

端的に言えば「楽屋で声を嗄す」の意味は「無駄な努力をすること」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んだ。一緒に「楽屋で声を嗄す」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「楽屋で声を嗄す」の意味は?
「楽屋で声を嗄す」には、次のような意味があります。
いくらほねをおっても人に認められないことのたとえ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「楽屋で声を嗄す」
この言葉は「いくら頑張っても認められない、無駄な努力をする」という意味のことわざです。
芸人などが控えの場所として利用する「楽屋(がくや)」。そこでせっかく声を張って頑張ってみても、舞台で実際のお客さんに聞いてもらえないのですから、「報われないこと」の表現として納得ですね。悔しい気持ちも想像できそうです。
加えて、その「報われなさ」と同時に「(場所が間違っているという意味で)無駄さ」も読み取れるのがこの表現のポイント。たとえば、芸人に向いているのに歌手を目指してしまっている…などでしょうか。もしこの言葉が読解問題などに登場した場合は、「なぜ努力が報われないのか」まで意識を向けてみましょう。
「嗄す」の漢字は「枯らす」と書いても構いません。書きが問われることは少ないでしょうが、読めるようにしておくと安心です。
「楽屋で声を嗄す」の語源は?
次に「楽屋で声を嗄す」の語源を確認しておきましょう。そのまま「声を嗄す」と言った場合は「大きな声を出す」や「何度も繰り返し言う」などの意味から、必死さを表す言葉としても使われます。
それに「楽屋」、つまり芸事の世界がセットになることで、「いつまでも舞台に立てない役者の苦悩」を連想させる表現として使われるようになったのかもしれません。そんな人物を想像して、悲しさや悔しさに想いを寄せてみましょう。
ちなみに、同じ意味のことわざとして「空き家で声を嗄す」というものもあります。こちらは「空き家」ですから、誰もいない場所。そこで大きな声を上げるとしたら、「楽屋」よりもさらに空しさが強調されるかもしれません。細かいニュアンスにも気を配りたいものですね。