みんなは、何気なく目にする「木」にはどれくらいの種類が存在するか知っているでしょうか。実は世界には、およそ20万種の木が存在していると言われているぞ。これだけの種類に増えたのは、植物の進化による結果だからだと考えられるぞ。そこで、この記事では木の進化や分類、現存する木の種類について、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

木って何?

「木」は地球上に存在する最も大きな植物です。幹と根、そして枝が木質化しており、強固になっていることが他の植物との違いであると言えます。草本植物などと異なり、頻繁に植物体全体が枯死することはなく、毎年少しずつ成長することが特徴的ですね。

そんな「木」は、どのように進化し、地球上でどのような役割を担っているのでしょうか。ここでは木の進化の流れと役割について解説していきます。

木の進化の流れ

約3.8億年前のデボン紀に世界最古の木が誕生しました。その名も「アーケオプテリス」で、木生シダ植物の1種です。このシダ植物は陸上に進出し、大気から大量の二酸化炭素を取り除き、代わりに酸素に置き換えたことで、多くの生物の陸上進出を促し、進化したと考えられています。

その後、木は様々な気候変動に伴い環境に適応する能力を得て、以下のように進化しました。

デボン紀:胞子で増える木生シダの出現
石炭紀:リンボクが繁栄
ペルム紀:種子を保護する原始的な針葉樹の誕生
三畳紀:イチョウの仲間の出現
ジュラ紀:ソテツと針葉樹が繁栄
白亜紀:針葉樹に代わって現代の木に属する科の多くが進化し、優勢になる
古第三紀:被子植物が優勢になり、現存の木の種が定着する

木の役割

木を含む植物は、光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を吸収し酸素を放出する「光合成」を行います。また、森林の木々は野生動物の住みかとなるだけでなく、水量を調節することで洪水や土砂崩れから私たちを守ってくれるのです。

このように木は、私たち生物が生きていくために必要な酸素を作りだし、身も守ってくるのですね。

木の分類

木の分類

image by Study-Z編集部

そもそも分類とは、生物をグループに分けて命名することです。植物学者のカール・フォン・リンネによって、生殖方法や花の構造などによって植物をいくつかのグループに分類されるようになりました。上記の図のように、まずは胞子で増える「シダ植物」と「種子植物」に分け、種子植物はさらに、「裸子植物」と「被子植物」に分けられます。被子植物にはさらに、「基部被子植物」、「単子葉植物」、「真正双子葉植物」の3つのグループに分類されるのです。

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シダ植物

「シダ植物」といえば、ワラビなどのように草本植物のイメージがありますよね。しかし、そんなシダ植物の中にも、樹木のように太い幹を持つ「木生シダ」が存在するのです。木生シダはシダ綱に約600種あり、大きいものでは、約20mに達するものもあると言われています。草本のシダ植物と同様に、木生シダも葉の裏に付着している大量の胞子のうから放出される胞子で個体を増やすことが特徴的です。胞子を使った繁殖は湿った水分が必要不可欠であり、これは木本よりも原始的なコケ植物と共通していますね。

ディクソニア・アンタルクティカ

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ディクソニア・アンタルクティカオーストラリア南東部とタスマニアが原産の木生シダ植物です。1880年頃にヨーロッパに渡ったことで、今ではヨーロッパと北アメリカの温暖で湿度の高い地域にて生育されており、人々の間で非常に人気が高いそうですよ。毎年、幹から新しい根と若葉が生え、冬になると葉は完全に枯死します。光沢のある深緑色をした葉の裏には胞子のうが付いており、定期的に薄茶色の胞子を飛ばすことで子孫を残すのです。

裸子植物

現存する「裸子植物」の大半は針葉樹と言われています。針葉樹と言えば、針のような葉を持つことが特徴的ですよね。この葉の表面から樹脂が分泌し、表面は透明な木ろうで覆われています。このため、土が凍るほど寒い環境で水がなくても、葉は緑色に維持されるのです。

針葉樹の生殖器官は「球花」であり、雄の球花は花粉を作り、雌の球花は成熟すると果実になります。また、雌雄の球花はどちらも1本の木につくことが多いです。被子植物の花のように、昆虫をおびき寄せる手段がないため、花粉は風に依存して運ばれます。他にも、肉質の果実を作ることで動物がエサとして食して遠くに運ばせる手段もありますよ。

1. イチョウ

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イチョウは、約2億年前に中国にて誕生したと言われており、発見された化石の形が現在の形のままであることから「生きた化石」と言われています。イチョウの葉は平らで、秋になると黄色に色づき、その美しさは日本の秋の風物詩となっていますよね。しかし、私たちが街路樹としてよく目にするイチョウは、全て栽培種であり、野生種は絶滅危惧種に登録されているのです。野生種は中国南東部の山脈に数本しか生き残っていないと言われています。

2. スギ

針葉樹の中でも比較的成長が早いと言われているスギ日本原産ですが、数世紀にも渡って中国で栽培されたことで、中国でも定着しました。

雌雄同株で、黄色の雄花は枝の先端につき、早春になると花粉を放出します。また、雌花は成熟すると木質の球果になるのです。葉は潰すとオレンジピールのような香りを放ちます。

3. ヒノキ

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ヒノキは日本原産で、材木や観賞用として栽培されています。また、神道の聖木となっていることから、神社の建築にもよく使われているのです。ヒノキはスギと同様に雌雄同株で、黄色い雄花は枝の先について、春になると大量の花粉を放ちます。受精した花は2年もの歳月をかけてまん丸とした球果へと成熟するそう。この球果を形成する全ての鱗片は曲がったトゲが生えていることが特徴的です。

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基部被子植物

「基部被子植物」は、被子植物から単子葉植物と真正双子葉植物を除いたグループです。基部被子植物は、被子植物の中でも最初に生殖器官のための「花」が発達したグループだと言われています。そのため、このグループのほとんどの花は、花弁(花びら)とがく片の区別がなく1輪の花の中に雄しべと雌しべが両方存在しているというシンプルな構造をしているのです。また、光合成の効率を高めるための広い葉を持ち、動物に食べられないように、植物体にはタンニンやシアン化物が含まれています。

1. シデコブシ

名古屋が原産の本種は、園芸品種として世界的に人気があるそうです。白色の毛の生えた円錐形のつぼみの状態で冬を越し、春になると葉が出る前に開花します。白もしくは桃色の細長い花びらが20枚ある大きな花を咲かせ、1つの花の開花期間は約10日間と言われていますよ。

2. アボカド

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アボカドはメキシコと西インドが原産と言われており、ミネラルと脂肪などを多く含む栄養価の高い果実を実らせることで、特に熱帯地域で広く栽培されています。直径1cmほどの小さな星型でクリーム色や白色の花を咲かせ、芳香を放つのです。

3. クスノキ

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クスノキの原産地は中国南東部、南日本、台湾ですが、世界中の街路や庭園、公園などに植えられているそうです。樹高は20mくらいになることが多いですが、まれに40mを超える巨木にまで成長することもあるそう。葉は、若いときに桃色がかった銅色をしており、成長するにつれて緑色が深まっていきます。春になると白や黄緑色の小さな花が咲き、その花から直径1cm以下の丸く黒い果実が房を成して実るのです。

英語名はCamphor(樟脳)であり、これはクスノキの木質や樹皮、葉から採れる白い結晶質のものを指します。この結晶質は数世紀にも渡って、お香や防虫剤、薬品やスパイスなどに使われているそうですよ。また、木材としての需要もあり、赤と黄色の縞模様をしていることから人気が高いです。

単子葉植物

「単子葉植物」イネ科などの草本植物が多く木本になるものはわずかしか存在しません。単子葉植物の木本で最も有名な科はヤシ科だと言われています。ヤシ科の葉は、葉脈が長い葉に沿って平行に走り、扇のように広がっているものがほとんどです。また、石のような果実をつけるものが多く、固い殻の中に種子が格納されています。種類によっては果実が海に浮かぶものがあり、これにより種子を遠距離に運ばれることが可能です。

1. ココヤシ

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近年、約400万年前の化石が発見されたことから、オーストラリアとインドに生えていたことが明らかになりました。熱帯地域で広く栽培されており、果実のココナッツは、食用や薬用として利用されています。このことから、ココヤシは別名「生命の木」とも呼ばれているそうですよ。幹はやや斜めに伸び、全長6mにも達する大きな葉は羽状複葉で、細長い小葉がまばらに付いています。果実は楕円形で約1.5kgにもなり、外側には繊維質の殻に包まれているのです。

2. ブラジルヤシ

ブラジルヤシは小型のヤシで、アルゼンチンとブラジル、ウルグアイが原産だと言われています。本種は氷点下でも耐えられるため、北アメリカやヨーロッパでも植えられているそうです。花は雄花が2つ、雌花が1つというように3つ1組で咲きます。その後、黄色や橙色の果実が実り、パイナップルやバナナ、アンズが混ざったような香りを放つそうですよ。

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真正双子葉植物

木の中で「真正双子葉植物」に属する種は約5万種もあると言われており、最大のグループです。温帯な地域から熱帯雨林、ツンドラや砂漠といった幅広い環境に生息しています

真正双子葉植物の花粉は、他の植物と比べて非常に特徴的です。ほとんどの種子植物の花粉の細胞壁には1つの孔しか存在しないところ、真正双子葉植物の場合、花粉の細胞壁に3つもの孔があります。これにより、花粉から出てくる花粉管が伸びやすくなると言われているのです。また、雌しべの柱頭も大きいことから受粉もしやすくなっています。以上の花粉と柱頭の進化により、花と虫の関係性が強まり、多様な種を繁栄することができたのです。

1. セイヨウカリン

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セイヨウカリンは小型の落葉樹で、ヨーロッパ南東部とアジア南西部が原産だと言われています。直径5cmほどの白い花を咲かせ、果実は直径3cm以下の卵形になり、秋になると赤褐色に成熟するのです。果実は、あえて過熟させるとシナモンで煮たリンゴの味になって美味しいそうですよ。

2. セイヨウヒイラギ

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この種はヨーロッパやアフリカ北部、アジア西部が原産であり、園芸用に栽培されてクリスマスの装飾として使われるそうですよ。果実は枝に固まって付き、11月から2月頃に緑色から徐々に鮮やかな赤色へと変化します。雌雄異株で、紫色や白色の小型の花が咲き、葉はツヤのある濃い緑色です。品種によって、鋭いトゲが生えているものもあれば、切り込みがなく滑らかなものもあります。

3. イロハモミジ

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日本や中国、朝鮮半島で誕生したというイロハモミジは、今では世界中の庭園などに植えられ、数百もの園芸品種が作られているほど人気の木です。春に先が尖った裂片が5~7枚ある新しい緑色の葉が付き、秋になると赤や黄色、橙色に変わります。

木の種類は様々!

植物の進化の過程で、様々なタイプの木が誕生したことが分かりましたね。この記事で紹介した木はごくごく一部なので、植物図鑑を使いながら世界中の森や山の中を散策しながら、実際に見てみると楽しいですよ!

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理科生き物・植物生物生物の分類・進化

木って何だろう?世界最古の木って?進化の過程や分類・代表的な木の種類と特徴について現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは、何気なく目にする「木」にはどれくらいの種類が存在するか知っているでしょうか。実は世界には、およそ20万種の木が存在していると言われているぞ。これだけの種類に増えたのは、植物の進化による結果だからだと考えられるぞ。そこで、この記事では木の進化や分類、現存する木の種類について、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

木って何?

「木」は地球上に存在する最も大きな植物です。幹と根、そして枝が木質化しており、強固になっていることが他の植物との違いであると言えます。草本植物などと異なり、頻繁に植物体全体が枯死することはなく、毎年少しずつ成長することが特徴的ですね。

そんな「木」は、どのように進化し、地球上でどのような役割を担っているのでしょうか。ここでは木の進化の流れと役割について解説していきます。

木の進化の流れ

約3.8億年前のデボン紀に世界最古の木が誕生しました。その名も「アーケオプテリス」で、木生シダ植物の1種です。このシダ植物は陸上に進出し、大気から大量の二酸化炭素を取り除き、代わりに酸素に置き換えたことで、多くの生物の陸上進出を促し、進化したと考えられています。

その後、木は様々な気候変動に伴い環境に適応する能力を得て、以下のように進化しました。

デボン紀:胞子で増える木生シダの出現
石炭紀:リンボクが繁栄
ペルム紀:種子を保護する原始的な針葉樹の誕生
三畳紀:イチョウの仲間の出現
ジュラ紀:ソテツと針葉樹が繁栄
白亜紀:針葉樹に代わって現代の木に属する科の多くが進化し、優勢になる
古第三紀:被子植物が優勢になり、現存の木の種が定着する

木の役割

木を含む植物は、光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を吸収し酸素を放出する「光合成」を行います。また、森林の木々は野生動物の住みかとなるだけでなく、水量を調節することで洪水や土砂崩れから私たちを守ってくれるのです。

このように木は、私たち生物が生きていくために必要な酸素を作りだし、身も守ってくるのですね。

木の分類

木の分類

image by Study-Z編集部

そもそも分類とは、生物をグループに分けて命名することです。植物学者のカール・フォン・リンネによって、生殖方法や花の構造などによって植物をいくつかのグループに分類されるようになりました。上記の図のように、まずは胞子で増える「シダ植物」と「種子植物」に分け、種子植物はさらに、「裸子植物」と「被子植物」に分けられます。被子植物にはさらに、「基部被子植物」、「単子葉植物」、「真正双子葉植物」の3つのグループに分類されるのです。

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