トカゲとヤモリといえば、郊外ならば家の近くでも見られる身近な爬虫類です。ですが、違いがよく分からないという人も多いのではないか?ポイントさえ押さえれば、簡単に見分けることができるぞ。姿の似ているイモリやカナヘビとの違いや、ヤモリの漢方薬としての利用法まで、現役薬剤師ライターのアラノるかと一緒に解説していこう。

ライター/アラノるか

薬局の店頭に立つ現役薬剤師ライター。郊外の自宅にはヤモリが住み着き、庭にはトカゲが走る。お酒に弱くヤモリ酒は未体験。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.トカゲとヤモリは、どんな動物?

共に爬虫類であるトカゲヤモリ。まずは写真を示しながら、両者の分類について見ていきましょう。

1-1.トカゲって何?広義の「トカゲ」には、ヤモリも含まれる

「トカゲ」という言葉は、特定の種を表す言葉ではなく、爬虫綱有隣目トカゲ亜目に分類される爬虫類の総称として使われる場合があります。この広義の「トカゲ」の中には、ヤモリカメレオンイグアナオオトカゲヨロイトカゲカナヘビなども含まれるのです。

一方で、トカゲ亜目内のスキンク下目に存在するのが「トカゲ科」。このトカゲ科の中に、ニホントカゲ等の身近にみられるトカゲたちも含まれています。トカゲ科に属する狭義のトカゲを、この記事では“トカゲ”として解説していきましょう。

1-2.日本の代表的なトカゲ

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日本でよく見られるトカゲ科には、西日本を中心に分布するニホントカゲ、東日本を中心に分布するヒガシニホントカゲ、伊豆半島~伊豆諸島に分布するオカダトカゲがいます。この三種は見分けがつかないほど似ており、長く同じ種と考えられていましたが、近年のDNA鑑定により別種と認定されました。

幼体は黒や暗い褐色をしており、尾は青いです。オスの成体になると茶褐色になり、尾も同じ色になります。メスは尾の青みこそなくなりますが、黒っぽい色を残したまま成熟することが多いです。うろこに覆われた体の表面にはツヤがあります。

1-3.日本の代表的なヤモリ

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ヤモリ科に属するヤモリのうち、日本に多く分布するのがニホンヤモリ。体の色は灰色や褐色で、環境に合わせて濃淡を変化させることができます。

2.トカゲとヤモリの違い

両方とも皮膚が乾燥し、うろこで覆われるトカゲとヤモリ。敵に襲われた時などには、どちらも尾を自切することができます。

不祥事などの際、組織内で立場の弱い者に責任を負わせて切り捨てることを「トカゲのしっぽ切り」と呼んだりしますが、これは切った尾をおとりにして逃げ切る、トカゲたちの生態が由来となった慣用句なのです。

トカゲヤモリには共通点も多いのですが、両者は外見で見分けられるほか、活動時間よく見かける場所が違います。それらの違いを解説していきましょう。

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2-1.足とまぶたの違いで見分ける

トカゲヤモリで大きく違うのが、足の構造トカゲの足指は細いですが、ヤモリの足指は丸みを帯びて太さがあるのです。トカゲは垂直の壁面を走ることはできませんが、ヤモリはツルツルの窓ガラスにさえも容易に取りつくことができます。

ヤモリは足の裏に、趾下薄板(しかはくばん)と呼ばれる構造を持っているのです。この趾下薄板は、非常に細かなナノメートル単位の毛の集合体で構成されています。微細な毛が、壁との間に分子間力の一種である「ファンデルワールス力」を発生させるので、ヤモリの足と壁が引きつけ合い、垂直な壁でも落ちないでいられるのです。

また、トカゲにはまぶたがありますが、ヤモリはまぶたを持たず、透明な膜が目を覆っています。よく観察していると、トカゲが瞬きをする瞬間を見ることができるかもしれません。

2-2.活動時間と場所で見分ける

トカゲは昼行性。石垣や草むらの他、公園や庭先でも見かけます。地面を素早く走る姿が目立ちますが、日当たりの良い場所で日光浴をし、体を温めていることも。

一方、ヤモリは夜行性で、暗くなると活動を始めます。民家やその周辺に住み、壁や天井などに取りつくのです。窓ガラスにへばりつき、窓の明かりに集まる虫を捕食する姿も見られます。

3.トカゲやヤモリに似た動物、カナヘビとイモリの見分け方

トカゲやヤモリと混同されやすい動物に、カナヘビイモリが挙げられます。それらの見分け方や特徴についても解説していきましょう。

3-1.カナヘビの特徴と見分け方

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カナヘビは、トカゲやヤモリと同じ爬虫類。トカゲと同じ有隣目トカゲ亜目スキンク下目に属し、かなり近い種類と言えます。カナヘビ科カナヘビ属に分類されており、日本でよく見られるのはニホンカナヘビです。

カナヘビうろこはカサカサしており、体表面にはトカゲのような光沢はありません。また、カナヘビ尾は体長の3分の2を占めていて、トカゲやヤモリと比べると長めです。

さらには、舌先が二つに分かれていることも特徴。においをかぐタイミングで舌を出し入れするので、ぜひ舌先をチェックしてみてください。

3-2.イモリの特徴と見分け方

イモリは両生類で、爬虫類であるトカゲ・ヤモリ・カナヘビよりも、同じ両生類のカエルやサンショウウオに近い動物です。

川や池、田んぼといった淡水の中で暮らしており皮膚は粘膜で覆われ、ヌルヌルしています。イモリは皮膚に毒を持つ種類が多いため、素手で触るのは避け、触ったら必ず手を洗ってください。

日本の代表的なイモリはアカハライモリで、その名の通り腹部が赤色をしています。

\次のページで「4.トカゲの毒が薬のヒントに!?漢方薬になるのはヤモリの方」を解説!/

4.トカゲの毒が薬のヒントに!?漢方薬になるのはヤモリの方

実はトカゲとヤモリは、薬としても利用されることがあります。

現代において、トカゲそのものは薬の材料としては用いられていません。しかし、アメリカドクトカゲの持つ毒の成分をヒントに糖尿病治療薬が開発され、日本でも医療用医薬品として使用されています。

ヤモリの一種であるオオヤモリ(学名:トッケイヤモリ)を乾燥させたものは、滋養強壮作用があるとして、古来より蛤蚧(ゴウカイ)という名で生薬として用いられてきました。

4-1.糖尿病の薬のヒントに!アメリカドクトカゲの毒

乾燥地帯に住むアメリカドクトカゲは、常に空腹な反面、獲物を見つけたときには大量の食事をとります。しかし人間とは異なり、血糖値は食事の前後でほとんど変わらないそう。

この生態からヒントを得て、アメリカドクトカゲの口腔内の毒液から、エキセンジン-4(Exendin-4)と呼ばれる物質が発見されました。この物質は人間のインスリン分泌を促すホルモンと構造が似ていますが、体内の分解酵素に分解されにくいのです。

その特徴を生かして合成されたエキセナチドという薬が、2型糖尿病の注射薬として使用されています。

4-2.滋養強壮に!漢方薬としてのヤモリ、蛤蚧(ゴウカイ)

オオヤモリ(トッケイヤモリ)の内臓を取って身を開き、オス・メスを一対にして竹串に四肢を結んで広げ、あぶって乾燥させたものを蛤蚧(ゴウカイ)と呼びます。特に、中国やシンガポールの富裕層を中心に珍重されているそう。

古くから咳止め強壮薬として利用されてきましたが、現在も健康食品として、酒に漬けて薬酒に用いることがあります。漢方処方としては、滋養強壮薬の海馬補腎丸(かいまほじんがん)などに配合されますが、強い薬効はなく補助的な役割です。

トカゲとヤモリ、見分けのポイントは活動場所と体のつくり

共に爬虫類であるトカゲヤモリ昼の地面を素早く走るトカゲと、夜に家の壁などに取りつくヤモリは、それぞれの生活に合わせた足のつくりからも見分けられます。

トカゲにはまぶたが有り、ヤモリには無いというのもポイントですね。

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生き物・植物雑学

トカゲとヤモリの違いって?ヤモリは漢方薬になる?イモリ、カナヘビとの違いまで現役薬剤師がわかりやすく解説

2-1.足とまぶたの違いで見分ける

トカゲヤモリで大きく違うのが、足の構造トカゲの足指は細いですが、ヤモリの足指は丸みを帯びて太さがあるのです。トカゲは垂直の壁面を走ることはできませんが、ヤモリはツルツルの窓ガラスにさえも容易に取りつくことができます。

ヤモリは足の裏に、趾下薄板(しかはくばん)と呼ばれる構造を持っているのです。この趾下薄板は、非常に細かなナノメートル単位の毛の集合体で構成されています。微細な毛が、壁との間に分子間力の一種である「ファンデルワールス力」を発生させるので、ヤモリの足と壁が引きつけ合い、垂直な壁でも落ちないでいられるのです。

また、トカゲにはまぶたがありますが、ヤモリはまぶたを持たず、透明な膜が目を覆っています。よく観察していると、トカゲが瞬きをする瞬間を見ることができるかもしれません。

2-2.活動時間と場所で見分ける

トカゲは昼行性。石垣や草むらの他、公園や庭先でも見かけます。地面を素早く走る姿が目立ちますが、日当たりの良い場所で日光浴をし、体を温めていることも。

一方、ヤモリは夜行性で、暗くなると活動を始めます。民家やその周辺に住み、壁や天井などに取りつくのです。窓ガラスにへばりつき、窓の明かりに集まる虫を捕食する姿も見られます。

3.トカゲやヤモリに似た動物、カナヘビとイモリの見分け方

トカゲやヤモリと混同されやすい動物に、カナヘビイモリが挙げられます。それらの見分け方や特徴についても解説していきましょう。

3-1.カナヘビの特徴と見分け方

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カナヘビは、トカゲやヤモリと同じ爬虫類。トカゲと同じ有隣目トカゲ亜目スキンク下目に属し、かなり近い種類と言えます。カナヘビ科カナヘビ属に分類されており、日本でよく見られるのはニホンカナヘビです。

カナヘビうろこはカサカサしており、体表面にはトカゲのような光沢はありません。また、カナヘビ尾は体長の3分の2を占めていて、トカゲやヤモリと比べると長めです。

さらには、舌先が二つに分かれていることも特徴。においをかぐタイミングで舌を出し入れするので、ぜひ舌先をチェックしてみてください。

3-2.イモリの特徴と見分け方

イモリは両生類で、爬虫類であるトカゲ・ヤモリ・カナヘビよりも、同じ両生類のカエルやサンショウウオに近い動物です。

川や池、田んぼといった淡水の中で暮らしており皮膚は粘膜で覆われ、ヌルヌルしています。イモリは皮膚に毒を持つ種類が多いため、素手で触るのは避け、触ったら必ず手を洗ってください。

日本の代表的なイモリはアカハライモリで、その名の通り腹部が赤色をしています。

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