
ゲルマニウムの応用例
ここまで、ゲルマニウムの性質や特徴について一通り学んできました。それをもとに、本チャプターでは、ゲルマニウムが実際にどのような技術に応用されているのかを学んでいきます。ゲルマニウムの応用例について知ることで、ゲルマニウム自体についての理解も深まりますよ。
今回は具体的に、電子工学分野・エネルギー分野・放射線分野・光学分野におけるゲルマニウムの活用方法について述べます。それぞれの分野でゲルマニウムのどの性質が活かされているのかを考えながら、記事を読み進めてみてください。
電子工学分野:ダイオードなどの半導体

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現在、ダイオードやトラジスタなどの半導体部品の原料には、シリコンを用いることが多くなっています。ですが、かつてはシリコンの精製が技術的に難しく、単体の抽出が容易なゲルマニウムが半導体部品の原料になっていました。
そして、シリコンが主流になった今、ゲルマニウムの活躍はもうないと思う方も多いかもしれません。ですが、現在ゲルマニウムが再び日の目を浴びています。実は、ゲルマニウムによる半導体には、高速スイッチングが可能であるといったポテンシャルを秘めており、次世代半導体として期待が集まっているのです。
エネルギー分野:太陽電池
By Stanford ENERGY, Video by Mark Shwartz – https://www.youtube.com/watch?v=MJqh5A3A2Cs, CC BY 2.5, Link
ゲルマニウムは、次世代太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」の添加剤になることが期待されていますよ。ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池と発電効率は同じで、折り曲げることができるなどフレキシブル性に優れたものになっています。
この太陽電池に、ゲルマニウムナノ粒子を添加すると、発電効率が向上することが近年になって明らかになってきました。この発見により、ゲルマニウムはエネルギー分野を支える重要な資源になりつつあるのです。
放射線分野:ガンマ線検知器

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ガンマ線と呼ばれる放射線が、ゲルマニウム半導体に入射すると、半導体素子内の電場が変化します。これを電気的に測定することで、空間中のガンマ線量を間接的に知ることができますよね。この仕組みを応用したものが「ゲルマニウムガンマ線検知器」です。
この装置は、原子力発電所周辺の環境モニタリングや自然放射線のモニタリングなどに用いられています。私たちの安全を守るためにも、ゲルマニウムは必要不可欠な資源になっているのですね。
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光学分野:赤外線レンズ

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赤外線カメラは、物体から放出される赤外線の強度を可視化するためのカメラです。暗闇でも被写体を写すことができるので、赤外線カメラは防犯や安全保障の分野などで活用されています。
当たり前のことではありますが、赤外線カメラのレンズは赤外線をよく透過する必要がありますよ。ゲルマニウムは数ある元素の中でも赤外線透過率が高いので、赤外線レンズの用途に適しているのです。
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ゲルマニウムについて学ぶ意義
ゲルマニウムは、何年も前から存在する枯れた技術から最先端のハイテク技術に至るまで幅広い分野で活躍している元素です。また、ゲルマニウム自体がもつ特殊性のことも考慮すると、今後も需要がなくなることはない元素であると考えられます。ですから、ゲルマニウムについての雑学は必ずこれからも役に立つはずです。
この記事では、ゲルマニウムについて性質から用途まで詳しく説明しています。ぜひこの機会に、ゲルマニウムについての知識を身につけてみてくださいね。