
「反射神経」という神経は存在しない。「反射神経がいい」という言葉は、あくまで慣用句的な表現でしかなく、医学的には正しい表現ではない。しかし、「反射」が素早い反応であるという点では大いに正しく、他の慣用句でも「反射」というワードはしばしば「素早いもの」という意味で用いられる。
反射の代表である脊髄反射について、現役医学生ライターたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ
心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。
脊髄反射とは?
脊髄反射とは何なのでしょうか?まずは反射の正しい意味から見ていきましょう。
脊髄反射の正しい意味
反射とは、「刺激により引き起こされる非意図的な体の反応」。反射を引き起こすための、普通の神経伝達の経路よりも短い経路を反射弓と言います。
反射には色々な種類がありますが、反射弓の折り返し地点である中枢の種類でいくつかに分類することが可能。その一つが脊髄反射なのです。つまり、脊髄反射とは「脊髄を中枢とする、刺激に対する無意識の反応」ということができます。
ちなみに、脊髄以外には中脳や延髄などが中枢となる反射が存在していますよ。中脳や延髄は脳幹に含まれます。
脊髄反射と普通の神経伝達の違い

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脊髄反射と普通の神経伝達の違いについて見ていきましょう。簡単に言うと、「意図的かどうか」が違います。
まずは普通の神経伝達から。「筋肉を動かす」という普通の神経伝達ですが、正確には随意運動と言います。随意運動では「動かしたい」という意志が必要。つまり、大脳で「動かしたい」という指令が出て、それが筋肉の方へと伝達されているのです。神経は長い1本のコードのような形をしていますが、途中で2本目のコードに引き継がれます。この引き継ぎの場が脊髄。ちなみにこの引き継ぎ、正確にはシナプスと言います。
続いて脊髄反射ですが、脊髄反射の第一段階は「刺激」です。図でお示ししたのは膝蓋腱反射で、太ももの筋肉を伸ばす刺激が与えられています。すると、この刺激が脊髄にまで伝達。「太ももが伸ばされた」という情報はもちろん脊髄から大脳の方へと伝達されますが、それと同時に脊髄にて「筋肉を縮める」神経に刺激が引き継がれます。このため、「筋肉を動かそう」という意図なしに、ただ刺激されただけで勝手に筋肉が動くのです。
ちなみに、しばしば脊髄はこの図のような断面図で表現されますが、脊髄は背骨の中に大切にしまわれた非常に長い構造物。先ほど「神経は1本のコード」とお話ししましたが、これらがたくさん通っているのが脊髄です。そうめんの束を想像するとわかりやすいですよ。
脊髄反射の代表〜膝蓋腱反射と屈筋反射〜
さて、脊髄反射にはいくつかの種類がありますが、代表的な2例をお示しします。
膝蓋腱反射は、膝の下を叩くことで膝が跳ね上がる反射。膝の下には膝蓋腱という腱が存在しており、これは太ももの前の筋肉の腱です。腱というのは、筋肉を骨に固定している筋肉の端に該当するパーツでしたね。膝蓋腱を叩くと前ももの筋肉が伸ばされます。この刺激が脊髄にまで伝えられ、脊髄にて筋肉を収縮される神経に引き継がれると、先ほど引き伸ばされた筋肉が収縮するのです。というのも、筋肉は引き伸ばされすぎると切れてしまったり傷ついてしまう可能性があります。このため、筋肉が引き伸ばされすぎる前に無意識に収縮する仕組みがあるのですね。このような、筋肉の伸び縮みに関する反射をまとめて伸張反射と言います。
屈筋反射は、強い刺激が皮膚に与えられた時にその部分を咄嗟に引っ込める反射。熱いものに触れた時に咄嗟に手を引っ込めたりする動作が該当します。危険を回避するのに、いちいち考えていたら逃げ遅れてしまいますよね。よって、これもまた脊髄を介した脊髄反射のルートを辿ります。
次の章で、それぞれの反射についてさらに詳しく見ていきましょう。
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