ランタンという元素を知っているか?キャンプなどに持っていくものじゃないぞ。ランタンとは、周期表で見ると第3族の希土類元素のひとつです。電子機器などのハイテク産業や光学分野で注目されている。
今回はそんなランタンという元素について、大学時代は化学専攻だったライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

ランタンについて知ろう!

image by iStockphoto

ランタンは、周期表で見ると第3族に位置していますね。第3族のうち、原子番号89~103までのアクチノイドを除く、第4~6周期までの元素を総称して希土類元素、またはレアアースと呼びます。また原子番号57~71の元素は、性質が似ていることから総称してランタノイドと呼ばれ、ランタンが基準の元素となっているのです。

このランタンとは、どのような元素なのかを学んでいきましょう。

ランタンの特徴・性質

ランタンの特徴・性質

image by Study-Z編集部

ランタンは原子番号57、原子記号はLaと表す遷移金属の元素です。展性、延性のある銀白色の柔らかい金属で、地殻には約32ppm(0.0032%)存在しています。非常に弱い常時性を持ち、融点は920℃と低いです。ランタンは通常酸化数+3を作るため、3つの価電子を放出し、希ガスであるキセノンの安定配置となります。

またランタンは、ランタノイドの中で最大の原子半径を持っているので、最も反応性が高いといえますね。

ランタンの歴史・由来

1751年、スウェーデンの鉱物学者であるアクセル・フレンドリク・クルーンステットが鉱山から発見した重い鉱物が始まりです。その後、約80年以上に渡りさまざまな学者が研究を続け、1839年にスウェーデンの外科医であり化学者のカール・グスタフ・モサンデルによってランタンが発見されました

ランタンという名前は、古代ギリシア語のlanthanein(隠れる)が由来とされています。これは、ランタンがセリウムの性質と似ていて見つけるのが難しかったためつけられたと考えられますね。

ランタンはどこで産出される?

Monazite acid cracking process.svg
投稿者自身による作品 - Based on File:Monazit opening acid.gif, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ランタンは希土類族の鉱物に含まれています。モナザイト(CePO₄)やバストネサイト({(Ce,La)(CO₃)F})などの鉱物にはランタノイドが含まれており、ランタンはこの中の約4分の1を構成しているのです。

まず、鉱物は最初に砕いておいて、高温の濃硫酸で処理。すると二酸化炭素、フッ化水素、四フッ化ケイ素が残留します。生成物に水を加えて乾燥させると、溶解中にランタンを含むランタノイドのイオンが残るのです。

これを溶媒抽出法で分離し、溶融塩電解法によってランタンを得ることができます。

\次のページで「ランタンの利用例を4つ紹介!」を解説!/

ランタンの利用例を4つ紹介!

では、ランタンは具体的に何に利用されているのでしょうか?ランタンの利用例をいくつか見ていきましょう。

ハイブリットカーの水素電池に!

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日本の車には、ニッケル水素電池が使われているのは知っていますか?ニッケル水素電池とは、正極にニッケル酸化化合物、負極に水素を含む水素吸蔵合金が用いられます。ランタンをニッケルと反応させ生成されたニッケル化ランタン(LaNi₅)は、水素吸蔵合金として注目されているのです。

ここで、水素吸蔵合金について学びましょう。まず、水素と相性が良い金属元素が水素と反応して水素化物を作ります。これらを含む2種類以上の金属と混ぜると、圧力や温度を利用して簡単に水素を取り込んだり放出したりできる合金が生成されるのです。これを水素吸蔵合金といいます。

ハイブリットカーの生産には大量のランタンが必要となるでしょう。しかしランタン単体を得るにはコストがかかるので、代わりにランタンを50%以上含むミッシュメタルが使われています

セラミック・コンデンサ

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電子機器には必ず、電気を蓄える役割を持つコンデンサが入っています。その中でもランタンが使われているのがセラミック・コンデンサです。セラミック・コンデンサとは、誘電体にセラミックを利用した無極性のコンデンサのことをいいます。このセラミック・コンデンサは主に低誘電率系と高誘電率系の2種類あり、酸化ランタン(La₂O₃)は比誘電率がε=27なので低誘電率系で利用されているのです。

低誘電率系のセラミック・コンデンサは、コンデンサの両極間の電位差を上げるのに必要な電気量が少なく、温度による変化が小さいという特徴があります。

カメラの光学レンズにも!光学産業に必要

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ランタンの酸化物である酸化ランタン(La₂O₃)カメラの光学レンズなど、さまざまな高屈折率ガラスに用いられています。高屈折率ガラスは別のガラスと組み合わせて波長の分散を改善するため、色消しレンズやイメージングレンズなどにも利用されているのです。

光学ガラスを作るのに必要な原料は約5~15種類。これらを調合して1度ガラスを生成します。棒状や板状になったガラスには小さい泡や異物が混入しているため、これらを取り除いたものが製品化されているのですね。

また、ランタンのフッ化物である三フッ化ランタン(La₃)は、重フッ化ガラスに必要な成分です。このガラスは赤外線の透過率に優れているので、光ファイバの通信システムにも利用されています。

\次のページで「医療分野では?」を解説!/

医療分野では?

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ランタンは、一部の細菌には必要不可欠ですが、人や他の生物に対して有益な役割は現在発見されていません。

しかし、ランタンの化合物である炭酸ランタンは、末期の腎疾患にみられる高リン血症において、過剰なリン酸塩を吸収する薬として承認されています。厳しい食事制限はせずにリンを下げるため、一般的な透析治療にはリン吸着薬が使われているのです。

腸管内で陽イオンとなり、食べ物から遊離したリン酸イオンと結合して非吸収性のリン酸ランタンが生成します。よって、食べ物からのリン吸収をおさえることができるのです。ランタンは腸管吸収率が低いと言われていますが、長期の臓器蓄積効果については慎重に観察する必要があります。

ランタンはハイテク産業に必要な元素!

ランタンは希土類元素、またはレアアースと呼ばれる元素のひとつです。ランタノイドというランタンが基準となる分類もあることも覚えておきましょう。

また、ランタンは自動車や電子機器などのハイテク産業の分野で注目されています。ハイブリットカーは環境に優しく、地球温暖化の原因となる排気ガスを抑えることが可能なので、今後さらに多く生産されるでしょう。それに伴いランタンの使用量も増えていきますね。

ランタンは、他にもセラミック・コンデンサや光学ガラスなどにも利用されていることから、今後のわたしたちの生活に欠かせない元素といえます。医療分野での活躍も期待ですね。

" /> ランタンとはどんな元素?何に使われてる?特徴や由来、産出方法や利用例などを理系ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
化学理科

ランタンとはどんな元素?何に使われてる?特徴や由来、産出方法や利用例などを理系ライターが徹底わかりやすく解説!


ランタンという元素を知っているか?キャンプなどに持っていくものじゃないぞ。ランタンとは、周期表で見ると第3族の希土類元素のひとつです。電子機器などのハイテク産業や光学分野で注目されている。
今回はそんなランタンという元素について、大学時代は化学専攻だったライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

ランタンについて知ろう!

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ランタンは、周期表で見ると第3族に位置していますね。第3族のうち、原子番号89~103までのアクチノイドを除く、第4~6周期までの元素を総称して希土類元素、またはレアアースと呼びます。また原子番号57~71の元素は、性質が似ていることから総称してランタノイドと呼ばれ、ランタンが基準の元素となっているのです。

このランタンとは、どのような元素なのかを学んでいきましょう。

ランタンの特徴・性質

ランタンの特徴・性質

image by Study-Z編集部

ランタンは原子番号57、原子記号はLaと表す遷移金属の元素です。展性、延性のある銀白色の柔らかい金属で、地殻には約32ppm(0.0032%)存在しています。非常に弱い常時性を持ち、融点は920℃と低いです。ランタンは通常酸化数+3を作るため、3つの価電子を放出し、希ガスであるキセノンの安定配置となります。

またランタンは、ランタノイドの中で最大の原子半径を持っているので、最も反応性が高いといえますね。

ランタンの歴史・由来

1751年、スウェーデンの鉱物学者であるアクセル・フレンドリク・クルーンステットが鉱山から発見した重い鉱物が始まりです。その後、約80年以上に渡りさまざまな学者が研究を続け、1839年にスウェーデンの外科医であり化学者のカール・グスタフ・モサンデルによってランタンが発見されました

ランタンという名前は、古代ギリシア語のlanthanein(隠れる)が由来とされています。これは、ランタンがセリウムの性質と似ていて見つけるのが難しかったためつけられたと考えられますね。

ランタンはどこで産出される?

Monazite acid cracking process.svg
投稿者自身による作品 – Based on File:Monazit opening acid.gif, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ランタンは希土類族の鉱物に含まれています。モナザイト(CePO₄)やバストネサイト({(Ce,La)(CO₃)F})などの鉱物にはランタノイドが含まれており、ランタンはこの中の約4分の1を構成しているのです。

まず、鉱物は最初に砕いておいて、高温の濃硫酸で処理。すると二酸化炭素、フッ化水素、四フッ化ケイ素が残留します。生成物に水を加えて乾燥させると、溶解中にランタンを含むランタノイドのイオンが残るのです。

これを溶媒抽出法で分離し、溶融塩電解法によってランタンを得ることができます。

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