水爆と太陽の原理は同じ?水爆の原理を応用した核融合炉についても農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!
諸君は、太陽と水爆の原理が同じと聞いてどう思うでしょうか?水爆を作り出している人類は理論上、太陽を作り出すことも可能であると考えることもできるでしょう。しかし、この記事を読むとそれは非常に困難であることが理解できる。この記事では、水爆と太陽のエネルギー発生の原理やその原理を応用した核融合炉について見て行こう。
高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。
ライター/園(その)
数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。
水爆とは
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水爆とは水素爆弾のことで、重水素と三重水素を核融合させて高エネルギーを生み出す核兵器の一種です。
水素爆発との違い
水素爆弾と聞いて、理科の実験で行った水素爆発のことを思い出した人もいるかもしれません。しかし、水素爆弾の原理と水素爆発は全くの別物で、水素爆弾で起きている反応は核融合反応、水素爆発で起きている反応は燃焼反応になります。核融合反応については次の章で詳しく説明するので、ここでは水素の燃焼反応について見ていきましょう。
水素の燃焼反応とは、以下の式で表すことができます。
2H2+O2→2H2O
このように水素は酸素と反応して、燃焼・爆発しやすい性質がありますが、核融合反応とは比べ物にならないくらいの小さな威力しかありません。
水爆と太陽の原理は同じ
皆さん、太陽を思い浮かべてみてください。太陽は、温かいし明るいですよね?ですが、燃えているわけではありません。そもそも、宇宙空間には酸素がないので燃焼することはできないのです。ではどうして、太陽は燃えているように見えるのでしょうか?それは、水爆と同じように水素の核融合によってとてつもなく大きなエネルギーを生み出しているから。
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水爆における核融合
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まず、核融合とは元素の原子核どうしが融合(合体)すること。核融合は、原子核を同じところに集めるだけでは起こりません。理由は、原子核がプラスの電荷をもっていてお互い反発しあうから。そのため核融合を起こすには、高温にして原子核の運動を高め、高圧にして原子核同士がぶつかりやすい状況にする必要があります。
水爆においては、水素の同位体である重水素の原子核と三重水素の原子核が融合し、ヘリウムの原子核ができるときに発生する強大なエネルギーが爆発という形で現れるのです。
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原爆が起爆剤
原爆を起爆剤にしなければならない理由は、水爆の核融合において高温・高圧の条件が必須だから。水素爆弾の内部に搭載された原爆は、核分裂によって大きなエネルギーを発生させます。このエネルギーによって、水素爆弾の燃料である重水素と三重水素の核融合に必要な高温・高圧の状態を作り出すのです。よって、水素爆弾が爆発するまでには以下の3つの段階があります。
1. 原子爆弾の爆発により、爆弾内部が高温・高圧になる
2. 重水素と三重水素の原子核が核融合
3. 核融合によって発生した中性子によって核分裂が開始し、水素爆弾が爆発する
太陽の原理
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太陽は、中心部の温度が約1600万度、気圧が2000億気圧と核融合に必須の超高温・超高圧の条件がそろっています。さらに、太陽の3/4は水素でできていて、その水素の原子核4個が核融合して、1個のヘリウム原子核になるときに発生する超強力なエネルギーによって太陽が燃えているように見えるのです。
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