ピカピカだった金属が茶色くボロボロになってしまう錆、一度は見たことがあるでしょう。そもそも、どうして金属が錆びてしまうか説明できるか?

金属が酸化すると、酸化物ができるが、これを錆と呼んでいる。ただの酸化反応にも見えるが、実は複数の反応が起きているぞ!今回はどうして金属が錆びてしまうのか、具体的な化学反応と錆を防ぐにはどのような方法があるのか、化学に詳しいライターリックと一緒に紹介していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

錆とは何なのか、イメージできますか?

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ピカピカだった金属が時間の経過とともにだんだんと茶色くボロボロになっていく現象…一度は見たことありますよね。金属が錆びていく現象です。はじめはキレイな金属も時間が経つと錆びていくのは常識ですよね。ただ、どうして金属は錆びてしまうのか?金属表面でどんな反応が起きているのか、説明できる人は少ないと思います。

今回は錆とは何なのか、そして、どのような反応で金属が錆びてしまうのか解説していきますね。

まずは錆の正体をチェック

まずは、錆とは何なのか、紹介していきますね。wikipediaで「錆」と調べると、下のように出てきます。

金属の表面の不安定な金属原子が環境中の酸素や水分などと酸化還元反応を起こして生成される腐食物

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8C%86

つまり、表面の金属原子が酸素分子や水分子と反応し、別の物質に変化する。この物質が錆なんですね。

実は、ほとんどの金属は錆びる?

実は、ほとんどの金属は錆びる?

image by Study-Z編集部

錆びる金属の代表例は、です。しかし、実はどんな金属でも錆びます。金属が錆びる反応が始まるきっかけは、金属原子がイオン化して金属表面の水滴中に溶けだしていくことです。

つまり、金属がイオン化することが錆びのはじまりということ。金属のイオン化しやすさを表にしたものがありましたが、覚えていますか?イオン化傾向ですね。イオン化傾向は金属をイオン化しやすい順に並べた表ですが、イオン化しやすい金属ほど、錆びやすいということになるんです。

そのため、鉄よりもイオン化傾向が大きいアルミニウムや亜鉛はイオン化して水中に溶けだしやすいので、錆びは進行します。さらに、鉄よりもイオン化傾向が小さい銅も空気中においておけばだんだんと錆びていくんです。

\次のページで「物質はどうやって錆びていく?」を解説!/

最もイオン化傾向が小さいのがです。金は基本的に錆びません。ただ、ジュエリーに使われる金が錆びているのを見たことある人もいるのではないでしょうか。

ジュエリーに使われる金は、ほとんどが「金とほかの金属の合金」です。そのため、金が錆びてしまったように見えますが、金よりもイオン化傾向が大きいほかの金属が錆びてしまっているんですよ。

物質はどうやって錆びていく?

ここからは、どのようにして金属が錆びてしまうのか、化学反応を交えて解説していきます。よく錆びる金属として紹介されるのが鉄ですよね。ここでも鉄を例にして解説していきます。

鉄が錆びる化学反応とは

まずは濡れた鉄の表面を見てみましょう。初めに起きることは、水滴中に空気中の酸素が吸収されることです。そして、水滴に触れている鉄原子が鉄イオンと電子に分かれて水滴中に溶けこんでいきます。次の反応は、水分子と酸素分子の酸化還元反応による、水酸化物イオンの生成です。

そして、水酸化物イオンと鉄イオンが反応すると、水酸化鉄(Ⅱ)ができます。さらに酸化が進むと、水酸化鉄(Ⅲ)、そして酸化鉄(Fe2O3)へと変化していくんです。酸化鉄(Fe2O3)が一般的な赤錆と呼ばれています。

鉄の酸化と聞くと水は関係なさそうと思えますが、金属表面に水滴がついていないと金属原子がイオン化できないので、そもそも反応が始まりません。

金属の錆を防ぐには、どうすればいい?

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ここまでは、金属が錆びてしまう化学反応を解説してきました。ここからは、どうしたら金属の錆を防ぐことができるか、防錆方法を一覧で紹介します。そして、テストでもよく出題される防錆方法の「メッキ加工」をピックアップして解説していきますね。

\次のページで「テストでも頻出?トタンとブリキとは」を解説!/

・ ふき取り、洗浄

・ 防錆塗料、スプレーでコーティング

・ 乾燥、除湿

・ メッキ加工

・ 耐食性のある金属との合金

テストでも頻出?トタンとブリキとは

鉄を錆から防ぐ方法の一つに「メッキ加工」と呼ばれる手法があります。メッキ加工は金属を別を金属で覆う方法です。メッキ加工には、鉄を亜鉛でコーティングした「トタン」鉄をスズでコーティングした「ブリキ」が一般的に知られています。

トタンとブリキはテストでもよく出題されるので、ぜひチェックしておいてください。

鉄を亜鉛で覆うメッキ加工「トタン」とは

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トタンは鉄の表面を亜鉛でコーティングすることで、鉄を錆から守る手法です。ココでもポイントになるのはイオン化傾向。亜鉛と鉄を比べるとイオン化傾向が高いのは亜鉛でした。つまり亜鉛の方が鉄よりもイオンになりやすいんです。

鉄を亜鉛でコーティングしたトタンに傷が入ったとき、亜鉛と鉄の2つの金属が表面に出てきます。そこに水が入ると、イオン化傾向の大きい亜鉛が優先的にイオン化して水滴中に溶け出していくんです。そのため、亜鉛が酸化還元反応の反応物になり、鉄はイオン化しないで、酸化還元反応には加わりません。つまり鉄は錆ないということです。

鉄の代わりに亜鉛が酸化され鉄を守る。それがトタンです。トタンは傷がつく前提で使われるため、主に屋外で使われます。

鉄をスズで覆うメッキ加工「ブリキ」とは

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ブリキは鉄の表面をスズでコーティングして、鉄を錆から守る手法です。スズと鉄のイオン化傾向は、鉄の方が大きいので、スズに比べて鉄の方がイオン化しやすいんですね。

ブリキはトタンと異なり、傷が入ることを前提にしたメッキ加工ではありません。スズは錆びにくい金属の一つなので、スズで鉄を完全にコーティングすることで鉄を錆から守っているんです。そのため、ブリキ表面に傷が入ってしまい鉄が表面に出てきてしまうと鉄の部分から錆が進行します。

ブリキは傷には弱いですが、傷つかなければいつまでもスズの金属光沢を維持できるんです。そのため屋外では使われず、おもちゃなどの屋内用途に使われます。

「錆の発生」や「防錆」にも実は、複雑な化学反応が隠れていた

今回は錆がどのようにしてできるか、化学反応を交えて解説しました。錆は金属が酸化する現象ですが、その化学反応には、実は水も大きな役割を果たしていたんです。

錆は、金属が酸化するだけの反応に見えますが、実は、複雑な反応が起きています。錆びる反応には金属のイオン化傾向も関わっているので、ぜひチェックしておいてください!

そして、錆びから金属を守る方法も紹介しました。特に鉄を錆から守る手法の「メッキ加工」はテストでも出題されるポイントなので、ぜひチェックしておいてください!

" /> 錆って何?なぜ金属は錆びるの?錆びる仕組みや反応と錆を防ぐ方法を理系ライターが紹介 – ページ 3 – Study-Z
化学理科

錆って何?なぜ金属は錆びるの?錆びる仕組みや反応と錆を防ぐ方法を理系ライターが紹介

・ ふき取り、洗浄

・ 防錆塗料、スプレーでコーティング

・ 乾燥、除湿

・ メッキ加工

・ 耐食性のある金属との合金

テストでも頻出?トタンとブリキとは

鉄を錆から防ぐ方法の一つに「メッキ加工」と呼ばれる手法があります。メッキ加工は金属を別を金属で覆う方法です。メッキ加工には、鉄を亜鉛でコーティングした「トタン」鉄をスズでコーティングした「ブリキ」が一般的に知られています。

トタンとブリキはテストでもよく出題されるので、ぜひチェックしておいてください。

鉄を亜鉛で覆うメッキ加工「トタン」とは

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トタンは鉄の表面を亜鉛でコーティングすることで、鉄を錆から守る手法です。ココでもポイントになるのはイオン化傾向。亜鉛と鉄を比べるとイオン化傾向が高いのは亜鉛でした。つまり亜鉛の方が鉄よりもイオンになりやすいんです。

鉄を亜鉛でコーティングしたトタンに傷が入ったとき、亜鉛と鉄の2つの金属が表面に出てきます。そこに水が入ると、イオン化傾向の大きい亜鉛が優先的にイオン化して水滴中に溶け出していくんです。そのため、亜鉛が酸化還元反応の反応物になり、鉄はイオン化しないで、酸化還元反応には加わりません。つまり鉄は錆ないということです。

鉄の代わりに亜鉛が酸化され鉄を守る。それがトタンです。トタンは傷がつく前提で使われるため、主に屋外で使われます。

鉄をスズで覆うメッキ加工「ブリキ」とは

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ブリキは鉄の表面をスズでコーティングして、鉄を錆から守る手法です。スズと鉄のイオン化傾向は、鉄の方が大きいので、スズに比べて鉄の方がイオン化しやすいんですね。

ブリキはトタンと異なり、傷が入ることを前提にしたメッキ加工ではありません。スズは錆びにくい金属の一つなので、スズで鉄を完全にコーティングすることで鉄を錆から守っているんです。そのため、ブリキ表面に傷が入ってしまい鉄が表面に出てきてしまうと鉄の部分から錆が進行します。

ブリキは傷には弱いですが、傷つかなければいつまでもスズの金属光沢を維持できるんです。そのため屋外では使われず、おもちゃなどの屋内用途に使われます。

「錆の発生」や「防錆」にも実は、複雑な化学反応が隠れていた

今回は錆がどのようにしてできるか、化学反応を交えて解説しました。錆は金属が酸化する現象ですが、その化学反応には、実は水も大きな役割を果たしていたんです。

錆は、金属が酸化するだけの反応に見えますが、実は、複雑な反応が起きています。錆びる反応には金属のイオン化傾向も関わっているので、ぜひチェックしておいてください!

そして、錆びから金属を守る方法も紹介しました。特に鉄を錆から守る手法の「メッキ加工」はテストでも出題されるポイントなので、ぜひチェックしておいてください!

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