おっと!危ない...つまずいて転びそうになったぞ!転ばずにすんだのは「姿勢反射」のおかげです。この記事では「姿勢反射」について、大学院で生物学や生理学について学び、人体の仕組みについて詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院で運動や生物学について学び、生理学に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

姿勢反射はどんなもの?その仕組みとは?

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姿勢反射とは、姿勢を維持するために無意識に行われるコントロール機能のことです。バランスが崩れたときなどに無意識に姿勢を正したり、安定させようとしたりする必要があり、この不随意の反射機能のことをいいます。

姿勢反射は、感覚器(目、耳、鼻や皮膚での痛感など)に加えられた刺激に反応して、反射的に筋の緊張や収縮が起こり、これにより、身体の位置や姿勢、平衡を維持することができるのです。

実例としては、電車など乗り物内でよろけそうになった時に、無意識に倒れそうになる側の肢を踏みしめるとか、踏み出すなどしているかと思います。これが姿勢反射です。

姿勢反射はどこで制御される?

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姿勢反射は、延髄、脊髄、中脳が中枢となる場合が多数です。最新の研究では大脳皮質が関与する可能性も報告されています。

多くの反射は大脳皮質を介さないことで速く反応できるのが特徴です。反射を起こすための中枢である延髄、脊髄、中脳などは大脳皮質よりも前にあります。大脳皮質を中継しないので、短い経路で反応が起こすができ、より速く反応することができるのです。

姿勢反射以外に延髄は呼吸や消化、中脳は眼球運動や対光反射などの中枢として機能します。

姿勢反射はどのように分類される

姿勢反射は、体が静止している状態での起こる平衡反射と、運動している状態での起こる平衡性運動反射に分類できます

姿勢反射はさらに、機能の成り立ちからも分類することができ、その分類は局在性平衡反射、体節性平衡反射、汎在性平衡反射です。局在性平衡反射は、体の一部に現れる限局性の反応反射で、体節性平衡反射は1つの体節全体(例えば両足)に現れます。汎在性平衡反射は多くの体節に現れる反応です。

姿勢反射は乳児でも起こる?

姿勢反射は乳児でも起こる?

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姿勢反射は乳児でも認められます。一般的には生後6か月ころより現れ始めるので、姿勢反射があるかどうかは成長の指標になるのです。

乳児は姿勢反射のほかに「原始反射」という反射を持ちます。原始反射とは、お母さんのお腹に宿ってから生まれるもので、赤ちゃんがさまざまな刺激に無意識的に反応する反射動作のことです。姿勢反射と違って新生児期から認められますが、成長とともに反射能力が消失するので生後の一定期間しか認められない限定的な反応になります。 代表的なものでいうと、赤ちゃんの手に指で触れたとき、ぎゅっと握り返してくれるといった行動などです。

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姿勢反射の具体例を紹介

姿勢反射は反射的に筋肉が緊張したり収縮したりすることで、体の位置や姿勢を安定的に保とうとする機能です。私達は無意識に行っているので普段自覚することはありませんが、姿勢反射には様々なものがあります。

具体例1: パラシュート反射

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パラシュート反射はかなり馴染みが深い反射です。突然何か躓いたりして転びそうになった時に、とっさに手を前について体を打たないようにします。これが「パラシュート反射」です。

パラシュート反射は乳児が姿勢反射を獲得したかの指標にもなり乳児検診の際に調べたりもします。乳児を不意に前に倒した時にとっさに手が前に出て体を支えようとするかを見ることで、姿勢反射が備わっているか判断できるのです。行う際は危険ですのでしっかりと腰のあたりを持ったり、クッションを置くなど十分に注意をし、乳児に負担がない範囲で行いましょう。

具体例2: ホッピング反射

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ホッピング反射も馴染みが深いものです。ホッピング反射は立った状態の時に体を前後左右に倒そう(倒れるような力がかかった時)とした際に、倒れないようにその方向に咄嗟に足を踏み出す反応を言います

例えば、電車に乗っているときに急ブレーキなどでバランスを崩した時に、とっさに倒れそうになった方向に足を踏み出すことがあると思いますが、これがホッピング反射です。

具体例3: 立ち直り反射

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立ち直り反射は、姿勢が崩れたときに、重力に抗して頭部や体幹を正しい位置に保ち、直立姿勢を保つ反射です。立ち直り反射があることで動物は直立姿勢を維持できます。

例えば、犬や猫などの4足歩行の動物が高い所から落ちた際に、自然と四肢で着地する姿勢(四肢を突き出した状態)を取っているのは立ち直り反射によるものです。

姿勢反射障害ってどんな異常が出るの?原因はなに?

姿勢反射は延髄や脊髄、中脳、大脳などを中枢にしているので、これらが何らかの原因で障害を負うと、正確な情報伝達が行われなくなり、その症状として姿勢反射障害が現れます

姿勢反射障害になると、体のバランスがうまく保てなくなり、ふらついたり転倒しやすくなったりする。歩き出したのに歩くリズムに体がついていけず止まってしまう。歩き出したら止まれない。方向転換がなかなかできない。姿勢をまっすぐ保つことができず、斜めに傾いていくなどの症状が認められた時に姿勢反射障害と診断されます。

姿勢反射障害には体の柔軟性を高め、筋力を保持・向上させることが大切です。簡単にできる方法としては、マッサージで血流をよくしたり、ストレッチで体を伸展させることが有効になります。

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姿勢反射障害の例1: パーキンソン病

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パーキンソン病の症状として姿勢反射障害が現れます。パーキンソン病は脳内の神経伝達物質であるドーパミンの分泌が減少することが原因です。患者数は日本国内において1,000人に1人〜1.5人ほどといわれており、60代以上の方では100人に1人の発症で、発症年齢は60代後半に多いとされています。パーキンソン病の症状には運動症状と非運動症状があり、姿勢反射障害は運動症状の一つです。他には筋肉の強張りや、ふるえなどがあります。

姿勢反射障害の例2:脳卒中

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脳梗塞、脳出血といった脳卒中など脳血管障害に関連した病気を発症したときに姿勢反射障害が認められる場合があります。これは脳内の神経細胞が壊死するためです。脳卒中は脳内の血管の一部が詰まったり、破れたりすることで起こり、主な原因は動脈硬化と言われています。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化を進行させ、脳卒中の原因になるので注意が必要です。

姿勢反射は体の姿勢や平衡の維持に大事なもの!

姿勢反射は私達の体を守るための大事な反応です。自覚していないだけで無意識にしている反応の多くが姿勢反射ですよ。少し意識してみると姿勢反射だと気づくことができて面白いかもしれませんね。

いらすと使用元:いらすとや

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タンパク質と生物体の機能体の仕組み・器官理科生物

姿勢反射とは?仕組みや具体例、病気との関連について現役の研究者がわかりやすく解説!

おっと!危ない…つまずいて転びそうになったぞ!転ばずにすんだのは「姿勢反射」のおかげです。この記事では「姿勢反射」について、大学院で生物学や生理学について学び、人体の仕組みについて詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院で運動や生物学について学び、生理学に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。

姿勢反射はどんなもの?その仕組みとは?

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姿勢反射とは、姿勢を維持するために無意識に行われるコントロール機能のことです。バランスが崩れたときなどに無意識に姿勢を正したり、安定させようとしたりする必要があり、この不随意の反射機能のことをいいます。

姿勢反射は、感覚器(目、耳、鼻や皮膚での痛感など)に加えられた刺激に反応して、反射的に筋の緊張や収縮が起こり、これにより、身体の位置や姿勢、平衡を維持することができるのです。

実例としては、電車など乗り物内でよろけそうになった時に、無意識に倒れそうになる側の肢を踏みしめるとか、踏み出すなどしているかと思います。これが姿勢反射です。

姿勢反射はどこで制御される?

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姿勢反射は、延髄、脊髄、中脳が中枢となる場合が多数です。最新の研究では大脳皮質が関与する可能性も報告されています。

多くの反射は大脳皮質を介さないことで速く反応できるのが特徴です。反射を起こすための中枢である延髄、脊髄、中脳などは大脳皮質よりも前にあります。大脳皮質を中継しないので、短い経路で反応が起こすができ、より速く反応することができるのです。

姿勢反射以外に延髄は呼吸や消化、中脳は眼球運動や対光反射などの中枢として機能します。

姿勢反射はどのように分類される

姿勢反射は、体が静止している状態での起こる平衡反射と、運動している状態での起こる平衡性運動反射に分類できます

姿勢反射はさらに、機能の成り立ちからも分類することができ、その分類は局在性平衡反射、体節性平衡反射、汎在性平衡反射です。局在性平衡反射は、体の一部に現れる限局性の反応反射で、体節性平衡反射は1つの体節全体(例えば両足)に現れます。汎在性平衡反射は多くの体節に現れる反応です。

姿勢反射は乳児でも起こる?

姿勢反射は乳児でも起こる?

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姿勢反射は乳児でも認められます。一般的には生後6か月ころより現れ始めるので、姿勢反射があるかどうかは成長の指標になるのです。

乳児は姿勢反射のほかに「原始反射」という反射を持ちます。原始反射とは、お母さんのお腹に宿ってから生まれるもので、赤ちゃんがさまざまな刺激に無意識的に反応する反射動作のことです。姿勢反射と違って新生児期から認められますが、成長とともに反射能力が消失するので生後の一定期間しか認められない限定的な反応になります。 代表的なものでいうと、赤ちゃんの手に指で触れたとき、ぎゅっと握り返してくれるといった行動などです。

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