みんなは「根茎」と言う用語を聞いたことがあるでしょうか。地下茎の1種なのですが、よく根と勘違いしてしまうことがあるのです。そんな根茎と根の違いや地下茎の分類、地下茎を持つ植物の繁殖方法などについて、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

根茎って何?

根茎とは、地下茎の1種であり、地中もしくは地表を這うように伸びた茎のことを言います。土中にあることから、根と間違えられやすいですが、根茎は「根のような茎」なのです。

ここで、なぜ茎が土中にあるのか、そもそも地下茎とは何なのかが気になりますよね。ここからは、根茎のことを知る上で欠かせない地下茎について学んでいきましょう。

地下茎とは?種類を解説

地下茎とは?種類を解説

image by Study-Z編集部

地下茎とはその名の通り、「地下にある茎」のことを言います。

そもそも、根茎などの地下茎は何のためにあるのでしょうか。

植物は子孫を残すために、乾期や冬季などの生育に適さない時期を乗り越えることが必要不可欠になります。これらの過酷な環境を乗り越えるための代表的な手法として「種子を形成する」がありますよね。種子には生育に必要な養分が蓄えられており、生育に適した時期が来るまで土中でしのぎ、生育できるその時までじっと地中で待ち続けます。実は、「種子を形成する」以外にも、植物によっては、根や茎、葉に栄養分を蓄えるものがあるのです。「地下茎」はその1種であり、ここに植物が成長するための養分が蓄えられ、生育に適した時期まで地中でしのぎます。地下茎はその構造や形態によって4つに区分することができるのです。上記の図を参考にしながら、それぞれについて学んでいきましょう。

1. 根茎

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「根茎」とは、地下茎が全体的に棒状や塊状に肥大したものを指します。目立った節々があることが特徴的で、そこから芽や根が生えるのです。特に、地中に対して水平に伸長する根茎のことを「横走根茎」と呼び、地中に対して垂直方向に伸長する根茎を「直立根茎」と呼びます。根茎を地下茎に持つ植物として、ワラビ、ワサビ、ドクダミなどがありますよ。

2. 球茎

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「球茎(きゅうけい)」とは、地下茎が球形や楕円形、卵形に肥大したものを指します。代表的な例として、クロッカスやグラジオラス、サトイモなどがこの地下茎を持っていますよ。

3. 塊茎

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「塊茎(かいけい)」楕円形や独特な形に肥大した地下茎のことを言います。最も有名なものとしてジャガイモがあり、他にも、シクラメンやキクイモなどがありますよ。

\次のページで「4. 鱗茎」を解説!/

4. 鱗茎

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「鱗茎(りんけい)」とは、地下茎の周りに肥大化したうろこ状の葉(鱗茎葉という)が密着した状態のものです。代表的な鱗茎を持つ植物として、タマネギやニンニク、ユリ、チューリップなどがあります。

地下茎と根について

地下茎について詳しく学びましたが、土中に生えることから根と見分けられないことがありますよね。ここでは、地下茎と根の役割の違いと見分け方について解説していきます。

地下茎と根の役割とは?

地下茎は植物が生育するための栄養分であるデンプンなどを貯蓄する場所でしたね。一方で、根は土中の水分や養分を植物体内に吸収し、維管束を通ることで全身に行き渡らせます。地下茎を持つ植物にも、もちろん根が生えているのです。地下茎と根の共通点としては、どちらも植物体を支えることであると言えます。

このように、地下茎と根は見た目が似ていますが、異なる役割を持っていることがわかりますね。

地下茎と根の見分け方は?

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地下茎と根はどちらも地中にあるため、見分けづらいですよね。しかし、よく観察すれば、両者の見た目に違いがあります。地下茎(塊茎)が肥大してできる「ジャガイモ」と根(塊根)が肥大してできる「サツマイモ」で考えると分かりやすいでしょう。

サツマイモの表面のくぼみにはヒゲのようなものが生えていますよね。このヒゲは「側根」と言われるもので、主根から枝分かれして伸長した根のことです。つまり、私たちが食べているサツマイモは根の主根に当たります。一方で、ジャガイモの表面には何も生えておらず、ツルツルとしていますよね。これは、側根が生えていない茎だからなのです。

このように、作物の表面をよく観察すると見分けられますよ。

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根茎を持つ植物の繁殖方法とは?

私たちの身の回りに存在する植物の多くは、種子や胞子を形成して仲間を増やしますよね。しかし、根茎などの地下茎を持つ植物は、「栄養繁殖」で子孫を残すことができるのです。栄養繁殖とは、配偶子や胞子などの生殖細胞を必要としない生殖のことを言います。つまり、わざわざ種子を経由しなくても、葉や茎、根などの植物の栄養器官から繁殖することができるということです。

根茎には、目立った節々があることが特徴でしたよね。実はこの節々から側芽(そくが)が地上にむかって伸びます。仮に、生育に適さない時期に植物の地上部分が枯死したり、動物などに食べられたりしたとしても、地中の根茎は生き残り、根茎の節々から、また新たに植物体が繁殖することができるのです。しかし、栄養繁殖は同じ遺伝型の植物を増殖させるため、一度ウイルス感染すると、そのウイルスはそのまま次の世代まで受け継がれてしまいます

根茎で生育不適な時期を乗り越えられる!

地下茎の1種である根茎。根とは異なり、植物が成長するための養分が蓄えられるところであり、これにより、生育不適な時期を乗り越えられるのでしたね。また、根茎や球茎といった地下茎の分類は曖昧なところがありますが、形状や構造で分類されているのでした。種子を作らず、根茎(地下茎)で栄養繁殖するという方法で子孫を残すようになった植物は、意外と私たちの身の回りにたくさんあるのです。実際に探してみると楽しいので試してみてくださいね。

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理科生き物・植物生物生物の分類・進化

根茎とは?根との違いや地下茎の分類について現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは「根茎」と言う用語を聞いたことがあるでしょうか。地下茎の1種なのですが、よく根と勘違いしてしまうことがあるのです。そんな根茎と根の違いや地下茎の分類、地下茎を持つ植物の繁殖方法などについて、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

根茎って何?

根茎とは、地下茎の1種であり、地中もしくは地表を這うように伸びた茎のことを言います。土中にあることから、根と間違えられやすいですが、根茎は「根のような茎」なのです。

ここで、なぜ茎が土中にあるのか、そもそも地下茎とは何なのかが気になりますよね。ここからは、根茎のことを知る上で欠かせない地下茎について学んでいきましょう。

地下茎とは?種類を解説

地下茎とは?種類を解説

image by Study-Z編集部

地下茎とはその名の通り、「地下にある茎」のことを言います。

そもそも、根茎などの地下茎は何のためにあるのでしょうか。

植物は子孫を残すために、乾期や冬季などの生育に適さない時期を乗り越えることが必要不可欠になります。これらの過酷な環境を乗り越えるための代表的な手法として「種子を形成する」がありますよね。種子には生育に必要な養分が蓄えられており、生育に適した時期が来るまで土中でしのぎ、生育できるその時までじっと地中で待ち続けます。実は、「種子を形成する」以外にも、植物によっては、根や茎、葉に栄養分を蓄えるものがあるのです。「地下茎」はその1種であり、ここに植物が成長するための養分が蓄えられ、生育に適した時期まで地中でしのぎます。地下茎はその構造や形態によって4つに区分することができるのです。上記の図を参考にしながら、それぞれについて学んでいきましょう。

1. 根茎

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「根茎」とは、地下茎が全体的に棒状や塊状に肥大したものを指します。目立った節々があることが特徴的で、そこから芽や根が生えるのです。特に、地中に対して水平に伸長する根茎のことを「横走根茎」と呼び、地中に対して垂直方向に伸長する根茎を「直立根茎」と呼びます。根茎を地下茎に持つ植物として、ワラビ、ワサビ、ドクダミなどがありますよ。

2. 球茎

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「球茎(きゅうけい)」とは、地下茎が球形や楕円形、卵形に肥大したものを指します。代表的な例として、クロッカスやグラジオラス、サトイモなどがこの地下茎を持っていますよ。

3. 塊茎

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「塊茎(かいけい)」楕円形や独特な形に肥大した地下茎のことを言います。最も有名なものとしてジャガイモがあり、他にも、シクラメンやキクイモなどがありますよ。

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