今回は、タバコの「タール」について学習していこう。

諸君も知っての通り、2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになった。しかし飲酒や喫煙は、健康への影響から20歳のまま変わらないから注意です。そこでこの記事では、「タバコはなぜ体に悪いのか」、「タバコの種類によって健康への影響に差があるのか」をタバコの有害成分であるタールを軸に理解していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

タバコのタールとは

タバコのタールは、厚生労働省e-ヘルスネットにて以下のように定義されています。

たばこの煙には、不完全燃焼によって発生する燃焼副生成物が多数含まれており、一酸化炭素やガス状成分をのぞいた粒子状の成分の総体を、タール(たばこのヤニ)と称しています。

出典:中村正和.厚生労働省e-ヘルスネット. “タール”. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-025.html ,(参照2022/4/4).

タールによる身体への影響

image by iStockphoto

タバコが不完全燃焼することによって作られるタール。このタールにはタバコ特異的ニトロソアミンなど数千種類の化学物質が含まれており、中でも発がん性があると言われる物質は70種類にも及ぶそうです。この章では、タールによる身体への悪影響について具体例を見ながら学習していきましょう。

発がん性のあるベンゾピレン

DNAに結合して変形させることで、DNAの正常な複製にて多くのエラーを生じさせることが知られているベンゾピレン。その結果、細胞が突然変異しやすくなり、がん化すると考えられています。例として、ベンゾピレンががん抑制遺伝子と結合した場合の流れを以下の図で見てみましょう。

image by Study-Z編集部

がん抑制遺伝子は、図で示されている3つの働きがあります。

発がん性物質であるベンゾピレンががん抑制遺伝子に結合すると、DNAが変形。その後間違ったまま複製されたものは、突然変異を起こした異常な細胞です。これによって、がん抑制遺伝子の働きが不活性化し、がん細胞が増殖していきます。

依存性のあるニコチン

植物の葉に含まれる天然成分のニコチン。このニコチンによってどのようにタバコに依存していくのか簡単な流れを以下に示します。

1. タバコを吸うと数秒でニコチンが脳内に達する

2. 脳内で快楽物質であるドーパミンが大量に放出される

3. 快感を味わうため、またタバコを吸うという行為を繰り返す

4. 血中のニコチン濃度が一定以下になると、イライラなどのニコチン切れ症状が見られるようになる

5. またタバコを吸う

6. ニコチン切れ症状が一時的に緩和される

7. タバコを吸うのをやめられなくなる

口腔内トラブルを増加させるヤニ

image by iStockphoto

タバコを吸う人の歯が黄ばんで見えるのは、ヤニが原因です。ヤニは、唾液中のぺクリルと結合して歯を着色します。また、粘性のあるヤニが歯の表面にくっつくと、食べ物のカスなどが付き虫歯になりやすくなるのです。さらに、タバコを吸う人は歯周病が重症化しやすく、それに伴って口臭が悪化します。

タバコの種類に関連するタールの量と健康への影響

様々な銘柄のタバコがありますが、この章ではタバコ(喫煙具)の種類とそれに関連するタールについて紹介しますね。

\次のページで「紙巻きタバコ」を解説!/

タバコ(喫煙具)の種類

・紙巻きタバコ

・軽いタバコ

・加熱式タバコ

・無煙タバコ

・電子タバコ

紙巻きタバコ

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紙巻きたばこは一般的に知られるタバコで、乾燥し細かく刻んだタバコの葉を紙で巻いてフィルターを装着することで作られます

タールの量は銘柄によって様々です。

軽いタバコ

「軽いタバコはタールが少ないから初心者におすすめ」という宣伝文句をよく見ますが、軽いタバコだからといってタバコの葉の量が少ないわけではありません。軽いタバコと上記の紙巻きタバコとの違いはフィルターだけ。軽いタバコのフィルターの外側(指で持つところ)には、一般的な紙巻きたばこのフィルターより多くの穴が開いています。そのため、タバコの煙を吸うのと同時に空気も一緒に入ってくるから、タールの量も少ないと言われるのです。

しかし、タールの量が少ない=健康への影響も少ないとは言い切れません。なぜなら、以下に示す吸い方では、軽いタバコは普通の紙巻きタバコよりもタールを多く摂取してしまうからです。

・フィルターについた穴を指で押さえたり、口でくわえたりすることで穴をふさいでしまう

・空気もたくさん一緒に吸うので、タバコの煙を薄く感じ、より深く、根元まで吸ってしまう

・体が欲するニコチン量になるまでタバコを吸うので、吸う本数が増えてしまう

加熱式タバコ

加熱式タバコは、タバコの葉を燃焼させずに機械で加熱するタバコです。タバコの葉を低温で加熱するタイプには、液体を加熱してタバコの葉を通過させるものがあり、高温で加熱するタイプにはタバコの葉を直接加熱するものがあります。

火を使わない加熱式タバコは、煙が少ない、つまりタールの量は少なくなると思いますよね?しかし、日本禁煙学会の報告によると、紙巻きタバコと加熱式タバコで主流煙に含まれるタールとニコチンの量に大差はないそうです。

\次のページで「無煙たばこ」を解説!/

無煙たばこ

タバコの葉が入った小さな袋を口に入れて味や香りを楽しむ無煙たばこ。これは、煙が出ないのでタールは発生しません。しかし、ニコチンやタバコ特異的ニトロサミンなどの多くの発がん性物質は含まれています。

電子タバコ

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フレーバー付きの液体を機械で加熱してその蒸気を吸う電子タバコ。タバコの葉を使用しないので、タバコ事業法において「タバコ製品」には分類されていません。また、日本ではニコチンの成分が入ったものは法律で販売が禁止されています。これだけ聞くと、「電子タバコはタバコの葉を使わないのでタールも発生しないし、日本ではニコチンも含まないので、安全と言えるのではないか」と思う人もいるでしょう。

現在の原型となる電子タバコが開発されたのは2003年。開発されて新しい電子タバコの安全性は明確ではありません。アメリカでは、電子タバコのよると思われる肺疾患が報告されています。このことから、電子タバコは健康を害さないとは言えないでしょう。

健康にいいタバコなんて無い!

今回は、タバコに含まれる有害成分の中でもタールについて詳しく学習しました。タバコを吸うことは、生きるために必要な行為ではありません。逆に、タバコの煙を吸わないことでがんのリスク(つまり、がんで苦しみ早死にしてしまうリスク)を軽減し、長生きできるのであればタバコを吸いたいとは思わないでしょう。

また、「低タールだから、電子タバコだから、紙巻きタバコよりは体に悪くない」。このように考えるのでなく、「健康に良いタバコは無い」ということを頭に入れて、タバコを吸わないようにしましょう。

イラスト使用元:いらすとや

" /> タバコの「タール」とは?身体への影響とタバコの種類に関連するタールの量についても農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
化学理科生活と物質

タバコの「タール」とは?身体への影響とタバコの種類に関連するタールの量についても農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は、タバコの「タール」について学習していこう。

諸君も知っての通り、2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになった。しかし飲酒や喫煙は、健康への影響から20歳のまま変わらないから注意です。そこでこの記事では、「タバコはなぜ体に悪いのか」、「タバコの種類によって健康への影響に差があるのか」をタバコの有害成分であるタールを軸に理解していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

タバコのタールとは

タバコのタールは、厚生労働省e-ヘルスネットにて以下のように定義されています。

たばこの煙には、不完全燃焼によって発生する燃焼副生成物が多数含まれており、一酸化炭素やガス状成分をのぞいた粒子状の成分の総体を、タール(たばこのヤニ)と称しています。

出典:中村正和.厚生労働省e-ヘルスネット. “タール”. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-025.html ,(参照2022/4/4).

タールによる身体への影響

image by iStockphoto

タバコが不完全燃焼することによって作られるタール。このタールにはタバコ特異的ニトロソアミンなど数千種類の化学物質が含まれており、中でも発がん性があると言われる物質は70種類にも及ぶそうです。この章では、タールによる身体への悪影響について具体例を見ながら学習していきましょう。

発がん性のあるベンゾピレン

DNAに結合して変形させることで、DNAの正常な複製にて多くのエラーを生じさせることが知られているベンゾピレン。その結果、細胞が突然変異しやすくなり、がん化すると考えられています。例として、ベンゾピレンががん抑制遺伝子と結合した場合の流れを以下の図で見てみましょう。

image by Study-Z編集部

がん抑制遺伝子は、図で示されている3つの働きがあります。

発がん性物質であるベンゾピレンががん抑制遺伝子に結合すると、DNAが変形。その後間違ったまま複製されたものは、突然変異を起こした異常な細胞です。これによって、がん抑制遺伝子の働きが不活性化し、がん細胞が増殖していきます。

依存性のあるニコチン

植物の葉に含まれる天然成分のニコチン。このニコチンによってどのようにタバコに依存していくのか簡単な流れを以下に示します。

1. タバコを吸うと数秒でニコチンが脳内に達する

2. 脳内で快楽物質であるドーパミンが大量に放出される

3. 快感を味わうため、またタバコを吸うという行為を繰り返す

4. 血中のニコチン濃度が一定以下になると、イライラなどのニコチン切れ症状が見られるようになる

5. またタバコを吸う

6. ニコチン切れ症状が一時的に緩和される

7. タバコを吸うのをやめられなくなる

口腔内トラブルを増加させるヤニ

image by iStockphoto

タバコを吸う人の歯が黄ばんで見えるのは、ヤニが原因です。ヤニは、唾液中のぺクリルと結合して歯を着色します。また、粘性のあるヤニが歯の表面にくっつくと、食べ物のカスなどが付き虫歯になりやすくなるのです。さらに、タバコを吸う人は歯周病が重症化しやすく、それに伴って口臭が悪化します。

タバコの種類に関連するタールの量と健康への影響

様々な銘柄のタバコがありますが、この章ではタバコ(喫煙具)の種類とそれに関連するタールについて紹介しますね。

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