今回は「腹足類」をテーマに学習を進めていこう。

腹足類は、生物のグループの一つです。軟体動物に含まれるグループですが、どんな生物がいるか、具体的なイメージは沸くでしょうか?腹足類の具体例や特徴など、この記事でサクッと確認していこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

腹足類とは

腹足類(ふくそくるい)または腹足綱(ふくそくこう)は、軟体動物にふくまれるグループのひとつです。お腹の前面を地面につけ、はうように進む生物がまとめられたグループであるため、このような名前になりました。

スソムラサキダカラ
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腹足類は英語でgastropods。”腹足綱”という分類群の名称はGastropodaといいます。gastroは”腹”、podは"足"を意味するので、日本語と同じようなつくりの単語ですね。

のちほど詳しくご紹介していきますが、巻貝のなかまが代表的な存在です。カタツムリなんかはイメージしやすいのではないでしょうか。

腹足類は、軟体動物の中でもとくに種類の多いグループとして知られています。そもそも軟体動物という分類群自体が、多種多様な生物をふくむ大きなまとまり(分類群)です。

この記事の最後には、腹足類以外の軟体動物のグループも、少しご紹介したいと思います。

腹足類の特徴

それでは、腹足類に当てはまる生物の特徴のうち、代表的なものを見ていきたいと思います。

特徴1:体全体ではって移動する

やはり腹足類の特徴といえば、名前の由来にもなっている「移動の仕方」でしょう。

海底や岩、地面についている体の部分は、下部が筋肉質になっています。お腹全体を足のように使って移動するように見えることから、この名前になりました。

ただ、種によっては、はうような移動をせず、より自由に動けるようになったものもいます。反対に、ほとんどその場を動かないような種もいるんです。

\次のページで「特徴2:貝殻をもつものが多い」を解説!/

特徴2:貝殻をもつものが多い

巻貝のなかまにみられるように、腹足類には貝殻をもつものが多くいます。サザエやカタツムリのような巻貝のこともあれば、カサガイのように巻かない貝をもつものもいますね。

外敵に襲われそうなときには、貝の中に自身の身体を収納することで、身を守ることができます。

image by iStockphoto

その反面、重たい貝殻は素早い移動を難しくしてしまいます。腹足類の多くが海底や地面をゆっくりはうようにしか移動できない理由の一つに、この貝殻の存在があるのではないでしょうか。

注意したいのが、「貝殻をもたない腹足類もいる」という点です。進化の道のりの中で、貝殻を失ってしまった腹足類もいます。たとえば、ナメクジやウミウシなどのなかまです。

特徴3:水生のものと陸生のものがいる

腹足類の多く、とくに巻貝やカサガイのなかまは、基本的に水生です。海に生息するものが多いですが、淡水中にもみられます。

その一方で、カタツムリやナメクジのように、陸上を生息地とする種もいるのが、腹足類の面白いところです。

水生の腹足類は鰓(エラ)をもち、水中で呼吸を行います。では陸生のものは?鰓の代わりに肺をもつのです。

腹足類の具体例

巻貝のなかま

少し大ざっぱな表現ではありますが、くるくると巻かれた形状をしている貝をもつ生物=巻貝のなかまは、基本的に腹足類です。

食用としてよく知られているのは、サザエつぶ貝(エゾボラなど)、ばい貝(バイなど)あたりでしょうか。

\次のページで「カタツムリのなかま」を解説!/

アサリやホタテは二枚貝類(二枚貝綱)という、べつのグループですね。

巻貝の多くは海生ですが、中には淡水に生息する巻貝も存在します。タニシカワニナなどが当てはまりますね。

カタツムリのなかま

巻貝は巻貝でも、水中ではなく陸上に進出したのが、カタツムリのなかまです。

image by iStockphoto

小さな子供でもカタツムリという存在はよく知っていますが、じつはカタツムリ類は非常に種類が多く、世界に2万種以上もの現生種がいるといわれています。カタツムリは移動能力が低いため、地域に固有の種がそれぞれに進化したと考えられているんです。

皆さんの身近にいるカタツムリも、もしかしたらほかの地域では見られない、貴重な種類のものかもしれませんよ。

カサガイのなかま

前項にもありましたが、一見貝殻が巻いているように見えないカサガイのなかまも、腹足類にふくまれます。「腹足類=巻貝」と覚えてしまうと、このような存在を忘れてしまうので注意したいですね。

ウミウシのなかま

カラフルな色合いで「海の宝石」とよばれることもあるウミウシのなかまは、貝殻を失った腹足類です。日本では近年人気が高くなっていますね。

image by iStockphoto

巻貝とは姿が大きく異なるように見えますが、ウミウシの背中に巻貝がのっていたら、まるでカタツムリのような姿になると思いませんか?

なお、背中にお花のようにふさふさしたものを乗っけているタイプのウミウシがよくいます。そのふさふさはです。

\次のページで「ナメクジのなかま」を解説!/

ナメクジのなかま

貝殻を失ったウミウシがダイバーに大人気なのとは対照的に、貝殻をほとんど失った陸生の腹足類…ナメクジの方は、残念ながらあまり人気がないかもしれません。

ナメクジの殻は退化していますが、種によっては体の中にちいさな殻が残っているものもいます。また、体全体を薄い殻が覆っている種もあったりするんです。貝殻の退化の度合いには、多様性があると覚えておきましょう。

腹足類以外の軟体動物

さいごに、腹足類(腹足綱)以外の軟体動物についても少しだけご紹介しておきましょう。

軟体動物は分類学上、軟体動物門という大きなグループにひとまとめにされています。現在は、軟体動物門をさらに8つのグループ(綱)に分けるのが一般的で、腹足綱もそのうちの一つです。

腹足綱以外には、二枚貝綱、掘足綱、多板綱、単板綱、頭足綱、溝腹綱、尾腔綱の7つの綱があります。

image by Study-Z編集部

このうち、二枚貝綱、掘足綱、多板綱などはわかりやすい殻や貝殻をもちます。その反面、頭足綱の代表的な存在であるタコやイカは、殻をもたない軟体動物です。

一口に軟体動物門といっても、その姿かたちはさまざまだということが実感できます。

軟体動物門は巨大な分類群

じつは、腹足類の含まれている軟体動物門というのは、非常に大きな分類群として知られています。動物の中では、昆虫などをふくむ節足動物門についで、ふくまれている種の数が多いのです。未知の種も含めれば、その総数は10万種をくだらないともいわれています。

そして、その軟体動物門のなかでも一番大きいのが、腹足類(腹足綱)の生物なのです。腹足綱をよく知ることは、軟体動物をよく知ることにもつながります。ぜひ、身近な腹足類に興味を持ってみてくださいね。

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理科生物生物の分類・進化

サザエもカタツムリもナメクジも?腹足類とはどんなグループ?現役講師がざっくりわかりやすく解説

特徴2:貝殻をもつものが多い

巻貝のなかまにみられるように、腹足類には貝殻をもつものが多くいます。サザエやカタツムリのような巻貝のこともあれば、カサガイのように巻かない貝をもつものもいますね。

外敵に襲われそうなときには、貝の中に自身の身体を収納することで、身を守ることができます。

image by iStockphoto

その反面、重たい貝殻は素早い移動を難しくしてしまいます。腹足類の多くが海底や地面をゆっくりはうようにしか移動できない理由の一つに、この貝殻の存在があるのではないでしょうか。

注意したいのが、「貝殻をもたない腹足類もいる」という点です。進化の道のりの中で、貝殻を失ってしまった腹足類もいます。たとえば、ナメクジやウミウシなどのなかまです。

特徴3:水生のものと陸生のものがいる

腹足類の多く、とくに巻貝やカサガイのなかまは、基本的に水生です。海に生息するものが多いですが、淡水中にもみられます。

その一方で、カタツムリやナメクジのように、陸上を生息地とする種もいるのが、腹足類の面白いところです。

水生の腹足類は鰓(エラ)をもち、水中で呼吸を行います。では陸生のものは?鰓の代わりに肺をもつのです。

腹足類の具体例

巻貝のなかま

少し大ざっぱな表現ではありますが、くるくると巻かれた形状をしている貝をもつ生物=巻貝のなかまは、基本的に腹足類です。

食用としてよく知られているのは、サザエつぶ貝(エゾボラなど)、ばい貝(バイなど)あたりでしょうか。

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