今回はノーベル生理学・医学賞を受賞した天才「モーリス・ウィルキンス」について見ていこう。彼はDNAが2重らせん構造であることを発見した偉人だ!この記事ではモーリス・ウィルキンスについて、大学で生物学を学び、現在も研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で生物学を学び、DNAやRNAなどの遺伝子について精通している。現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。

モーリス・ウィルキンスって何をした人?その業績をザックリ解説!

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モーリス・ウィルキンス(モーリス・ヒュー・フレデリック・ウィルキンス、1916年12月15日 - 2004年10月5日)はニュージーランド生まれのイギリスの生物物理学者でもあり、分子生物学者です。彼はX線構造回折の分野で多くの業績を残しました。

彼の最大の功績はジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックとともに、DNAが二重らせん構造をとることを発見したことです。この功績が認められ、ウィルキンスは、ワトソンとクリックと共に、「核酸の分子構造と生体内の情報伝達の意義に関する発見により」1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました

モーリス・ウィルキンスの一生

モーリス・ウィルキンスはニュージーランドのポンガロアに生まれです。ウィルキンスが6歳の時に、医者であった父親が予防医学について研究するために、家族でイギリスに渡りました。

ウィルキンスは1940年にバーミンガム大学で博士号を取得します。この時彼はジョン・ランドールと一緒に、レーダーについての研究を行っていました。第二次世界大戦中にはカリフォルニア大学バークレー校でマンハッタン計画にも参加しています。現在のレーダー技術の一部にはウィルキンスの研究が使用されているのです。

戦後、ウィルキンスはキングス・カレッジ・ロンドンでロザリンド・フランクリンらとともにX線回折によるDNAの構造に関する研究を行いました。この時にケンブリッジ大学のワトソンとクリックとともに、DNAが二重らせん構造をとることを発見し、1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞するのです。彼は2004年に87歳でその生涯を閉じるまで、キングス・カレッジ・ロンドンの生物物理学教授をつとめ、DNAの存在様式に関する研究を続けました。

DNAってどんなものなの?簡単に解説

DNAってどんなものなの?簡単に解説

image by Study-Z編集部

DNAはデオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid)のことであり、デオキシリボースとリン酸、塩基 から構成される核酸のことです。生物の体の中には、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基が存在します

DNAを簡単に説明すると私たちの体を作るための設計図です。DNAを構成するヌクレオチドは,3個が一組になって,アミノ酸を表します。 生物の体ではタンパク質を合成するときには、 RNA ポリメラーゼという酵素が DNA 上の情報を3個ずつ読み取り, 同じ塩基配列を持ったRNA を合成し、RNA の情報をもとにアミノ酸を作り、合成されたアミノ酸が連なってできたものがタンパク質なのです。

 「DNA → RNA →タンパク質」という情報の流れはすべての生物に共通のメカニズムであり、生命活動の根幹になります。

DNAのニ重らせん構造について解説

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二重らせん構造とはDNAが生細胞中でとっている立体構造のことであり、平行な二本の線がらせん状(はしごをひねったような形)の立体構造のことです。

二本のポリヌクレオチド鎖(DNAが連なったもの)からなり、互いは逆方向を向いています。この2本のポリヌクレオチド鎖のらせんの内側で、アデニン(A)はチミン(T)と、グアニン(G)はシトシン(C)と、それぞれ決まった組み合わせで水素結合し、塩基対が形成されることで二本のポリヌクレオチド鎖はしっかりと結びつくのです。

発見者の名前にちなんでワトソン-クリックモデルとも呼ばれます。

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ニ重らせん構造のメリットは?

DNAが二重らせん構造をとるメリットは3つあります。

一つ目はコンパクトになることでより多くの遺伝子情報を収納できるようになることです。らせん構造にすることで、一本の長い鎖として存在するよりも、空間的に短くなり、体積も小さくなります。

二つ目は安定性が上がることです。立体的な二重らせん構造を取ることで物理的な強度が上がり、変異や破損が起こりにくくなります。

三つ目は修復しやすくなることです。DNAは相補的な二本の鎖で構成されていることで、どちらかの一部に破損や変異が起きても、正常なもう片方を利用して修復することができます。

ウィルキンスが受賞したノーベル賞について

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ウィルキンスはワトソンとクリックとともに、DNAが二重らせん構造をとることを発見したことでノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ワトソンとクリックはモデルを提唱しましたが、実験的なことは行っていません。ウィルキンスとフランクリンが行った、DNAのX線結晶回折が大きな役割を果たしたとされています。

ウィルキンスとフランクリンは何をしたの?

ウィルキンスとフランクリンはDNAのX線結晶回折データの一部をワトソンとクリックに提供しました。自分たちのデータや仮説にこのデータの解釈を加えることで、二重らせん構造を発表したのがワトソンとクリックです。

しかし、この時のデータ提供については諸説あり、ウィルキンスがフランクリンと険悪な関係に陥ったためにX線結晶回折の写真をこっそりとワトソンとクリック見せたのではないかと言われています。ウィルキンス自身はあくまでフランクリンのデータを閲覧する権限が自分にあり、フランクリンもそれを認めていた、と釈明しているので真相はわかりません。

ワトソンとクリックは何をしたの?

ワトソンとクリックが行ったのはデータや仮説をもとに構築したDNAの構造モデルの提唱です。実験的なことはほとんど行っていません。この成果はワトソンとクリックの名で、1953年4月25日に発行された『ネイチャー』171巻1356号に『デオキシリボ核酸の分子構造』というタイトルで掲載されました。

フランクリンがノーベル賞を取れなかったのは何故?

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MRC Laboratory of Molecular Biology - From the personal collection of Jenifer Glynn., CC 表示-継承 4.0, リンクによる

ノーベル賞は亡くなっている人物には与えられない、またひとつの分野の受賞者は、最大3人までである。といった決まりがあります。ウィルキンスらがノーベル賞を受賞したのは1962年でした。フランクリンは1958年に37歳で卵巣癌と巣状肺炎により死去していたため、その対象にはならなかったのです。一説には実験のため大量のX線を浴びたことが癌の原因だったのではないかと言われています。

今でこそ、二重らせん構造の発見におけるフランクリンの功績への評価は大きいです。しかし、当時の状況を考えると仮にフランクリンが生きていたとしても、ノーベル賞の受賞メンバーに加わるのは難しかったのではないかと思います。

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ニ重らせん構造は遺伝子を保存するための重要なメカニズム

ウィルキンスの功績でもある、DNAの二重らせん構造は私たち、生物がたくさんの遺伝子情報を安定的に保存すたるために大事なメカニズムです。この大発見に関するデータ提供を巡る真実は今となってはわかりません。しかし、大発見の背景には体を張って研究をした、ロザリンド・フランクリンという一人の女性研究者がいたことを忘れないでいて欲しいですね。

イラスト使用元:いらすとや

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体の仕組み・器官理科生き物・植物生物雑学

DNAの構造を明らかにした「モーリス・ウィルキンス」その生涯や功績を現役の研究者がわかりやすく解説

ニ重らせん構造は遺伝子を保存するための重要なメカニズム

ウィルキンスの功績でもある、DNAの二重らせん構造は私たち、生物がたくさんの遺伝子情報を安定的に保存すたるために大事なメカニズムです。この大発見に関するデータ提供を巡る真実は今となってはわかりません。しかし、大発見の背景には体を張って研究をした、ロザリンド・フランクリンという一人の女性研究者がいたことを忘れないでいて欲しいですね。

イラスト使用元:いらすとや

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