みんなは「暗反応」とはどのような反応で、どこで反応が進むのかを知っているでしょうか。暗反応は光合成の反応過程の一部に当たるのです。暗反応の反応場所や暗反応の発見に至る実験、「明反応」との違いについても生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

暗反応とは?

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光合成の研究が始められたばかりの頃、光合成の反応には光を必要とする「明反応」が起こり、その次に光を必要とせずCO2を吸収する「暗反応」が起こると考えられていました。

今では、暗反応とは、明反応で生成されたNADPHやATPを使ってCO2からグルコースなどの有機化合物を合成する反応を指すことが明らかになったのです。

ベンソンの実験:明反応と暗反応の誕生

ベンソンの実験:明反応と暗反応の誕生

image by Study-Z編集部

アメリカの生物学者であるアンドリュー・ベンソンは、1949年に光合成の仕組みを解明するために、ある実験を行いました。結論として、この実験から光エネルギーを必要とする「明反応」と光エネルギーを必要とせずにCO2を吸収する反応である「暗反応」があるのではないかと推測されたのです。

この実験では4つの区画に分けて光合成の仕組みを明らかにしようとしました。ここでは、上記の図を参考にしながら、4つの区画について解説していきます。

区画1:CO2あり / 暗黒

まずは、植物をCO2がある暗黒下に置きました。これは通常の夜の環境と同じ条件であると言えます。ここでは、植物はCO2を吸収しませんでした。このことからCO2を吸収するには光エネルギーが必要なのではないかと予想されます。

区画2:CO2なし / 光照射

この区画では、CO2がないところで光を照射しました。ここではCO2が存在しないので、もちろんCO2の吸収は起こりませんでした。

\次のページで「区画2’:CO2あり / 暗黒」を解説!/

区画2’:CO2あり / 暗黒

区画2に続き、区画2’では、区画1と同様の条件であるCO2がある暗黒下で植物を置きました。すると、しばらく間CO2の吸収が起こり、その後、CO2の吸収量が徐々に低下していくという結果になったのです。

区画2’では区画1と同じ条件であったにも関わらず、CO2の吸収が起こりましたね。これは植物を暗黒下に置く前に、光を照射したかどうかが関係していることが考えられます。

区画3:CO2あり / 光照射

光を照射しながらCO2がある環境下に植物を置いておくと、CO2の吸収は連続して起こりました。このことから、「光を当てること」と「CO2を吸収すること」は深い関係性にあることが考えられます。

結論:「光を必要とする反応」の後に「光を必要としない反応」が起こる

区画1~区画2’の実験結果から、植物がCO2を吸収するためには、まず光が植物体に当たることで体内にて何かしらの反応が起こりそれにより暗黒下でCO2を吸収するという反応が起こったと考えられます。ベンソンは、この光を当てて起こる反応のことを「明反応」と呼び、暗闇で植物がCO2を吸収するという反応を「暗反応」と呼ぶことにしました。

暗反応の正体とは?

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ベンソンによる実験で、光合成には暗反応と明反応があるのではないかという推論が生まれました。区画1暗反応が起こっている区画2’の条件は同じですが、CO2吸収速度が全く異なるのでしたね。実は、この暗反応が起こっている区画2’では、植物体内で「カルビン・ベンソン回路」によって反応が進行しているのです。このカルビン・ベンソン回路はどういった流れなのか、またどんな材料を使うことで反応が進むのでしょうか。ここからは、暗反応に必要な材料と「カルビン・ベンソン回路」について解説していきます。

暗反応に必要な材料とは?

暗反応に必要な材料とは?

image by Study-Z編集部

暗反応が起こるには、どうやら明反応で生成された「材料」が必要のようでしたね。実はこの「材料」とは、「NADPH」と「ATP」のことなのです。

ここで簡単に明反応について学習しましょう。明反応とは光合成のうち、光を必要とする過程のことでしたね。明反応は、上記の図で示した葉緑体のチラコイドで起こり、大まかに以下のような流れで反応が進みます。

\次のページで「カルビン・ベンソン回路の流れとは?」を解説!/


  1. 光が当たり、チラコイド膜状のクロロフィルaが活性化する。

  2. 活性化したクロロフィルにより、H2Oが水素と酸素に分解される。

  3. チラコイド内で分解されたHが、NADPと結合してNADPHになる。

  4. Hが濃度勾配に従って、チラコイド内からATP合成酵素を通って、チラコイド外に出る時にATPが合成される。

このように明反応の3と4の段階で、NADPHとATPが生成され、これが暗反応のカルビン・ベンソン回路に引き継がれるのです。

カルビン・ベンソン回路の流れとは?

カルビン・ベンソン回路の流れとは?

image by Study-Z編集部

それでは、ここでは暗反応のカルビン・ベンソン回路について学んでいきましょう。

カルビン・ベンソン回路は、上記の図で示した葉緑体のストロマで反応が起こり、以下のような流れで反応が進みます。

\次のページで「ベンソンの実験の補足」を解説!/


  1. RubisCO(酵素)により、CO2がC5化合物のリブロース二リン酸(RuBP)と結合する。(CO2の固定)

  2. C6化合物になり、すぐに2分子のC3化合物であるホスホグリセリン酸(PGA)になる。

  3. PGAは、明反応で生成されたATPと NADPH+Hによってグリセルアルデヒドリン酸(GAP)と水へと変化する。

  4. GAPはATPのエネルギーを使うことでグルコース(C6H12O6が生成される。

このように暗反応は明反応で作られた材料を使うことで、CO2から有機化合物であるグルコースを生成するのです。

ベンソンの実験の補足

カルビン・ベンソン回路の流れを学んだところで、ここではベンソンの実験について補足説明しますね。

区画2’と区画3でCO2の吸収速度が上がっているのは、暗反応であるカルビン・ベンソン回路が機能しCO2が固定されているからだと分かりますね。また、区画2’でCO2の吸収速度が徐々に落ちているのは、暗反応に必要なNADPHとATPが不足してきたからだと考えられます。これを裏付けているのが、区画3です。区画3では、光を照らすことから明反応が起こり、常にカルビン・ベンソン回路にNADPHとATPを補充されています。そのため、CO2の吸収速度は落ちることなく、ある一定の速度を保っているのです。

暗反応はカルビン・ベンソン回路の反応!

暗反応は、カルビン・ベンソン回路での反応のことで、明反応で生成されたNADPHやATPを使ってCO2からグルコースなどの有機化合物を合成するのでしたね。ベンソンによる実験の考察問題は入試問題でよく登場するので、理解しておくと良いですよ。また、明反応と暗反応を発見した光合成の流れを理解するには化学式を覚えることも不可欠になり大変ですが、得点源にもなる範囲なのでしっかりと復習しておきましょう!

イラスト引用元:いらすとや

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理科環境と生物の反応生き物・植物生物

暗反応とは?明反応との違いや反応場所について現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは「暗反応」とはどのような反応で、どこで反応が進むのかを知っているでしょうか。暗反応は光合成の反応過程の一部に当たるのです。暗反応の反応場所や暗反応の発見に至る実験、「明反応」との違いについても生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

暗反応とは?

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光合成の研究が始められたばかりの頃、光合成の反応には光を必要とする「明反応」が起こり、その次に光を必要とせずCO2を吸収する「暗反応」が起こると考えられていました。

今では、暗反応とは、明反応で生成されたNADPHやATPを使ってCO2からグルコースなどの有機化合物を合成する反応を指すことが明らかになったのです。

ベンソンの実験:明反応と暗反応の誕生

ベンソンの実験:明反応と暗反応の誕生

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アメリカの生物学者であるアンドリュー・ベンソンは、1949年に光合成の仕組みを解明するために、ある実験を行いました。結論として、この実験から光エネルギーを必要とする「明反応」と光エネルギーを必要とせずにCO2を吸収する反応である「暗反応」があるのではないかと推測されたのです。

この実験では4つの区画に分けて光合成の仕組みを明らかにしようとしました。ここでは、上記の図を参考にしながら、4つの区画について解説していきます。

区画1:CO2あり / 暗黒

まずは、植物をCO2がある暗黒下に置きました。これは通常の夜の環境と同じ条件であると言えます。ここでは、植物はCO2を吸収しませんでした。このことからCO2を吸収するには光エネルギーが必要なのではないかと予想されます。

区画2:CO2なし / 光照射

この区画では、CO2がないところで光を照射しました。ここではCO2が存在しないので、もちろんCO2の吸収は起こりませんでした。

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