
酸素の借金状態である「酸素負債」ってなに?心拍はどうなる?乳酸との関係は?メカニズムは?現役の研究者がわかりやすく解説!
酸素負債はどんな運動で起こるの?
酸素負債は無酸素運動でも有酸素運動でも起こります。
しかし、その程度(負債量)が多いのは、筋トレや短距離走などの無酸素運動を行った場合です。
無酸素運動では酸素負債が起こりやすい

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酸素負債が起こりやすい(酸素の負債量が多い)のは、筋トレや短距離走などの無酸素運動です。
無酸素系の運動では急激に激しい動きをしなければならないので、一時的に大量のエネルギーが必要になります。そのため、エネルギーを作るのに時間をかけられないので、無酸素系のエネルギー産生機構である解糖系を使ってスピーディにエネルギーを作りだすことで代用しているのです。
しかし、本来は酸素を使ってエネルギーを作り出すべきだったので、必要だった酸素を運動後に酸素負債という形で補わなければなりません。
有酸素運動では酸素負債が起こりにくい

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一方で、ランニングやウォーキング、水泳などの有酸素運動では酸素負債は起こりにくいです。
有酸素運動は無酸素運動と比較すると運動強度が低いので、一時的な大量のエネルギーは必要にありません。そのため、体は酸素を使ってクエン酸回路や電子伝達系を使って効率的にエネルギーを産生します。無酸素系のエネルギー産生(酸素借)がほとんどないので酸素負債も起こりにくいのです。酸素負債が起こりにくいので、有酸素運動は長時間行うことができます。
ここで重要になるのは、最大酸素摂取能力です。最大酸素摂取能力は有酸素系のエネルギー産生と無酸素系のエネルギー産生が切り替わるポイントなので、最大酸素摂取能力を超えるような強度の運動では有酸素運動であったとしても、無酸素系のエネルギー産生を行う必要があるので酸素負債は起こります。マラソン選手はトレーニングによって、最大酸素摂取能力を高めることで長時間・高強度で走ることができるのです。
乳酸が溜まると酸素負債は増えるの?
無酸素運動である筋トレや短距離走を行うと、「乳酸が溜まって腕が上がらない」、「乳酸で足がうごかない」なんてことを言っているのを聞いたことはありませんか?
無酸素系のエネルギー産生を行うと、エネルギーと同時に乳酸が産生され、血液中に放出されます。なので乳酸が産生されているような状態は、「無酸素系のエネルギー産生を行っている。」つまり、酸素負債に陥っていると言えます。しかし、乳酸が溜まることで酸素負債が増えるわけではありません。
乳酸は疲労物質なの?

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よく間違われますが、乳酸は疲労物質ではありません。激しい運動を行ったときに乳酸が産生され、血液中に放出され血液中の乳酸濃度が上がり、回復に連れて減少することから、長い間、乳酸が疲労を起こすと考えられてきました。
最近の研究では、乳酸が多くつくられることで乳酸の生成過程で発生する水素イオンの影響により体が若干酸性に傾くこと、エネルギー源である筋グリコーゲンの蓄えが少なくなったり、筋収縮が抑えられるることが筋肉疲労の原因ではないかと言われています。
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