泄しているのは20%以下だと言われています。

役割2:浸透圧調節

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魚はエラを使って浸透圧調節も行います。水中、特に海水は塩分を含んでいるので浸透圧調節はとても大事です。魚は水を飲んだり、尿を排出することで、体内の塩分濃度を調節しています。

エラで浸透圧調節を活発に行うのは主に海水魚です。浸透圧に差があると、浸透圧を一定にするために塩濃度の低いところから高いところへ水が流入します。海水魚の体液は海水よりも浸透圧が低いため、そのままでは海水魚は水分を失い、体液中の塩分が増加してしまうのです。 これを避けるために、多くの海水魚は水分の補給のために海水を飲み込み、浸透圧を保つためにエラから能動的に塩分を排出しています。

魚にとってエラは生きていく上で大事なもの

魚にとってエラは大事なものです。エラは呼吸だけでなく、アンモニアの排出や浸透圧調節にも使われます。エラがあるからこそ魚は水中で生きれるのです。人間にはエラがなくなってしまいましたが、エラが残っていれば水中でも生活できたかもしれませんね。身近な生物との違いを調べてみると進化の歴史がわかるので面白いですよ。

いらすと使用元:いらすとや

" /> 魚の呼吸の仕組みはどうなってる?地上でも呼吸できる魚もいる?ヒトとの呼吸の違いも現役の研究者がわかりやすく解説! – Study-Z
体の仕組み・器官理科生き物・植物生物

魚の呼吸の仕組みはどうなってる?地上でも呼吸できる魚もいる?ヒトとの呼吸の違いも現役の研究者がわかりやすく解説!

今日は「魚の呼吸」について見ていこう。魚はエラで呼吸をする生物です。耳の付け根の前上方に小さな穴が開いている人がいるが、これは「先天性耳瘻孔」と呼ばれエラの名残です。知ってたか?今日は魚の呼吸について、大学で生物学について学び、今も現役の研究者であるポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で生物学について学び、あらゆる生物の体の機能に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役の研究者ランナー。

魚の呼吸の仕方はどうなってる?

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魚は私たち哺乳類と異なり水中で生活しています。魚は水中での生活に適した呼吸法を行っており、これは水中呼吸と呼ばれるものです。哺乳類の肺を使った呼吸法と異なり、魚はエラを使って呼吸をしています

 

 

 

魚の呼吸器官はどこ?どうやって行っているの?

魚の呼吸器官はどこ?どうやって行っているの?

image by Study-Z編集部

多くの魚はエラで呼吸を行っています

魚は口から取り込んだ水に含まれいる酸素をエラを使って体内に取り込むのです。その際に、水中に二酸化炭素を排出し、エラから放出します。魚のエラには無数のひだが並んでいて、ひだに張り巡らされた毛細血管から酸素を取り込み、二酸化炭素を放出することができるのです。

水の流れは、酸素を含んだ水(海水など)→口から取り込む→エラで水中の酸素を吸収→体内の二酸化炭素を水中に放出→二酸化炭素を含んだ水をエラを通して水中(海水など)に放出。になります。

ヒトなどの哺乳類の呼吸とはどう違うの?

ヒトなどの哺乳類と違うのは呼吸に利用する酸素の由来が異なるので、呼吸の方法そのものが異なります。肺呼吸を行う哺乳類は空気中の酸素を利用しますが、魚が利用するのは水中の酸素です

魚はエラを使って酸素と二酸化炭素の交換を行いますが、肺呼吸を行う生物は肺の中にある「肺胞」で行います

魚は地上でも呼吸できる?

魚の中には一部、エラ以外での呼吸法を持つことで地上でも呼吸できる魚もいますが、ほとんどの魚は地上では呼吸ができません

魚が地上で呼吸できないは、エラを使った呼吸は水を介して行われるからです。呼吸には酸素を取り込むとのと同じくらい二酸化炭素の放出(不要物)が大事になります。水がない地上では二酸化炭素の排出ができなくなり、呼吸が成り立たないのです

エラは水の中で呼吸するための器官なので、陸上で生活する哺乳類にとっては不要なものになるので、進化の過程で哺乳類のエラは失われていった(自然淘汰)と考えられています。

自然淘汰については下記の記事を参照ください。

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