内臓反射、知っているか?膝蓋腱反射や屈筋反射とは違う反射です。内臓が反射するとはどういうことなのでしょう。どうして内臓に反射が必要なのでしょうか?内臓反射の経路はどのようなものなのでしょう?また、生命維持に重要な器官として脳幹というものがありますが、なぜ生命維持に重要なのでしょうか。
内臓反射について、現役医学生ライターたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。

内臓反射とは?

image by iStockphoto

内臓反射は、又の名を自律神経反射と言います自律神経が関わる反射のことです。

自律神経には交感神経と副交感神経という2種類があり、それぞれ興奮性の刺激と抑制性の刺激を伝えていましたね。内臓は自律神経により興奮の方向・抑制の方向に調節されています。想像していただきたいのですが、内臓は「動かそう」と思って動かせる臓器ではありませんよね。実際、内臓は意図せずとも勝手に動いてくれています。しかし、食事をしたり運動をしたりして、内臓の動きはその都度調節されなければなりませんこの調節を担っているのが自律神経なのです。意図せず、つまり大脳を介さず、内臓機能を勝手に調節してくれるこの機構こそが内臓反射。自律神経の大半は反射性に調節されています。

内臓反射は3種類!

内臓反射は、その経路によって3種類に分けられます。

内臓−内臓反射:入力が自立神経、出力も自律神経

体性−内臓反射:入力が体性神経、出力は自律神経

内臓−体性反射:入力が自律神経、出力は体性神経

入力というのは、感覚情報を体の中枢(脳や脊髄など)に伝える神経経路のこと。その方向性から求心路とも言います。各器官から司令塔である中枢に向かう経路が入力。逆に、出力というのは体の中枢から各器官に情報を伝える経路を言います。求心路に対し、遠心路と言いますよ。

さて、反射は、反射弓という経路をたどります反射弓は、一般的な神経伝達の経路のショートカット版。普通ならば求心路により大脳まで情報が行くところを、完全には求心路を登らず、求心路の途中で遠心路に乗り換えて手早く筋肉などの効果器に情報伝達しています。ということで、内臓反射については入力・出力により以上のように分類されているのです。

ちなみに、神経系は体性神経と自律神経の2つに大別されます。体性神経は意識に関わる神経で、自律神経は意識に関わらない神経です。内臓機能にメインで関係するのは自律神経ですが、内臓反射にはこれら両方の神経が登場しうる、ということですね。

image by iStockphoto

さて、内臓−内臓反射ですが、多くの臓器の機能調節がこれに該当します。自律神経が内臓の情報をキャッチし、それを受けて自律神経が反射性に内臓機能を調節。また、体性−内臓反射には対光反射や鳥肌、痛みによる血圧上昇などが該当します。意識できる感覚に対し、意識せずに反射的に自律神経が反応する、というシステムです。そして、内臓−体性反射には呼吸反射や嚥下反射などが該当。内臓からの情報は自律神経に伝えられますが、この情報が体性神経に伝えられ運動器を動かすという反射です。いずれの内臓反射にも自律神経が関わっていることがわかりますね。

\次のページで「内臓反射の代表的経路」を解説!/

内臓反射の代表的経路

内臓反射の代表的経路

image by Study-Z編集部

内臓反射の代表的経路を見ていきましょう。以下は内臓−内臓反射の例です。

内臓−内臓反射では、内臓からの感覚情報が自律神経により求心性に脊髄にまで伝えられます。脊髄内には介在神経が存在。求心路の神経は、この介在神経を介して遠心性の自律神経に情報を伝達しています。このような、大脳を介さずに無意識下で情報伝達される仕組みを反射といい、そのための経路を反射弓と言いましたね。今回お示しした例は脊髄を中枢とし反射弓を形成するものでしたが、内臓反射の中枢には他にも中脳や延髄なども存在しています。これについては次の章で扱いますね。

内臓反射の具体例

内臓反射の具体例を見ていきましょう。

【反射中枢が中脳

・対光反射(網膜への刺激→縮瞳)

【反射中枢が延髄

・せき反射(気道粘膜への刺激→咳)

・圧受容器反射(大血管の圧受容器への刺激→心拍出量低下、血管拡張)

・唾液反射(口内への刺激→唾液分泌)

・嘔吐反射(食道などへの刺激→横隔膜が収縮、食道の蠕動運動)

・胃反射(胃壁を広げる刺激→胃が緩む)

【反射中枢が腰髄仙髄

・排尿反射(膀胱壁が引き伸ばされる刺激→膀胱が収縮、尿道が緩む)

・排便反射(直腸壁が引き伸ばされる刺激→直腸が収縮、肛門が緩む)

脳幹とは?

生命維持に重要と言われる脳幹ですが、一体どのような器官なのでしょうか?

脳幹は生命中枢!

image by iStockphoto

脳幹は中脳、橋、延髄からなる器官。大脳と脊髄の間に存在している、細長い「脳」です。脳幹は、古くから生命維持活動の中枢と言われてきました。というのも、脳幹には内臓反射の中枢、特に、呼吸や循環など生命に関わる反射の中枢が多く存在しているからです。

さらに、脳幹には大脳や小脳、視床下部などからの情報も集合してきます。複数臓器の情報が集合し、統合的に調節されるのが脳幹という器官なのです。

\次のページで「心拍・血圧の調節機構」を解説!/

心拍・血圧の調節機構

内臓反射の具体例として、心拍・血圧の調節について見ていきましょう。循環器系の内臓反射は、内臓−内臓反射でしたね。

圧受容器が情報をキャッチ!

首の血管である頸動脈や心臓の近くに存在する大動脈には、圧受容器と呼ばれる血圧のセンサーが存在しています。血管内の圧力が高まるとこの圧受容器が反応。「血圧が高い」という情報が、自律神経を介して延髄にまで伝えられます。延髄には複雑で統合的な調節機構が備わっていましたよね。実際、延髄に到達した血圧の情報は統合的に処理され、遠心路へ適切な信号を出せるよう準備されます。

自律神経が心拍・血圧を調節!

延髄で統合的に処理された血圧の情報は、遠心性の自律神経へ。血圧が高い場合、血圧を下げる方向に内臓を調節しなければなりませんが、その方法として、心臓と血管の機能調節があげられます。延髄から心臓に向かって抑制性の自律神経が、延髄から血管に向かって興奮性の自律神経が出ていますが、これらのオンとオフを調節する形で血圧を調節しているのです。自律神経が2極性に調節をおこなっているということが、ここからもわかりますね。

起立性低血圧とは?

image by iStockphoto

立ち上がって、急にふらつきや目眩を感じたことはありますか?急に立ち上がると、体の上の方では血圧が下がります正常であれば、この血圧の急降下に対し内臓反射がはたらき血圧が適切な値に修正されますが、自律神経などの異常により内臓反射が正常に機能しないと血圧が修正されません特に、頭の血圧が下がると脳の血流が不十分となりふらつきの原因に。これが起立性低血圧です。

内臓反射は、自律神経による内臓機能を調節するための反射!

今回は内臓反射について扱いました。内臓反射はあまり聞くことのないワードですが、実は人体を考える上で頻発のシステムです。自律神経について勉強すると、さらに理解が深まりますよ。

また、どのような医学分野についても同じことが言えますが、人体の仕組みを理解する上で正常と異常の比較は重要です。正常を理解した上で異常を勉強すると、正常を勉強したのみでは気づかなかった点も見つかり理解が深まります。時間のある方は、ぜひ疾患についても勉強して見てください。

この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

" /> 内臓反射とは?どうして内臓なの?中枢は?具体例や経路について現役医学生がわかりやすく説明! – Study-Z
理科生物

内臓反射とは?どうして内臓なの?中枢は?具体例や経路について現役医学生がわかりやすく説明!

内臓反射、知っているか?膝蓋腱反射や屈筋反射とは違う反射です。内臓が反射するとはどういうことなのでしょう。どうして内臓に反射が必要なのでしょうか?内臓反射の経路はどのようなものなのでしょう?また、生命維持に重要な器官として脳幹というものがありますが、なぜ生命維持に重要なのでしょうか。
内臓反射について、現役医学生ライターたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。

内臓反射とは?

image by iStockphoto

内臓反射は、又の名を自律神経反射と言います自律神経が関わる反射のことです。

自律神経には交感神経と副交感神経という2種類があり、それぞれ興奮性の刺激と抑制性の刺激を伝えていましたね。内臓は自律神経により興奮の方向・抑制の方向に調節されています。想像していただきたいのですが、内臓は「動かそう」と思って動かせる臓器ではありませんよね。実際、内臓は意図せずとも勝手に動いてくれています。しかし、食事をしたり運動をしたりして、内臓の動きはその都度調節されなければなりませんこの調節を担っているのが自律神経なのです。意図せず、つまり大脳を介さず、内臓機能を勝手に調節してくれるこの機構こそが内臓反射。自律神経の大半は反射性に調節されています。

内臓反射は3種類!

内臓反射は、その経路によって3種類に分けられます。

内臓−内臓反射:入力が自立神経、出力も自律神経

体性−内臓反射:入力が体性神経、出力は自律神経

内臓−体性反射:入力が自律神経、出力は体性神経

入力というのは、感覚情報を体の中枢(脳や脊髄など)に伝える神経経路のこと。その方向性から求心路とも言います。各器官から司令塔である中枢に向かう経路が入力。逆に、出力というのは体の中枢から各器官に情報を伝える経路を言います。求心路に対し、遠心路と言いますよ。

さて、反射は、反射弓という経路をたどります反射弓は、一般的な神経伝達の経路のショートカット版。普通ならば求心路により大脳まで情報が行くところを、完全には求心路を登らず、求心路の途中で遠心路に乗り換えて手早く筋肉などの効果器に情報伝達しています。ということで、内臓反射については入力・出力により以上のように分類されているのです。

ちなみに、神経系は体性神経と自律神経の2つに大別されます。体性神経は意識に関わる神経で、自律神経は意識に関わらない神経です。内臓機能にメインで関係するのは自律神経ですが、内臓反射にはこれら両方の神経が登場しうる、ということですね。

image by iStockphoto

さて、内臓−内臓反射ですが、多くの臓器の機能調節がこれに該当します。自律神経が内臓の情報をキャッチし、それを受けて自律神経が反射性に内臓機能を調節。また、体性−内臓反射には対光反射や鳥肌、痛みによる血圧上昇などが該当します。意識できる感覚に対し、意識せずに反射的に自律神経が反応する、というシステムです。そして、内臓−体性反射には呼吸反射や嚥下反射などが該当。内臓からの情報は自律神経に伝えられますが、この情報が体性神経に伝えられ運動器を動かすという反射です。いずれの内臓反射にも自律神経が関わっていることがわかりますね。

\次のページで「内臓反射の代表的経路」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: