酸素の借金状態である「酸素負債」ってなに?心拍はどうなる?乳酸との関係は?メカニズムは?現役の研究者がわかりやすく解説!
ライター/ポスドクランナー
大学院で運動について学び、生理学に精通している。現在も研究者として活動を続ける傍ら、市民ランナーとしても多くのマラソン大会に出場している現役のランナー。
酸素負債ってなに?ざっくりと解説!
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酸素負債(oxygen debt)は急激に激しい運動などを行った際に、体内で必要とする酸素の量に見合う酸素の供給がない状態のことを言います。
酸素負債は急に激しい運動をしたときなどに起こり、激しい運動後にしばらく息が荒く続くのは酸素負債を解消し、安静時の状態に戻すためです。酸素負債は運動後過剰酸素消費(EPOC, excess post-exercise oxygen consumption)とも呼ばれます。
運動強度が急激に強くなって、酸素の供給が間に合わないときでも、ある程度運動を続けられるのは、解糖系を利用したエネルギー産生を行うことで酸素なしでも、運動に必要なエネルギーを得ることができるからです。これを無酸素代謝と呼びます。しかし、エネルギーの産生降率は有酸素代謝に比べて低いので長時間は行えません。
酸素負債と酸素借の関係について解説
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酸素負債の時には安静状態に戻るまでに運動時に必要としていた時よりも多くの酸素を必要とします。酸素負債が起こる状態はエネルギーを前借りしている状態です。酸素を借金している状態なので酸素借といいます。酸素借を返すために必要な酸素が酸素負債です。この酸素負債は、前借していた酸素の量(酸素借)よりも少し多くなることが知られています。
例を挙げると、銀行などでお金を借りると返済の際には利子がつき、借入額よりも多くのお金を返さなければなりません。これと同じです。
酸素負債のときには心拍はあがるの?
一時的ですが心拍は上がります。
酸素借の時は無酸素運動がメインなので心拍はそこまで上がりません。酸素負債の時は負債分を補わなければならないので一時的に心拍は上がりますが、時間が経つにつれて落ち着いていくので心拍は低下していき、元に戻ります。
急なダッシュを行った後に、「はぁ、はぁ…」と呼吸が荒れた状態になっているのは心拍が上がっている証拠です。
酸素負債はどうやったら減らせる?
有酸素運動を行うことが有効的だと考えられています。有酸素運動を行うことで酸素を効率よく吸収できるからです。
例えば、走り終わった後に急に止まらずに、軽くジョギングしたり、ウォーキングするように言われたことがあると思います。これはそのためなのです。
一説には有酸素運動を行うことで血管などの循環器系が健康になることで酸素の運搬効率が良くなるとも言われています。
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