今回は、「水爆の原理」について学習していこう。

諸君は、太陽と水爆の原理が同じと聞いてどう思うでしょうか?水爆を作り出している人類は理論上、太陽を作り出すことも可能であると考えることもできるでしょう。しかし、この記事を読むとそれは非常に困難であることが理解できる。この記事では、水爆と太陽のエネルギー発生の原理やその原理を応用した核融合炉について見て行こう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

水爆とは

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Photo courtesy of National Nuclear Security Administration / Nevada Site Office - This image is available from the National Nuclear Security Administration Nevada Site Office Photo Library under number XX-11. This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required., パブリック・ドメイン, リンクによる

水爆とは水素爆弾のことで、重水素と三重水素を核融合させて高エネルギーを生み出す核兵器の一種です。

水素爆発との違い

水素爆弾と聞いて、理科の実験で行った水素爆発のことを思い出した人もいるかもしれません。しかし、水素爆弾の原理と水素爆発は全くの別物で、水素爆弾で起きている反応は核融合反応、水素爆発で起きている反応は燃焼反応になります。核融合反応については次の章で詳しく説明するので、ここでは水素の燃焼反応について見ていきましょう。

水素の燃焼反応とは、以下の式で表すことができます。

2H2+O2→2H2O

このように水素は酸素と反応して、燃焼・爆発しやすい性質がありますが、核融合反応とは比べ物にならないくらいの小さな威力しかありません。

水爆と太陽の原理は同じ

皆さん、太陽を思い浮かべてみてください。太陽は、温かいし明るいですよね?ですが、燃えているわけではありません。そもそも、宇宙空間には酸素がないので燃焼することはできないのです。ではどうして、太陽は燃えているように見えるのでしょうか?それは、水爆と同じように水素の核融合によってとてつもなく大きなエネルギーを生み出しているから。

水爆における核融合

水爆における核融合

image by Study-Z編集部

まず、核融合とは元素の原子核どうしが融合(合体)すること。核融合は、原子核を同じところに集めるだけでは起こりません。理由は、原子核がプラスの電荷をもっていてお互い反発しあうから。そのため核融合を起こすには、高温にして原子核の運動を高め、高圧にして原子核同士がぶつかりやすい状況にする必要があります。

水爆においては、水素の同位体である重水素の原子核と三重水素の原子核が融合し、ヘリウムの原子核ができるときに発生する強大なエネルギーが爆発という形で現れるのです。

原爆が起爆剤

原爆を起爆剤にしなければならない理由は、水爆の核融合において高温・高圧の条件が必須だから。水素爆弾の内部に搭載された原爆は、核分裂によって大きなエネルギーを発生させます。このエネルギーによって、水素爆弾の燃料である重水素と三重水素の核融合に必要な高温・高圧の状態を作り出すのです。よって、水素爆弾が爆発するまでには以下の3つの段階があります。

1. 原子爆弾の爆発により、爆弾内部が高温・高圧になる

2. 重水素と三重水素の原子核が核融合

3. 核融合によって発生した中性子によって核分裂が開始し、水素爆弾が爆発する

太陽の原理

image by iStockphoto

太陽は、中心部の温度が約1600万度、気圧が2000億気圧と核融合に必須の超高温・超高圧の条件がそろっています。さらに、太陽の3/4は水素でできていて、その水素の原子核4個が核融合して、1個のヘリウム原子核になるときに発生する超強力なエネルギーによって太陽が燃えているように見えるのです。

\次のページで「水爆の威力」を解説!/

水爆の威力

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広島や長崎に原爆が落とされた日本人として、原爆の威力のすさまじさを知らない人はほとんどいないでしょう。しかし、残念なことに水爆の威力は原爆の威力のはるか上をいきます。なぜなら、核融合反応は、核融合の材料となる物質を追加した分だけエネルギーを大きくできるという性質があるからです。

例えば、ソビエト連邦が開発した史上最大の水素爆弾「ツァーリ・ボンバ」。その威力は、広島に投下された原子爆弾の3300倍にも及び、その衝撃波は地球を3周したそうです。

中性子爆弾

第三の核兵器とも呼ばれる中性子爆弾ですが、原理は水素爆弾と同じ核融合反応によるものです。中性子爆弾と一般的な水爆との違いは以下の2つがあげられます。

・原爆や水爆で発生する爆風(威力)がこれら2つに比べて小さい

・特に生物に悪影響を及ぼす中性子線の放出量を増大させている

\次のページで「水爆の原理を応用した核融合炉の研究」を解説!/

水爆の原理を応用した核融合炉の研究

ここまでの学習で、水爆はとてつもなく大きなエネルギーを生み出せるということが分かったかと思います。そのため、このエネルギーを発電に利用できないかと世界中の企業が研究しているのが核融合炉なのです。

核融合炉のメリット

image by iStockphoto

現在世界の発電において大半を占める火力発電。その燃料となる石炭や天然ガスは枯渇する可能性があり、地球温暖化にもつながることから早急に代替エネルギーを必要としています。そこで注目されているのが核融合炉。その核融合炉のメリットを見てみましょう。

・燃料となる水素は枯渇せず、持続的に利用できる

・二酸化炭素を放出せず、環境にやさしい

・原子力発電のように大量の放射性物質をつくらない

・原理的に原子力発電に比べて暴走をおこしにくいため安全性が高い

核融合炉の実用化が難航している理由

上記のように多くのメリットがあるにもかかわらず、いまだ実用化には至っていない理由としては、以下の3つがあげられます。

・核融合反応を継続させるための条件(超高温・超高圧)を維持するのに多大なエネルギーが必要

・超高温・超高圧に耐えられる施設の確立が不十分

・開発に多額の費用と大規模の施設が必要

人類は現段階では太陽を作れない

水爆の原理とその原理を応用した核融合炉について理解したあなた。水爆を作ることができた人類がどうして太陽を作れないのか理解できたでしょうか?その答えは、核融合炉の実用化が難航している理由に挙げられています。もし太陽を作るとしたら、1600万度・2000億気圧の条件を維持できる設備が必要になりますよね?そのため、現段階では太陽を作り出すのは難しいということです。

しかし、近い将来の運転を目指し、日本を含む世界各国が共同で「地上の太陽」とも呼ばれる核融合炉の開発を行っています。水爆という兵器の開発ではなく、核融合炉によるクリーンな発電が実現され、少しでも環境の負担が減ることに期待しましょう。

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化学原子・元素物質の状態・構成・変化理科

水爆と太陽の原理は同じ?水爆の原理を応用した核融合炉についても農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は、「水爆の原理」について学習していこう。

諸君は、太陽と水爆の原理が同じと聞いてどう思うでしょうか?水爆を作り出している人類は理論上、太陽を作り出すことも可能であると考えることもできるでしょう。しかし、この記事を読むとそれは非常に困難であることが理解できる。この記事では、水爆と太陽のエネルギー発生の原理やその原理を応用した核融合炉について見て行こう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

水爆とは

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Photo courtesy of National Nuclear Security Administration / Nevada Site Office – This image is available from the National Nuclear Security Administration Nevada Site Office Photo Library under number XX-11. This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required., パブリック・ドメイン, リンクによる

水爆とは水素爆弾のことで、重水素と三重水素を核融合させて高エネルギーを生み出す核兵器の一種です。

水素爆発との違い

水素爆弾と聞いて、理科の実験で行った水素爆発のことを思い出した人もいるかもしれません。しかし、水素爆弾の原理と水素爆発は全くの別物で、水素爆弾で起きている反応は核融合反応、水素爆発で起きている反応は燃焼反応になります。核融合反応については次の章で詳しく説明するので、ここでは水素の燃焼反応について見ていきましょう。

水素の燃焼反応とは、以下の式で表すことができます。

2H2+O2→2H2O

このように水素は酸素と反応して、燃焼・爆発しやすい性質がありますが、核融合反応とは比べ物にならないくらいの小さな威力しかありません。

水爆と太陽の原理は同じ

皆さん、太陽を思い浮かべてみてください。太陽は、温かいし明るいですよね?ですが、燃えているわけではありません。そもそも、宇宙空間には酸素がないので燃焼することはできないのです。ではどうして、太陽は燃えているように見えるのでしょうか?それは、水爆と同じように水素の核融合によってとてつもなく大きなエネルギーを生み出しているから。

水爆における核融合

水爆における核融合

image by Study-Z編集部

まず、核融合とは元素の原子核どうしが融合(合体)すること。核融合は、原子核を同じところに集めるだけでは起こりません。理由は、原子核がプラスの電荷をもっていてお互い反発しあうから。そのため核融合を起こすには、高温にして原子核の運動を高め、高圧にして原子核同士がぶつかりやすい状況にする必要があります。

水爆においては、水素の同位体である重水素の原子核と三重水素の原子核が融合し、ヘリウムの原子核ができるときに発生する強大なエネルギーが爆発という形で現れるのです。

原爆が起爆剤

原爆を起爆剤にしなければならない理由は、水爆の核融合において高温・高圧の条件が必須だから。水素爆弾の内部に搭載された原爆は、核分裂によって大きなエネルギーを発生させます。このエネルギーによって、水素爆弾の燃料である重水素と三重水素の核融合に必要な高温・高圧の状態を作り出すのです。よって、水素爆弾が爆発するまでには以下の3つの段階があります。

1. 原子爆弾の爆発により、爆弾内部が高温・高圧になる

2. 重水素と三重水素の原子核が核融合

3. 核融合によって発生した中性子によって核分裂が開始し、水素爆弾が爆発する

太陽の原理

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太陽は、中心部の温度が約1600万度、気圧が2000億気圧と核融合に必須の超高温・超高圧の条件がそろっています。さらに、太陽の3/4は水素でできていて、その水素の原子核4個が核融合して、1個のヘリウム原子核になるときに発生する超強力なエネルギーによって太陽が燃えているように見えるのです。

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