
具体例1:キリン

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多くの人が知っている自然淘汰の最も有名な例はキリンの首です。キリンは首が長くなることで、高いところの葉を食べれるようになり、生きていくのに必要なエサを効率よく採れるようになります。そのため、短い首は生存に不利なので淘汰されたのです。
首が伸びた過程には首を長くしない選択圧もかかっています。首を支えるには大きな体が必要になり、体が大きくなるので血液を送るために強靱な心臓が必要になるので多くのエサが必要になるので生存には不利です。これらは首を伸ばさないための選択圧になります。双方向の選択圧のバランスをとって今の首の長さに落ち着いたのです。
具体例2:人間
人間も進化の過程で様々な機能が自然淘汰によって失われています。例えば、耳を動かす能力、尻尾、4足歩行の能力などで、これらは人間として生活していく上で不必要であるために失われていったのです。
近年、PLOS Biologyに自然淘汰に関わる面白い研究成果が発表されました。その研究によると、ヘビースモーカーはいずれ消えるのではないかと推察されています。論文によると、アメリカとイギリスで21万人のゲノム解析を行ったところ、重度の喫煙癖をもつ中高年に見られるCHRNA3遺伝子の変異は、それが存在しないほど長生きする可能性が高いことがわかりました。つまり、ヘビースモーカーになりやすい遺伝子は自然淘汰によって消えつつあるということを示しているのです。
具体例3: ウイルスや細菌

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ウイルスや細菌の薬剤抵抗性の獲得や強毒化、感染力の増大なども自然淘汰によって獲得されたものになります。
例えば近年、流行している新型コロナウイルスですが、「ウイルスが変異して感染力が上がった、強毒化して」といったニュースを聞いたことがあるのではないでしょうか。ウイルスは生存のために宿主に感染して増殖する必要があります。しかし、ウイルスが増えすぎると感染できる宿主(まだ感染してない人)が減ってしまうので、効率よく感染するために感染力を強くする必要があるのです。また、宿主がワクチン接種なので抗体を持っている場合、ウイルスの毒性が弱いと免疫系によって駆逐されてしまうので強毒化する必要があります。こうして、感染力が高まったり、強毒化したウイルスが誕生するのです。しかし、ここでは強毒化しすぎない淘汰圧もかかっています。強毒化しすぎると、増殖する前に宿主(感染者)が死んでしまい、ウイルス自身も増殖できなくなってしまうからです。
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自然淘汰と性淘汰の違いについて解説

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性淘汰(性選択、雌雄淘汰)は自然淘汰に似ているようで異なる遺伝的な考え方です。
自然選択は種に対してかかるので、同じ種の中では同じような自然淘汰がかかります。性淘汰も広義には自然淘汰に含まれますが、主にオスとメスの社会関係に由来する現象であることや、オスとメスに異なった淘汰圧が加わることなどが自然淘汰と異なる点です。
性淘汰とは
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性淘汰は一方の性(たいていの場合は雄になります)に特有の形質を発達させる淘汰のことです。クジャクの羽やライオンのたてがみ,グッピーの色などがその例になります。性淘汰によって発達した特徴は異性に好かれるのには有利に働きますが、その特徴は自然界で生き残るのに有利とは限りません。そのため、性淘汰と自然淘汰のつり合いが取れる範囲内で生物の進化が起こっていると考えられています。
例えばグッピーの雄は、性淘汰によって通して美しい色や大きな尾びれを獲得しますが、これは雌に好まれる、目立つので選ばれやすくなる。といった理由から繁殖では有利に働きます。一方で外敵から見つかりやすくなり、生存上では不利に働いてしまうのです。なので、自然淘汰の観点からすると美しい色や大きな尾びれ本来は排除に働く因子になります。なので、現在のグッピーの雄の美しい色や大きな尾びれは性淘汰と自然淘汰のつり合いが取れた状態なのです。
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